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ITサービス・企業に関わる法務とは?IT法務の仕事内容を分野毎に徹底解説|転職市場におけるスキルまで

更新日: 公開日:

ITは、情報通信技術(Information Technology)のことをいいます。現代において、ITは、日常生活において欠かせないものであり、様々なサービスの基礎といっても過言ではないでしょう。

そのため、ITにおける法務の業務も、IT業界のみならずあらゆる業界の中で多様な形で存在します。

この記事では、IT法務に関し、ITに関する法務について、企業法務と通常の民事事件における場合別の解説をしていきます。

また、IT業界や企業における法務人材のニーズ、転職に関することまで幅広く解説します。

  1. IT業界・企業における法務は、契約法務を基礎として、知財管理、データ保護、サイバーセキュリティ、規制対応、レピュテーションマネジメントなどの業務が重視される
  2. IT業界・企業における法務人材は、業界出身者や理系のバックグラウンドがある人材はもちろん、未経験者であっても経験を活かして活躍できる幅は広い

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IT業界における法務の役割と業務内容

そもそもIT業界に分類されるものについて、ここで整理しておきます。

ITという言葉自体も非常に広い意味を持ちうるものであることから、定義の仕方も様々考えられますが、概ね5つの業界に分類されます。

  1. 情報処理サービス
  2. 通信インフラ
  3. ソフトウェア(SaaSなど)
  4. ハードウェア
  5. インターネットWeb

なお、近時は、NFT、メタバース、IoT・IoE、AIといった先端的な技術の進展がありますが、これらも広い意味ではIT業界に含まれます。

ITは、これまで有形的な物体の外側にあるような無形的なものであったところ、IoTやAIによりそれが物体に埋め込まれたり、より分散化されたものに変容しつつあります。それに応じて、法務の領域も拡大しているといった状況といえるでしょう。

上記のようなIT業界の内容を踏まえて、ITにおける法務業務のカテゴリーについて整理していきます。

契約法務

まず基本となるのが、契約法務です。

契約書のドラフトやレビュー、契約交渉が基本になります。加えて、ITに関するシステムの開発においてはいくつかのステップがあるほか、プロダクトが完成した後も業務があります。

すなわち、開発契約では、契約締結における一般的な法務のほか、プロジェクトの管理、検収段階におけるチェックの確認、成果物の運用保守に至るまでの監督も行う必要があります。日常的に、反復継続的な内容であることがわかります。

そのため、一般論としては、プロダクトの開発過程における適正な業務の成果を確保することのほか、開発したプロダクトの利用に関する法律関係を整えること、プロダクトを利用する第三者との間での紛争予防といった観点が重要です。

IT法務に関連する主な契約は、基本的なものとして業務委託契約があるほか、システム開発契約、ソフトウェアライセンス契約、システムの運用における保守契約、秘密保持(NDA)といったものが挙げられます。

他にも、SESのように、エンジニアの人材の流動性を確保し、業務委託契約をより柔軟に活用する手法もあります。

最近は、ソフトウェアなどの開発で他社との共同開発がある場合もあるので、共同開発契約に関する法務も重要です。

知財に関すること

ITにおけるプロダクト開発においては、特にソフトウェアやハードウェアの開発を中心に、自社の特許出願のほか、他社の特許権侵害の有無の調査などもあります。

主要なものとしては、プロダクト著作権に関する法務です。ここは、契約法務とも大きくかかわる点です。具体的には、契約書における知的財産権の保護に関する条項の設計があります。詳しくは、後ほど詳述します。

情報通信に関する業規制対応

業界ごとに異なりますが、様々な業規制対応があります。法令ごとに管轄している官庁・省庁が異なるため、正確に把握しておく必要があります。

法令改正や関係通達への対応において、事業者側として不利な形にならないようにするには、業規制に対して積極的に対応し、ルールメイキングしていくことが重要です。

例えば、通信インフラ業界では、電気通信事業法があります。総務省の管轄ですが、近年のアップデートも頻度が高いことから、法務としての対応の重要性は高いといえます。

直近では、インターネット・Web業界で、TwitterなどのSNSに関して、ネット上の誹謗中傷への対応に関する法務として、プロバイダ責任制限法(いわゆるプロ責法)の改正への対応が重要です。改正法が令和4年10月1日に施行されますが、内容が従前の発信者情報開示実務に関するものとして、手続面と内容面いずれも大きく変わります。

SNS事業などの事業者としては、コンテンツプロバイダーの立場として、大きくかかわります。

サイバーセキュリティ、個人情報保護

ソフトウェア業界を中心に、サイバーセキュリティや個人情報保護に関する法務が重要です。

近時は、AI技術の活用によるビッグデータの利用、データ解析による利用を通じた事業が様々な形で広がっています。

そのため、サイバーセキュリティや個人情報保護に関して、個人情報の第三者提供や共同利用に関するスキーム構築、データ利用する際の仮名加工・匿名加工に関する事業モデルの最適化など、事業の根幹に関わるような法務があります。

なお、個人情報保護法に関するものは、toBやtoCの区分を問わず、IT業界問わずあらゆる事業において個人情報の取扱いは伴うため、プライバシーポリシーの策定などの法務は基本的なものといえます。

ネット風評被害対策、レピュテーションマネジメント

ネット上の風評被害対策、メディア対応、レピュテーションリスクマネジメントなども法務として重要です。

危機管理対応における分野の1つである危機管理広報の側面から、トラブル事案が起きた際に、ネット上のリアクションや影響度合い、レピュテーションの内容を観測しつつ、対応を取ることもITに関する法務です。

IT企業における法務

IT企業における法務について、ポイントを絞りつつ、より詳細にみていきましょう。ここでは、5つのポイントをもとに解説していきます。

開発契約に関すること

ソフトウェア業界やハードウェア業界を中心に基盤となるのが、開発契約です。新規事業における適法性をクリアしても、契約書の設計でミスが生じると致命傷となりかねません。

納期や製品の瑕疵に関する条項、知財保護に関する条項、プロダクトを利用する上での個人情報の利用に関する条項、NDAなどは重要性が高いものとして挙げられます。

特に、仕様書の作成は、要件定義の内容をもれなく記載すること、製品が完成した状態の定義づけに関して契約交渉の段階で綿密にすり合わせを行うことが重要です。

プロダクト著作権等に関するライセンス関係の保護

知財保護に関するものとして、プロダクト著作権等に関するライセンス関係の条項の設計は、重要です。

プロダクトを開発した場合の著作権の帰属は、様々なアレンジが考えられます。

ソフトウェア業界の企業を例にとると、プロダクト著作権は、基本的にベンダー企業側に帰属します。他方で、ユーザー側は、自社においてプロダクトを利用するにあたり、秘密情報を組み込んで付加価値を付けたり、あるいは自社のノウハウを活用して派生的なプロダクトを開発することができる余地があります。

そこで、ソフトウェアライセンス契約として、プロダクト著作権をベンダー企業に帰属させつつ、ユーザー企業による派生プロダクトの開発を許諾する代わりに、その収益のうち一定割合をライセンス料としてベンダーに支払うというような条項の設計が考えられます。

あるいは、より良好で継続的な関係地を築けるのであれば、ベンター企業とユーザー企業が共同開発契約をしてさらにレベニューシェアを内容とする契約を締結することや、合弁会社として共同開発することも考えられるでしょう。

こうした業務は、ビジネスの設計としても位置付けられる点で魅力的な法務業務です。

リモートワーク活用に関する労務

リモートワークの活用が広がっている現代において、労務管理の上での取り扱いの設計が法務の一環としてあります。

指揮監督のあり方や出退勤、フレックス勤務制の活用が考えられますが、その際には就業規則のドラフト作業なども重要な業務の1つとして挙げられます。

フリーランスエンジニアの下請関係の取扱い

プロダクトの開発に際して、フリーランスのエンジニアを業務委託契約などで委託する場合には、下請法や独禁法への対応について留意する必要があります。

適用対象となる「親事業者」にあたるかどうかといった点を踏まえて、契約の場面を中心に、代金支払期日の設定や代金内容の設定など、下請法への対応を行うことが求められます。

いわゆる3条書面の作成交付のほか、公正取引委員会からの報告を求められた場合の対応なども行う必要があります。

また、フリーランス保護に関する新法が制定されます。現段階では新法制定に向けた方針を固めパブリックコメントなどを集めている段階ですが、動向を追いつつ対応していくことが必要です。

政府は、組織に雇われずに個人として働くフリーランスの労働環境を整備するため、新たな法律を制定する方針を固めた。仕事の依頼主の企業に対し、業務内容や報酬額を明示するよう義務づけ、立場の弱い個人を保護する狙いがある。秋の臨時国会に法案を提出し、会期内成立を目指す。

 政府の試算では、フリーランスとして働く人は462万人(2020年)で就業者全体の約7%にあたる。40歳代以上が7割を占め、情報技術(IT)やデザイン関連、配送、建設など業種も多岐にわたる。

 新法では依頼主の企業などに対し、仕事を募集する際に報酬額や仕事の内容、納期などを明示し、契約の書面や電子データの交付を義務づける。口約束で仕事を発注し、後から一方的な仕事内容の変更をされないようにする。

引用元:「フリーランス」保護新法制定へ…企業に報酬額・業務内容の明示義務、一方的な変更を防止|読売新聞オンライン 2022年9月13日

データ保護に関する規制対応

データ保護に関しては、秘密保持や個人情報保護の観点から、トラブルを防止するための設計が重要です。

ビッグデータの利活用によるビジネスが活況を帯びているところですが、個人情報保護法制については、制度の設計が流動的でアップデートも激しい領域の1つです。

企業によっては、データ保護法制に対応するため法務のポジションに任せたい分野の1つとして、政策渉外の業務も検討するところもあると考えられます。

ITに関する個人事件の法務

ITに関する個人事件の法務もあります。主なものが、ネット上の取引に関する消費者被害とネット上の誹謗中傷です。

ネット消費者被害

様々なtoCビジネスにおいて、サプライチェーンのDX化が進みECサイトの市場が拡大しています。そうしたネット上での取引における法務が重要性を増しています。

特定商取引法上、ECなどは通信販売にあたり同法の適用対象になりますが、近時問題視されている論点としては、サブスク型契約における解約に関するものです。

消費者としては、より解約のしやすさを担保する仕組みが構築されたため、クーリングオフのみならず中途解約に関してもトラブルへの対応に関する法務のニーズがあります。

また、ECサイト事業者としては、こうしたITを活用したマーケットプレイス事業を行う上で、こうした消費者保護に係る法令に対しての対応も、上記の業規制の一環として重要な法務です。

インターネット上の誹謗中傷対応

上記のインターネット・Web業界や通信インフラ業界のユーザーが、相手方に対し、誹謗中傷にかかる損害賠償請求をするために行う発信者情報開示請求があります。

発信者情報開示請求は、高度な知見を要する法的手続であることから、弁護士などの専門家が行う法務分野です。

 IT業界・企業において求めれる弁護士・法務人材の特徴

ここまで解説してきたように、IT業界や企業においては多種多様な法務があることから、法務人材に対するニーズも高いです。4つの例をご紹介します。

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IT系企業出身の人材

やはりIT系企業出身の法務人材には高いニーズがあると考えられます。

IT業界における法務業務の特徴を理解し、実際に実務経験があることは強みです。上記のように、リモートワークを活用している場合もある(フルリモート勤務の場合もあります)ため、社内での仕事の仕方もそうした環境に慣れていると、企業と役職員お互いにとって良好な形での経営・働き方を実現することができます。

情報科学系の理系のバックグラウンドがある人材

IT業界での経験がない場合でも、理系のバックグラウンドがある場合は、やはり市場価値が高いと考えられます。

特に、情報科学系で、プログラミングやデータ解析かかる知見や経験がある場合は、IT企業における法務の現場でも、事業部やシステム管理・開発に関わる部署との間のコミュニケーションが円滑になりやすいからです。

それは、プログラミングなどの情報科学の世界の言語が、通常の言語とは異なるものであり、専門的でシステマティックな側面が多いからであると考えられます。

また、事業の現場での課題も当事者視点で把握することができ、正確に問題を把握して改善策を立て、実行できるという点も理由として考えられます。

知財管理の経験者

IT業界の経験がなく、理系出身でもない文系出身者でも、知財管理などを担当した法務経験があれば、法務人材としてのニーズは高いと考えられます。

すでに述べたように、IT業界では、事業活動の上でプロダクトの管理が経営資源を守る上で極めて重要だからです。

法務全般に関わるような経験がなくても、むしろ知財管理を専門としていた経験があれば、IT企業における法務人材として期待される仕事ができると考えられます。

未経験者でもニーズはある

上記のいずれの経験がなくても、法務人材としてのニーズは十分にあると考えられます。

例えば、AIによるビッグデータ解析をプロダクトとする企業であれば、個人情報保護やデータプライバシー、サイバーセキュリティに関する経験がある法務人材は、そうした企業におけるニーズは高いと考えられます。

いずれにしても、法務人材として関わった業務の中で活かせる経験を持つことが重要です。

弁護士がIT企業の法務に転職するなら知っておくべき事

弁護士がIT企業の法務に転職する際、どのような点に留意しておく必要があるでしょうか。5つのポイントを解説していきます。

企業法務の経験は3年程度求められる傾向

元々のバックグラウンドによる個人差はありますが、IT業界・企業での法務人材に求められる条件としては、企業法務あるいは企業法務系法律事務所において概ね3年程度の経験が求められる傾向にあります。

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扱う法令も多岐に渡り、業規制対応なども専門的であることから、一定の法務経験が求められるからであると考えられます。

また、業界的にもスピーディーな業務対応が求められるため、その温度感についていくことができる必要があることも理由として考えられます。

保守的な意見よりも攻めの姿勢が好まれる

IT企業での法務人材には、新規事業におけるスキーム構築の上での意見や提案が求められる場合があります。採用の背景にこうした課題を抱える企業では、リスク回避志向ではなく、リスクマネジメント、リスク許容度とリスクヘッジの方法を立案して、事業の推進力になるような法務を求めていると考えられます。

そのため、保守的な意見よりも、攻めを重視した法務業務、姿勢が求められる傾向にあります。

1人目の法務担当になる事は多い

特にベンチャー企業の場合、1人目の法務担当者としての採用になる傾向があります。

そうした採用の背景には、様々なものがあります。

一般論としては、法務分野の課題が山積していることや、経理や総務などの他の管理業務と兼任しているような担当者だけでは手が回らない状況であること、あるいは法務ポジションを確立してガバナンス強化を図るステージにあることなどです。

また、IT企業では、扱うプロダクトやサービスが確立し、経営資源の管理を強化したり、リモートワークやネット空間を活用した労務問題など特有の課題を抱えていると考えられます。そのため、こうした課題に幅広く対応できる専任の担当者が欲しいというニーズは考えられます。

年収は大企業とベンチャーで差が大きい

年収は、ポジションにもよりますが、概ね400万円から800万円程度のレンジがあります。大手企業や外資系企業では、800万円を超え、1000万円も超えるような条件があります。

その代わり、経験値やスキルの内容は、マネジメントレベルのものや、規模間の大きなプロジェクトに関わるような法務経験、あるいは3年を超える経験年数など、相応のものが求められます。

ベンチャー企業では、経験値にはそれほど固執せず、カルチャーフィットを重視する傾向がありますが、業績が拡大の過渡期にあるようなケースでは、年収が300万円やそれを下回るようなポジションの場合もあります。

このように、年収に関しては、企業規模によって差があります。

転職活動は転職エージェントの活用がおすすめ

IT企業への法務の転職には、転職エージェントの活用がおすすめです。

募集自体は、一般の転職サイトで応募してアプローチをかけていくことも可能ですが、転職に当たってのベストマッチを図るためのサポートや、最適なポジションを見つけていくには、エージェントの活用がベターであると考えられます。

特に、弁護士であれば、弁護士業界に精通したエージェントに依頼することが最適です。

NOLIMITでは、インハウスという形態の特殊性や、IT業界における法務人材の募集もあるほか、実際にIT企業の法務ポジションへの転職の成功事例を多数有しているので、ぜひ一度ご相談ください。

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まとめ

本記事について、3つのポイントをまとめました。

  1. IT業界・企業における法務は、契約法務を基礎として、知財管理、データ保護、サイバーセキュリティ、規制対応、レピュテーションマネジメントなどの業務が重視される
  2. IT業界・企業における法務人材は、業界出身者や理系のバックグラウンドがある人材はもちろん、未経験者であっても経験を活かして活躍できる幅は広い
  3. IT業界・企業への法務等のポジションへの転職には、転職エージェントの活用が効果的であり、特に弁護士は業界に精通したNO-LIMITがおすすめ
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