サマークラークとは、法曹志望の学部生やロースクール生、予備試験・司法試験合格者などを対象に、法律事務所が夏季休暇中の短期間に行う研修制度、または、研修に参加する研修生そのものを指します。
基本的にある程度規模が大きい法律事務所が行っており、その事務所への就職を目指す場合は参加必須。
また事務所に就職する気はなくとも、弁護士の仕事を身近で感じられる・体験できるので、法曹を目指す人なら参加して損はないといえます。
ただ、サマークラークに参加したほうがよいとはわかっていても、何の知識もないまま参加するのは不安が大きいですよね。
この記事では、なぜ法律事務所ではサマークラークの募集をするのか、応募するメリットや注意点、参加する際のポイントなどについて解説します。
目次
法律事務所がサマークラークを募集する理由
法律事務所がサマークラークを行う理由は至ってシンプルで、
- 優秀な人材を確保するため
- 弁護士業務の魅力を知ってもらうため
- 売り手市場でアピールが大事であるため
の3点が主だといえます。
優秀な人材は引く手数多なので、早いうちから関係を築いておかないと、取り逃してしまう可能性は高いといえます。
また学部生やロースクール生が、必ずしも弁護士の道に進むとは限りません。
資格を取っても食べていけないと言われる時代なので、弁護士業務の魅力を伝えることも必要です。
さらに近年の弁護士業界は売り手市場。大手のような知名度が高い法律事務所以外は、ただ待っているだけだと人材の確保は困難です。
サマークラークは、事務所の魅力を伝えるのにうってつけの機会といえるでしょう。
サマークラーク等で実務を見て、面白さを友人に伝える→友人も興味もつ、という流れもありそうなので、実務見せる効果は意外に大きいかも。
— 弁護士 新谷泰真 (@yasumasa218) March 24, 2019
町弁も、積極的に業務を見せて興味を持ってもらわないと、採用戦線で同じスタートラインに立つことすらできないのではないか、そんな危機感を持っています。
サマークラークに応募するメリット
サマークラークに参加する主なメリットは以下の通り。
- 就職活動で有利になる可能性がある
- 弁護士業務を体験できる
- 事務所の雰囲気・実態を知ることができる
- 自分の関心を見極める
それぞれ確認していきましょう。
就職活動で有利になる可能性が高い
サマークラークは事務所目線で見ると、ただ事務所体験の機会を提供しているわけではありません。
本格的な採用活動が始まる前に、優秀である、熱意・意欲が高い、事務所にマッチした人材と接点を持つための機会ともいえます。
なので、サマークラーク中に自身の印象を残すことができれば、その事務所に対する就職活動では不参加者よりも有利に進む可能性が高いといえます。
弁護士業務を体験できる
弁護士が普段どのような業務を行っているのか、学部生やロースクール生であっても知らないという人は少なくないかもしれません。
そのため、サマークラークという短い期間ではあるものの、弁護士業務を体験できるのは貴重な機会といえます。
間近で弁護士の業務を見られる機会は、そうあるものではないので、法曹を目指す人であれば参加しておいて損はないでしょう。
事務所の雰囲気・実態を知ることができる
事務所の雰囲気や実態を見極めるうえでも、サマークラークは大きく役立ちます。
一般企業とは異なり、法律事務所の採用に関する情報は少なめです。
一部の法律事務所を除き、積極的な情報発信は行われておらず、ネットを駆使しても有益な情報を集めるのは困難な状況といえます。
そのため、法律事務所の採用に関する情報を集めたいのであれば、自身の目と耳で確かめることが大切であり、サマークラークはうってつけの機会といえます。
勤務中はもちろんのこと、勤務終了後の懇親会や飲み会なども活用して情報を集めるとよいでしょう。
自分の関心を見極める
サマークラークを通じて、自分の関心が持てる分野をあらかじめ絞っておくと、就活で後悔する可能性を減らせるかもしれません。
弁護士の業務は非常に幅広く、扱う分野によって、事務所の雰囲気や必要な資質も大きく異なります。
興味がない分野をメインで扱う事務所を選んでしまったがゆえに、就職後に後悔するケースは少なくありません。
転職して興味のある分野を扱う事務所へ移ろうにも、基本的に中途採用は即戦力の募集がメイン。
未経験分野への転職は、スムーズにいかないことも多々あります。
なので、サマークラークで自分の関心を見極め、一番狙った事務所に就職しやすい司法修習生時の就活に活かすことが大切です。
サマークラークに応募する際の注意点
サマークラークに応募するにあたり、いくつか気をつけておくべきことがあります。
- 応募を諦めない
- 早めに応募する
- 募集がなくてもチャンスはある
それぞれ確認しておきましょう。
応募を諦めない
予備試験やロースクールでの成績などで気後れして、サマークラークの応募自体をしないのは間違いです。
落ちる可能性が高いとしても、応募している限りは選考を突破する可能性はゼロではありません。
あとから受けようと思って受けられるものでもないので、成績はいったん気にせず積極的に応募していきましょう。
早めに応募する
サマークラークに応募する際は、なるべく早いうちに応募することをおすすめします。
サマークラークの選考を行うにあたり、募集人数が多い場合は必ずしも応募者全員について精査しているとは限りません。
応募が来た順から予定人数まで条件に合う人を選んでいくということも十分にあり得ます。
なので、「締切ギリギリに応募すればいいや」とは考えずに、志望度合いの高い事務所はサマークラークの受付が始まったら、すぐに応募したほうがよいでしょう。
募集がなくてもチャンスはある
気になる事務所がサマークラークの募集をしてなかった場合、何もせずに終わってしまいがちですが、ダメ元で連絡を取ってみてもよいでしょう。
弁護士業界には若い人材の育成に熱心な人が多く、募集してなかったにもかかわらず、サマークラークを受け入れてくれるケースもゼロではありません。
また、サマークラークの募集を確認する際は、ジュリナビやアットリーガルなどの司法修習生向け就職サイトだけでなく、事務所ホームページも確認したほうがよいでしょう。
就職サイトにすべてのサマークラークに関する情報が掲載されているとは限らないからです。
サマークラークに行きたい事務所があるのであれば、こまめにホームページを確認したほうがよいでしょう。
去年、うちの事務所に、京都のロースクール生からツイッターを通してサマークラークに来てみたいとの連絡がきて、全く募集してなかったけど急遽採用して一週間弁護士の仕事を見てもらったんだけど、無事司法試験を受験し終えたとの連絡がきた。アグレッシブで礼儀正しく、彼が合格してからが楽しみ。
— 都 行志/Miyako Koji (@MiyakoLawyer) August 17, 2020
サマークラークとして働く際のポイント
サマークラークは採用活動の一環であるため、お客様気分で働いていては良い印象は残せません。
良い印象を残すには、能力面のアピールも大事ですが、特に大事なのは一緒に働きたいと思わせる人間性です。
そのため、社会人として集団生活を営むための基本的事項をおろそかにしてはいけません。
- 挨拶・返事
- お礼・謝罪
- 報告・連絡・相談
- 締切を守る
- 指示待ちしない など
能力的な面をアピールしようとするあまり、上記のような、社会人ならできて当たり前なことがおろそかにならないように注意しましょう。
サマークラークの内容例
サマークラークで行われる主だった内容は以下の通り。
- 法令,判例,文献などの調査
- 書類作成
- 所属弁護士による講義
- 弁護士指導のもと課題の提出
基本的には、弁護士の指示に従って、法令や判例の調査、書類作成など業務の補助を行います。
事務所によっては、所属弁護士が専門分野に関する講義が行われることも。
また業務の補助ではなく、サマークラーク中に課題を出し、それを提出させる事務所もあるようです。
具体的にどのような研修が行われるかは参加してみないとわかりませんが、弁護士の業務が身近に見られるというだけでも参加する価値はあるでしょう
サマークラーク募集の探し方
サマークラークの探し方で最も一般的なのは、修習生向け就職サイトを利用する方法です。
サマークラークを探すのに役立つ修習生向け就職サイトはいくつかありますが、アットリーガルを利用しておけばよいでしょう。
事務所ホームページから直接サマークラークの情報を確認するのも、一般的な探し方の一つ。
サマークラークに参加したいところがすでに決まっているのであれば、直接事務所ホームページを確認したほうが早いでしょう。
そのほかの探し方としては、先輩や友人、知人などのツテを頼りに紹介してもらう方法があります。
知り合いを通じての紹介となるため、選考が有利に進む可能性は高いでしょう。
サマークラークに関するよくある質問
この項目では、サマークラークに関してよくある質問をまとめているので、確認していきましょう。
期間・勤務時間はどれくらい?
サマークラークの期間は、事務所によってマチマチ。
1週間としている事務所がわりかし多く、短いと2~3日、長い場合は2週間程度が予定されています。
2020年のサマークラークに関しては、新型コロナウイルスの影響により、中止にする事務所もあれば、2~3日程度の短期間だけ行っている事務所が多いようです。
勤務時間に関しても事務所ごとに異なりますが、フルタイム勤務で設定しているところは稀といえます。
多いのは10時~18時(うち休憩1時間)の実労働時間が7時間のパターン。他には9時~17時、11時~19時というパターンもあります。
給与はどれくらい?
サマークラークの給与に関しては、ほとんどの事務所が日当1万円(税込)の支給となっています。
また、サマークラークに参加するにあたって発生する交通費や宿泊費は、日当に含まれておらず、別途支給がなされます。
服装は何でも良い?
サマークラークでの服装は、特別な指示でもない限り、スーツでの勤務となるでしょう。
ただ特に指示をしてなかっただけで、勤務時の服装はなんでもよいと考えている事務所もあるので、気になる人は確認してみてもよいかもしれません。
ウィンタークラークやスプリングクラークとの違い
法律事務所が行う学生向けの研修は、サマークラークだけでなく、ウインタークラークやスプリングクラークなどもあります。
名称からわかるとおり、もっとも大きな違いは開催する時季ですが、参加対象に関しても微妙に異なります。
【各研修の主な対象者】
- サマークラーク…主にロースクール最終学年在籍者、司法試験受験生
- ウインタークラーク…主に司法試験予備試験合格者
- スプリングクラーク…主にロースクール最終学年進級予定者
研修内容に関しては、基本的に大きな違いはありません。
なので、事務所によっては、いずれかの研修のうち一つしか参加できない場合もあるので注意が必要です。
まとめ
採用活動の一環として行われるサマークラークには、特別な事情でもない限り、ロースクール生や司法試験受験生は参加しておいて損はありません。
むしろ、司法試験後の就職活動を考えると、サマークラークへの不参加は自身の選択肢を狭めることになりかねないといえます。
サマークラークの募集をする時期は事務所ごとに大きく異なり、早いところでは3月頃に開始されます。
サマークラークに行きたい法律事務所がある場合は、事務所ホームページはもちろん、ジュリナビやアットリーガルなどの就職サイトもこまめに確認しておきましょう。
そして、受付が始まった際には締切ギリギリではなく、すぐに応募をすることをおすすめします。