企業法務弁護士とは、弁護士は民事や刑事を扱うイメージがあるかと思いますが、企業法務弁護士は企業に関する法的知識を持ち、弁護士業務だけではなく予防法務や契約書の作成などを行います。

多くの場合は企業と法律事務所で顧問契約を結び、顧問料を受け取って弁護相談を受けるという形となります。企業にとっての「外部アドバイザー」として、一定の距離を置きながら正確な知識提供を求められるのです。

そのため、企業法務弁護士になるためには、企業法務を取り扱う法律事務所へ就職する必要があります。

企業内弁護士の多くは、4大ファームなどの大手法律事務所で働いているため、就職や転職を狙うのであれば、きちんと企業法務弁護士について理解して就職・転職活動に備える必要があるでしょう。

企業法務弁護士の仕事内容や就職する方法、給与水準、よく比較される企業内弁護士との違いなどを紹介します。

 

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企業法務弁護士の仕事内容

それでは、具体的な法務弁護士の仕事内容を紹介します。

経営法務

経営法務とは、企業運営に関する法務全般のことです。起業から上場、ルーティンの会社運営まで、企業運営ではシチュエーション毎にさまざまな法律を守らなくてはいけません。

たとえば、取引先との契約書類では法的な落ち度はないかをチェックすることにより後々のトラブルが防げます。

取引先から訴訟が起こされ過大な損失を被ることにならないように、予防法務として普段から法律を遵守する必要があります。

企業法務弁護士は、顧問料内で行える簡単な法律相談から税理士や公認会計士などとの連携、場合によっては訴訟対応まで、企業に合わせたさまざまなサポートを行います。

債権回収

督促状や内容証明を何度も送付しているのにも関わらず、債権回収ができずに埒が明かない場合も企業法務弁護士の出番です。たとえば売掛金が回収できないと、起業経営に大きなダメージとなります。大きな金額が焦げ付くことになれば、倒産のリスクもあるでしょう。

そんな時に企業法務弁護士は、訴訟や強制執行など法的に債権回収する手続きをしたり、代理人として法廷に立ったりします。

M&A

M&A(企業の合併及び買収)は、事業を拡大しより多くの利益を得るために、大企業〜中小企業まで近年需要が増えているようです。下記の図は「M&A情報データサイトMARR Online(マールオンライン)」が公表している、『1985年以降のマーケット別M&A件数の推移』になります。

M&A案件の推移

1985年以降のマーケット別M&A件数の推移

1985年以降のマーケット別M&A金額の推移

1985年以降のマーケット別M&A金額の推移

M&Aでは、デューデリジェンスと呼ばれる買収先の価値やリスクなどを調査することから始めます。買収先の財務諸表の把握や契約内容の精査など、大規模なM&Aが行われる場合、4大ファームでは40名ほどの弁護士で対応することもあるようです。

倒産手続き

企業が倒産するときは、民事再生・会社更生手続といった再建型倒産手続と、清算型倒産手続である破産手続のどちらかです。

倒産手続きは法律によりいつまでに何をしなくてはいけないかという手続きが多々あります。企業倒産を担当する弁護士は、企業倒産における知識と経験が必要で、迅速かつ正確に対応することが求められます。

知的財産

知的財産とは、その企業が発明した技術やアイデアのことです。知的財産を守るためにも、特許権・実用新案権・意匠権・商標権のように特許庁に出願して他社・他人に権利侵害をされないようにしなくてはいけません。

他社が無断で特許技術を利用している、辞めた社員が秘密保持契約を守らず競合他社で開発をして技術が漏洩したなどということがトラブルになりやすく、企業法務弁護士は紛争解決や訴訟手続きなどでサポートします。

労務問題

従業員が残業をしすぎて過労により病気になった、女性社員が男性上司からセクハラを受けた、上司のパワハラにより部下がうつ病を発症したなど、会社では従業員の問題も多々あります。

このようなトラブルに対しても紛争解決や訴訟対応などを行うことも企業法務弁護士の仕事です。

企業法務弁護士として|法律事務所と企業内弁護士(インハウス)との違いを比較

企業法務弁護士は、法律事務所に所属して顧問弁護士として顧問契約を結び、企業からの相談を受けて仕事をすることになります。顧問料内で簡単な法務相談を行ったり、契約書のチェックなどをしたりすることもありますし、追加の弁護士費用を得て訴訟・紛争対応を行うこともあるようです。

一方で、企業内弁護士は企業の一社員として法務部などに所属して働く弁護士のことです。企業に所属するということで、当事者として企業法務を取り扱うことになり、受け身ではなく自ら問題解決に取り組む姿勢が求められます。

たとえば、新規ビジネスを始めようとする場合、顧問弁護士ならば適法性に関するリスクの指摘・改善点の提案などに留まります。しかし、企業内弁護士の場合は法的リスクを踏まえて、新規ビジネスを行うべきかという判断を営業などと一緒に考えて行くのです。

企業内弁護士は、当然のことですが所属する企業の仕事しかしません。法務企業内弁護士が一人で全てを網羅する場合などは守備範囲も広くなりますし、仕事量が多ければ忙しくなります。特に、弁護士の仕事についての理解がない場合は膨大な丸投げされる可能性もあるので、就職前に社会体制の確認は必ずすべきでしょう。

また、企業内弁護士は、その他の社員と同じ待遇となるため、法律事務所勤務に比べると残業は少ない傾向にあるようです。

また、産休や育休・時短勤務などの待遇も受けられるので、法律事務所勤務に比べると年収は低くなることが多いですが、ワークライフバランスを重視したい場合にはおすすめです。

企業の法務部へ転職するには|主な仕事内容と転職するのに必要な能力やキャリアパスとは?

 

企業法務弁護士になるには

企業法務弁護士になるにはどうすれば良いのでしょうか。

4大ファームへ新卒で就職する

一般的な法律事務所では、民事や刑事が中心となるので、企業法務をメインで行いたいという場合は4大ファームと呼ばれる大手法律事務所を目指すべきと言えるでしょう。

4大ファームは、

  1. 「西村あさひ法律事務所」
  2. 「アンダーソン・毛利・友常法律事務所」
  3. 「森・濱田松本法律事務所」
  4. 「長島・大野・常松法律事務所」

の4つです。

日本の大手企業のほとんどがこちらの4大ファームと取引をしているため、大手企業を相手にダイナミックな仕事をしたいという場合はこれらの法律事務所へ入所できるとやりがいを感じられるかと思います。

なお、これらの法律事務所の給料水準は高く、新卒1年目で1,000万円超え、3年目から1,500万円ほどになります。

新卒で入るには夏と冬に開催されるインターンへの参加が必須になりますが、志願者は殺到するので、競争率は非常に高くなります。

ブティック系法律事務所へ転職する

ブティック系法律事務所とは、企業法務における金融法務・知的財産・倒産・といった特定の分野に特化した専門性の強い法律事務所のことを指します。4大ファームはたくさんの優秀な弁護士が集まるため選考も厳しいですが、ブティック系の法律事務所はそれに比較すると選考ハードルは低めです。

そのため、ブティック系法律事務所で経験を積み特定の分野の専門性を極めた後に、インハウスの弁護士へ転職するというのも一つの方法です。

総合法律事務所で企業法務を担当する

総合法律事務所では、民事や刑事が中心になりますが、中小企業向けの法務を担当するケースも多いです。大手企業に比べると案件は少ないかもしれませんが、一人で全ての企業法務を担当するとなれば業務の幅も広くなります。

大手企業相手の場合は複数の弁護士で分業となることが多いので、独立を考える人には一人で企業法務全体を網羅できる総合法律事務所の方が、やりがいを感じる可能性は高いです。

企業法務弁護士に就職・転職するには

企業法務弁護士に就職するためにすべきことを紹介します。

新卒は事務所訪問を実施後に個別面談

4大ファームの採用ページを確認すると、司法試験の受験を終えた就活生向けに事務所訪問を実施しています。この事務所訪問では法律事務所の仕事内容の説明を聞き、疑問を解決するための質問をする時間などがあるそうです。この事務所訪問が一次試験を兼ねている場合もあるので、希望する法律事務所であれば必ずエントリーする必要がありますし、訪問できることになったら身だしなみやマナーに気をつけて訪問すべきといえます。

転職はホームページからエントリー

転職希望の場合は、各法律事務所のホームページを確認して、経験者採用をしている場合は直接エントリーしてみましょう。履歴書や職務経歴書を送付して、興味を持ってもらうことができれば選考に進めます。

特に大手事務所への転職を目指す場合は専門知識や経験、英語スキルなどあると有利になるようです。

弁護士専門の転職エージェントを利用

弁護士専門の転職エージェントも存在します。このような転職エージェントでは、転職希望者のスキルなどを鑑みて転職先を紹介してくれますし、面接練習やアドバイスもしてくれます。面接の日程調整などもしてくれるので、現職が忙しくて転職活動に時間がかけられない場合などに便利です。

弁護士向け転職エージェントの賢い選び方|法律事務所・インハウス転職でエージェントを使うべき理由も

弁護士専門の転職エージェントを使うメリット|弁護士の転職・キャリアアップに利用すべき理由

企業法務弁護士の年収相場は?

企業法務弁護士の年収は所属する法律事務所によって異なります。大手企業を相手にする4大ファームは、弁護士報酬も高くなるので、還元される給料も多くなります。

4大ファームは初任給1,000万円以上

これらの法律事務所では新卒で1,000万円、3年目で1,500万円、5年目で2,000万円をもらえるケースもあるそうです。

そしてパートナーになれば億単位の年収もありえます。ただし、これらの法律事務所では3~5年契約が基本です。

まずは「アソシエイト」として採用されるので、「パートナー」になるために結果を残そうと激務になりがちです。残業は当たり前で、終電でも帰宅できない日もありますし、同僚との競争も激しいです。

年収が高くても、このような激務と引き換えになるということは理解しておく必要があるでしょう。

ブティック系法律事務所は600万円〜800万円が相場

ブティック系法律事務所では、専門性が高い分野の法務を取り扱うこととなりますが、年収相場は4大ファームに比べるとやや劣るようです。

転職サイトでは、2〜5年の経験者の年収提示が800万円〜1,200万円のレンジで、専門分野や英語スキルなどによって年収への反映が変わりそうです。

企業法務弁護士になるメリット

企業法務弁護士になると、企業法務全般に関わるさまざまな仕事をすることになりますが、たとえば海外進出やM&Aのサポートなどは民事や刑事にはないやりがいを感じることができるでしょう。

企業法務を扱う経験をしておけば、ワークライフバランスを考えた時に企業内弁護士への転職もしやすくなるので、特に家事や育児と両立して働く女性にとってメリットが大きいです。

さらに、最近ではコーポレートガバナンス強化のために、上場企業での社外取締役の設置が増えています。

弁護士を社外取締役として設置したいという企業も多いので、企業法務に明るい場合、独立後や定年後にこのようなポジションにつくことも考えられるでしょう。

企業法務弁護士になるデメリット

企業法務弁護士として大手法律事務所に就職した場合、自分がやりたいことではないことを専門的に扱う部署に配置されるケースもあるでしょう。それに興味を持つことができれば良いですが、興味がない分野をずっと続けなくてはいけない場合は仕事が苦痛に感じる場合もあります。

また、仕事の守備範囲が狭くなると、転職がしにくくなることもあるようです

また、小さな総合法律事務所で企業法務を担当すると、一人で幅広い分野を網羅しなくてはいけない可能性もあります。調べながら仕事を進めれば時間がかかりますし、仕事量が多いと激務になってしまうかもしれません。

独立を考えると良い経験になるかもしれませんが、ストレス・体調管理など気をつける必要があるでしょう。

まとめ

企業法務弁護士は、企業が経営するために必要となる法務全般を引き受けることになり、民事や刑事とはまた違ったやりがいを感じられる仕事ができます。

企業法務を中心に扱う大手法律事務所の4大ファームに就職するのは競争率も高く非常に難しいですが、大手企業を相手に仕事ができますし、給与水準も高く魅力的です。

その他にも、ブティック系の法律事務所で働いた後に大手法律事務所へ転職したり、民事や刑事も扱う総合法律事務所で企業法務も担当したりすることで経験を積むことができます。

企業法務弁護士の経験を積むことにより、事業会社などで一従業員として働く企業内弁護士へ転職しやすくなります。企業内弁護士は法律事務所に比べるとワークライフバランス

が取りやすいので、特に女性にとって選択肢が増えることはメリットといえるでしょう。