司法試験_勉強法

司法試験は、文系最難関と呼ばれる国家試験です。

司法試験に合格すれば、司法修習という研修期間を経て、弁護士、裁判官あるいは検察官になることができます。

「司法試験に挑戦してみたい!けど、何から手をつけて、誰から教わればいいかわからない・・・。」

最初は、不安になりますよね。

合格者にいろいろ勉強法を聞いてみたけど、とにかく予備校に通えという人もいれば、基本書を読み込めという人もいる。はたまた、過去問だけやったら受かった!なんていう人もいる。なにが一番正しい勉強法なんだろう・・・。

そんな風に思う人もいるかもしれません。

自分が今やっている勉強で、法律の知識は頭に入るし問題はないと思ってた。けど、いざ問題を解こうとすると、よくわからなくなってしまう。自分の勉強法は間違っているのではないか。

勉強しているうちに、こんな不安に駆られる人もいるかもしれません。

司法試験に合格するために、一番正しい勉強法は何か。

このやり方で勉強すれば、必ず司法試験に合格できる!」そんな勉強法はないのでしょうか。

結論からいえば、

誰もがみな、これさえやれば司法試験に合格できる「正解」あるいは「方程式」が成り立つような勉強法は、存在しません。

しかし、1つ言えることは、あなたが司法試験に合格したとき、それまでにあなたが勉強してきたすべてが、あなたにとって司法試験に合格するための「正解“だった”」ということです。

つまり、司法試験の合格を目指す過程で、「正解」の勉強法を見つけること自体に意味はありません。

どんな勉強法であれ、あなたが合格すれば、それが1つの正解になります。

この記事では、

  • 司法試験制度
  • 司法試験で試されていること
  • やってはいけない勉強法
  • 必要な勉強法
  • 勉強のツールとその選び方
  • 勉強法を確立するまでのステップ
  • 科目ごとのざっくりとした勉強法
  • 司法試験に関するよくある疑問と回答

について解説します。

【執筆者】かわしょー吉
NO-LIMITのインターンを経験。令和2年司法試験合格。
令和元年司法試験予備試験最終合格。平成30年度司法試験予備試験では、口述試験落ちを経験。
趣味は釣り。カラオケも好き。宇宙系のyoutubeを見ることがマイブーム。
Twitter:https://twitter.com/kshokichi_law

目次

司法試験を受けるには条件がある

そもそも、現在の司法試験は、誰でも受けることができるわけではありません。

次の2つのいずれかの方法により、受験資格を得る必要があります。

1つは、法科大学院を修了することです。もう1つは、司法試験予備試験に合格することです。

第四条 司法試験は、次の各号に掲げる者が、それぞれ当該各号に定める期間において受けることができる。

一 法科大学院(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十九条第二項に規定する専門職大学院であつて、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいう。)の課程(次項において「法科大学院課程」という。)を修了した者 その修了の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間

二 司法試験予備試験に合格した者 その合格の発表の日後の最初の四月一日から五年を経過するまでの期間

引用元:司法試験法

以下、順にみていきます。

法科大学院(法曹コース)を修了する

 

2019年度以降に法曹コースの設置された大学に入学した人は、次のような新しいカリキュラムを受けられるようになりました。(参考:文部科学省|法曹コース3+2)

要点は、大きく2つです。

1:大学の法学部で法曹コースが設置された大学(法科大学院と接続している大学)では、法曹コースでいわば3年間必要単位を取得すれば、早期卒業の形で法科大学院に進学できる。

2:法科大学院在学中に司法試験を受験することができる。

なお、上記文科省のHPのQ&Aにもあるように、法曹コースに入らなくても、2018年度までの制度通り、法科大学院に既修者あるいは未修者コースのいずれかで入学者選抜を受けて、法科大学院に入学できます

予備試験に合格する

予備試験とは?

予備試験(司法試験予備試験)とは、法務省によれば次のとおりです。

 法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する途を開くために設けられた試験で,これに合格した者は,法科大学院修了者と同等の資格で司法試験を受験することができます。

 引用元:法務省HP|令和2年司法試験予備試験に関するQ&A

つまり、予備試験とは、法科大学院を修了する以外の方法で司法試験の受験資格を取得するための試験です。

そして、予備試験に合格すれば法科大学院修了生と同等の扱いを受けることができます。

試験の方法と科目

試験の方法は、短答式試験、論文式試験、そして口述式試験の3つです。論文式試験と口述式試験は、それぞれ、短答式試験の合格者と論文式試験の合格者に受験資格が与えられます。

試験科目は、各試験の方法により異なります。以下、各試験の概要とともに説明します。

短答式試験

実施日程は、例年、毎年5月中旬頃です。
(令和2年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止に伴う試験延期のため、それぞれの試験がおよそ3ヶ月ずつ日程がずれました)

試験科目及び試験時間は、次の通りです。

出典:法務省HP|令和2年度司法試験予備試験受験案内(延期前のもの)

このように、試験科目は、大きく法律基本科目と一般教養科目に分かれます。

法律基本科目では、公法系科目として憲法と行政法、民事系科目として民法、商法、そして民事訴訟法、刑事系科目として刑法と刑事訴訟法があります。合計7科目です。

一般教養科目は、例年、全42問~45問中、自分で20問を選択して解答します。

分野は、大きく分けて、人文科学、社会科学、自然科学、英語の4つです。各分野の中身は、およそ次のようなものです。

  • ・人文科学:古文、現代文(語彙と文章読解)、哲学
  • ・社会科学:歴史(日本史と世界史)、政治、論理、社会学、経済学
  • ・自然科学:数学(関数、図形など)、地学、物理、化学、生物
  • ・英語(リーディング):ボキャブラリー、長文読解

勉強の方向性としては、法律科目で7割から8割の点数を取れるように勉強するのがオーソドックスです。

一般教養科目、特に自然科学や英語は難易度が高く、特段の対策をする時間がもったいないくらいです。それよりも、法律科目で得点することを目指す方が、論文式試験の勉強も見据えたときに合理的です。

そのため、対策の方向性としては、特に一般教養科目で得点する自信がある人でない限り、基本的には次の2つの軸で考えるとよいです。

  • 法律科目だけで合格ボーダー(160~170点)を超える程度になる。
  • 法律科目でミスをして落としてしまう可能性のある点数の範囲を把握し、その範囲で一般教養科目の中で得点できる部分を得点しカバーできるようにする
論文式試験

実施日程は、例年7月中旬から下旬にさしかかるあたりです。試験科目及び試験時間は、次の通りです。

 出典:法務省HP|令和2年度司法試験予備試験受験案内(延期前)

論文式試験も、基本的には、法律科目及び法律実務科目(民事・刑事)で合格ラインに届くように勉強することが、定石です。一般教養科目でどんなに得点しても、明らかに前二者の得点のウェイトの方が高いからです。

具体的な対策は、後日、別途ご紹介します。

口述式試験

実施日程は、例年、10月の最後の土日の2日間で行われます。また、試験科目は、法律実務基礎科目(民事・刑事)です。

 出典:法務省HP|令和2年度司法試験予備試験受験案内(延期前)

場所は、毎年、新浦安が会場となります。服装は、スーツで受験します。

試験の形式は、面接のような問答形式です。主査と副査の2名と受験者1名です。基本的に、主査から質問を受けて、一問一答形式で答えます。

民事は、要件事実、民事執行・保全、民事訴訟手続の基本的な知識、訴訟活動などに関して簡易な事例をベースに出題されます。

刑事は、1つは、刑法の分野です。例年、1日目と2日目、どちらかで刑法総論もしくは各論の分野が出る傾向があります。

もう1つは、刑事訴訟手続です。基本的に、捜査、証拠、公判手続に関する分野からの問題です。細かい手続の知識が聞かれることもあるので、刑事訴訟規則の条文にも気を配って勉強する必要があります。

司法試験の構成は短答式と論文式の2つ

司法試験は、例年、5月中旬に行われます。

予備試験とは異なり、短答式試験と論文式試験が連続した日程の中で行われます。しかも、論文式試験が先で、短答式試験は最終日という日程が組まれています。

短答式試験

試験科目及び試験時間の内訳は、次の通りです。

  • 民法:75分
  • 憲法:50分
  • 刑法:50分

いわゆる上三法だけなので、対策する科目数としては、論文に比べて楽です。他方で、その分出題内容は、難易度が高いといわれています。そして、各科目および全体の点数それぞれ足切り点数が存在します

足切り以下の点数になると、論文式試験の答案が採点されず、その時点で不合格となります。

論文式試験

試験科目及び試験時間の内訳は、次の通りです。

科目

時間

選択科目

3時間

公法系科目第1問(憲法)

各科目2時間

公法系科目第2問(行政法)

民事系科目第1問(民法)

民事系科目第2問(商法)

民事系科目第3問(民訴法)

刑事系科目第1問(刑法)

刑事系科目第2問(刑訴法)

法律基本科目と選択科目があります。

選択科目は、倒産法、租税法、知的財産法、労働法、経済法、環境法、国際私法、国際公法の8科目があります。その中から1つを選んで受験します。

弁護士になるために司法試験で試されていること

司法試験は、文字通り、「試験」です。その過程で、法律学という学問を探求することになりますが、あくまで本番は「試験」です。

そして、後述のように、司法試験の合格者選抜は、合格者数が設定されたうえで、受験者を比較して、上から合格者数分の人を受からせるという形で行われます。

すなわち、「相対評価」です。

そのため、ほかの人より少しでも多く、また高い質で、試験で求められている能力を採点者に示すことができれば、合格することができます。

では、司法試験で試されている能力とは、何でしょうか。

司法試験は実務家登用試験

司法試験法3条によれば、司法試験で試されていることは、次のことです。

短答式試験

「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な法律知識及び法的な推論の能力を有するかどうかを判定することを目的と」する(司法試験法3条1項柱書,太字は筆者による)。

論文式試験

「裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な専門的な学識並びに法的な分析、構成及び論述の能力を有するかどうかを判定することを目的と」する(同法3条2項柱書)。

合格者選抜における視点

司法試験においては、その受験者が裁判官、検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を備えているかどうかを適確に評価するため、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、法律に関する理論的かつ実践的な理解力、思考力、判断力等の判定に意を用いなければならない同法3条4項)。

この規定からわかることは、次の通りです。

司法試験の規定からわかる3つのこと

短答式試験では、法曹(裁判官、検察官もしくは弁護士をいう。以下同じ。)になるうえで必要な専門的な法律知識及び法的な推論能力が試されている。

論文式試験では、法曹になるうえで必要な専門的学識とともに、法的な分析、文章の構成及び論述の能力を有するかどうかが試されている。

全体として、法曹になるため必要な学識及びその応用能力を備えているかどうかを適確に評価するため、知識を有するかどうかの判定に偏することなく、法律に関する理論的かつ実践的な理解力、思考力、判断力等の判定をする

司法試験は情報収集戦という側面も?

上記のように、直接法律上定められている能力とは別に、司法試験は、情報収集を反復継続的に行い、最新の情報をキャッチしつつ勉強に還元していく能力が試されているともいえます。

その理由は、様々ありますが、1つわかりやすいものは次のようなものです。

そもそも法律や判例というものが、常にアップデートされていくからです。司法試験で出題される科目に関する法律や判例のアップデートであれば、その情報収集は必須です。

例えば、毎年、有斐閣から重要判例解説と呼ばれる判例集(いわゆる重判)が出版されます。最高裁レベルのものから、地裁レベルのものまで、最新の重要判例に関してどのような論点があるのかなどを解説するものです。

必ずしも司法試験の出題に直結するものではありませんが、その科目・法律の重要な解釈論に関するものです

加えて、司法試験に合格し、法曹になった後も、業務を行う上で日々法令を調査することになります。

このような情報収集能力は、司法試験の勉強の過程で培われますが、法律という分野に限らず、日々社会の動向に対し意識的にアンテナを張ることで、向上させていくことが必要です。

司法試験合格に向けた5つの勉強法

常に条文を読む

これは、すでに述べたように、条文がすべての出発点だからです。条文に紐づけてあらゆる知識や思考、論証を整理しておけば、暗記したことを想起しようとしなくても、事実関係と条文を往復しながら、素直に問題に対してアウトプットをすることができるようになります。

常に法的三段論法で思考する

法的三段論法は、法律家の思考回路そのものです。つまり、思考を表現するときはもちろん、法律の知識をインプットする際にも活用すべき頭の使い方なのです。

よく法的三段論法で「書くこと」ばかりが着目されがちですが、法的三段論法は、インプットとアウトプット両輪で存在します。

4つのサイクルを意識する

体系的な全体像を把握する(マクロなインプット)

法律は、1つの条文だけで完結しません。複数の条文が、それぞれ単体で意味をもちつつ、他の条文との相互関係、位置づけが定まることで意味づけられ、その総体として1つの法律が存在します。

そのため、いち早く法律の全体像を把握することが、その法律を理解するための近道です。

例えば、民法という法律は、共通項となるルールを先に並べ、個別具体的なルールを後に並べるという構造です(いわゆるパンデクテン方式)。その理由は割愛しますが、この構造のもとでは、前の方に存在するルールを根本から理解するには、結局後の方の条文まで見渡さないと理解しにくいです。

よくあるのが、民法総則でいきなりルールの理解に苦しんで、10を理解しようと躍起になり時間を費やしてしまうことです。10のうち3から4程度が理解できていれば、その後、より多くの条文に触れていく中で、その理解が徐々に深まっていきます。

民法に限らず、体系的な全体像を把握するのが、インプットの際に大事な1つのポイントです。

とりあえず論文を書いてみる

インプットは、法的三段論法でいえば、大前提となる条文や理論の理解を広げ、深めるところにあたります。しかし、大前提部分ばかりをやったところで、結局小前提となる事実に対する適用を訓練しなければ、いつまでも使えない知識のままです。

そのため、前述のように、法的三段論法がインプットとアウトプットの両輪において機能することからも、アウトプットでどんどん思考回路を動かしていくことが重要です。

そこで、まずは簡単な事例問題を使って、法的三段論法を自分なりに使ってみましょう。その際には、はじめは旧司法試験を題材にすることを強くお勧めします。

なぜなら、簡易な事例問題でありながら、様々な論点を深く考察しつつ、論述をすることができるように問題が設計されているからです。

細かい知識の補充(ミクロなインプット)

論文を書いた後は、参考答案例などを読みつつ、「こんな知識知らなかった!」という点がないかどうかを把握します。知らなかった知識は、判例集や基本書等を読み深め、大枠の知識に補充していく形でインプットしていきます。

一応の正解筋を把握して書き直す

全体の正解筋を把握したら、書き直しをしてみましょう。

その際は、初めに書いたときに書けなかった部分が、事実関係から考えてなぜ抽出されるのかなどを1つ1つ確認しましょう。そうして正解筋の思考回路に迫っていくことで、事実の分析の仕方、条文から知識を引き出す方法などを習得できます。

よい答案のマネをする

合格者の書いた答案など、評価される答案は、どんどんマネしましょう。初学者が良い答案をマネる際には、3つのポイントがあります。

法的三段論法の表現の仕方

法的三段論法は、法律答案を書く際のエッセンスです。

しかし、実は意外と法的三段論法の型ができていないこともあります。よい答案ほど、法的三段論法で忠実に法的な思考を示せています。

1つひとつの議論で、シンプルに法的三段論法を示していくコツをつかむ近道となるでしょう。

ナンバリング・段落分けの仕方

司法試験の論文試験は、手書きで書いた文章を読ませる試験です。そのため、書いた文章を「目で読ませる」ことになります。

加えて、法律のロジックは、往々にして階層的な構造を持つことから、ナンバリングによりその階層構造を示す必要があります。

事実の使い方

法的三段論法でいえば、事実に法律を解釈適用する場面にあたります。具体的には、どのように事実を分析し、答案上どのように抽出し、どのような観点から法的評価を加えているかを考えることが重要です。

書いた答案の添削を受ける

書いた答案は、必ず添削を受けましょう。特に初学者は、自分でも後で直せないような表現のクセがついてしまう前に、合格者の人から添削を受けることが、基本です。

合格者にみてもらうべき理由は、単純です。合格者が、司法試験において必要な文章の構成、論述の際の言葉の使い方などを知っているからです。

司法試験の勉強を教わるなら誰から?

大学の法曹コースあるいは大学の課外講座

法曹コースが設定されている学生であれば、まずは法曹コースのカリキュラムに乗っかって、法律を学習していくのがよいでしょう。

分かりやすさの程度などは、教授によりきではありますが、その分野について研究をされている教授の講義は、学ぶものが多いです。

場合によっては、基本書を書いているような有名な研究者の講義を受講することができるかもしれません。その場合、自分で勉強したことを直接聞いたりすることも考えられます。

中には、大学内に課外講座が設置されている大学もあります。

そこでは、司法試験の合格者からの基礎講義のほか、答案練習会の開催や答案添削を受けることができるような手厚いサポートまでしている場合もあります。しかも、その場合の料金は、予備校の講座よりもはるかに安かったりすることもあります。

このような大学に所属する学生は、言うまでもなく、課外講座を利用するほかはありませんよね。

予備校(講師による講座)

予備校を受講することも考えられます。大多数の受験生は、試験対策的には、各種の講座や答練などを受講します。

とにかく最短距離で、試験対策を効率的に行い、集中して短期での合格を目指す方は、予備校の講座を受けるのがよいでしょう。なぜなら、司法試験を知り尽くした試験対策のプロが、司法試験に合格するために必要なことを教えてくれるからです。

特に、受験生目線で、勉強する上で、どこまで掘り下げて勉強することが必要で、どこからが試験対策上不要なのか、しっかりと棲み分けをしながら教えてくれるような講師の講座は有益です。

オンラインロースクールや質問箱(SNSを利用したもの)

オンラインロースクール

今では、SNSを1つのプラットフォームにしたオンラインロースクールというものもあります。

安田貴行さん【法律カフェ】

久保田康介さん(弁護士Youtuber)【リーガルマガジン】

「予備校に通いたい、けれどもその資金はない。とはいえ誰かに教わらないと不安・・・。」

そんな人には、ぴったりといえるでしょう。

質問箱

SNSを活用した勉強法と関連して、質問箱というものを利用することが考えられます。司法試験受験生界隈でシェアが高いものとしては、Peing質問箱があります。

https://peing.net/ja/

Twitterで質問箱を設置している予備校講師や合格者などをフォローして、いつでも積極的に分からないことを質問することができます。

特に、Peingで特筆すべき点は、匿名性です。名前などを明かすことなく、安心して、質問をダイレクトにすることができます。

司法試験の勉強・合格の為にどんなテキストを使えばいいか

「テキスト」について、一応の定義をしておきたいと思います。ここにいう「テキスト」は、科目もしくは分野ごとの概説書または体系書および問題演習書または問題集を指すこととします。

予備校出版のもの

予備校のテキストのメリットは、次のような点が挙げられます。

  • ・様々な基本書や判例集の重要な部分などが効率的にまとめられている
  • 講師の講座との連動や相互補完性がある場合がある
  • 論証集など一元化の素材となるものがある

他方、デメリットは、次のような点が挙げられます。

  • ・たまに不正確な引用・記述がある
  • いいとこ取りをしたような説明で、体系的な理解の上で困難が生ずることがある
  • 講座を受けないと理解できないような行間がある場合がある

基本書

受験生から一定の支持のある基本書のメリットは、次のようなものが挙げられます。

  • 体系的な理解がしやすい
  • 定義や基本的な制度理解が丁寧に書かれている
  • ・著名な学者による文章であるため、言葉や表現に対する信頼度が高い

逆に、デメリットは、次のようなものがあります。

  • 行間を読まなければいけない場合がある
  • ・著者の学者によっては、自説が強く、通説的な考え方の理解を妨げる場合がある
  • 文章を読むことが苦手な人には苦しい場合がある

テキスト選びで重要なこと

司法試験の勉強法自体に唯一の正解がないのと同様に、テキストの選択にも絶対的な正解はありません

予備校の出版物であろうと、基本書であろうと、あるいは両者を併用しようと、結局は、自分にあったテキストを探して、使い方を模索しつつ使うことになります。

ただし、次の3つのポイントを意識することをオススメします。

なるべく多くの受験生が使っているテキストを選ぶ

基本的な知識の内容は、言葉の使い方的にも、他の受験生と情報交換しつつ平準化することがベターです。

なぜなら、採点をする側が、何百通も論文式試験を添削する際に、ほかの多くの受験生が使用している言葉の使いかたと異なると、「ん?これはどういう理解だ?」と読みとどまってしまうおそれがあるからです。

また、読みやすさの指標としても、多くの受験生から支持されているものの方が無難です。

以下、定評のある基本書を、選択科目を除く7科目分、ご紹介します。

基本○○シリーズ|(憲法、行政法、刑法、刑訴) 日本評論社

通読用です。特に、刑法はシェアが高いです。行政法は、数年前まで、あとでご紹介するいわゆる「サクハシ」が一般的でしたが、現在は内容の網羅性と図表のわかりやすさから、シェアが急上昇しています。

憲法は、受験新報で連載されていた『憲法の流儀』でおなじみの伊藤建先生が、共著者として執筆されています。後半の事例問題のところが中心ですが、判例の射程の論じ方など実践的な憲法答案の書き方が、受験生目線で解説されています。

刑事訴訟法は、最近リリースされたものです。あとでご紹介する京大の酒巻先生の基本書ではレベルが高すぎるかも、という方におすすめです。

LEGALQUESTシリーズ(民法(債権総論・各論を除く)、会社法、民訴、刑訴) 有斐閣

通読用です。特に、会社法、民訴法、刑訴法のシェアが高いです。民訴は、ページ数が多いため、通読できなそうと感じる人は、辞書的な使い方もありです。

憲法

芦部信喜『憲法』第7版 岩波書店

通読用です。ただし、行間を読む必要がありますので、他の基本書との併用が必須です。

安西文雄・巻美矢紀・宍戸常寿『憲法学読本』第3版 有斐閣

通読用です。初学者段階から受験直前期まで、ずっと使える一書です。必要に応じて、副読本と併せて読めば理解が深まるでしょう。

通読と辞書的な使い方いずれも可です。「新四人組」と呼ばれ、いわゆる三段階審査論の思考回路をベースに、判例によったものなので、受験生的に使いやすいです。

いわゆる伝統的な四人組と呼ばれるものです。こちらは、網羅性が高いので、辞書的な使い方がベターです。

特に、憲法Ⅱは、短答式試験(本試験)の憲法で問われるレベルの細かい学説の知識について、間違えた問題を復習する際に効果的です。

行政法

櫻井敬子・橋本博之『行政法』第6版 弘文堂

通読用です。いわゆる「サクハシ」とよばれるものです。

ロースクール生を中心に一般的な基本書です。現在は、基本行政法派が急増していますが、なお定評はあります。

民法

以下ご紹介する基本書は、平成29年民法改正(債権法など)および平成30年相続法改正いずれも対応しています。

潮見佳男『民法(全)』第2版 有斐閣

通読用です。一冊で民法の全体像を学べます。ページ数は多いですが、比較的読みやすく、各分野のエッセンスが凝縮されています。

なお、債権法改正について部会資料などの説明を含めた解説は、この一書もおすすめです。

潮見佳男『民法(債権関係)改正の概要』 金融財務事情研究会

通読用です。民法の総則・物権(担保物権を除く)は、ロースクール生をはじめ、本書のシェアがかなり高いです。

松井宏興『担保物権法』補訂第2版 成文堂

通読用です。道垣内先生のものに比べて中身の濃さに見劣りを感じますが、記述は判例に沿っており、文章も平易でわかりやすいです。初学者におすすめです。

中田裕康『債権総論』第4版 岩波書店

通読と辞書的な使い方いずれも可です。潮見プラクティスと同様に、網羅性が高いです。

潮見佳男『プラクティス債権総論』第5版補訂 信山社

ページ数が圧倒的に多いため、辞書的な使い方をおすすめします。

通読用です。こちらは、プラクティス債権総論と比べると、ページ数は3分の1ないし4分の1と、読みやすいものになっています。

また、です・ます調で語り掛けるような文体であり、読みやすさがあります。

商法(会社法)

田中亘『会社法』第2版 東京大学出版会

※改訂予定あり

こちらは、ページ数が多いため、リーガルクエストと併用して、辞書的な使い方をおすすめします。

高橋美加・笠原武朗・久保大作・久保田安彦『会社法』第2版 弘文堂

※2020年11月下旬改訂予定あり

ページ数が多いですが、受験生目線で読みやすく、通読に向いています。

民事訴訟法

伊藤眞『民事訴訟法』第6版 有斐閣

辞書的な使い方をおすすめします。図や表がないので、文章で理解できない人、文章から自分なりに図式化するなどして理解できない人にはおすすめしません。

中野貞一郎・松浦馨・鈴木正裕『新民事訴訟法講義』第3版 有斐閣大学双書

こちらも辞書的な使い方をおすすめします。

刑法

ページ数的には読み疲れない程度かと思いますが、レベルが高いので、辞書的な使い方をおすすめします。

現職の最高裁判事であられることから、山口先生の基本書を使っておけば、近時の判例の理解に役立つメリットがあります。

どちらかというと通読向きです。部分的に自説が濃いところがあるので、基本刑法と相互補完的に使用するという使い方も効果的です。

辞書的な使い方をおすすめします。判例・通説的な部分と自説の部分の区別をしにくい部分がある点に、注意が必要です。

裁判所職員総合研修所監修『刑法総論講義案』4訂版 司法協会

読みやすく、通読向きです。司法研修所のものなので、判例実務に親和的です。

刑事訴訟法

酒巻匡『刑事訴訟法』第2版 有斐閣

辞書的な使い方をおすすめします。

池田修・前田雅英『刑事訴訟法講義』第6版 東京大学出版会

酒巻に比べると、通読に向いています。

上口裕『刑事訴訟法』第4版 成文堂

辞書的な使い方をおすすめします。

以上ように、通読用もしくは辞書的に、あるいは予備校のテキストなどと併用しながら使うと効果的です。

演習書や副読本・雑誌などは、別途記事にして解説します。

通読できる量で、何回も読み込むことができるような1冊を軸にする

前述したように、法律は、体系的に全体像をいち早く把握したうえで、細かい知識を肉付けしていくことで、理解が深まりやすい性質があります。

そのため、テキストを選ぶ際も、とにかく早く法律の全体像・構造を見渡せるような一書を選び、何回も読み深める形で使うものがあるとよいです。

プラスαを2冊程度まで用意する

加えて、副読書として、細かい知識や理論まで説明しているようなものを決めておくと、網羅性が高まります。

 

以上のポイントを意識しつつ、テキストを選びましょう。

 

司法試験の勉強法を確立するまでにやったこと

合格までの勉強をプランニング

まずは、現状の自分の職業やライフスタイルなどに合わせて、司法試験の受験資格を得るための2つのルートのうちいずれかを選択しましょう。そして、司法試験合格の目標期限を設定しましょう

予備試験であれば、最短1年で合格したうえで、翌年の司法試験で合格するという1年半程度のスパンもあります。

一発合格に固執せず段階的な成長を目指すならば、短答式試験合格レベルになるまではいつ、論文式試験合格レベルになるまではいつというように目標を設定することが考えられます。

法曹コースであれば、学部3年+法科大学院2年(既修)といったものもあります。非法学部から法科大学院を目指すのであれば、法律学習の素地の浅深により、既修もしくは未修いずれかを選択し、2年もしくは3年スパンで受験資格を得ます。

ここでは、あくまで中長期的なスパンでの目標を定めるのがよいです。

そのうえで、合格までにすべきこととそのために必要な勉強内容、そしてかかる時間をおおよそ算出したうえで、自分のライフスタイルとすり合わせて現実的な勉強計画を具体化する、といった具合に具体化していきましょう。

基礎講座等の受講及び答練への参加

勉強計画を立てたら、基礎講座の受講や答練に参加し、インプットとアウトプットの両方をバランスよく進めていきましょう。

特に、答練への参加は、自分が目標達成にどのくらい近づいているのか、常に観測を怠ることなくチェックしていくことが重要です。

過去問を解く

あらゆる資格試験で共通しますが、最終的に、自分が試験に合格するレベルの知識や思考力、表現力があるかどうかをチェックするには、過去問演習が必須です。

過去問で問われた内容、問題の形式などは、必ず押さえておく必要があります。

そして、特に、予備試験等を含め司法試験の論文式試験では、出題趣旨というものが出されます。出題趣旨は、問題文の事例設定の趣旨、出題者側がどのような解答筋やポイントに触れることを想定して出題をしたかという、いわばネタバラシです。

また、司法試験の論文式試験では、採点実感というものもあります。採点実感は、試験委員が採点を行った際に、受験者の答案を読んで得た感想を、いい点悪い点様々述べるものです(基本的に、文句ばかりです(笑))。

最近の年度のものは、比較的、答案の水準というものを示している科目があります。その内容をみて、ざっくり、内容的に評価される答案がどのようなものかを知ることができます。ただ、実際のところは、再現答案をみながら、分析しないとよくわからないです。

このように、問題を解き、出題趣旨・採点実感を読みつつ、再現答案を分析して、合格答案のイメージをつかんでいきます。

直前期の対策

直前期は、いかに自分が限られた試験時間の中で、問題文を読み、解を導き出して確実に合格点をとることができるかを考え、細かく実践的な方法を確立するための勉強をします。

そのため、テキスト等の手を広げるのではなく、勉強するものを限定していくことが必要です。

司法試験科目ごとの勉強法をざっくり説明

総論として、全科目共通して、勉強法の基本は、まず条文を読むことです。加えて、判例をしっかりと学習しましょう。判例を学習する意義は、何か。

それは、端的にいえば、具体的事実に対して法を解釈適用する思考回路と論理の組み立てかたを学ぶことです。

より具体的に言えば、法的三段論法の型と、法解釈の具体的な手法を修得しつつ思考回路の根底にある法の理論的な枠組み、その捉え方を深めることが判例学習の目的です。

その上で、各科目により、判例学習の上での注意点、具体的なポイントは異なりますが、ひとまず総論としての判例学習は、上記の意義があります。

また、条文や判例を読み深めるだけではなく、理解するための補助として基礎知識・理論的な制度設計を、基本書等で学びます。

以上が、総論的な法律の勉強法です。

ここから、さらに各論的に、法律基本科目の学習法についてお話していきます。

なお選択科目は、別途記事にしたいと思います。

憲法の場合

憲法は、おそらく、法曹を目指すか否かにかかわらず、多くの人が義務教育の中で勉強したことがあると思います。

国民主権ですよとか、三権分立という概念がどうとか、国会で法律を定めてとか、法の支配がどうとか、そういった点は、なんとなく前から知ってるという人も多いと思います。

憲法には、国民主権などの総論部分のほかに、大きく人権論と統治機構論があります。いずれも重要ですが、本記事では人権論に絞って、ポイントを解説します。

人権論の学習のポイントは、思考のフレームを活用して、知識を整理していくことです。憲法の人権問題を考える際の思考フローは、4つのファクターがあります。

  1. 誰の
  2. いかなる憲法上の権利が
  3. いかなる国家行為により
  4. どのように制約されているか

というものです。

1から4の区分を例に、具体的に知識の整理の仕方について、解説します。

1誰の

いわゆる人権享有主体性に関する議論です。天皇、外国人、法人などに関する議論です。

2いかなる憲法上の権利が

思想良心の自由、信教の自由、表現の自由といった個々の権利・自由の類型ごとの内容に関する整理です。学習の際は、権利の内容と性質を意識するとよいです。

そして、そもそも憲法上の権利として保障されるのかどうか(例えば、報道の自由と取材の自由の憲法上の保障の違い)という議論も、②で整理するとよいでしょう。

なお、平等原則は、実は権利論と毛色が異なる議論がありますが、差し当たり②の中の1つとして整理しておきます。詳細は、今後別途記事にします。

3いかなる国家行為により

権利に対する制約の根拠、形式に関する議論です。合憲性審査の対象設定を検討する際にも活用します。また、そもそも国家行為による制約ではない問題領域として、いわゆる私人間効力の話が位置付けられます。

4どのように制約されているか

制約の具体的な態様、性質に関する議論です。例えば、表現の自由でいえば、内容規制・内容中立規制、間接的付随的制約などの区別により、合憲性判断基準の設定の仕方が変わるといったような議論です。

このほかにも、様々特殊な議論の領域や区別の仕方がありますが、1から4をもとに知識や思考方法を整理するとよいです。

なお、いわゆる違憲審査基準に関する議論は、上記1から4の分析を踏まえた論証事項です。詳細は、ここでは割愛し、別途記事で解説します。

行政法の場合

行政法は、司法試験的には、おおよその学習フローがあります。

  1. 行政事件訴訟法をはじめとした行政救済法を学習する
  2. 個別法解釈の基盤にある行政法の理論を学習する
  3. 問題演習を積む→過去問中心

そして、初めの段階は、①と②を広く浅く学習した上で、早い段階で③の問題演習の量をこなしていくことがおすすめです。

行政法は、答案の型さえつかめれば、司法試験的には点数がつきやすい科目特性があります。

また、何より、行政法は、「行政法」という名の法律はなく、様々な行政法規たる個別法の仕組みを読み解く能力が試されています。個別法の解釈手法は、過去問の蓄積がある分、過去問を用いて演習をこなした方が効率的に身につきます

処分性や原告適格,行政裁量などの典型論点について、最低限の処理手順をインプットしたら、アウトプットを中心に過去問で問題演習を積む。

そして、細かい理論的な知識などのインプットは後付けで補充していきましょう。

民法の場合

民法は、法律学習の中で、最も基本的な思考回路を修得できます。それは、法律要件と法律効果です。

基本的に、どの法律も、最もシンプルに構造を説明すれば「ある法律要件を満たせば、一定の法律効果を生ずる」という構造になっています。

民法は、特にその構造が分かりやすい科目です(刑法の各論分野も、同様です)。

例えば、売買契約(民法555条)は、売主と買主の間で、目的物の財産権を移転する合意と代金支払の合意の2つについて申込みと承諾が合致することが成立要件です。

そして、その成立要件が満たされれば、売主は買主に対し売買契約に基づく代金支払請求権が発生します。また、買主は売主に対して売買契約に基づく目的物引渡請求権が発生します。

民法には、様々な条文がありますが、ほとんどはこの要件効果の構造で存在します。そのため、勉強の際には、常に法律要件と効果の2つを意識しましょう。

条文を読んで、法律要件は何か、条文の文言に照らし要件を構成する要素の中で何が問題となるのか、法律効果はどのような趣旨に基づくのかなど、細かく分析して自分がどの次元の議論をしているのかを確認しつつ勉強するようにしましょう。

商法の場合

商法(会社法)の学習のポイントは、3つあります。

1:条文を細部まで読むこと

細部というのは、かっこ書きなどを読み飛ばしたりおろそかにせず、丁寧に読むということです。

会社法は、民法に次いで条文数が900条を超えるような膨大な量に及びます。そして、主要論点にあたる条文を含め、民法に比べて、かっこ書きを含んだものがたくさんあるからです。

典型的には、株式の公開・非公開、機関設計によって条文が変わるパターンです。

具体的に2つご紹介しましょう。1つは、新株発行無効の訴えの出訴期間制限です。

第八百二十八条 次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。

 二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内

2 略

この規定によれば、公開会社による新株発行は、株式発行の効力発生日から6か月以内とされますが、公開会社でない場合は1年以内という違いがあります。

取締役会の招集通知

第三百六十八条 取締役会を招集する者は、取締役会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対してその通知を発しなければならない。

2 以下略

この規定によれば、取締役会設置会社という機関設計の場合は各取締役に対する招集通知で足りるが、監査役設置会社の場合は各取締役だけでなく各監査役に対しても招集通知の発出が必要になります。

このように、条文を丁寧に読むことが、学習の上で重要になります。

実体的な権利関係の問題と手続の問題を棲み分けしながら知識を整理すること

実体的な権利関係の問題は、例えば、取締役の会社に対する損害賠償責任(いわゆる任務懈怠責任)の成否があります。これは、民法と同様に、法律要件と法律効果という思考方法をベースに知識を整理していきます。

商法(会社法)の中で特殊な点は、実体的な権利関係の問題に手続に関する規律が絡むことです。

例えば、会社が保有する財産等を考慮したときに膨大な額の金銭を借用する場合は、「多額の借財」というものにあたる場合があります(会社法362条4項2号)。「多額の借財」にあたる場合、会社は、取締役会の決議により承認を得るという手続を経なければなりません(同条同項柱書)。

もし仮に、取締役会の承認を経なければ、金銭消費貸借契約の効力をどのように考えるかについて、上記条文上明らかでないため、解釈が問題となります。

このように、会社法では、実体法上の権利関係と手続の規律が交錯に留意して、知識を整理していくことが重要です。

会社の機関設計と会社内部の人との関係を整理すること

2つ目の点と関連して、事実関係を整理する際に、会社でどのような法的問題があるかを正確に把握するには、まず会社の機関設計を確定する必要があります。なぜなら、会社の組織内の登場人物の属性や、会社が一定の取引等を行うために必要な手続が異なるからです。

会社法の学習の際は、まずは以上の3つのポイントを意識してみてください。

民事訴訟法の場合

民事訴訟法は、「眠素」といわれるように、眠くなるほどとっつきにくい科目であると言われます。

他方で、非常に理論的で、ロジカルな思考が試される科目特性があり、ロジカルシンキングが高まっていくと底なしの面白さがあるような科目です。

学習のポイントは、大きく3つあります。

1:民訴法の理論を理解すること

民訴の理論的な部分は、多くが、条文にそのまま書かれて存在するというより、理論的な考え方が様々な形で個々の条文に反映されているイメージです。そのため、処分権主義や弁論主義など、民訴法のバックボーンとなっている理論を丁寧に理解した上で、個々の条文にある制度を誓いしていくのが基本的です。

2:実体法である民法の知識が非常に重要

民訴法上の様々な問題点は、いわゆる要件事実論を媒介として、あらゆる場面で民法の基礎知識と理解がベースになっています。例えば、訴訟物理論は、民事訴訟法の体系的な理解の基礎になります。

ここからの詳細は割愛しますが、要件事実を理解できなければ、民訴の根本的な部分を理解できずにニガテ意識を生む原因になります。

3:具体例で理解すること

民訴は、抽象的な基礎理論が最も重要な要素です。抽象的であるからこそ、自分の理解の中に落とし込むには、基本書等にある典型的な具体例を使って学習するのが重要です。ここで大切なのは、抽象的な理論を構成する要素が、具体的な典型例の中にどのように結びついているかを考えて勉強することです。

刑法の場合

刑法は、日ごろのニュースにある犯罪・事件でイメージがわきやすいかと思います。学問的には、大きく犯罪論と刑罰論の2つに分かれます。

司法試験の勉強の上での中心は、犯罪論になります。刑罰論は、実務的に重要ですが、あまり細かいところの理解は、少なくとも論文式試験では問われません。

犯罪論は、どのような事実が揃えば「犯罪」という構成要件に該当する違法かつ有責な行為にあたるのかを考えていくものです。

学習のポイントは、刑法総論と各論それぞれ1つずつあります。

犯罪の成否を検討するフローと議論のフィールドを整理すること

犯罪とは、構成要件に該当する違法かつ有責な行為をいいます。つまり、犯罪の成否は、構成要件該当性、違法性、責任の3つが認められるかどうかを判断する作業です。

構成要件該当性は、刑法の各法条に書かれた内容(犯罪によっては、理論的に導かれる書かれざる構成要件というものもあります)について、充足性を検討するフローです。

手始めに勉強する際は、刑法総論として、構成要件要素を勉強しましょう

例えば、主要なものでいえば、行為の主体、客体、犯罪の結果と行為との因果関係、故意・過失があります。また、構成要件要素は、個々の犯罪によって異なります。

そして、構成要件は、違法かつ有責な行為を類型化したものです。そのため、構成要件に該当すれば、違法性及び責任も認められるというのが、刑法の建前です。

そのため、違法性や責任は、これらを否定するような事由の有無を検討する作業になります。

例えば、違法性でいえば正当防衛(刑法36条1項)があり、責任でいえばいわゆる14歳未満の子どもは罰せられないという責任年齢(刑法41条)などがあります。

このように、刑法の総論分野を勉強することで、まずは犯罪の体系を理解しましょう。ちなみに、総論分野の一番のヤマは、共犯理論の理解です。詳細は、別途記事にします。

犯罪構成要件を分析的に整理し、定義などを暗記すること

民法にいう法律関係の発生・変更・消滅の要件と効果は、刑法に置き換えれば、犯罪構成要件と犯罪の成否にあたります

そのため、要件論として、犯罪構成要件の内容を理解することがポイントになります。いわゆる刑法各論分野の学習ですね。

刑法各論分野の学習では、常に保護法益と条文の文言、そして構成要件要素は何かを頭におくことがポイントです。保護法益は、刑法がある犯罪類型に該当する行為を処罰することで守ろうとしているものをいいます(例えば、殺人罪でいえば、人の生命が保護法益です。)。

この保護法益に立脚して、条文の文言がどのように解釈されるのかといった思考回路で勉強すると、理解が進みやすいです。¥

刑事訴訟法

刑事訴訟法は、大きく分けて、捜査、公訴提起・公判手続、証拠、裁判という4つに分かれます。司法試験で頻出という意味で中心的な分野は、捜査と証拠です。

もっとも、実務を含めて考えると、どの分野も基本的な知識・理論を正確に理解しておく必要があります。

ここでは、捜査と証拠分野について、学習のポイントを解説します。

捜査では、基本的に、ある捜査行為の適法性が問われます。これは、刑法と同様に、問題となる捜査行為を特定し、刑事訴訟法の定めるルールに反していないかを検討するという思考回路が基本です。

証拠の収集保全手続(捜索差押え等)と身体拘束手続(逮捕・勾留)、そして被疑者の権利(接見交通権)といった問題領域を押さえつつ、令状主義など憲法の条文と絡めて大きなバックボーンを正確に理解しましょう。

証拠は、伝聞法則、自白法則、そして違法収集証拠排除法則という大きく3つの柱があります。伝聞法則は、刑法でいう共犯理論と同様に、これを理解していないと司法試験に合格できないというくらい死活的に重要ですので、様々な問題領域を細かく整理し、正確に理解しましょう。

また、根本的な理解のためには、実務的な視点として、例えば証拠構造の理解がポイントになります。直接証拠や間接証拠(情況証拠)といった概念の理解、それぞれの関係性などを理解できると、応用のきく思考を身に着けることができます。

司法試験の勉強でやってはいけないNGなこと3つ

条文を読まない

これは、意外とやってしまいがちで、かつ一番やってはいけないものです。なぜ、いけないのか。それは、法的三段論法の大前提部分が欠落しているからです。

法律家は、条文こそがすべての出発点です。共通言語である法律を通して、初めて権利などを主張し、相手を納得させることができるのです。条文なくして法律を語ることは、そのような共通言語を無視して会話することと同じです。

そもそも、どの法律のどの条文の、どの文言について、どのような解釈論が問題となるのか、自分の頭の中に法律を体系化させるためには、条文を読むことが必須です。

実際の試験との関係でも、論文式試験では基本的に条文を自由に参照することができますから、条文を読むことで、知識や考え方を想起できれば、どんな問題でもなんとか一定の解を導くことできます。

闇雲に語句や論証の暗記に走る

条文を前提として、基本的な知識や理論に関する思考方法を暗記したところで、それをどのような場面で、どのように事実に対して適用できるのかを「理解」することができなければ、使えない知識で終わってしまいます。

あくまでも、法律は、具体的な事実に対して、適切に適用することによってはじめて機能します。そして、社会の事象は無限に存在するので、1つのケースにあてはまっても、異なるケースでそのままあてはまるとは限りません。

そのため、特定のケースに対する論証を覚えたところで、様々な問題に対応することはできないのです。

つまり、暗記したものをそのまま単にアウトプットする能力だけでは、司法試験に合格することはできません

書いた答案の添削を受けない(復習しない)

論文式試験は、ある事例問題に対し法律を解釈適用し、それを文章として言語化し、内容を採点者に伝えるという作業です。

そのため、知識以前に、正確でわかりやすい日本語を文章で書くことができなければ、司法試験に合格することはできません

実務家としても、書面や口頭で様々な人と法的なコミュニケーションをとることになります。言語で、自分が考えていること、思っていることを人に正確に伝える能力が求められます。

そうすると、自分が言っていること書いたことが人に伝わっているのかどうかを確認するには、必然的に、自分が書いたことや言った言葉を、客観的に他人に読んでもらう必要があります。

そして、自分が文章で伝えようとしていることは、思っている以上に正確に伝わっていません。

司法試験の勉強に関してよくある疑問と回答

司法試験の勉強って月300時間~500時間という記載が多いが、どれが正しいのか

どれが正しいというものはありません。

強いて言えば、時期によっては、そのくらいの勉強時間が必要になることがあります。冒頭でもお話ししたように、司法試験の勉強法に正解がないのと同様に、勉強時間として何時間やれば司法試験に合格できるという数値的なものはありません

筆者も、正直、司法試験受験までの勉強の中で、月300時間という1日に換算すれば10時間以上の勉強を1日も欠かさず継続していたわけではありません。

試験直前期や基礎力をつけるときには、10時間以上やっていたこともあります。他方で、勉強以外のことに注力して経験を積んでいた時期もあります。

大切なのは、
自分がいつまでに合格したいのか、今どの程度法律の専門知識や法的思考力があり司法試験合格レベルとどの程度距離があるのか。

合格までの距離感から考えたとき自分がやるべき勉強は何か。どのくらいの時間をかければ自分のライフスタイルに一番適合する形で勉強を継続できるのかを具体的に考える
ことです。

上記の時間は、あくまで目安程度に認識しておけばよいと思います。

司法試験は独学で合格できますか?

できます。実際に独学で合格された方は、いらっしゃいます。詳細は、独学に関するこちらの記事をご参照ください。

 

短答と論文と口述のどれに一番力を入れるのが良いですか?

予備試験の一番のヤマは、論文式試験であるといわれます。

司法試験でも同様ですが、論文・文章で法律の専門知識や法的思考力を表現できるように勉強していくことが基本です。なぜなら、法律家は、文章(書面と口頭いずれも)でコミュニケーションをとるからです。

そのため、論文式試験の対策を軸に、勉強していくのがよいでしょう。

そして、短答・論文・口述いずれも、切り離されたものではなく、すべてつながりをもったものとして対策することが重要です。

論文で事実関係から正確に論点を抽出し、説得的に論証するには、文章力を前提として短答式試験で合格できる程度の知識が必要です。口述式試験は、会話形式で、瞬発力をもって法律知識を引き出し、口頭で文章化して相手に端的に論述するスキルが必要になります。

いずれも、つながっているのです。

今どの程度の実力があるのか分かりません。何か実力を測る方法はありませんか?

  1. ①単に自分自身の実力を客観的に知りたいのか
  2. ②自分が他の予備試験もしくは司法試験受験生との間でどのレベルの層にいるのか

という実践的な位置関係を知りたいのかという目的によります。

①であれば、自分が論文答案を書いたうえで合格者による添削を受け、あるいは短答式試験の過去問を解いてその採点をするという方法で目的を達することができます。

もっとも、前者は必ずしも数値ができません。

他方、例えば司法試験の過去問を使って起案して添削を受ける際に、出題趣旨及び採点実感をふまえた答案のレベルの評価をお願いすれば、添削者の能力によりきですが、合格者であればおおよその目安を示すことができると考えられます。

②であれば、予備校等の答練や模試を受ける方法をお勧めします。

予備校の答練は、例えば伊藤塾のペースメーカー論文答練(いわゆるペー論)では、形式上絶対評価ですが、添削に多数の受講者がどのような論述をしていたかなどをコメントしてくれる場合があります。そのようなコメントがあれば、自分がほかの人に比べて書けたのかかけなかったのか、知ることができます。

模試では、素点評価や採点者による点数のばらつき調整(いわゆる得点調整)を踏まえた、自分の位置を把握することができます。もっとも、ある程度母集団が多いものでなければ、参考にならないかと思います。

母集団の多さという観点からすれば、司法試験でいえば、TKC模試(伊藤塾と提携)か辰巳模試の2択です。

おすすめの基本書はありますか?

本文でもご紹介しましたが、私は、このようなラインナップで使っていました。

あくまで一例です。

  1. 憲法:芦部憲法、憲法学読本
  2. 行政法:サクハシ
  3. 民法:佐久間(総則・物権)、松井(担保物権)、潮見プラクティス(債権総論)、潮見イエロー(債権各論)、リークエ(親族・相続)
  4. 商法:リークエ、江頭
  5. 民訴法:リークエ、伊藤
  6. 刑法:井田(総論)、西田(各論)
  7. 刑訴法:酒巻

入るならおすすめの予備校はありますか?

筆者は、予備校の講座を受講しておりませんでしたが、もし選ぶならアガルートをおすすめします

理由は、教材がオリジナルでかつ引用などが丁寧で信用性が高く、網羅性も高いこと、LINEでの受講相談などフォローアップが充実していることです。詳しくは、こちらの記事もご参照ください。

良い論文を書くコツを教えてください。

まず、どのような起案が「良い論文」なのかという点を考えておく必要があります。

それは、考え方にもよりますが、問いに答えていること、全体最適であること(すべての設問に答え、できる限り多くの事実を抽出して考察できていること)、法的三段論法を徹底できていることの3であると考えています。

その理由は、今回は割愛し、また別途記事にしてご紹介します。

そのような良い論文を書くコツは、3つがポイントだと考えています。

良い論文を書く3つのポイント

1つは、配点比率と設問の内容を分析することです。設問の内容を把握し、配点比率を押さえることにより、1つひとつの設問での点数の限界値を読み取ります。

2つ目は、事実関係と設問を何回も往復して検討することです。事実関係と設問を往復することで、設問の中で、どのような論点についてどの程度の配点があるかを分析します。
その配点割合を推測する際の1つの指標として、事実関係をどう使うかを考えます。

3つ目は、条文と事実関係を何回も往復して検討することです。法的な知識あるいは法的な思考力を用いて具体的にどのような問題をどのように検討して解決してほしいのかを、条文と照らし合わせて把握する作業です。

 

この3つのポイントを意識すれば、配点の所在を具体的かつ正確に把握し、書くべき論点をもらすおそれが少なくなります。後は、三段論法で、正確な日本語を使って文章を書くだけです。

なお、もっと具体的に知りたいという方は、こちらの記事もぜひご一読ください!

まとめ

長々とお話し、読みつかれてしまったかもしれません(笑)。さしあたり、特に以下の5つのポイントを押さえて、勉強してみてください。

  1. 1. 常に条文から考える
  2. 2.法的三段論法を徹底する
  3. 3.できる限り多く合格者や他の受験生とのつながりを持つ
  4. 4.自分なりの合格までのプランを立てる
  5. 5.科目ごとの特性を理解して勉強する

冒頭でお話したように、司法試験に合格するための勉強法は、1つではありません。

あなたが司法試験に合格したとき、あなたが合格するまでに歩んだ道が、これから先、同じく法曹を志す人の道となります。

あなたにしか歩めないその道を、あなたにしか描けない合格の形を、思うがままに歩み、描いていかれることを、願ってやみません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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