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渉外弁護士の年収は1,000万円以上!激務とされる仕事内容や転職で渉外弁護士になる方法まで

更新日: 公開日:

渉外弁護士とは国際的なビジネス法務を中心に扱う弁護士のことです。主に『五大法律事務所』や外資系法律事務所に所属し、企業に対して海外進出のサポートや国際的なM&Aの法的アドバイスなど幅広い業務を行います。

渉外弁護士は司法試験に合格した人の中でも特に優秀な人がなるケースが多く、年収も一般民事事務所より高い傾向にあり、初任給で1,000万円、アソシエイトで3000万円以上、パートナークラスで1億円に乗るケースもあります。

この記事では渉外弁護士をテーマに、年収相場や就職・転職の方法などについて解説します。

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目次

渉外弁護士の年収|初任給から1,000万円超

国際的なビジネス法務は案件の規模が大きく、一般民事事件などと違って年間契約となるケースも多いため、渉外事務所には多額の報酬が入ってきます。そのため渉外弁護士の年収も高くなりますが、具体的な年収はどのくらいなのでしょうか?

初任給でも1,000万円超

渉外弁護士になって初年度の年収は1,000万円、ボーナスを加えると1,200万円ほどからのスタートとなることが多いです。入所から3年~4年ほど経つと年収は1,500万円を優に超え、アソシエイトでも2,500万円~3,000万円に届く場合があります。

その後昇進すれば3,000万円を超えますが、アソシエイトのままだとこのあたりで年収は頭打ちとなります。

パートナーになると年収1億円超もある

渉外弁護士の年収はパートナーになれるかどうかで大きく変わります。渉外事務所でパートナー弁護士になると、年収は少なくとも4,000万円~5,000万円がスタートラインになると言われています。

さらに法律事務所に出資しているエクイティ・パートナーになると1億円以上を稼ぐことも可能です。いずれの場合でもパートナーになれば年収はアソシエイトのときと比べて格段に上がります。

ほかの弁護士と比べても高水準

五大法律事務所に所属する弁護士は初年度でもボーナスを加えて1,000万円~1,200万円ほどの年収を稼ぐことができます。渉外弁護士とそのほかの分野を扱う弁護士とで年収に差はありません。

ただし一般民事事件などを扱うほかの法律事務所で働く弁護士と比べると、渉外弁護士の年収は高水準です。一般民事などを扱ういわゆる「町弁」の場合、若手の年収は700万円~800万円が目安となります。

案件数が多ければ1,000万円を超える場合がありますが、新人である初年度から1,000万円以上の年収を稼げる渉外弁護士と比べるとやや見劣りするケースが多いでしょう。

渉外弁護士は高年収だが激務

渉外弁護士は一般の会社員とは比べものにならないほどの高年収を得ることができますが、かなりの激務です。業務内容は多岐にわたり、膨大な量の契約書を精査したり細かいことを契約書に落とし込んだりする必要があるなど、そもそもの業務量が多いことが関係しています。

また時差を超えて業務にあたるため昼夜が逆転することもあり、体力的にきつい部分もあります。朝は比較的遅めの10時出社くらいですが、そこから明け方まで働き続けることも日常茶飯事です。

国際間でのM&Aなど短期間で集中的に行う業務も多いので、そうした案件を抱えている間はさらに激務となります。

「渉外弁護士」とはどのような弁護士か

渉外弁護士は司法試験に上位成績で合格するような優秀な弁護士の中から採用されるので、弁護士の中でも一目置かれる存在であり、弁護士業界のエリートと呼ばれる場合もあります。

弁護士も憧れる弁護士ともいえますが、具体的にはどんな弁護士を指すのでしょうか?

渉外弁護士の定義や主な勤務先、業務内容などについて解説します。

国際的なビジネス法務を扱う弁護士のこと

「渉外弁護士」に法律上の定義はなく、あくまでも便宜上の呼称です。一般には外国が関わるビジネス法務をメインで扱う弁護士のことを指して呼ぶ場合が多いでしょう。外国が関わる案件でも、国際離婚や国際的な刑事事件などビジネス法務以外の案件を扱う弁護士のことは通常は渉外弁護士とは呼びません。

ただし渉外弁護士は必ず渉外案件だけを扱うわけではなく、国内案件を扱うこともあります。渉外弁護士は主に五大法律事務所や外資系の法律事務所に所属しています。

  1. 西村あさひ法律事務所
  2. アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  3. 長島・大野・常松法律事務所
  4. 森・濱田松本法律事務所
  5. TMI総合法律事務所

外資系の法律事務所には、たとえば以下のような大手の法律事務所があります。

  • ベーカー&マッケンジー法律事務所
  • モリソンフォースター外国法事務弁護士事務所
  • クリフォードチャンス法律事務所 外国法共同事業 など

外国弁護士・外国法事務弁護士との違い

外国弁護士とは

外国の弁護士資格を保有している弁護士のことです。外国の弁護士資格を持っていても、日本の弁護士または弁護士法人でなければ日本の法律に関わる法律事務を行うことができません

渉外弁護士にも外国の弁護士資格を保有している人はいますが、加えて日本の弁護士資格も保有しています。そのため外国の弁護士資格のみを持っている人のことを通常は渉外弁護士とは呼びません。

外国法務事務弁護士とは

外国弁護士のうち、法務大臣の承認を得て日弁連が備える名簿に登録した人のことをいいます。これにより日本の弁護士資格を持たない外国弁護士でも、日本国内において、自分が資格を有する国の法律と一定条件のもとで第三国の法律事務を行うことができます。

なお、「国際弁護士」も明確な定義はありませんが、渉外弁護士と同義です。国際弁護士という言葉は法曹界ではあまり使われないようですが、一般的にはなじみのある言葉かもしれません。

渉外弁護士の業務内容

渉外弁護士は外国企業との取引に関連した業務を中心に行います。たとえば以下のような業務があります。

  1. M&Aや融資を行う際の法的アドバイスや企業の評価調査
  2. 企業の海外進出にともなうライセンス契約・販売契約などの契約交渉、契約書のドラフト・レビュー
  3. 国際的訴訟の手続きや仲裁手続きなどの紛争処理、知的財産権訴訟
  4. 独占禁止法や証券取引法など法律関係の調査
  5. その他各種リーガル・アドバイス、海外への進出サポート など

渉外弁護士は各国の法律に抵触しないように国内企業と国外企業をつなぐ役割を担うため、国内法だけでなく外国の法律にも精通している必要があります。

渉外弁護士になるための条件

渉外弁護士になるには、ほかの弁護士と同様に司法試験および二回試験に合格することが大前提です。ただしそれだけではなれないのが渉外弁護士の難しいところと言えるでしょう。

サマー・クラークへの参加

渉外案件を多く抱えているのは五大法律事務所なので、必然的に渉外弁護士の多くは五大法律事務所に所属することになります。そのため、まずは五大法律事務所へ就職する必要があります。

五大法律事務所ではもともと司法試験の成績(順位)が優秀な人しか採りませんが、渉外弁護士に関してはサマー・クラークへの参加を必須としている事務所もあります。サマー・クラークとは法科大学院生を対象とした夏期インターン制度のことです。大手法律事務所を中心に採用活動の一環として、法科大学院修了年度の7月~9月頃に5日間程度で実施されます。

サマー・クラークで優秀だと認められると、翌年の司法試験が終わった後に事務所から個別訪問(面接)に来るよう声がかかります。その後、1回~3回の面接を経て7月頃に内定が出るという流れです。

なお、クラークにはほかに予備試験の合格者を対象としたウインター・クラークもあります。期間は2、3日と短いですが、サマー・クラークと同様に事務所の業務を体験できて顔を覚えてもらえるよいチャンスなので積極的に応募するのがよいでしょう。

司法試験の成績がよければ追加採用も

渉外事務所の内定は9月に実施される司法試験の合格発表よりも前の7月に出るため、司法試験の結果によって採用が決まるわけではありません。ただしサマー・クラークを経て内定をもらった人以外に、司法試験の成績優秀者を対象に追加の募集が実施される場合はあります。

もっとも、せっかく内定をもらっても司法試験や二回試験に不合格だった場合は内定が取り消されてしまいます。

英語力(ビジネスレベル)

渉外案件の共有言語は英語なので、渉外弁護士になるために英語力は必須です。英語の契約書の読み書きや契約交渉ができるレベルが必要となり、渉外弁護士の中にはTOEICは満点という方も少なくありません。

求人を見ると850点以上がひとつの基準となっているようですが、あくまでも最低ラインと思っておいたほうがよいでしょう。

ただ、採用時に必ずしもビジネスレベルの英語力まで求められるわけではなく、基準は事務所によって異なります。英語力は入所した後でも身につけることができますし、渉外弁護士に必要なのは英語力だけではないためです。

若手を中心に採用することもあり、英語力以外の素養があるのかを重視する法律事務所も多いでしょう。

外国のロースクールに留学するケースが多い

渉外弁護士に求められる英語力のレベルは高いため、渉外事務所に入所するとアメリカやイギリスなどの海外のロースクールに留学し、帰国後に事務所に戻るケースが一般的です。そのため年齢は若い人が有利となります。

30歳以降で司法試験に合格したような人だと、よほど優れた経歴などがない限り、採用されるのは難しいでしょう。

渉外弁護士に転職するには

ここまでは新卒で渉外弁護士になるための一般的な流れを紹介しましたが、中途採用で渉外弁護士になることは可能なのでしょうか?

転職で渉外弁護士になれるケースは限定的

渉外事務所では基本的に大学・法科大学院の学生や卒業してすぐの人を対象に採用活動を行うので、別の法律事務所で働いていた人が転職して渉外弁護士になるケースは稀です。

もっとも、渉外事務所からほかの渉外事務所へ転職するケースや、企業法務系の法律事務所で優秀な経歴を積んだ弁護士が応募して採用されるケースなどはあります。いずれも定期的な採用枠があるわけではなく、ピンポイントで優秀な人から応募があれば採用するという形のようです。

若手弁護士を募集しているケースがある

すでに別の法律事務所で勤務経験のある弁護士のうち、若手に限って募集をかけている法律事務所もあります。応募条件として修習期が限定されているケースが多いですが、該当しなくても応募・選考が可能な場合もあるため、気になる求人があれば諦めずにアクションを起こすことをおすすめします。

中堅渉外法律事務所なら可能性がある

五大法律事務所や外資系の法律事務所以外でも、国際案件を中心に扱っている中堅の渉外法律事務所があります。渉外案件以外も担当する場合がありますが、年齢的に五大法律事務所への転職が難しい方などは積極的に応募してみてもよいでしょう。

企業法務の経験が必須

渉外弁護士に限らず、弁護士の転職では応募者がこれまでに経験した業務分野と応募先の業務分野がマッチしているのかどうかを見られます。渉外案件は国際案件であると同時に企業法務なので、企業法務の経験が必須です。特にグローバルに展開する上場企業の企業法務経験があると評価されやすいでしょう。

ただし、企業法務の経験は必須の経験であって、それさえあれば渉外弁護士に転職できるわけではありません。たとえば渉外弁護士はビジネス法務に関わることから、法律知識のほかにビジネスや経営に関する知識・ノウハウなども求められます。

このような事情から、一般民事や刑事事件を担当していた弁護士が渉外弁護士に転身するというのはなかなか難しい面があります。

渉外弁護士のキャリアを活かせる転職先

渉外弁護士として経験を積んだ後のキャリアについても見ていきましょう。

渉外弁護士の市場価値は非常に高い

渉外弁護士は五大法律事務所など難易度の高い法律事務所に勤務し、英語力もあって専門性の高い国際案件を扱う弁護士なので、市場価値は非常に高いです。体力的にも精神的にもタフな人が多いため、どのようなキャリアを選択するにしても高い成果を出すことができるでしょう。

渉外事務所でパートナーになるのは難しくなっている

渉外弁護士のキャリアといえば理想は渉外事務所でパートナーになることです。しかし近年はパートナーに対するアソシエイト数の比率が低下しており、さらにポジションに空きも少ないため、パートナーになるのは難しくなっています。

ポジションに空きがあったとしても事務所への貢献度や経験値など厳しい基準をクリアしなければなりません。ひと昔前は30代半ばくらいでパートナーに昇進できるケースが多かったのですが、今は狭き門となっています。

王道のキャリアはインハウスローヤー

渉外弁護士がパートナーを目指さない場合、海外での事業展開や海外企業との取引を行うグローバル企業のインハウスローヤーとして働くのが王道のキャリアです。

外部の弁護士という立場ではなく、当事者の一員として自社に貢献できる点でやりがいが大きいでしょう。近年はM&Aを積極的に行う企業も多いので渉外弁護士の経験を活かせます。

ただし、渉外事務所の年収水準は非常に高いため、仮に大手企業への転職となっても年収は下がるケースが多くなります。大手企業のインハウスの年収はほかの総合職社員の年収と変わらず1,000万円~1,400万円ほどになります。

部長クラスのポジションであっても2,000万円に満たないケースも多いので、渉外事務所のアソシエイトからの転職でも年収ダウンは避けられないでしょう。

とはいえ大手企業は法律事務所と比べてワークライフバランスが格段に取りやすく、福利厚生も充実しているため、納得感をもって働ける方が多いかもしれません。

実際、近年は若手弁護士を中心に、年収はそこそこでも激務は避けたいとの理由でインハウスを選ぶ弁護士が増えています。

外資系投資銀行のインハウスなら年収を維持できるかも

インハウスの中でも特に年収が高いと言われているのが外資系投資銀行のインハウスです。高年収を見込めるため渉外事務所からの転職でも年収を維持できる可能性があります。

外資系投資銀行ではボリュームゾーンであるVP(ヴァイスプレジデント)の年収は2,000万~3,000万円ほどなので、渉外事務所で5年ほどの経験を積んだアソシエイトと同程度です。そのため転職するタイミングによっては年収が下がる場合もあるでしょう。

しかし、大手外資系銀行のMD(マネージングディレクター:最高責任者)まで昇進できれば五大法律事務所のパートナーと同レベルの年収を得ることも可能です。もっとも、大手外資系銀行への転職は必須要件が多いため、転職難易度は極めて高くなります。

また外資系投資銀行のインハウスも渉外事務所の弁護士と同様に激務なので、ワークライフバランスという点では大差ないでしょう。

独立を視野に入れるなら幅広い業務を経験できる法律事務所

将来的に独立開業を希望する場合は、インハウスではなく法律事務所で経験を積むのもひとつの考え方です。独立開業しやすいのは企業法務よりも一般民事と言われているため、一般民事を扱う法律事務所へ転職するといったケースが考えられます。

ただし一般民事事務所だと渉外弁護士としての経験を活かすことができず、元渉外弁護士という肩書きもあまり意味がありません。そのためキャリアの再構築という形になります。

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まとめ

渉外弁護士の年収は初年度でも1,200万円、経験年数が5年以上になると3,000万円にも届く場合があります

パートナーになれば5,000万円、1億円も夢ではありません。その分仕事はハードですし、渉外事務所に就職・転職すること自体のハードルも高いですが、国際ビジネス法務に興味がある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

【参考文献】日弁連|外国法事務弁護士とは

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