こんにちは、弁護士専門の転職エージェント『NO-LIMIT運営事務局』です。
難関資格を持つ弁護士の年収は一般企業の会社員に比べるとかなり良いというイメージを持つかもしれません。しかし、入所する法律事務所の規模や、これまでの経験によって、年収が上がるか据置きになるかは大きく異なります。
いまの事務所に不満がある弁護士の方の中には、年収アップを目指して転職を考える方も多いですが、そもそも、弁護士の年収水準はどれくらいなのでしょうか。
日本すべての弁護士及び弁護士法人は、各地の弁護士会に入会すると同時に日本弁護士連合会に登録が必要です。この日本弁護士連合会では、弁護士の活動実態について「弁護士実勢調査(弁護士センサス)」を行っており、この中で弁護士の年収についても調査しています。
これから詳しく解説しますが、結論から先にお伝えすると、弁護士の平均年収総額は「1,200万円」前後が相場と言われており、月給換算にすると「75万円」前後とされます。
ただ、厚生労働省の『平成30年賃金構造基本統計調査』の調べによると、弁護士の年収は約765万円だと推察されます。
職種全区分 | 年齢 | 勤続年数 | 現金給与額【千円】 | 年間賞与等【千円】 | 年収換算 |
弁護士 | 36 | 7.3 | 538.6 | 1194.1 | 7657.3 |
弁護士の働き方は少々特殊で、法律事務所に勤務していても実質的には個人事業主であることが多いため、取り扱う事件の金額によって、1案件舞の『成功報酬金』も違ってきます。
もし個人の弁護士で「案件を大量に受注した場合は年収にダイレクトに反映されます」ので、年収が1,000万円を超える可能性は十分にあるでしょう。
ただ、お気づきかもしれませんが、日本弁護士連合会に登録している弁護士この調査は経営者弁護士・勤務弁護士・企業内弁護士などのため、さまざまな働き方の弁護士の年収が入り混ざっています。
また、日本弁護士連合会に登録している弁護士40,076人に送付したうちの有効回答数は2,864(有効回答率7.15%)でした。そのため、参考程度にする必要がありますが、こちらの調査から弁護士の年収など確認していきましょう。
弁護士が転職する方法や転職して年収アップを目指す方法についても紹介します。
目次
弁護士の年収はいくらなのか?平均値と中央値を算出
弁護士全体の平均年収
日本弁護士連合会の調査によると、2018年の弁護士全体の平均収入は2,143万円でした。過去の平均年収を見てみると、
- 2006年が3,620万円
- 2008年が3,389万円
- 2010年が3,304万円
- 2014年が2,402万円
と年々減少していることがわかりました。
2006年 | 2008年 | 2010年(※) | 2014年 | 2018年 | |
収 入 | 3,620万円 | 3,389万円 | 3,304万円 | 2,402万円 | 2,143万円 |
回答者 | 4,025人 | 4,021人 | 1,354人 | 3,199人 | 2,584人 |
所 得 | 1,748万円 | 1,667万円 | 1,471万円 | 907万円 | 959万円 |
回答者 | 3,978人 | 3,977人 | 1,280人 | 3,128人 | 2,490人 |
※2010年の「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」は、確定申告書に基づく弁護士活動以外による収入が含まれており、比較の際は注意を要する
また、2018年の平均所得は959万円です。所得とは手取り額のことですが、
- 2006年が1,748万円
- 2008年が1,667万円
- 2010年が1,471万円
- 2014年が907万円
と推移しています。
年収の中央値
日本弁護士連合会の調査では収入と所得の中央値についても調査をしています。中央値とは、回答を大きさの順に並べた時に全体の中央にくる値のことです。平均値は一部の高所得者が数値を引き上げてしまうことがあるので、中央値で見た方が実態に即しているといわれています。
2006年 | 2008年 | 2010年(注2) | 2014年 | 2018年 | |
収 入 | 2,400万円 | 2,200万円 | 2,112万円 | 1,430万円 | 1,200万円 |
回答者 | 4,025人 | 4,021人 | 1,354人 | 3,199人 | 2,584人 |
所 得 | 1,200万円 | 1,100万円 | 959万円 | 600万円 | 650万円 |
回答者 | 3,978人 | 3,977人 | 1,280人 | 3,128人 | 2,490人 |
※2010年の「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査」は、確定申告書に基づく弁護士活動以外による収入が含まれており、比較の際は注意を要する
2018年の弁護士全体の収入の中央値は1,200万円でした。過去の平均年収を見てみると、
- 2006年が2,400万円
- 2008年が2,200万円
- 2010年が2,112万円
- 2014年が1,430万円
2018年の所得の平均値は650万円
- 2006年が1,200万円
- 2008年が1,100万円
- 2010年が959万円
- 2014年が600万円
という結果でした。日本における一般労働者の平均年収が400万円程度と言われているため、それに比べると高い水準であることがわかります。
苦労して司法試験を突破した割には年収は低い傾向
弁護士資格を取るために何年も勉強をしてきて苦労して取得した結果と考えると、「思ったより少ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
弁護士の合格者数は、2006年の新司法試験制度導入後から大きく人数を増やしました。弁護士は定年がないため、高齢化の進む日本では現役で働く弁護士が増えていくことになります。
しかし、人口減から訴訟数が増えたわけではないので、弁護士によるパイの奪い合いになっているようです。業界トップの法律事務所では、入所したばかりのアソシエイトが年収1,000万円を得ることができ、10年働けば年収5,000万円の年収、パートナーになれば年収数億円になる人もいるようです。
一方、地方や小規模の法律事務所では、パートナーなっても案件を取れないと年収数百万円~一千万円程度ということもあり、弁護士年収の二極化が進んでいます。
弁護士の経験・年齢別の年収
経験年齢別の年収は、経験年数5年未満の弁護士の平均収入が735万円、収入中央値600万円でした。これだけで見ると上場企業勤務の会社員との収入差はあまりないように感じます。
収入 | ||||||
2006年 | 2008年 | 2014年 | 2018年 | |||
5年未満 | 平均値 | 1,613 | 1,222 | 796 | 66-70期 | 735 |
中央値 | 970 | 850 | 675 | 600 | ||
回答数 | 733件 | 934件 | 846件 | 660件 |
ただし、弁護士の経験年数が上がるほど収入や所得は増えていく傾向です。弁護士経験年数別が25年以上30年未満の弁護士の平均収入が4,699万円、収入中央値3,000万円と、その他の経験年数のレンジに比べて一番高くなりました。
収入 | 所得 | ||||||||||
2006年 | 2008年 | 2014年 | 2018年 | 2006年 | 2008年 | 2014年 | 2018年 | ||||
20年以上 25年未満 |
平均値 | 5,340 | 5,066 | 4,101 | 46-50期 | 3,469 | 2,334 | 2,497 | 1,342 | 46-50期 | 1,307 |
中央値 | 3,840 | 4,000 | 2,697 | 2,760 | 1,800 | 1,995 | 840 | 1,006 | |||
回答数 | 396件 | 351件 | 160件 | 105件 | 396件 | 350件 | 159件 | 102件 | |||
25年以上 30年未満 |
平均値 | 5,627 | 4,991 | 4,290 | 41-45期 | 4,699 | 2,525 | 2,218 | 1,460 | 41-45期 | 1,601 |
中央値 | 3,872 | 3,937 | 3,000 | 3,000 | 1,600 | 1,800 | 1,000 | 1,100 | |||
回答数 | 388件 | 340件 | 187件 | 99件 | 391件 | 341件 | 185件 | 94件 |
また、平均所得は1,601万円、所得の中央値は1,100万円です。それ以上の経験年齢で見てみると減少傾向にあるので、年齢や体力を考えて経験年数30年位をピークに活動を控えめにしている可能性もあるでしょう。
男女弁護士の年収差
日本弁護士連合会の調査で、男女弁護士の年収差について調べているものはありませんでした。しかし、厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」では、法律事務所または企業に勤務している弁護士の平均年収の調査をしています。
こちらの調査によると、弁護士全体の平均年収は1,256万円、男性弁護士の平均年収は1,595万円、女性弁護士の平均年収は733万円でした。
独立して法律事務所を経営している人の年収は含まれていないので、それらを合わせると変動することも予想できますが、男女の年収差はかなり大きく開くということがわかります。
たとえば、大手法律事務所でキャリアを重ねる場合は、男女関係なく実力次第で年収が上がっていくことが想像できます。しかし、法律事務所の弁護士の仕事は非常に忙しく、出産後育児をしながらの勤務が難しいと感じる場合もあるでしょう。このような場合、年収が低くても働き方の融通が効く小さな法律事務所や企業内弁護士へ転職するという選択肢もあるかと思います。女性が働くためには「働きやすさ」が大切になるので、年収より残業時間の有無などを見ることもあるでしょう。
法律事務所の規模による年収差
法律事務所の規模でも年収差は生まれます。たとえば、『5大法律事務所』では入社時に年収1,000万円、パートナーになれば数千万円〜億になることもあるようです。
しかし、中小・個人の法律事務所の場合は入社時の年収が300万円〜500万円で、最高でも1,000万円代ということもあります。このように所属する法律事務所により、年収格差がかなり開いているのです。
企業内弁護士の年収水準は?
企業内弁護士の年収のボリュームゾーンは750万円〜1,000万円未満で、28%の人がこの年収ゾーンに当てはまります。法律事務所勤務の弁護士に比べると収入はやや劣ることが分かりました。
企業内弁護士は法律事務所勤務に比べると勤務時間も短い傾向にあり、ワークライフバランスも充実しやすいといわれています。そのため、収入が少なくても働きやすさを重視してあえて企業内弁護士を選ぶ人もいるようです。
1,000万円〜1,250万円未満の23%は年収750万円〜1,000万円未満のレンジに続き多いです。また、年収1000万円超を合わせると46%になり、2,000万円〜3,000万円は4%、3,000万円〜5,000万円は2%、5,000万円は1%と一般企業の社員としてはとても良い待遇で働いている方もいます。
専門性や経験を評価されて、役員になるなどすれば法律事務所勤務の弁護士以上の年収を得ることもできる場合もあるようです。
参考:日本組織内弁護士協会|組織内弁護士協会(JILA)の企業内弁護士に関するアンケート集計結果(2020年)より
独立して働く弁護士の年収水準は?
独立開業して働く弁護士の年収は、その弁護士の手がける案件数や地方などにより大きく異なります。そのため、年収300万円程度の場合もあれば年収数億円となることもあるのです。
勤務弁護士に比べて自由度は増しますが、その分稼げるかどうかは本人の努力やマーケティングの上手さなどに依存するようです。
年収よりワークライフバランスを重視する場合
法律事務所勤務は、年収水準が高くても残業が深夜まで続くなどプライベートを蔑ろにしなければいけないケースもあります。今までは法律事務所で勤務するならば、「アソシエイトからパートナーになりたい」「いつか独立したい」と熱意を持ち働く人も多くいました。
しかし、最近ではプライベートを大切にしたいという気持ちから、勤務時間が短い企業内弁護士やカウンセル契約をしたいという若者も増えているのです。そのため、年収よりもワークライフバランスを重視して転職を考えるケースも考えられます。
弁護士の転職方法は5つ|弁護士はエージェントやヘッドハンティングを利用すべき
それでは、弁護士が転職する方法を紹介します。
弁護士を募集している法律事務所へ直接応募
法律事務所のホームページを確認すると、採用情報を掲載している場合があるので、そこで経験者採用について記載がないかチェックしてみましょう。大手法律事務所では、経験者の場合は随時相談可能というところもあります。
転職サイトで探す
転職サイトで弁護士の求人を探すという方法もあります。転職サイト上で労働時間や年収などの条件を確認して、エントリーしたい場合はそのサイトのルールにそって応募します。転職サイトによって求人情報が多い場合と少ない場合があるので、なるべくたくさんの情報を収集するためにも複数登録することをおすすめします。
転職エージェントを利用する
転職エージェントを利用すると、担当者がついて希望に合った求人を探してくれたり、面接日程の調整をしてくれたりします。特に弁護士案件に強いエージェントでは、通常のエージェントに比べて好条件の案件を持っていたり、面接のアドバイスをしてくれたりします。
自分で応募する場合に比べて、エージェントが上手く紹介してくれるなど有利に働く場合もあるので、転職に対して自信がない場合は利用した方が良いといえます。
ヘッドハンティングされる
弁護士として手がけた案件が新聞や雑誌に名前つきで記載されれば、多くの人の目に触れることになります。そのような大きな案件を経験した弁護士が欲しいと思う法律事務所や企業も当然このような情報には敏感になるので、ヘッドハンティングされる場合もあるでしょう。
ヘッドハンティングは業者経由で行われることもあれば、知人経由や直接話が来る場合もあります。今の年収を大きく上回るオファーなどもあるかもしれません。
紹介を依頼する
もし、自分が働いてみたいという法律事務所や企業に知人がいるのであれば、紹介を依頼するという方法もあります。知人から年収水準や労働条件や雰囲気を事前に聞いていればミスマッチも少ないですし、法律事務所や企業としても採用コストを下げることができるなどメリットがあります。
転職で年収アップしたいなら
弁護士が転職により年収を上げるということは十分可能です。転職先では「今までの実績や経験」を踏まえて給与額を算定するため、現職での業務経験を活かせる所を選んだ方が良いと言われています。
それまでやってきた専門性や経験を認められることにより、より良い待遇で転職することができる可能性があるでしょう。
また、小規模の法律事務所で勤務している場合、大手企業の企業内弁護士に転職したほうが年収も上がるということもあるでしょう。転職は需要と供給、タイミングで良い条件に巡り合うことができるので、普段からアンテナを張り巡らせて情報収集することが大切です。
大手弁護士事務所に転職はできる?
大手弁護士事務所へは、高学歴の入所希望者が集まるので新卒で入所するハードルも高いです。転職でも大手企業向けの企業法務を経験したことがなければ、かなり難しいと言えるでしょう。ただし、他にはない専門性を身につけている場合にはチャンスがある場合もあります。
たとえば、金融法務の専門性を身に付けていて特殊な案件をいくつも手がけていたとしましょう。
大手法律事務所が金融法務のプロフェッショナルを探していたとして、経験やスキルが認められて採用されれば、業界最高水準の年収を手にすることが可能です。
独立して年収アップする場合もある
独立して法律事務所を構える場合、収入は自分の努力次第で青天井となります。上記でも説明しましたが、今は弁護士が案件を取り合う時代です。
そのため、弁護士側が何も努力せずに相談者がどんどん事務所に来るということはないのです。弁護士の集客は、弁護士自身のマーケティングにかかっています。たとえば、電車広告、ラジオ広告、セミナーを行うなどして、法律事務所の認識を広めて何かあったときに思い出してもらえるような存在でいられることが相談につながります。
最近ではインターネット上での広告も盛んで、ホームページやSNSなど巧みに使う弁護士も増えてきました。このような運用がうまくできる場合は、独立しても案件に困らないでしょう。
まとめ
弁護士の年収水準は年々下がっています。それは、弁護士の人数は増えているのに、人口減の影響から特に地方にある中小・個人の法律事務所が稼ぎにくくなっているからといえるでしょう。
一方、大手法律事務所の弁護士は、数千万円〜数億円を手にするケースもあり、年収格差が広がっているともいえます。また、一般的には法律事務所勤務より年収が低めな企業内弁護士も、役員待遇になれば数千万の年収を手に入れることができるようです。そのため、企業内弁護士で高収入を目指すという方法も一つです。
弁護士が転職するには、
- 「法律事務所や企業へ直接応募」
- 「転職サイトを活用」
- 「転職エージェントを利用」
- 「ヘッドハンティングを受ける」
などの方法があります。転職は需要と供給、タイミングで良い条件に巡り合うことができるので、転職したいと思うのであればなるべくたくさんの情報を集めることが大切です。
希望する条件に合いそうな求人を見つけたら、それまでの経験やスキルをアピールして即戦力になれることを伝えましょう。
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