「働き方を変えたい」と思いながらも、年収やキャリアへの影響が気になって動けない。弁護士の転職相談では、こうした声が少なくありません。
弁護士のワークライフバランスは、勤務先の種類や事務所の規模、担当する案件の性質によって大きく変わります。逆にいえば、環境を選び直すことで改善できる余地は十分にあるということです。
この記事では、働き方タイプ別のワークライフバランスの実態比較から、転職時に確認すべき条件の整理方法、面接での具体的な質問例まで、現実的に使える情報を順番にまとめています。
目次
結論|弁護士でもワークライフバランスは実現可能
弁護士でもワークライフバランスは実現できます。ただし、何もせずに手に入るものではなく、働く環境を意識的に選ぶことが前提です。
企業内弁護士(インハウスローヤー)への転職はその代表例ですが、法律事務所でも事務所の規模や案件の種類によっては、十分に仕事と生活との両立を実現している弁護士はいます。公的機関や団体法務という選択肢も、ワークライフバランス実現に近い道でしょう。
ポイントは、自分にとってのワークライフバランスが何を意味するのかを具体的に言語化することです。そのうえで、勤務先の制度や運用実態を確認し、年収とのバランスも含めて判断しましょう。この手順を踏めば、漠然とした不安に振り回されずに動けるはずです。
ここからは、条件整理の考え方、弁護士業界の働き方の実態、タイプ別の比較、そして転職活動で押さえるべきコツを順に見ていきます。
ワークライフバランスを実現するために整理したい3つの条件
ワークライフバランスを改善したいと思ったとき、最初にやるべきは求人を探すことではありません。自分の生活のなかで「これだけは変えられない条件」を洗い出すことです。
整理しておきたいのは3つ。稼働時間の上限、収入の下限、そして働き方の柔軟性です。
稼働時間は、月の平均残業ではなく、繁忙期にどこまで許容できるかで考えます。たとえば平均月20時間でも、繁忙期に80時間を超える月があるなら、生活への影響は平均値からは見えません。
希望年収ではなく、収入の下限を設定してみるのもおすすめです。生活費や教育費、弁護士会費などの固定支出を積み上げれば算出できます。最低限必要な手取り額を把握しておくと、選択肢を現実的に絞れるでしょう。
働き方の柔軟性を見るときは、リモートワークやフレックスの有無だけでなく、突発対応の頻度や休日の拘束度合いも含めましょう。保育園の送迎がある方と、週末の確保を優先したい方では、必要とする観点が異なるでしょう。
この3点を数字や具体的な場面で言語化しておくと、求人を見たときの判断軸がぶれにくくなります。
弁護士の働き方とワークライフバランス
弁護士の働き方は、一般的な会社員と構造が異なります。報酬が労働時間に連動しない、業務委託契約がベースになっている、残業という概念自体がなじみにくい。こうした特性が、長時間労働を常態化させやすい背景になっています。
ここからは、ワークライフバランスが取りにくい構造的な理由と、近年の制度整備の動きを順に見ていきます。
弁護士がワークライフバランスを取りにくい理由
弁護士の業務は、労働基準法上の裁量労働制の対象業務に含まれており、どれだけ働いても残業代が発生しない構造です。時間で区切るインセンティブが働きにくいため、結果として長時間労働になりやすい傾向があります。
日弁連の調査では、弁護士の週の平均就労時間は46.5時間。月に換算すると約40時間の時間外労働に相当します。法律事務所勤務の場合、1日10時間以上の稼働が珍しくないという実感を持つ弁護士も多いはずです。
案件の性質も影響します。刑事事件の起訴前弁護やDV案件などは緊急対応が求められますし、大手企業法務系事務所では海外クライアントの時差に合わせた深夜の会議も発生します。加えて、弁護士会の委員会活動や勉強会は業務時間外に設定されることが多く、稼働時間の境界線があいまいになりがちです。
もう一つ見落とされやすいのが、収入との連動です。法律事務所では受任件数を減らせば労働時間は短くなりますが、そのぶん収入も下がります。このジレンマがあるため、意識的に仕事量を調整しにくい構造になっています。
働き方改革・制度整備の流れ
弁護士業界でも、少しずつ変化は起きています。
リモートワークやフレックスタイム制度を導入する法律事務所が増えてきたほか、産休・育休制度を整備する事務所も出てきました。日弁連は2015年に育児期間中の会費免除制度を開始しており、免除期間は6か月です。一般企業と比較すればまだ手薄ですが、以前はそもそも制度自体が存在しなかったことを考えると、前進はしています。
インハウスローヤーの増加も、働き方の選択肢を広げています。企業内弁護士の数は2001年の約60人から、2023年には約3,000人規模にまで拡大しました。企業側のコンプライアンス需要の高まりに加え、ワークライフバランスの改善を目的に法律事務所からインハウスに移る弁護士が増えたことも、この数字を押し上げている要因です。
ただし、制度があることと、制度が使える環境であることは別の話です。産休制度はあっても取得実績がゼロという事務所もあります。転職先を選ぶ際は、制度の有無だけでなく運用実績まで確認することが欠かせません。
出典:日本弁護士連合会「企業内弁護士雇用の手引き」(第二版)
女性弁護士の増加との関係
女性弁護士の増加と活躍も、法曹界のワークライフバランスを後押ししています。弁護士における女性の割合は社会一般の職種と比べて低い水準にあるものの、年々着実に増加しています。
また、2006年に実施された新司法試験制度により、女性弁護士の増加も、ワークライフバランスを意識するきっかけであったとも言えます。

社会情勢の流れを受けて、多様な弁護士の活躍が法曹界の持続的な成長を支え、社会正義の実現につながると指摘されるようになっているのです。
女性弁護士は出産・育児などのライフステージの変化に対応するべくワークライフバランスを望むケースが多くあります。しかし旧来の働き方では子育て世代の女性弁護士が職場を離脱せざるをえない場合があります。
慢性的な長時間労働や休日の少なさなどを理由に優秀な女性弁護士が継続的に就業できなくなるのは、社会や弁護士を抱える法律事務所などにとって痛手です。
女性弁護士は男性弁護士同様の活躍ができるだけでなく、たとえばDVや性犯罪などの分野において依頼者に安心感を与えるなど、女性ならではの繊細な対応による活躍にも期待できます。女性弁護士が働きやすい職場環境の整備は急務といえるでしょう。
東京弁護士会の男女共同参画推進本部でも、2019年2月に「ワークライフバランスガイドライン」を公表し、弁護士の出産・育児と業務の両立を目指しています。
1 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、妊娠・出産又は育児中の所属弁護士が、同事務所にて引き続き稼働できるよう、産前産後休業・育児休業制度、同休業後に同弁護士が子の養育をしながら自身の能力を発揮しうるサポート体制の整備を行うように努めることとします。
2 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、(1)弁護士採用の際、(2)所属弁護士が妊娠した際、及び(3)当該弁護士に子が生まれた際、産前産後・育児休業制度の有無及び同期間中の処遇、その他同期間中の事務所のサポート体制、同休業後の処遇などについて、当該弁護士に説明を行なうものとします。
3 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、産後休業・育児休業後の所属弁護士の職場復帰を円滑にするために、当該弁護士の復帰後の処遇について、本人の意向を尊重し、当該弁護士との間で十分な協議の機会を持つものとします。
4 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、所属弁護士が、妊娠・出産したこと、産前産後休業・育児休業申出をしたこと又は取得したこと、育児中であることを理由として、所属弁護士に対し、契約の解除、退所の強要、不利益な配置の変更を行うことその他不利益取扱いを行わないものとします。
5 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、4において禁止されるに至らない行為であっても、妊娠・出産、又は育児中である所属弁護士の個人の尊厳を傷つける言動を行わないものとします。
6 本会会員は、法律事務所を経営するにあたり、多様な働き方の実現のため、リモートワークが可能な体制の構築等、業務を効率化する具体的施策を講ずるよう努めるものとします。
勤務先別|ワークライフバランスの取りやすさ比較
弁護士の働き方は、勤務先の種類によって大きく異なり、たとえば渉外事務所とインハウスでは稼働時間も休日の過ごし方もまるで異なります。
ここからは、代表的な6つの勤務先ごとに、ワークライフバランスの取りやすさを整理していきます。
インハウスローヤー
ワークライフバランスの改善を目的に転職する弁護士が、最も選びやすい類型です。
企業内弁護士は一般社員と同じ就業規則が適用されるため、所定労働時間が明確で、有給休暇や育休・産休制度も企業の制度がそのまま使えます。法律事務所のように稼働時間と収入が直接連動しないぶん、仕事量を抑えることへの心理的なハードルも低くなります。
業務内容は契約書レビューや法務相談、株主総会対応、コンプライアンス体制の整備など。外部の法律事務所に依頼していた業務を社内で処理する役割が中心で、定型的な業務が一定割合を占めます。法律事務所のように次々と新しい案件が入ってくる環境とは、仕事のリズムが異なるでしょう。
年収は法律事務所のアソシエイトと比較するとやや低めの水準になることが多いですが、労働時間で時給換算すると同等かそれ以上になるケースもあります。入社3年程度でリーダー職に昇進する道もあり、中長期的な年収の伸びも見込めます。
ただし、企業によって法務部門の位置づけや業務量は大きく異なります。インハウスなら必ず楽になるわけではなく、繁忙期にはハードワークが求められる企業もある点は押さえておいてください。
公的機関・団体法務
国や地方自治体、独立行政法人、弁護士会などの公的機関で働く選択肢もあります。任期付公務員として採用されるケースが代表的です。
勤務時間が明確に定められており、原則として土日祝日は休み。深夜対応や突発的な案件対応も、法律事務所やインハウスと比べると格段に少ない環境です。ワークライフバランスの安定性という点では、最も予測が立てやすい働き方といえます。
一方で、年収は法律事務所やインハウスと比較すると低めです。公務員の給与体系に準じるため、弁護士としての経験年数が長くても報酬が大きく伸びるわけではありません。任期の定めがあるポストも多く、長期的なキャリア形成をどう描くかは事前に考えておく必要があります。
業務内容は、法令の立案や解釈、訴訟対応、政策立案への法的助言などが主です。民間では経験しにくい分野に携われる点はキャリアの幅を広げる材料になります。任期満了後に法律事務所やインハウスに戻る際、公的機関での経験が評価されるケースもあります。
収入よりも生活の安定性や社会貢献を重視する方、あるいはキャリアのなかで一時的にペースを落としたい方には合う選択肢です。
一般民事・家事・刑事中心の事務所
一般民事や家事事件、刑事事件を中心に扱う事務所は、案件の単位が比較的小さく、個人の裁量で仕事量を調整しやすい傾向があります。企業法務系のように一つの案件にチームで長期間張りつくことが少ないぶん、稼働のコントロールはしやすい環境です。
ただし、注意点もあります。刑事事件の起訴前弁護は短期間で集中的に動く必要がありますし、DV案件や児童虐待関連では緊急対応が発生します。家事事件も、調停期日が続く時期には精神的な負荷が高くなりやすいでしょう。案件の性質によって、突発的に稼働が跳ねる場面がある点は織り込んでおく必要があります。
収入面では、企業法務系と比べると年収水準はやや下がる傾向です。個人事件が中心になるため、受任件数が収入に直結します。生活とのバランスを取りつつ、受任件数をどの水準で維持するかが判断のポイントになるでしょう。
ボス弁の方針によって事務所の雰囲気や働き方が大きく左右される点も、このタイプの特徴です。面接時に事務所の稼働実態や休日の過ごし方を率直に聞いてみることをおすすめします。
企業法務系法律事務所
中規模の企業法務系事務所は、渉外大手ほどの激務ではないものの、繁閑の差が大きいのが特徴です。
M&Aや株主総会対応の時期に稼働が集中する一方、閑散期には比較的落ち着いた働き方ができるケースもあります。月平均の残業時間だけを見ると穏やかに見えても、繁忙期に月80時間を超えることがあるなら、生活への影響は平均値からは読み取れません。
報酬はタイムチャージ制が多く、稼働時間と収入が連動しやすい構造です。つまり、仕事量を抑えれば収入も下がる。このバランスをどこで取るかが、企業法務系事務所で働く弁護士にとっての現実的な課題になります。
専門特化型の事務所であれば、扱う案件の種類が絞られるぶん、繁忙期の予測が立てやすい面もあります。ただし、人員が少ない事務所では欠員時の負荷が個人に集中しやすいため、事務所の人員構成と案件の繁閑パターンは入所前に確認しておくべきポイントです。
大規模渉外・外資系法律事務所
ワークライフバランスの優先度が高い方には、正直なところ厳しい環境です。
五大法律事務所や外資系事務所では、上場企業の訴訟やクロスボーダーM&Aなど大型案件にチームで対応します。海外クライアントとの時差対応で深夜の会議が発生することもあり、稼働時間のコントロールが難しいです。1年目から年収1,000万円を超えるケースもありますが、それに見合う負荷がかかります。
このタイプを選ぶメリットは、報酬の高さだけではありません。大型案件の経験とブランド力は、その後のキャリア形成で大きな武器になります。数年間は集中的に経験を積み、その後ワークライフバランスを重視した環境に移るという二段構えのキャリア設計を取る弁護士も少なくありません。
「今は稼働が多くてもいいから、将来の選択肢を広げたい」という方には合う環境です。一方で、現時点で生活との両立を優先したい方は、別の選択肢から検討したほうが現実的でしょう。
時短勤務・柔軟勤務
勤務先の類型を変えなくても、働き方の形式を変えることでワークライフバランスを改善できるケースがあります。
時短勤務やフレックスタイム制度は、インハウスを中心に導入が進んでいます。出産や育児をきっかけにフルタイムからの切り替えを検討する弁護士が多いですが、介護や自身の体調管理を理由に活用する例も。
法律事務所でも、近年はリモートワークを取り入れるところが増えてきました。書面の起案やリサーチなど、事務所外でも対応できる業務が多い弁護士の仕事とは相性がよい制度です。出勤日を週3〜4日に絞り、残りは在宅で対応するという働き方を認める事務所も出てきています。
ただし、制度の有無と使いやすさは別問題です。フレックス制度があっても、周囲が誰も使っていなければ実質的に機能しません。時短勤務に切り替えた結果、評価や昇進に影響が出るかどうかも確認しておきたいポイントです。
確認すべきは、制度が就業規則に書かれているかどうかではなく、直近1年間で実際に利用した人がいるかどうかです。面接や転職エージェント経由で、運用実態を聞いておくことをおすすめします。
弁護士がワークライフバランスを実現させるためのコツ
働き方の選択肢を把握したうえで、実際に転職活動で失敗しないために押さえておきたい実践的なポイントがあります。
ここからは、条件の優先順位のつけ方、制度の運用実態の確認方法、面接での具体的な質問例、そして年収と稼働時間のバランスの考え方を順に整理していきます。
転職活動でありがちな失敗は、希望条件をすべて満たす求人を探し続けて動けなくなることです。完璧な環境は存在しないので、条件に優先順位をつけることが先決です。
やり方はシンプルで、条件を「絶対に譲れない」と「妥協できる」の2つに分けるだけ。たとえば、保育園の送迎がある方にとって18時退社は譲れない条件かもしれませんが、リモートワークの有無は妥協できるかもしれません。
分類するときのコツは、希望ベースではなく生活の制約ベースで考えること。「リモートワークがあったらいいな」は希望です。「週2回は子どもの通院があるから出社できない」は制約です。制約から逆算すれば、譲れない条件は自然と絞られるでしょう。
条件を整理したら、紙やメモに書き出して可視化しておくと、求人票を見るたびにブレずに判断できます。転職エージェントに相談する際も、この優先順位が明確であれば、紹介される求人の精度が上がります。
制度の有無ではなく運用実績を確認する
求人票に「フレックスタイム制度あり」「リモートワーク可」と書かれていても、それだけで安心するのは早いです。制度が存在することと、実際に使われていることの間には、かなりの差があります。
確認すべきは運用実績です。具体的には、直近1年間でその制度を利用した人が何人いるか、利用した人の評価や昇進に影響が出ていないか。この2点を押さえれば、制度が形だけのものかどうかはおおよそ判断できます。
法律事務所の場合、就業規則に育休制度があっても取得実績がゼロというケースは珍しくありません。インハウスでも、フレックス制度はあるが管理職は誰も使っていないという企業はあります。制度を使うことに対して組織内でどういう空気があるかは、数字だけでは見えない部分です。
情報の取り方としては、面接で直接聞くのが確実ですが、聞きにくければ転職エージェントを経由する方法もあります。エージェントは過去にその事務所や企業に入った弁護士からフィードバックを得ていることが多いので、求人票には載らない実態を把握している場合があります。
年収と稼働時間のバランスを整理しておく
ワークライフバランスの改善を目指す転職では、年収が下がる可能性を覚悟しなければならない場面があります。ここで大事なのは、漠然と「下がるかもしれない」と不安に思うのではなく、数字で整理しておくことです。
まず、現在の年収を稼働時間で割って時給を出してみてください。年収1,200万円でも月の稼働が280時間なら、時給換算は約3,500円です。年収900万円で月180時間の稼働なら、時給は約4,200円。額面だけを比べると300万円の差がありますが、時間あたりの報酬は後者のほうが高くなります。
この計算をしておくと、年収が下がる転職でも合理的に判断できるようになります。額面の減少幅と、取り戻せる時間の価値を天秤にかけるということです。
もう一つ確認しておきたいのが、転職先の昇給の仕組みです。入社時点の年収だけでなく、3年後・5年後にどの程度の水準が見込めるかを聞いておくと、短期的な年収ダウンを中長期で回収できるかどうかの判断材料になります。インハウスであれば、管理職への昇進で年収が大きく伸びるケースもあります。
面接のワークライフバランス関連質問リスト
ワークライフバランスに関わる情報は、求人票に明示されていないことがほとんどです。面接の場で具体的に聞かなければ、入社後にギャップに苦しむことになります。
確認しておきたい質問は以下のとおりです。
- 直近1年間で残業が最も多かった月は何時間くらいでしたか
- 深夜や休日の対応はどの程度の頻度で発生しますか
- 繁忙期はいつ頃で、どのくらいの期間続きますか
- フレックスやリモートワーク制度の利用実績はありますか
- 育休・産休の取得実績と、復帰後の働き方の実例はありますか
- 評価制度は稼働時間に連動していますか、それとも成果ベースですか
月平均の残業時間を聞くだけでは不十分です。繁忙期と閑散期の振れ幅を把握することで、生活への実際の影響が見えてきます。
評価制度の確認も見落とされがちですが、売上や稼働時間に連動した評価の職場では、仕事量を抑えることへの心理的ハードルが高くなるでしょう。入社前に評価の軸がどこにあるかを把握しておくと、入社後の働き方を調整しやすくなります。
「ワークライフバランス重視派」の弁護士が気をつけたいポイント
条件整理や情報収集ができていても、転職活動の進め方しだいでつまずくことがあります。
ここからは、選考や情報収集の場面で見落としやすい落とし穴を4つ取り上げます。
ワークライフバランス以外の優先項目も確認する
ワークライフバランスの改善だけを軸に転職先を決めると、入社後に別の不満が出てくることがあります。稼働時間は減ったけれど、業務内容がつまらない。生活は安定したけれど、成長実感がない。こうしたミスマッチは少なくありません。
転職を検討する際は、ワークライフバランス以外にも自分が仕事に求めているものを棚卸ししておくことが大切です。たとえば、専門性を深めたいのか幅を広げたいのか。マネジメントに関わりたいのか、プレイヤーとして手を動かしていたいのか。クライアントワークが好きなのか、社内の調整業務でも苦にならないのか。
これらを整理しないまま「とにかく楽な環境」だけを求めて転職すると、半年後に再び転職を考え始めるリスクがあります。
ワークライフバランスは働き方の条件の一つであって、キャリアのすべてではありません。稼働時間の改善と、仕事の充実感を両立できる環境を探すほうが、結果的に長く続けられる転職になります。
選考で「貢献できること」をしっかり伝える
面接で「ワークライフバランスを重視したい」と伝えること自体は問題ありません。ただし、それだけを前面に出すと、採用側には「仕事のモチベーションが低いのでは」と映るリスクがあります。
選考で伝えるべきは、自分がその環境で何を提供できるかです。これまでの実務経験で培った専門性、対応できる案件の種類、過去の具体的な成果。こうした材料を先に提示したうえで、働き方の希望を伝えるほうが、採用側の印象はまるで変わります。
たとえば「企業法務の契約審査で年間300件以上の実績があり、即戦力として貢献できます。そのうえで、長く安定して働ける環境を重視しています」という伝え方であれば、ワークライフバランスへの言及がネガティブに受け取られることはほぼありません。
順番が大事です。まず貢献、次に希望。この順序を意識するだけで、選考の通過率は変わってきます。
口コミだけで判断しない
転職を検討するとき、ネット上の口コミや知人からの評判を参考にする方は多いはずです。ただし、口コミだけで転職先を判断するのはリスクがあります。
口コミは個人の主観に基づいた断片的な情報です。同じ事務所で働いていても、配属先やボス弁との相性、担当案件の種類によって体感はまったく異なります。「残業が多い」という口コミが、特定の部門だけの話だったということも珍しくありません。
退職者の口コミには、辞めた理由に起因するネガティブなバイアスがかかりやすい点も考慮が必要です。逆に、現職者の口コミは、自分の選択を正当化する方向にポジティブな偏りが出ることがあります。
口コミを完全に無視する必要はありませんが、あくまで参考情報の一つとして扱うべきです。複数の情報源を突き合わせて判断する必要があります。できれば、面接の場で自分の目と耳で確認するとよいでしょう。転職エージェント経由で、実際にその職場に入った弁護士のフィードバックを聞くのも有効な方法です。
入社前に合意しておくべき条件を把握する
内定が出た段階で安心してしまい、入社後の働き方の詳細を詰めないまま入社する方がいます。これは避けたいところです。
特に確認しておくべきは、勤務時間と評価制度、そして試用期間中の条件です。法律事務所の場合、業務委託契約か雇用契約かで、適用される制度や保障がまったく異なります。業務委託であれば労働基準法の保護が及ばないため、稼働時間の上限や休日の保障は契約内容しだいです。
インハウスの場合は雇用契約が基本ですが、それでも確認すべき点はあります。試用期間の長さと期間中の待遇、配属先の確定時期、リモートワークやフレックスの利用開始時期など、自分の生活に対して影響力が大きそうな項目は確認必須です。入社後に「聞いていた話と違う」とならないために、オファーレターや雇用条件通知書の内容を細かく読み込んでおきましょう。
給与交渉も、内定から入社までの間が最も交渉しやすいタイミングです。入社後に条件を変えるのは難しいため、気になる点があればこの段階で率直に確認してください。自分で交渉しにくい場合は、転職エージェントに代行を依頼する方法もあります。
h2:H2:<追加>ワークライフバランスを整えるための転職はご相談ください
ワークライフバランスを重視した転職を考えるなら、弁護士業界に精通したエージェントに相談するのが近道です。No-Limit弁護士では、法律事務所やインハウスへの転職に特化した支援を行っています。
ここからは、具体的に利用できるサービスを紹介します。
無料相談
No-Limit弁護士では、弁護士業界での提案営業や独立・開業支援を長年手がけてきた専任のキャリアアドバイザーが、無料で転職相談に対応しています。
相談の内容は、転職するかどうかの段階から対応可能です。「今の事務所を辞めるべきか迷っている」「ワークライフバランスを改善したいが年収は下げたくない」といった漠然とした悩みでも、キャリアの方向性を一緒に整理するところから始められます。
求人票には載らない情報、たとえば事務所の雰囲気や実際の稼働時間、育休の取得実績なども、過去の紹介実績をもとに共有してもらえます。現職にいながら転職活動を進めたい方にとって、情報収集の負担を減らせる点もメリットです。
守秘義務に関する基本方針を定めており、相談内容が現職に漏れる心配はありません。
求人検索
No-Limit弁護士のサイトでは、法律事務所やインハウスの求人を自分で検索することもできます。
公開求人だけでなく、非公開求人も取り扱っているのが特徴です。非公開求人は、採用側が応募の殺到を避けたい場合や、ポジションの性質上オープンにできない場合に設定されるもので、キャリアアドバイザーへの登録後に紹介を受ける形になります。
まずは公開求人を見て市場の相場感をつかみ、具体的に気になる案件が出てきた段階でアドバイザーに相談するという使い方でも問題ありません。求人紹介の流れは、登録後のヒアリング、求人の提案、応募・面接、内定・入社というステップで進みます。
すべてのサービスは無料で利用できます。転職を決めていなくても、求人を眺めるだけで自分の市場価値や選択肢の幅が見えてくるので、情報収集の一歩として活用してみてください。
よくある質問
ワークライフバランスを重視した転職を検討する弁護士から、よく寄せられる質問をまとめました。
インハウスならワークライフバランスが実現できますか?
インハウスだからワークライフバランスが実現できるとは限りません。
インハウスは法律事務所と比べて稼働時間が安定しやすい傾向はありますが、企業によって法務部門の体制や業務量には大きな差があります。法務担当が1〜2名しかいない企業では、契約審査からコンプライアンス対応、取締役会の事務局まで一人で回すことになり、結果的に法律事務所と同等かそれ以上の稼働になるケースもあります。
上場企業であれば株主総会や決算の時期に業務が集中しますし、M&Aが活発な企業では案件の発生タイミングが読めません。「インハウス=楽」と一括りにせず、入社前にその企業の法務部門の人員体制と業務範囲を具体的に確認することが大切です。
年収を下げずにワークライフバランスを改善できますか?
可能なケースはあります。ただし、条件しだいです。
年収を維持したままワークライフバランスを改善できるのは、現職の報酬水準が市場相場より低い場合や、専門性が高く転職先での即戦力が見込める場合です。たとえば、中規模の法律事務所から大手企業のインハウスに移ることで、稼働時間が減りつつ年収は横ばいか微増というケースは実際にあります。
一方で、大手渉外事務所の高年収帯からインハウスに移る場合は、年収ダウンを伴うことが多いのが現実です。この場合は、時給換算でどうか、中長期的な昇給の見通しはどうか、という視点で判断するほうが合理的です。
年収を下げずに改善できるかどうかは、現在の年収水準と自分の市場価値によって変わります。転職エージェントに相談すれば、自分のスキルと経験に対してどの程度の年収レンジが見込めるか、客観的な目線で教えてもらえます。
まとめ
弁護士のワークライフバランスは、働く環境を意識的に選ぶことで改善できます。
大切なのは、自分の生活上の制約を数字で把握し、譲れない条件と妥協できる条件を分けたうえで、制度の運用実態まで確認して転職先を選ぶことです。
・ワークライフバランスは勤務先の類型と案件の性質で大きく変わる。インハウスだけが選択肢ではなく、事務所の規模や働き方の形式でも改善は可能
・年収の額面だけでなく、稼働時間で割った時給換算と中長期の昇給見通しで判断すると、合理的な意思決定ができる
・制度の有無ではなく運用実績を確認し、面接では繁忙期の振れ幅や評価制度の軸まで踏み込んで聞くことが入社後のギャップを防ぐ
ワークライフバランスの改善は、キャリアを諦めることではありません。自分に合った環境を選び直すことで、仕事の充実感と生活の安定を両立させる道は十分にあります。
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