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近年の弁護士キャリア形成と法曹業界でステップアップするためのキャリアプランとは

更新日: 公開日:

弁護士としてどのようなキャリアを築くのか

司法修習生からベテランまで、いくつになっても頭を悩まされる問題ですよね。

弁護士数の過多が叫ばれる時代において、明確なキャリアプランもなしに生き残るのは難しいと考えている人は少なくないでしょう。

とはいえ、どんなキャリアプランを築けば、今後も弁護士として仕事に困らないのか、なんてわかれば苦労はしませんよね。

誰かを参考にしようにも、ここ数十年での弁護士業界の変化は凄まじく、今の状況に当てはまらないことも少なくありません。

過渡期にある弁護士業界で生き残り続けていくためには、どんなスキルや経験を身につけることが大事なのでしょうか。

この記事では、現在の主要な弁護士のキャリアパスやキャリアプラン作成のポイント、注意点などについて解説します。

またキャリアチェンジ転職を実現するコツや、キャリアプラン作成でエージェントを使うメリットも解説するので、参考にしてみてください。

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弁護士のキャリアパスは昔ほど画一的ではなくなっている

ひと昔前であれば、弁護士のキャリアパスはどこかの法律事務所に入所し、経験を積んでパートナーに昇格する、もしくは独立して自分の事務所を持つのが王道でした。

しかし、司法制度改革に伴う弁護士数の増加や弁護士に対する社会的ニーズの変化、グローバル化、IT技術の発展などさまざまな要因の影響を受け、王道を進めば安泰という認識はなくなりつつあります。

こうした影響の変化はすでに現れており、そのうちの一つがインハウスロイヤーの増加です。

インハウスロイヤーの数は右肩上がりに増え続けており、統計上2001年には66人しかいませんでしたが、現在(2020年時点)では2500人を超え、弁護士全体の6%に及びます。

【インハウスロイヤーの推移】

2001年 66人
2005年 123人
2010年 428人
2015年 1442人
2020年 2629人

参考:企業内弁護士数の推移|日本組織内弁護士協会

また業務領域の専門化も同様です。多数の弁護士・法律事務所の中で埋もれず生き残っていくには、他との差別化を図らなくてはなりません。

しかし、専門化を図るということは、他の選択肢を手放すことでもあります。

人生を左右しかねい大きな決断であるため、キャリアプランの作成においては非常に頭を悩ませる要因といえるでしょう。

参考:法律業務の多様化と弁護士の社会的使命の拡張|明治大学 法と社会科学研究所

弁護士の主な就職・転職先

キャリアパスが増えるということは、就職・転職先の数もそれだけ増えたということです。

弁護士の就職・転職先には、現在どのような職場があるのか、確認していきましょう。

法律事務所

弁護士のほとんどが所属する就職・転職先ですが、近年では多様化・専門化が進み、事務所ごとに異なるカラーが見られるようになってきています。

今後は入所する事務所次第で、弁護士人生が大きく左右されるといっても過言ではありません。

特色ごとの法律事務所の分類は以下の通り。

一般民事・刑事法律事務所

業界では街弁とも呼ばれ、法律事務所のなかで最も数が多く、一般的で身近な事務所と言えます。

数も多い分、事務所の特色もさまざまで、長年の運営実績を持つ老舗から近年勢いのある新興系、数人で業務を行う個人事務所まで幅広いです。

業務範囲も一般民事・刑事すべてを扱う事務所もあれば、特定の分野のみの法律サービスを提供する事務所までさまざまあります。

企業法務系法律事務所

企業法務全般を扱う法律事務所です。一般民事・刑事法律事務所と同様に大小さまざまな法律事務所があります。

ただ企業法務系法律事務所の場合は、規模の如何に関わらず、高い専門性を有している事務所が多いといえます。

ブティック型法律事務所

特定の分野に関してのみ法律業務の提供を行う法律事務所のことをいい、専門性の高さがウリです。

企業法務のうち、金融法務や知財関連、倒産など、特定分野の法律業務を専門とする法律事務所に対して用いられることが多いといえます。

渉外事務所

企業法務のなかでも渉外性のある(国際的な)案件に特化した法律事務所のことをいいます。

代表的な例を挙げると、四大法律事務所が該当します。

ただ近年では、渉外事務所であっても国内案件の企業法務全般を業務として扱うのが一般的です。

外資系法律事務所

明確な定義はないですが、外国法律事務所の傘下にある事務所を指して使われることが一般的です。

待遇は四大法律事務所に匹敵するところも多く、業務内容的にも近しい部分は多いといえす。他方で四大のクライアントが日本企業が主であるのに対し、外資系法律事務所では外資のクライアントが多く、外国語の使用頻度はかなりのものです

また日本国内においては四大法律事務所のほうが圧倒的にシェアが大きいですが、世界基準だと外資系法律事務所のほうが大きく勝っています。

企業

弁護士の採用を行っている企業は、国内大手から外資、果てはベンチャー・スタートアップまでと幅広いです。業界もさまざまで、ITはもちろんのこと、金融、鉄道、総合商社、非鉄金属など、活躍の場は多岐にわたります。

弁護士の代表的なキャリアパス例

この項目では、現在の弁護士の代表的なキャリアパスの例について、いくつかピックアップして解説します。

アソシエイト→パートナー

弁護士のキャリアパスにおける王道の一つ。独立志望のない弁護士の多くが歩むキャリアパスであるといえます。

大手事務所も個人事務所も、ある程度弁護士としての経験を積んだのちパートナーに昇格という流れは同じです。

しかし、パートナー昇格までの期間は大きく違います。

大手法律事務所の場合

例えば四大法律事務所やそこに準ずる事務所の場合、途中で留学や出向に行かせることが大半なので、パートナー昇格には少なくとも10年ほどかかります。

しかも、アソシエイトからいきなりパートナーに昇格ではなく、いくつかの職位(シニアアソシエイトやジュニアパートナー等)を経てようやくです。

近年では、弁護士数の増加等の影響を受けて、同じ事務所で働き続けても、いずれは誰もがパートナーになれるという状況ではなくなりつつあります

中小法律事務所の場合

事務所によるところも大きいので一概には言えませんが、中小法律事務所の場合はだいたい5年前後でパートナー昇格を打診されることが多いようです。

ただ中小法律事務所におけるパートナー打診は、単に昇格という意味合いだけではありません。

いつまでも事務所(ボス弁)の力に頼らず、自身で仕事を取ってきて売上を立てて貢献してという意味も含まれています。

そのため、パートナーになれば、当然、経費負担の割合等も変わりますし、自分で売上を作っても一部は上納の必要があることも少なくありません。

そうした点もあって、弁護士業界では一定の経験を積んだ後は独立するのが一般的です。

事務所勤務→独立

弁護士業界では元々雇用する・されるの感覚が希薄であることから、一定の経験を積んだのち独立するというキャリア形成の仕方がわりかし一般的です。

そうした傾向は近年でも変わっておらず、法律事務所の数が毎年増え続けていることからも伺えます。

【直近5年の法律事務所数推移】

2015年

15,331

2016年

15,829

2017年

16,284

2018年

16,720

2019年

17,252

参考:基礎的な統計情報|日本弁護士連合会

他方で、都市部においてはすでに事務所数は飽和状態であり、広告規制の緩和による集客方法の変化などの影響で、独立後の経営難度はひと昔前と比べて上がっているといえるでしょう。

事務所勤務→起業

近年では何年かの事務所勤務を経て、起業する弁護士も少なくありません。有名な例をいくつか挙げると、弁護士ドットコムや伊藤塾、株式会社Holmes、株式会社LegalForceなど。

社会が抱える課題に対し、弁護士の立場かからだけでなく、ビジネス面からも変えていこうという意欲を持っている方が多い印象です。

弁護士間の競争は今後も激しくなることが予想されるため、一念発起して起業も選択肢としてはアリでしょう。

法律事務所→インハウス

企業法務系法律事務所で勤務しているうちに、外から手助けするのではなく、より現場に近いところでビジネスに携わりたいと考える人は少なくありません。

また企業側も近年はコンプライアンスやリスクマネジメントに対する意識が高まっており、法務部門の強化に乗り気です。

なので、現在のところは比較的に狙いやすいキャリアパスであるといえます。基本的には企業法務経験のある方が採用上は有利ですが、民事や刑事の経験しかない弁護士であっても採用の可能性はゼロではありません。

なお、より現場の近くでビジネスができるとインハウスに転向したものの、想像していた業務環境ではなかったために、法律事務所勤務に戻る方もいるので注意が必要です。

インハウス→法律事務所

インハウスから法律事務所のキャリアパスは、反対のパターンと比べると多少門戸は狭いかもしれません。

特に厳しくなりやすいのが、司法修習後すぐにインハウスで企業に入社した人で、一般民事・刑事事務所への転職を希望するパターン。

基本的に中途採用で募集するのは即戦力です。

特に一般民事・刑事事務所だと規模がそこまで大きくないので、そうした傾向が強く、インハウスでの経験も活かしづらいので、入所難度が上がります。

インハウスから法律事務所への転職を目指す場合は、一般で言う未経験転職の気持ちで臨んだほうがよいでしょう。

法律事務所→政界進出

多少例外的なキャリアパスではありますが、法律事務所勤務を経たのちの政界進出も選択肢としては考えられます。

実際、弁護士資格保有者の政界進出は少なくありません。

日弁連が公表する統計によれば、2019年10月時点での国会議員数は35名、地方公共団体の首長は5名です。

参考:弁護士登録をしている国会議員等 |日本弁護士連合会

ここには地方議会の議員数は含まれていないので、実際の政界進出者はもう少し多いとみられます。

もちろん、選挙に勝たなくてはならないので簡単になれるものではないですが、政治に興味がある人は検討してみても良いかもしれません。

弁護士がキャリアプランを作成する際のポイント

自身が納得いくキャリアを形成するためには、キャリアプランの作成は必要不可欠です。

しかし、キャリアプランをどのように作成すればわからないという方も、なかにはいるでしょう。

この項目では、弁護士がキャリアプランを作成する際のポイントを解説します。

経歴の棚卸しを行う

キャリアプランを作成する上では、司法試験の勉強と同様に自身の現時点での立ち位置を把握することが大切です。

そのため、まずは自身の経歴を棚卸ししましょう。

棚卸しをしていけば、自身が得意とする領域や力を入れて取り組める分野等も見えてくるので、目標を決める上でも役立つはずです.

目標までの道筋は具体的にする

当然といえば当然ですが、キャリアプランにおける目標到達までの道筋はなるべく具体的な内容にするのが望ましいです。

あまりにも荒唐無稽な内容であれば作る意味がないですし、抽象的過ぎるとキャリアプランに沿って行動できたのかがわからなくなります。

例えば、10年先のキャリアプランを考えるのであれば、少なくとも1年ごとに達成すべき目標があったほうがよいでしょう。

他人と比較しない

あくまでキャリアプランは自分の状況や希望に応じて作成するものなので、他人と比較して考えるのはあまりおすすめしません。

特に著名な人のキャリアは、その人の努力だけでなく環境やタイミング、運などさまざまな要素が合わさった結果、成立したものなので、再現性には期待できないといえます。

参考にする程度なら問題ありませんが、取り入れすぎて現実離れしたプランにならないよう注意しましょう。

一度作って終わりしない

キャリアプランは一度作って終わりではなく、都度アップデートすることが大切です。

アップデートの目安としては1年に一度。1年経てば、業務でできることも増えているでしょうし、達成できた目標もあるでしょう。

また気持ちに変化が起きてもおかしくないので、1年経過したくらいで確認も含め見直すことをおすすめします。

弁護士のキャリア形成における注意点

何事も若いうちに始めたほうが有利なのは、キャリア形成においても同様です。

若いほうが仕事も教えてもらいやすく、仕事のミスに対しても寛容で、挽回もしやすいことが多いといえます。なので、もしチャレンジしたいことがあるのなら今すぐにでも行動に移したほうがよいでしょう

またジェネラリストやスペシャリストといった言葉に囚われすぎるのも危険です。本来、この2つは活躍の場が違うため、良し悪しで考えるものではありません。

双方とも活躍の場はあるので、自分にあったキャリア形成をしていきましょう。

キャリアチェンジの転職を実現するには

事務所からインハウスや、その逆のインハウスから事務所などのキャリアチャンジ転職を成功させる上で、大事なのは以下の3点。

  • 年収が下がるのは覚悟する
  • 転職理由を説明できるようにする
  • 情報収集はしっかりと行う

それぞれ確認していきましょう。

年収が下がるのは覚悟する

キャリアチェンジの転職を行う際には、基本的に年収が下がる認識を持っていたほうがよいでしょう。

特に事務所からインハウスに転職する場合、基本的に個人事業主扱いで、働けば働くほど稼ぐことができた法律事務所勤務と、就業規則に従い企業勤めするのでは大きい雇用環境が異なるので注意が必要です。

転職理由を説明できるようにする

キャリアチェンジの転職となると、これまでとは業務環境が一変してもおかしくはありません。

それほど変化が伴う転職をなぜするのか、採用側としては気になります。違う言い方をすれば、転職の意図が読めない人を採用することは、リスクが高いと判断しているわけです。

なので、転職理由を掘り下げることで、求職者が何を思ってキャリアチェンジの転職先として、うちを選んだのか見定めようとします。

そのため、とってつけたような転職理由を伝えてしまうと、落とされる可能性が高まります。

情報収集はしっかりと行う

外から見た雰囲気と、実際に働いて感じた認識とでは大きく異なることが少なくありません。

転職したあとで後悔することがないように、事前の情報収集はしっかりと行っておきましょう。

情報収集の際には、公式サイトや求人票を確認するだけでなく、SNSや口コミサイトを活用するとともに転職エージェントの利用がおすすめです(転職エージェントを利用するメリットは後述します)。

キャリアプラン通りの転職実現に弁護士向け転職エージェントが役立つ理由

キャリアプランに沿った転職を成功させる上では、転職エージェントのサポートが役立ちます。

【転職エージェント利用のメリット】

  • キャリアプランの作成を手伝ってもらえる
  • 弁護士業界や事務所・起業に関する情報を多く持っている
  • 応募先にプッシュしてもらえる

具体的に転職エージェントの利用でどのようなメリットが得られるのか確認していきましょう

キャリアプランの作成を手伝ってもらえる

キャリアプランの作成にあたって、他の人からアドバイスが欲しいと思う人は少なくないでしょう。

転職エージェントでは、具体的な求人を紹介する前に、まず求職者にヒアリングを行います。

求職者の転職の動機や目的、キャリアプランがわからないことには適切なサポートができないからです。

なので、ヒアリングの際に考えたキャリアプランを伝えれば、転職エージェントが持つ知見や情報をもとにアドバイスが得られるでしょう。

弁護士業界や事務所・企業に関する情報を多く持っている

転職エージェントは業務として求職者のサポートしているので、当然、一個人よりも転職に関する情報は多く持っています。

例えば、単に法律事務所や企業から求人票をもらって掲載しているのではなく、人事担当とのヒアリングや訪問を通じて、内部事情を把握

より具体的な情報を求職者に提供することができます。

また採用・転職活動のサポートで構築した独自ネットワークを持っているため、業界事情に関しても精通しています。

応募先にプッシュしてもらえる

弁護士の主な転職先である法律事務所も企業の法務部門も、基本的に大量の中途採用は行いません。

1~2名の採用枠で、条件に合致する人材を選ぼうとするため、選考基準が厳しくなりがちです。

事務所や企業が採用を迷った際、自分で直接応募している場合は何もできませんが、転職エージェントを利用していると、あとからのフォローが可能です。

担当キャリアアドバイザーによるプッシュが上手く嵌まれば、ちょっと自分の経歴では届かないかもというような職場にも、転職できるかもしれません。

まとめ

多様化する弁護士のキャリアについて、どのような選択をするか悩む人は少なくないでしょう。

一つ言えることは、これが正解というキャリアパスは存在せず、自身が納得できる道を選ぶしかありません。

幸い弁護士のキャリアは修正が利きやすい類ではあるので、やりたいことがあるなら、積極的にチャレンジすることをおすすめします。

もしキャリアプランについてアドバイスをもらいたいという方がいれば、NO-LIMITでは随時相談を受け付けておりますので、転職支援サービスのご利用または無料個別転職セミナー・相談会にお気軽にご参加ください。

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