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5つの項目でみる司法試験の合格率|難関・合格が難しいとされる理由を詳しく解説

更新日: 公開日:

最難関国家試験ともいわれる司法試験ですが、合格率も相当に低いのだろうと思う人は多いかと思います。

しかし、現時点で最新である2019年の司法試験合格率を確認してみると、なんと33.6%

参考:司法試験合格者の状況|日本弁護士連合会

意外にも高い合格率でビックリする人も多いのではないでしょうか。こんなに高い合格率にもかかわらず、最難関国家試験とは変な話ですよね。

実は現在の司法試験の合格率が比較的高めなのには訳があります。

この記事では、さまざまな項目別での司法試験合格率を紹介するとともに、現在の合格率が比較的に高い水準を誇る理由を解説します。

 

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項目別でみる司法試験の合格率

冒頭でお伝えした33.6%という合格率ですが、「たまたまその年だけ高かった」「高偏差値ロースクール卒業生ばかりが受けているから」など、さまざまな予想が浮かぶかと思います。

実際、高めの合格率がどのような内訳によるものなのか、項目ごとにわけて確認していきましょう。

実施年度ごとの合格率推移

実施年度ごとの司法試験合格率の推移は以下の通り。

【新司法試験合格率の推移】

新司法試験合格者数の推移

引用元:司法試験合格者の状況|日本弁護士連合会

【旧司法試験合格率の推移】

実施年度 受験者数 合格者数 合格率
2005年 39,428人 1,464人 3.71%
2004年 43,367人 1,483人 3.42%
2003年 45,372人 1,170人 2.58%
2002年 41,459人 1,183人 2.85%
2001年 34,117人 990人 2.90%

参考:旧司法試験第二次試験出願者数・合格者数等の推移|法務省

現行の司法試験が行われるようになったのは2006年からのこと。受験者数の少なかった最初の2年※を除き、合格率は20%~30%台で推移しています

※2006年及び2007年には、まだ予備試験は存在せず(2011年より実施)、ロースクール1期生、2期生しか受験資格を満たす人がいなかったため。

ここ数年は受験者数が減少していることもあり、合格率は増加傾向にあります。

他方、2006年より前の旧司法試験時代の合格率はおおむね2~3%台で推移していたので、数字だけを見ると新司法試験の難易度が低いように思うかもしれません。

しかし、実際は試験の難易度が下がったわけでなく、試験制度や方針が変わったことの影響が大きいといえます。

法科大学院別の合格率

司法試験の受験資格を得るには、法科大学院を卒業するか、予備試験に合格しなければなりません。

基本的には法科大学院経由で受験生がほとんど。となると、法科大学院別の合格率が気になるところです。

2019年度司法試験における法科大学院別の合格者数TOP10と合格率は以下の通り。

法科大学院名 受験者数 合格者数 合格率
慶應義塾大 300人 152人 50.6%
東京大 238人 134人 56.3%
京都大 201人 126人 62.6%
中央大 384人 109人 28.3%
早稲田大 252人 106人 42%
一橋大 112人 67人 59.8%
大阪大 112人 46人 41%
神戸大 130人 44人 33.8%
明治大 162人 26人 16%
北海道大 104人 25人 24%
予備試験合格者 385人 315人 81.8%

参考:令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等|法務省

受験者数がもとより少ないこともあって、合格率は良くても6割。ですが、受験生の2人に1人が最難関国家試験に受かっていると考えると、十分に高いといえるでしょう。

特筆すべきは、予備試験合格者の合格率。8割という合格率は各法科大学院を大きく引き離しており、司法試験の最短合格には、予備試験経由がよいとされるのも納得です。

性別ごとの合格率

まず性別による司法試験の合格率ですが、合格者数も含め男性が女性を上回っています。

【直近5年のデータ】

実施年 受験者数 合格者数 合格率
2015年 男性:5,922人
女性:2,094人
男性:1,451人
女性:399人
男性24.5%
女性19.1%
2016年 男性:5,080人
女性:1,819人
男性:1,212人
女性:371人
男性23.9%
女性20.4%
2017年 男性:4,409人
女性:1,558人
男性:1,228人
女性:315人
男性27.9%
女性20.2%
2018年 男性:3,784人
女性:1,454人
男性:1,150人
女性:375人
男性30.4%
女性25.8%
2019年 男性:3,189人
女性:21,277人
男性:1,136人
女性:366人
男性35.6%
女性28.7%

参考:司法試験合格者の状況|日本弁護士連合会

合格率に男女差がみられる具体的な理由は明確には分かっていませんが、女性のほうが「家事に時間をとられて勉強しにくい」「家族の協力を得にくい」「体力面で劣る」など複数の要因が指摘されています。

また女性の場合、出産・育児に関する不安から法曹を仕事として選びづらいといった指摘もあります。

年齢別の合格率

司法試験は受験資格さえ満たしていれば、年齢に関わらず受けられる試験です。

なので、合格者の年齢層も幅広く、2019年の試験ではもっとも若い人で20歳、上は65歳でした

とはいえ、合格者の平均年齢が28.9歳なので、体力的にも時間的にも余裕がある若い人のほうが、合格できる可能性は高いといえます。

実際、合格者の具体的な年齢層は予備試験経由の人しか確認できませんが、やはり若い世代のほうが合格者・合格率ともによいといえます

【予備試験経由の2019年度司法試験合格者】

年齢層 受験者 合格者 合格率
20~24歳 158人 155人 98.1%
25~29歳 52人 47人 90.3%
30~34歳 40人 31人 77.5%
35~39歳 41人 29人 70.7‘%
40~44歳 28人 16人 57.1%
45~49歳 32人 22人 68.7%
50~54歳 20人 9人 45%
55~59歳 9人 4人 44.4%
60~64歳 3人 2人 66.6%
65~69歳 2人 0人 0%
合計 385 381 81.8%

参考; 令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等|法務省

受験回数別の合格率

司法試験は最難関の国家試験ともいわれることもあって、合格に複数回受験することも少なくありません。

2019年度司法試験の受験回数別の合格率は以下の通り。

受験回数 受験予定者 合格者 合格率
1回目 1,805人 884人 48.9%
2回目 1,077人 282人 26.1%
3回目 858人 139人 16.2%
4回目 705人 108人 15.3%
5回目 454人 89人 19.6%

基本的に1回目受験者の合格率がもっとも高く、そこあら受験回数を重ねるごとに合格率は下がっていきます。

2019年度に関しては、5回目受験者の合格率が多少盛り返しているものの、勉強に時間をかければ、受かるような単純な試験ではないということです

また、司法試験は年に一度しか行われないので、次の試験までモチベーションを維持し続けるのも簡単ではありません。

司法試験は最大5回まで受けられるとはいえ、合格率から考えると、1回目の試験で必ず合格するという気概で臨んだほうがよいでしょう。

 

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司法試験の合格率はなぜ高め?

旧司法試験では2~3%台であった合格率が、現行の試験制度に移行して以来、20~30%で推移しています。

なぜ現行の司法試験制度が、これほど高い合格率なのかというと、その要因は主に2つ。

  • 受験資格が設けられたため
  • 司法制度改革により法曹の拡充が図られているため

それぞれ確認していきましょう。

受験資格が設けられたため

現行の司法試験になってから合格率が高い要因の1つ、は受験資格が設けられたことによって、誰でも受けられる試験ではなくなったことです。

現行の司法試験制度では、受験に「法科大学院課程の修了」または「予備試験に合格」のいずれかを満たしている必要があります。他方、旧司法試験は誰でも受験が可能でした。

現行の司法試験では、受験時点で受験生の選抜がある程度なされているため、合格率も高めとなっているわけです。

司法制度改革により法曹の拡充が図られているため

現行の司法試験で合格率が高いもう1つの要因は、司法制度改革で法曹の拡充が図られるようになったからです。

日本は諸外国と比べると法曹人口が少なく、また、今後多様化・高度化していく法的需要に対応するには、大幅な法曹人口の増加が急務であるとし、司法試験合格者を増やす目標が立てられました(2010年頃は3000人)。

参考:法曹人口の拡大及び法曹養成制度の改革に関する政策評価書|総務省

下記を見てもわかる通り、新司法試験制度導入後から合格者数が増えています。

司法試験合格者数の推移

引用元:司法試験合格者の状況|日本弁護士連合会

※画像の2006年新司法試験制度導入の赤線は、本来だともう一つ左にズレます。

ただ近年は司法試験受験者が減少傾向。そのまま高い合格者数の輩出目標を維持してしまうと、法曹の質が低下する懸念があることから、2016年以降は1,500人程度が一つの目途とされています。

参考:法曹養成制度改革の更なる推進について|文部科学省

そのため、国としての方針も現行司法試験の合格率を高めている要因といえるでしょう。

司法試験が難しい理由

合格率が高めだからといって、決して司法試験は簡単ではありません。まれに合格率だけを他の資格試験と比較して、簡単だと勘違いする人がいますが、大きな間違いです。

この項目では、司法試験が難しい理由を解説します。

受験資格を満たすだけでも大変なため

何度か説明していますが、司法試験は受験資格を満たしていないと受けることはできません

そして、この受験資格を満たすことが、まず普通の人には高いハードルといえます。

受験資格の取得方法は「法科大学院課程を修了」または「予備試験を合格」の2つ。

「法科大学院課程を修了」受験資格の一般的な取得方法ですが、既修者コースなら2年、未修者コースなら3年の通学が必要です。

単位を落とせば当然卒業できませんし、2年または3年分の学費も支払わなければなりません。

法科大学院に通い続けるだけの経済力や根気が求められます。

「予備試験を合格」する方法に関しては、例年合格率3~4%の試験を突破しなければいけないといえば、難易度の高さがわかるでしょう。

【予備試験】

実施年度 受験者数 合格者数 合格率
2015年度 10,334人 394人 3.8%
2016年度 10,442人 405人 3.8%
2017年度 10,743人 444人 4.1%
2018年度 11,136人 433人 3.8%
2019年度 11,780人 476人 4.0%

参考:司法試験予備試験の結果について|法務省

このように司法試験は受験資格を満たすだけでも大変です。

試験範囲が非常に広いため

試験範囲の広さも司法試験合格を難しくする理由の一つ。

試験では、法律基本7科目と呼ばれる、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法に加え、選択科目1つの合計8科目の知識が問われます。

しかも、基礎知識や判例だけでなく、学説についても把握する必要があるので、非常に範囲は膨大です。

もちろん、ただ知識があればよいわけでなく、論文式試験もあるので、解答を作り出す能力も求められます。

合格にあたり、少なくとも5,000時間の勉強が必要と言われていることからも、試験範囲の広さがうかがえます。

試験が長丁場に及ぶため

試験が長丁場であることも、司法試験の難易度を上げる要因の1つでしょう。

資格試験というと1日で終わるイメージが強いかと思いますが、司法試験はなんと4日間にわたって行われます。試験を4日受けるだけでも大変なのに、長い日だと試験時間が休憩合わせて9時間以上、短くても約6時間に及びます。

試験中はかなりのプレッシャーにさらされることを考えると、受験生には勉強ができるだけでなくタフさも求められているといえるでしょう。

司法試験に合格するには法科大学院ルートと予備試験ルートどっちがいい?

これから法曹資格の取得を考えている人にとって気になるのは、法科大学院ルートと予備試験ルートのどちらで司法試験合格を目指すべきかではないでしょうか。

受験にあたりそれぞれ状況が異なるので、どちらがよいとは一概にはいえませんが、通学が困難である特段の事情がなければ、法科大学院ルートがよいでしょう

いくら予備試験経由の司法試験合格率が高いとはいえ、予備試験自体の合格率は3~4%で、合格者も300~400人程度です。決して確実性のあるルートとはいえません

他方、法科大学院ルートは上位3校に絞れば、合格率は50%以上

【法科大学院経由の司法試験合格率】

法科大学院名 受験者数 合格者数 合格率
慶應義塾大 300人 152人 50.6%
東京大 238人 134人 56.3%
京都大 201人 126人 62.6%

参考:令和元年司法試験法科大学院等別合格者数等|法務省

しかも、法科大学院の受験者数は減少傾向にあり、司法試験合格率の高い上位3校ですら、入試の競争倍率は2~3倍程度です。

しっかりと準備・対策をして入試に臨めば、十分に合格が期待できます。

【司法試験合格率上位3校の2020年度入試競争倍率】

法科大学院名 出願者数 合格者数 競争倍率
慶應義塾大 905人 415人 2.18倍
東京大 590人 232人 2.54倍
京都大 522人 170人 3.07倍

参考:

また、予備試験に関しては法科大学院在学中の受験もできますし、2023年からは一定要件を満たした法科大学院生は司法試験の在学中受験が可能となります

参考:司法試験、在学中の受験も可能に 2年短縮、最短で6年|朝日新聞

法科大学院経由でも予備試験経由でも、司法試験に合格してしまえば一緒です。合格を目指すうえで最適なルートを選びましょう。

まとめ

現行の司法試験制度に変わって以来、合格率は20~30%前後で推移しており、一見すると高めに感じる人も多いでしょう。

しかし、決して試験の難易度が下がったわけではなく、受験資格が設けられたことと国の政策方針によるところが大きいといえます・

そのため、依然として最難関国家資格であることには変わりなく、合格するには日常生活の大半を勉強に費やすほどの覚悟が必要となるでしょう。

 

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