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【弁護士と公認会計士】ダブルライセンスのメリットや年収・市場価値についても解説

更新日: 公開日:

弁護士白書によれば、弁護士数は2023年時点で44,916人となっており、年々右肩上がりになっています。

参考:弁護士白書 2023年版|弁護士数

このまま弁護士数が増加を続ければ、弁護士は供給過多になってしまうかもしれません。

そんな中、ほかの弁護士との差別化を図るために何か強みを手に入れたいと感じる弁護士は多いのではないでしょうか。その差別化のひとつとして、ダブルライセンスを取得するという考えがあります

ダブルライセンスといっても多数の資格が考えられますが、弁護士が取得するメリットがとくに大きいのが公認会計士資格です。

弁護士と会計士のダブルライセンサーだけで構成された法律事務所もあり、公認会計士とのダブルライセンスは注目を集めています。

とはいえ弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得することでどんなメリットがあるのか、現実的に資格の取得は可能なのかなど、さまざまな疑問もあるかと思います。ダブルライセンスを取得した場合の年収も気になる部分でしょう。

本記事では、弁護士と公認会計士のダブルライセンスをテーマに、ダブルライセンスを活かせる場面や年収への影響、弁護士が公認会計士資格を取得するメリットなどについて解説します。

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目次

弁護士と公認会計士のダブルライセンスは希少性が高い

弁護士と公認会計士はどちらも難関資格ですが、両方の資格を取得している人材は日本にどれくらいいるのでしょうか。また弁護士が公認会計士資格を取得するケースはあるのでしょうか。

どちらも三大国家資格

弁護士(司法試験)と公認会計士はどちらも、三大国家資格に数えられる資格です。

三大国家資格とは、司法試験と公認会計士、医師の3つの難関資格のことをいいます。弁護士はいわずとしれた法律の専門家であり、公認会計士は財務・会計の専門家です。

弁護士と公認会計士はそれぞれに独占業務があるため、2つの資格があれば仕事の幅が格段に広がります。

ダブルライセンサーは日本でわずか100人程度

正確な統計はありませんが、弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得した人は日本でわずか100人~150人といわれています。

単なるダブルライセンスにとどまらず、難関といわれる2つの資格保持者ですから、希少性の高い人材であることは間違いありません。

公認会計士から弁護士が多いがその逆もいる

弁護士と公認会計士のダブルライセンサーのうち、大半は公認会計士が弁護士資格を取得しています。

公認会計士業界では、ほかの資格を取得して第二のスキルを武器にキャリアアップを図る人が多いためです。

公認会計士は弁護士と比べると業務内容が限定されるため、監査をある程度経験したら新たなチャレンジをしたいと考える人が多く、そのチャレンジとして弁護士を選ぶ人が多いようです。

一方、先に弁護士になってから公認会計士資格を取得する人も少ないながら存在します。この場合は業務範囲を広げるとか新たなチャレンジをするといった意味よりも、ダブルライセンスのメリットを意識して資格を取得するケースが多いでしょう。

弁護士と公認会計士のダブルライセンスが活きる場面

弁護士と公認会計士のダブルライセンスが活きるのは具体的にどのような場面なのでしょうか。

企業のM&A

M&Aのプロセスでは、成約に先立ちデューデリジェンスと呼ばれる買収対象企業の調査が行われます。

デューデリジェンスには財務や税務、法務、ITなどさまざまな種類があります。各デューデリジェンスは専門的な知識が必要なので、企業はその分野の専門家に依頼するのが一般的です。

財務は公認会計士、税務は税理士、法務は弁護士が実施するケースが大半でしょう。

弁護士と公認会計士のダブルライセンスがあると、法務と財務の両面を理解したうえで、2つのデューデリジェンスを一気に提供できます

法務と財務は異なる領域ですが相互に関連している部分も大きいため、2つの面を一度に分析できるのはメリットです。クライアントにとってもそれぞれの専門家に依頼・相談する必要がないため手間が省けてメリットが大きいでしょう。

少子高齢化により後継者不足が深刻化しており、それにともなってM&Aの需要も高まっています。弁護士と公認会計士のダブルライセンスがあればM&Aの需要に対応できるでしょう。

企業の不正・不祥事対応

企業の粉飾決算や不正・不祥事などが起きたときは財務資料の検討が必要なので公認会計士の経験・知識が活かせます。違法性の判断や損害賠償請求訴訟などに発展した場合は弁護士の経験や知識が活かせるでしょう。

民事再生

民事再生は経営に行き詰まった企業について、利害関係者の同意のもとに再生案を策定して事業の再生を図る裁判手続きのことです。

民事再生では法的手続きを使って会社を再生していくので、法律の知識が必要です。また再生案を検討するうえで会計の知識や税金の知識が必要なので公認会計士としての知見を活かせます。

損害賠償請求訴訟

企業の損害賠償請求訴訟では決算書を読む機会が多いため、公認会計士の知識が活かせます。訴訟対応や手続きはもちろん弁護士の専門分野なので、2つの専門知識を活かしつつ対応にあたれます。

相続相談

相続の場面では預貯金や株、不動産など金銭の分割が絡むケースが多く、公認会計士の知見を活かせます。相続人同士でもめてトラブルになることや法律上の問題が発生する場合も多いため、弁護士の経験も活かせるでしょう。

弁護士と公認会計士のダブルライセンサーの年収

難関資格の弁護士と公認会計士の両方があれば、さぞや高い年収を手にできるとイメージする方も多いかもしれません。ここでは弁護士と公認会計士の年収を比較しながら、ダブルライセンスの場合に年収がどのように変化するのかを確認しましょう。

弁護士と公認会計士の年収比較

年収は所属先や経験年数にもよるため一概に比較は難しいのですが、ここでは各業界の最高峰といわれる五大法律事務所とBIG4監査法人の初任給(初年度の年収)で比べてみましょう。

五大法律事務所の年収は入所1年目から1,000万円~1,200万円が目安といわれています。

BIG4監査法人は国際的な巨大会計事務所と提携している4つの監査法人のことで、年収は1年目のスタッフクラスで450万~650万円が目安といわれています。

両者の年収を単純に比べると弁護士のほうが高いわけですが、忘れてはならないのが就職難易度です。

公認会計士の場合は試験に合格すると多くの人がBIG4監査法人に就職しますが、五大法律事務所に就職できる弁護士はわずかです。採用基準が非常に高く、弁護士の中でもとくに優秀な人しか就職できません。

なお、弁護士が五大法律事務所以外の法律事務所で働く場合、初年度の年収は600万~700万円が目安です。そうなると弁護士と公認会計士の初年度の年収は大きく変わらないといえるかもしれません。

ダブルライセンスだからといって優遇されるわけではない

弁護士が公認会計士資格を取得しても、法律事務所で働く以上はほかの弁護士と同じ基準で年収が決まります。ダブルライセンスだからといって優遇されたり年収がすぐに2倍になったりするわけではありません。

もっとも、法律事務所としても法律・財務の両面からノンストップでサービスを提供できるため、ダブルライセンスをもつ人材は所内での評価が高まる可能性があります。

ダブルライセンスを活かした働き方をすれば年収アップが可能

弁護士は公認会計士のような会社員ではなく個人事業主なので、働き方の自由度が高いという特徴があります。

ダブルライセンスを活かす工夫をすれば年収は大幅に上げられるでしょう。たとえば法律事務所では個人案件の取得を許可されているケースがあるので、法律事務所で働きながら会計領域での仕事を引き受けるなどして年収を上げることも可能です。

またダブルライセンスを強みとして今よりも年収水準が高い職場へ転職することもできます。

たとえばM&A案件を多く扱う法律事務所やコンサルティングファーム、大手企業の経営企画室などで評価される可能性があります。

独立すれば差別化によりさらに大きな年収を得られる

公認会計士資格があることで、弁護士としての強み・武器を手にできます。これは当然弁護士として独立した場合も活きてくる部分です。

弁護士・公認会計士のダブルライセンスがある人材は希少なのでほかの法律事務所との差別化を図ることができ、さらに大きな年収を得られる可能性があります。

弁護士と公認会計士、ダブルライセンスのメリット

公認会計士は弁護士と同様に難易度の高い資格なので、苦労してダブルライセンサーになるメリットがあるのか気になるかもしれません。弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得するメリットについて解説します。

両方の専門性を活かした仕事ができる

企業案件では財務と法務は密接に関わっており、明確に切り離すのは難しい面があります。

そのような場面で、公認会計士が法律について調べても知識がないために調査内容が不足する場合があります。反対に、弁護士は数字が苦手な人が多いため法律案件で数字の問題がでてきたときなどは対応できない場合が少なくありません。

弁護士と公認会計士の両方の資格があれば、お互いの苦手分野を補完するとともに、2つの専門性を活かして業務にあたることができます。

また法律相談で会計面のアドバイスをするなど、ダブルライセンスだからこそより深く、質の高いサービスを提供できます。

両方の業界で人脈を広げられる

士業は業界内のつながりが深いため、ダブルライセンスがあると弁護士業界と公認会計士業界の2つで人脈を広げられます。両方の業界で人脈があればビジネスチャンスが広がるでしょう。

たとえば公認会計士の知り合いから法律案件を紹介してもらえるケースや、弁護士の知り合いから財務デューデリジェンスを紹介してもらえるケースなどがあります。

弁護士と公認会計士のダブルライセンサーは非常に少ないため、各業界の専門知識が必要になりそうな仕事であればピンポイントで指名・依頼を受けられるのではないでしょうか。

人脈が広がることでさまざまな人とコミュニケーションをとることができ、コミュニケーション能力の向上にも役立ちます。弁護士は社会人経験がないまま法曹界に入る人が多いですが、公認会計士は登録するために数年の社会人経験を積んでいます。

弁護士は公認会計士との人脈ができることで多面的に物事を捉えられるようにもなるでしょう。

クライアントからの評価・信頼を得やすくなる

ダブルライセンスがあることでクライアント側から見たメリットも大きくなります。

クライアントからの評価・信頼を得やすくなり、案件の獲得等ビジネスチャンスが広がります。たとえば会計面と法律面の両方の知見が必要な事件が発生したとき、クライアントは公認会計士と弁護士それぞれに依頼しなければなりません。

大きな法律事務所だと公認会計士と弁護士のそれぞれが所属しているケースもありますが、その場合でも少なくとも2人の専門家に相談する必要があるでしょう。

これに対して、弁護士と公認会計士の両方の資格があることでクライアントはひとつの事務所に依頼すれば済むため利便性が高まります

同じ案件で弁護士、公認会計士の両方から説明を聞く必要がないため時間も短縮できるでしょう。クライアントが支払う報酬についても2倍の報酬がかかるわけではないため、コストを削減できます。

社外取締役のニーズにも対応できる

コーポレートガバナンス・コードの改訂により企業が社外取締役を確保する必要性が高まっている中で、弁護士と公認会計士のダブルライセンスがあれば社外取締役のニーズにも対応できます。

社外取締役は企業法務に関する専門性やリスク発見能力等が必要となるため、弁護士との親和性が高いです。また財務データを扱うことが多く、ファイナンス領域の知識や監査法人対応の経験が必要になる場面もあるため、公認会計士の知見も活かせます。

より高い年収を得られる可能性がある

ダブルライセンスにより弁護士としての価値を高めることで、今よりも高い年収を得られる可能性があります。

弁護士と公認会計士、ダブルライセンスのデメリット

弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得するデメリットはあるのでしょうか。

仕事上のデメリットはない

弁護士が公認会計士資格を取得すれば、ここまで紹介したようなさまざまなメリットを享受できます。

ダブルライセンスによって相乗効果が生まれることはあっても、何らかの損をしたりリスクが生じたりといったことは基本的にありません。仕事上のデメリットはないといってよいでしょう

あるとすれば、ダブルライセンスの取得は簡単ではないため、その意味ではデメリットと考えることもできます。

登録できるまでに年数が必要

公認会計士試験に合格しても、すぐに会計士登録できるわけではありません。

2年間の実務経験および3年間の補習所通学を経て、修了考査に合格する必要があります。登録できるまでに年月が必要であり、その間は弁護士業務をしながら公認会計士の実務経験を積まなければなりません。

体力面の負担もあるはずなので、そこまでしてダブルライセンスを取得する意味があるのかは慎重に判断するべきでしょう。

また弁護士として働きながらの受験だと一度で合格できるとは限らないので、そもそも試験に合格するまでに年月を要する場合もあります。弁護士業務と公認会計士試験の勉強の両立は非常にハードなので、あまり長い期間をかけてもいられないでしょう。

弁護士として働きながら勉強するのは可能だが大変

司法試験に合格した弁護士であれば、公認会計士試験にも合格できる可能性は高いでしょう。どちらも難関試験ですが、一般に司法試験より公認会計士試験のほうが若干難易度は低いされています。

とはいえ、公認会計士試験が難関試験であることに変わりはなく、弁護士といえども簡単には合格できません。

弁護士として働きながら勉強する場合は時間的な問題や体力面の問題もあり、なおさら難しいはずです。通学は物理的に難しいため、通信講座などを活用して勉強に取り組むことになるでしょう。

弁護士が公認会計士資格を取得する難易度は?

公認会計士資格とのダブルライセンスを検討中の弁護士は、公認会計士試験の難易度が気になるところでしょう。司法試験や予備試験との難易度の違い、弁護士として働きながら資格取得が可能かどうかについて解説します。

公認会計士試験の難易度

近年の公認会計士試験の合格率は10%前後で推移しています。一方、近年の司法試験の合格率は22%~33%ほどです。これだけ見ると公認会計士試験のほうが難易度は高いように思えますが、受験資格に違いがあるため、単純にそう判断することはできません。

公認会計士試験には受験資格がないのに対し、司法試験は法科大学院修了者または司法試験予備試験の合格者のみが受験資格を得ることができます。

そして予備試験の合格率は例年3~4%前後で推移しており、司法試験が国内最高峰といわれる所以でもあります。

一般的には、司法試験予備試験と比べると公認会計士試験の難易度はやや下がるといわれています。

一方、司法試験と公認会計士試験で比べたときは、司法試験の難易度がやや下がるといわれます。そのため弁護士が公認会計士試験に合格できるかどうかは、どのルートで司法試験に合格したのかにもよるでしょう。

基本的には、弁護士であれば公認会計士試験にも合格できる可能性が高いと考えられます。

弁護士は科目免除を受けられる

公認会計士試験には一部科目免除制度があります。免除の条件には大学教授や一定の企業における実務経験者など複数ありますが、この中に弁護士資格すなわち司法試験が含まれています。

弁護士として働きながら公認会計士を取得するのは大変ですが、科目免除を受ければ負担を軽減できます。

弁護士業務をやめずに公認会計士資格を取得できる

公認会計士が弁護士資格の取得を目指す場合、働きながらというのはほぼなく、仕事を辞めて勉強に専念する人が大半です。弁護士になるための司法修習も9時~17時までなので、いったん監査法人や会計事務所を辞める必要もでてくるでしょう。

一方、弁護士が公認会計士資格を取得する場合、公認会計士の実務経験については非常勤で監査経験を積んで要件を満たすことが可能です。そのため弁護士業務をやめずに公認会計士資格を取得できます。

まとめ

弁護士と公認会計士のダブルライセンスを取得している人材は日本でごくわずかです。

希少性が高いため仕事上のメリットが大きく、年収アップにもつながる可能性があります。ただし弁護士として働きながら公認会計士資格を取得するには相当の努力が必要であり、体力的にも精神的にもハードな日々を送ることになるでしょう。

そのためやみくもにダブルライセンスを目指すのではなく、目的を明確にしたうえでチャレンジするかどうかを判断することが大切です。

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