弁護士専門の転職エージェント「NO-LIMIT」です。
今回は、NO-LIMITでインターンをしていた「司法修習生」の方に、弁護士になるにあたって、法律事務所への就職活動をどのように行っていたのかを記事にしていただきました。就職活動において知っておくべきことややるべきこと、どんな基準で法律事務所を選んでいたのかをすべて解説しています。
是非、参考にしてみてください。
【執筆者】かわしょー吉
NO-LIMITのインターンを経験。令和2年司法試験合格。
令和元年司法試験予備試験最終合格。平成30年度司法試験予備試験では、口述試験落ちを経験。
趣味は釣り。カラオケも好き。宇宙系のyoutubeを見ることがマイブーム。
Twitter:https://twitter.com/kshokichi_law
目次
まずは法律事務所の種類を知る|街弁、五大、中小一般民事/刑事、企業法務系
五大法律事務所
日本には,五大法律事務所がありますよね。司法修習生はほとんどの人が知っているかもしれませんが,五大法律事務所は,次の5つの法律事務所です。
- 西村あさひ法律事務所(NA)
- 森濱田松本法律事務所(MHM)
- アンダーソン毛利友常法律事務所(AMT)
- 長島大野常松法律事務所(NOT)
- TMI総合法律事務所(TMI)
各事務所の詳細なポイントは,当サイトのこちらの記事が参考になります。
- 五大法律事務所の特徴について
- NAの特徴と求人概要|業務や年収・採用情報など
- MHMとは|取扱業務や年収・採用条件など
- AMTの転職・就職の概要|年収・求める弁護士像・キャリアパス
- NOTの取扱業務や年収は?採用・転職情報や口コミも紹介
- TMI総合法律事務所の転職情報とは|概要・取扱業務や評判・年収情報まで解説
外資系
外資系法律事務所は,英国系,米国系,中国系の3種類があります。
- 英国系:クリフォード&チャンス法律事務所・外国法共同事業,外国法共同事業法律事務所リンクレーターズ
- 米国系:ベーカー&マッケンジー法律事務所,ホワイト&ケース法律事務所,外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所,モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所
- 中国系:金杜外国法事務弁護士事務所
準大手企業法務系
準大手の代表例は,いわゆる大阪の四大法律事務所,シティユーワ,渥美坂井法律事務所・外国法共同事業が挙げられます。いわゆる大阪四大と呼ばれるのは,次の4つです。
- 大江橋法律事務所
- 御堂筋法律事務所
- 北浜法律事務所
- 淀屋橋・山上合同法律事務所
また,歴史がある著名な事務所としては,岩田合同法律事務所,中村合同特許法律事務所,ユアサハラ法律特許事務所,梶谷綜合法律事務所が挙げられます。
中小法律事務所
大手あるいは準大手の企業法務系事務所出身の弁護士が設立した中規模・小規模の法律事務所は,次のような事務所が代表的です。
- 三浦法律事務所
- 島田法律事務所
- 中村・角田・松本法律事務所
- 桃尾・松尾・難波法律事務所
- 日比谷パーク法律事務所
総合型法律事務所
取扱案件が多種多様で,所属弁護士の人数が,五大法律事務所や準大手法律事務所に匹敵するような事務所もあります。全国展開で,都市圏をはじめ郊外の市街地区域に多数の支店を擁する事務所です。
代表的なものは,次のような事務所です。
- アディーレ法律事務所
- ベリーベスト法律事務所
- ALG Associates
新興系
新興系は,比較的新しい先端分野に取り組んでいる,あるいは新しい形で顧客獲得を行うような事務所などです。取扱案件の面でいえば,法律事務所ZeLo・外国法共同事業,GVA法律事務所などが代表的です。
個人事務所
個人事務所は,取扱案件の種別を問わず,代表弁護士1人が所属している事務所です。募集をかけずに一人で業務を行っておられる弁護士の方々もいますが,新人弁護士の採用活動を行っている事務所も数多くあります。
インハウスローヤー(企業等就職)
弁護士資格を持ちつつも,企業や官庁に就職するキャリアもあります。大手企業としては,業界的には総合商社,メガバンク,IT系メガベンチャー,証券会社,外資系コンサルなどがあります。
また,最近は,ベンチャー企業でも法務への意識が高まっており,様々な業界のベンチャー企業において採用が高まっています。中小企業でも,求人サイトでは非常に少ないものの,エージェント経由で中小企業の法務求人がある場合もあります。
司法修習生の就活はいつから始める?
就活の開始時期は,事務所の種類ごとに異なります。募集をかける時期,選考フローなどが異なるからです。
五大法律事務所,外資系法律事務所,準大手企業法務系法律事務所
これらの事務所は,司法試験前に就活を始める必要があります。就活とはいっても,いきなり事務所説明会や個別訪問をするというわけではありません。
五大法律事務所等では,基本的に法科大学院生や予備試験合格者向けに,サマークラークもしくはウィンタークラーク,ないしはインターンシップを募集しています。
これらは,採用活動の一環です。実務の仕事にトライさせてみて,実力やポテンシャルがある者を予め見定めています。その後,司法試験後の段階でエントリーされた段階で,過去のサマクラやインターンシップの参加歴がチェックされ,サマクラ等の参加の際における成果などが検討されます。
したがって,1つの重要な要素として,サマクラ等の参加の有無,その際の成果が挙げられます。五大法律事務所等に入りたい場合は,サマクラ等に参加できるかどうかが1つの重要なポイントです。
サマクラ等に参加していなくても,司法試験の順位,予備試験の合否および順位,ロースクールや学部での成績その他能力的なアピールポイントがあれば,十分に採用の可能性があります。
その上で,五大法律事務所等は,司法試験前から直後にかけて,エントリーを募集しているところがほとんどです。そのため,実際のエントリーなどは,司法試験前から直後にかけて行う必要があります。
中小規模企業法務系法律事務所
中小規模の企業法務系事務所は,司法試験直後から司法試験合格発表後に募集をかけています。事務所により異なる部分が多いため,確実な情報を入手したい場合は,アットリーガル,ジュリナビなどの大手求人サイトで情報をキャッチする必要があります。
また,一部では,サマクラ等を募集しているところもあります。個別に情報を収集してエントリーすることは,アドバンテージになります。
なお,場合によっては,司法修習の弁護修習中に声がかかるというケースもあるようです。仮に,修習前の段階で内定が決まっていなくても,希望を失う必要はありません。
新興系
企業法務系は,法律事務所ZeLoのようにサマクラ等を行っている事務所もあります。五大法律事務所等出身の弁護士が開設した事務所では,そのような傾向にあります。
そして,エントリーの受付は,司法試験直後からあります。司法試験前からエントリーシートをドラフトしておくことが必要になるでしょう。
総合型は,採用人数も数人単位ではなく,数十人規模であることから,司法試験直後から司法修習開始頃まで募集を受け付けているところもあります。
いずれにしても,司法試験の受験後から具体的に動き始めるのが妥当といえるでしょう。
個人事務所
個人事務所など,小規模な街弁の事務所では,採用活動の期間に制限を設けていないところがほとんどです。シンプルに,お互いにベストマッチすれば採用するという考え方です。時期的な意味では,焦る必要はありません。
他方,採用人数に達した時点で採用終了ということになります(基本的に,採用人数は「1名」であったり「若干名」とされているような場合です)。悠長にしていると,無自覚に時期を逸する危険もあります。
志望する事務所なのであればもちろん,少しでも興味があるのであれば,思い立った時点でエントリーしましょう。
地方と一都三県ならどっちが良いか?
一都三県は選択肢が広い
法律は,基本的に個人や会社を規律するものです。そのため,人口が集中している地域は,それだけ紛争や取引に関するリーガルマターも多数存在します。
実際に,法律事務所や企業の数も一都三県の方が圧倒的に数があります。
地方は街弁向け
大手の企業などが都市部に集中している分,地方では,顧問先の案件を除いて,コーポレートなどの高度な企業法務案件を取り扱う事務所はほとんどありません。基本的には,個人の一般民事案件を中心とする街弁がほとんどです。
一都三県以外でも,愛知,大阪,福岡などの都市圏では,中小企業や一部大企業が集中している地域もあります。そういった地域では,企業法務を開拓していくことも十分に見込めることでしょう。
筆者の就活体験記|就活の軸と流れ
筆者は,司法試験受験後から就活を開始し,法律事務所は25,企業は5つ応募し,最終的には中部地方のとある法律事務所から内定を頂きました。
1つの例として,就活体験記をお話します。
定立した4つの条件
自己分析の結果,私が立てた条件は次の4つでした。
まず,①成長できる環境です。具体的には,自分が積極的に提案できる環境,主体的に案件に関わり1つの案件を遂行できることと,法律以外の分野への志向があることです。また,人的な要素としては,キャリアモデルとなる人がいるかどうかを重視しました。
次に,②人間的な面でフィットするかどうかです。具体的には,事務所の所属弁護士ないしバックオフィス,あるいは社員同士の人間関係が職位に拘束されないことです。
③事務所において未開拓の法分野に挑戦できることです。具体的には,IT法務と先端ビジネス,ベンチャー支援,ルールメイキングに挑戦できる環境があることです。
④ワークライフバランスです。具体的には,育休が取得できること,夜間・休日勤務などについて先輩弁護士等からの圧力がないことです。
その他,収入の面で上限がないこと,初年度から経営に参画できることなどを条件に掲げていました。
失敗の連続
司法試験受験後の9月から就活を始めました。まず,エントリーしたのは,6つの事務所でした。その中で,筆者は,大本命の法律事務所の書類審査が通り,面接へとリズムよく選考が進みました。その法律事務所は,国際的なM&Aなどを中心に取り扱う先進的な企業法務専門の法律事務所で,上記のいずれの条件からしても理想的な法律事務所でした。
しかし,結果は,一次面接を通過できず,お祈りされました。
それ以降,私は,特に行きたいと心から思える事務所がなかったため,応募した法律事務所の数も少なく,書類審査で落ちたり,最終面接まで辿り着いても,ミスマッチが露呈され内定がとれない状況が続きました。
ようやく出た内定!しかし・・・
その後,とある総合型の法律事務所から内定が出ました。
しかし,先輩弁護士の方や,その法律事務所に勤務する先輩からお話を伺う中で,自分の条件にもっとこだわりをもって就活する必要があると思い至りました。
このままでは,後悔する選択になると直感しました。そこで,司法試験合格前に内定が出たものの,内定を辞退しました。
再出発!期限を決めた
司法試験合格発表後,再度就活を始めました。まずは東京三会の説明会に参加し,企業とインハウスを問わず,企業法務系の法律事務所,渉外系法律事務所の説明会にほぼすべて参加しました。
10の法律事務所と4の企業にエントリーシートを提出しました。
そのうち5の法律事務所と2の企業で書類選考を通過しました。法律事務所は,4つの事務所で,二次面接以降まで進みました。ところが,その中で本命の法律事務所は,落ちました。私は,やはり実力がなかったものと思い,非常に落ち込みました。
最後に転機が
しかし,最後,当初入所を考えていなかった事務所から,訪問の段階で内定オファーを頂きました。唯一,地方で応募していた中部の法律事務所でした。
取扱い分野といった点では,志望とは異なるものでした。しかし,所長の器量,IT法務への志向,初年度から天井無しの報酬と経営への参画など,様々な点で魅力がありました。
上記の条件にも沿うものでした。
最終的に,私は,オファーを受諾しました。
修習生が就活で成功するには
正解はない
前提として,就活において,一定不変の正解はありません。究極的には,自分と相手先がお互いに納得できるかどうかです。
そして,志望する法律事務所や企業が自分を必要とするかどうか,一緒に働きたいと思うかどうかは,最終的には相手先の事情によります。そのような相手先の事情をコントロールすることは,不可能です。
したがって,やるべきことは,①自分自身を緻密にプレゼンすることと,②いかに自分が志望する法律事務所や企業にフィットし,貢献できるかを見せることにあります。この点において,一般的な民間企業における就活と大差はありません。
最終的には,志望する法律事務所や企業が求める人物像と自分自身がマッチすると判断するか(されるか)どうかです。
「成功」は,その定義づけの内容次第
就活における「成功」をどのように定義するかにもよりますが,ここでは,一応の定義づけとして,「自分が主観的に納得でき,かつ客観的にみて自分の定立した条件に合った進路を掴むこと」とします。
なお,「主観的に納得できる」進路とは,『ここで働きたい!』と心から思う法律事務所や企業です。したがって,人それぞれ,就活における成功は異なります。そのため,自分にとっての成功を定義づけする必要があります。
徹底した自己分析と業界研究
自分にとっての成功を定義するには,自分が社会で何をしたいのか,自分がどのようなことにこだわりがあり,究極的には何が一番幸せかを深堀りする必要があります。そのために必要となるのが,自己分析です。
一例として,自己分析をする際,私は,次の6つのステップを辿りました。
- ①過去・現在・未来の時間軸を意識すること
- ②過去の行動や経験を思いつく限り時系列で列挙する
- ③②の中で特に強い感情が行動に現れたものを抽出する
- ④③のシチュエーションの共通点を抽出
- ⑤④を抽象化
- ⑥⑤を法律業務や案件の分野にあてはめる(現在と未来)
①から⑥に従って,量→質という意識で取り組むと洗練されたものになります。一般的な企業就活のサイトも参考になりますので,ぜひ参照してみてください。
異質化を図る
説明するまでもなく,ただ弁護士であるというだけでは,生き残ってはいけない時代です。良い事務所に入りたいのであれば,それだけ他の人との競争も必至になります。
その際に,差別化を図る要素は,ロースクールの成績,予備試験・司法試験の成績といった学力的な側面もありますが,今はそれだけでは足りません。
弁護士であること自体の価値が希釈化している以上,いかに自分自身の付加価値があるかが重要です。いかに自分が他人と違う付加価値があるか,どのように社会に還元するか・できるかを明確にすることで,差別化を図ることができます。
そのためには,他の人と共通する点を排除していく必要があります。
例えば,自分が努力家であるということを自己PRに書くとします。そのためのエピソードとして,「司法試験に合格するために1日10時間以上,毎日勉強した。」というようなエピソードが具体的に考えられます。
しかし,司法試験に合格するために1日10時間以上勉強すること自体,何も特別なことではありません。毎日勉強することも,大して評価されません。なぜなら,司法試験に合格する人は,誰でもその程度の勉強をするからです。
したがって,こうしたエピソードは,司法試験合格者との相対化される場面では役に立たないので,排除する必要があります。
自分と並ぶ就活生が皆経験しているような類のエピソードは,捨てましょう。そうすることで,自分にしかないエピソード・強みが浮き彫りになります。
失敗すること
就活は,トライ&エラーです。書類審査が通らなかった,面接で上手く自分をプレゼンできなかった,結果,お祈りメールを受けた。もちろん,自分自身の原因があることもあります。
しかし,必ずしもそうではありません。他に,相手先にとってマッチした求職者がいたというだけです。そして,それは自分でコントロールできる事情ではありません。
むしろ,失敗の中で,次は履歴書のこの記述の表現を変えてみよう,人に読んでもらってもっとフィードバックを受けようとするきっかけにすればよいのです。
面接での失敗も,場数をこなす中で話し方に慣れてきます。失敗の中で前進していることを忘れないようにしましょう。
こだわり抜くこと
納得のいく就職を目指していても,限界がくる場合もあります。自分の中で決めた就職先の条件が全て満たされるとは限りません。そこで,重要になるのが,「ここだけは譲れない」という条件を明確にすることです。
内定がもらえないことが続くと,心が疲弊し,投げやりになってしまい,どこでもいいや!となってしまうこともあります。
本当に,どこでもいい!となってしまうと,実際に働き始めた後で,こんなはずではなかった,こんな仕事やりたくない,と後悔することにもなりかねません。
自分の中で,ここだけは譲れないこと,やりたくないことを明確にし,その消極的な条件だけは満たすようにすれば,最終的には納得のいく進路をつかみ取ることができます。
弁護士専門の就活エージェント利用
司法修習生の就活でも,弁護士業界に特化したエージェントを利用することは有益です。
ここでは,メリットとデメリットをお話するとともに,エージェントを利用した方がいい人がどのような人かをお話します。
メリット
特筆すべきメリットは,業界の内部事情を踏まえた情報収集をすることができる点です。
弁護士業界は,就活事情が大きく異なります。法律事務所の多くが数十人規模を採用する計画ではないこと,ボス弁との相性など人間的にマッチするかどうかなど属人的な要素も多分にあることなど,特殊性がたくさんあります。
そのため,一般的な企業就活のエージェントよりも,弁護士業界に精通するエージェントの方が,より適切なアドバイスを受けることが期待できます。
デメリット
基本的にデメリットは,ありません。エージェントからは,情報を得ることはあっても失うことはないからです。そうすると,多くのエージェントから情報を得るほどよいように思えます。
他方で,様々な意見や情報を収集する中で,自分に最適な情報であるかどうかの選別をする基準があいまいになるおそれもあります。エージェントに「依存」してしまうことには,リスクがあるということに留意が必要です。
こんな人はエージェントに徹底的に頼るべし!
自分が目指している方向性が漠然としている、どんな法律事務所に行くのが最適か分からない,なかなか内定がもらえない,そんな悩みを抱えている人であれば,一度はぜひエージェントを利用するべきでしょう。
私も,自分の目指す法律事務所や適性が明確になっていると思い込んでいました。しかし,そう自信にあふれているときほど,内定が取れませんでした。
どのような内容の悩みでも,いかなる段階にあっても,行き詰ったら,一度客観的なアドバイスとして,弁護士専門の就活エージェントに相談してみることが必須です。
編集後記
彼は司法試験の成績もよく、私たちがサポートさせて頂いたのはごくわずかだったかもしれません。自己分析には多少悩んでいたようですが、自分が弁護士として何がしたかったのかは明確に持っていました。
NO-LIMITのアドバイザーからは、気になった事務所の内情や代表弁護士の人柄、面接のコツはサポートさせていただきましたが、最終的に内定・就職を決めたのは彼の実力であり、納得がいく結論を出せたように思います。
彼の言葉に「自分の目指す法律事務所や適性が明確になっていると思い込んでいた」という一文がありましたが、これは修習生に限らず、経験弁護士の方にも多く見られる傾向ではありますので、こういった点を一度フラットな視点で考えてみたいという方は、是非NO-LIMITにご相談ください。
サービス名の通り『弁護士の転職に限界を作らせない』サポートをお約束します。