企業法務(きぎょうほうむ)とは、企業活動を行う際に付随する法律業務全般のことで、その企業の法務部が弁護士と協働しながら仕切ることが多いです。

日本では、業界ごとの規制緩和が進んだことにより、各企業が自らの責任で企業活動がしやすくなりました。しかし、その分企業の責任も重くなり、法律に抵触するリスクも増えています。

法律違反を犯し、裁判で負けてしまうなんてことになれば企業の大きく信用を落とすこととなります

信用力を落とすことで取引先に取引を拒否される可能性もありますし、上場企業の場合は株価が暴落した場合は資金調達にも影響が出て企業の存続にも関わります。

このような点で企業法務を重視することは企業活動において非常に大切なのです。

本記事では、企業法務の役割や企業法務の具体的な仕事内容、企業法務の分野で働く方法について紹介します。

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企業法務とは

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目次

企業法務の必要性

まず、企業法務の必要性と役割について紹介します。

組織の体制構築・統制との親和性

企業経営は、会社の組織の体制構築、管理・運用が肝心です。組織の体制構築には、事業を実行するための意思決定の仕組み、意思決定を実行するための人的・物的な組織化が必要です。一般的かつ基本的な事項として、共通して必要な事項は、後述のような会社法等の法令によって定められます。

そのため、会社経営のための組織体制構築に最低限必要な事項は、会社法を中心とする法務が必要になるのです。

また、経営の管理・運用に関しても、事業活動そのものを指揮することだけでなく、財務・会計、労務、知財、資金調達、債権回収など様々な要素があります。業務執行の過程では、個々の取引における営業から、契約交渉、取引のクロージングに至るまで、広範です。

それぞれ異なった専門性やスキルが必要ですが、全般的に、法律が関わります。したがって、経営上の管理・運用でも、法務が欠かせません。

コーポレートガバナンスと事業最適化が密接に関連する

近年は、コーポレートガバナンスに対する意識が高まっています。特に、上場企業や上場を目指す企業では、コーポレートガバナンス・コードに適応していくことが求められます。

特に、事業の発展・拡大のために欠かせない資金調達の側面から言えば、株主、機関投資家、融資をしてくれる金融機関の理解を得るために、事業の仕組みとコンプライアンス体制を開示・説明することが求められます。

そのため、法務との密接な関連があります。

環境整備

企業法務では、その企業を取り巻く法令や規制環境の把握・管理が大切です。たとえば、企業活動に関わる法令・通達・条例のほか、裁判例や実務面での取扱慣行に関する情報の収集・整理を行う必要があります。

このような情報は、業界や形態、企業の事業段階ごとによって異なるため、各企業による情報収集が必要となります。

また、契約書類などの文書管理についても環境整備に含まれます。

定款・議事録・許可証・登録証などの重要法務文書をきちんと管理しておき、紛争発生時にはすぐに提出準備ができるようにしておく必要があります。

二者択一の判断だけでなく、リスクテイクの根拠づけになる

経営判断において、その実行の大前提として、適法性の判断が必要となります。

しかし、適法あるいは違法という二者択一の結論だけでなく、仮に適法とはいえないグレーゾーンの場合でも、どうすれば適法な裏付けを与え、新しい事業に踏み出すことができるのか、裏付けを与えるためのロジックメイクをすることは、法務の役割です。

このように、企業経営において、様々な側面から、法務が必要とされるのです。

企業法務の役割と分類

企業法務には、どのような分類があるでしょうか。法務の区分けとしては、ジェネラルコーポレート、臨床法務、予防法務、戦略法務の4つに分類されます。

ジェネラルコーポレート

ジェネラルコーポレートは、会社法をはじめとした企業組織法上の各種法令に即した手続の履践に関する法務です。上場企業であれば、金商法もカバーする必要があります。その他、事業に関する法令に関する手続がある場合は、それも含まれます。

経営政策・戦略法務

経営上で重要な判断を下す場合に、法的な落ち度がないかなどを洗い出し、経営陣の意思決定をサポートします。また、法務戦略としては法律の不備や盲点を探し、他者を出し抜いて新しい商品を開発するなど、企業が優位に立てるような戦略を考え出すことです。

戦略法務は、事業の拡大・発展のための法務です。経営戦略、積極的な意味での経営判断につながる法務ともいえます。M&Aや資金調達、新規事業創出のためのビジネススキーム構築、規制対応などがこれにあたります。

予防対策

予防法務とは、契約事故や企業間紛争を防ぐための予防活動(契約法務)と、法令違反を防ぐための予防活動(コンプライアンス法務)の2つに分類することができます。

前者については、契約書作成時に細心の注意を図り、こちらに落ち度を作らないようにすることが求められます。

また、コンプライアンスについては、社内全体の意識を高めるために研修を行ったり、コンプライアンス違反を作り出さないような組織づくりに注力したりすることが大切です。

臨床法務

臨床法務は、訴訟など法的紛争に直面した場合の法務です。訴訟における代理人は、顧問弁護士が行うことも多いですが、訴訟対応として一次的な対応を行うのは法務部の担当者です。

訴訟対応で、法務の担当者は、顧問弁護士に対して紛争事案の概要や、予想される争点、証拠関係の説明、全体的な対応方針について打ち合わせをします。

また、最近は、多様なマッチングサービスやプラットフォームビジネスなど、様々CtoCのビジネスがありますが、そうしたユーザー間での紛争に対する対応方針を策定することも、企業側の責務とされます。

例えば、登録ユーザー間での紛争が生じた場合に、専用のADRの設置・運用をすることを検討することもあります。顧問弁護士その他外部の弁護士と連携して行われます。

有事対応

契約事故や企業間紛争が起こった場合には、民事紛争や刑事・行政事案などの対応をする必要があります。

民事訴訟の場合は、発生したとしても企業運営の影響はごく限定的です。しかし、刑事訴訟や行政事案については、対応を間違えると企業の存続ができないほどの状態になる可能性があります。

このような事態を避けるためにも、企業法務においては前述した予防法務が非常に大切となるのです。

企業法務の仕事内容を5つに分類

それでは、具体的な企業法務の仕事内容を紹介します。

ジェネラルコーポレートに関する業務

これは、株主総会や取締役会の運営、各種会社法上の手続の対応、コンプライアンス体制の構築ないし運用、債権回収などの管理業務といったものがあります。

上場企業では、金商法に定められる有価証券報告書をはじめとした開示書類の作成と開示に関する業務があります。上場企業でなくても、会計書類や計算書類の作成と報告、株主総会における説明を要する事項に関し、法務部がその説明文案を作成することもあります。

また、労務の観点からは、従業員向けに、様々なコンプライアンス体制の構築や、社内研修の運営などもあります。パワハラやセクハラの防止に関する体制構築、いわゆる内部通報制度の実装のため同制度の普及に関する研修もあります。

そして、一般的なコンプライアンス研修として、社内の秘密情報の取扱いに関する研修、個人情報保護に関する研修など様々あります。最近では、法務部以外でも、営業部をはじめ取引の処理にあたる部署の従業員にも基礎的な知識をつけさせるため、民法をはじめとした基本的な法律に関し、自社の事業に関連する部分について研修を行うこともあります。

株主総会対応

株主総会は、会議という形態で進められますが、ルールに沿って正しく株主総会を運営することが大切です。法律を遵守した株主総会の進め方を頭に入れて、取締役会として提出する議案が可決されるようなサポートを求められます。

また、株主総会での発言は大変注目されますので、そこで法的に誤りのある発言をするようなことがあればレピュテーションリスクにもなります。そのため、株主総会に提出する議案を検討し、想定される質問を事前に予測して、発言のリーガルチェックを行う必要があります。

臨床法務に関する業務

臨床法務に関しては、基本的には、上記のような訴訟対応を中心とする業務です。

取引先とトラブルが発生して訴訟となる場合には、契約書などの書類を準備したり、担当者から事情を聞いたりして訴訟の準備をします。顧問弁護士に弁護を依頼するならば、トラブルの内容をわかりやすくまとめて伝えるなどします。また、マスコミ対応などを広報部などと共に考えることもあるでしょう。

ほかには、顧問弁護士との打ち合わせ対応、訴訟の期日への同行や、訴訟経過に関するメモや報告書の作成などがあります。

さらに具体的には、契約に関する紛争で営業部の担当者が証人として採用された場合には、その証人尋問のための打ち合わせのほか、代表者への当事者尋問の打ち合わせを行うことも、法務部の業務です。

知的財産・特許

知的財産や特許が侵された場合は、それによる損害賠償を請求するために訴訟となるケースがあります。逆に自分たちが侵して裁判になる状況を防ぐために、競合他社の知的財産・特許は確認しておく必要があるでしょう。

債権回収

売掛金の回収ができなくなれば、企業としては大きな損失を被ることになります。債務不履行となった場合には担保権を実行しますが、担保がない場合は資産を仮差し押さえした上で民事訴訟などの手続きを取り債権回収を目指します。

不動産関連

不動産の購入には大きな金額が動くので、売買契約書などをきちんと確認する必要があります。また購入時には登記を行う必要があり、書類に不備がなく速やかに対応できるように準備することが求められます

予防法務に関する業務

予防法務は、まず上記で述べたような契約書やサービス利用規約のチェックがあります。業界によって、取り扱う契約書の種類・類型は異なります。また、ビジネススキームやどのような商品やサービスをどのように提供しているかという点によっても、様々な種類があります。

1か月あたりに取り扱う契約書の件数も、優に30件を超えることもあります。企業の規模によって、法務部の人員も異なりますし、ベンチャー企業では他の業務も兼務しつつ、契約書の業務を担当することもあります。また、知財管理も、予防法務として重要な業務の1つです。現代では、物品の小売・卸売のみならず、技術やノウハウ、情報自体も価値の高い商品として取引されます。

そこで、技術やノウハウ、情報に関する知財管理は、自社の商品やサービスを保護し、将来の紛争を予防することにつながります。

契約書のチェック・用意

新しい取引先と商売を始める際には必ずと言って良いほど契約を結ぶことになります。

トラブルなどが起きた際に責任の所在を明らかにすることができるからです。 取引先が用意した契約書に合意する場合、こちら側から不利になる条件がないかなどチェックすることも企業法務における大切な仕事です。

契約書を結んだ後は、契約書の内容に沿ってジャッジされるので、不利な状況になったとしても「契約書にサインがされているから」と簡単に取引停止などができなくなってしまう場合もあります。

また、契約書を作る際には、トラブルが起こった際になるべく訴訟を避ける内容にすることが大切です。しかし、双方の同意がなければ合意されませんので、時には取引先と交渉・譲歩をしながら作り上げることになります。

コンプライアンス対応

企業が不祥事を起こさないためには、社員一人一人の法知識やモラルを向上させる必要があります。企業法務の担当者は、新しく法律が改正されたり、社内で法律に触れる事案が発生したりした場合に、社員に対して注意喚起をしなくてはいけません。

それは、研修やセミナーなどを開催する場合もあるでしょうし、マニュアルを作成してコンプライアンス違反を防ぐということも考えられます。一人の社員がコンプライアンス違反をしただけでも、企業の信頼を大きく失墜させることもあるので、このような対応はとても大切なのです。

労務関係

企業法務では、パワハラ・セクハラ・残業代の未払い・労働災害など、労働環境における問題に対しての対応も行う必要があります。このような問題が起きた場合には従業員から訴訟を起こされる場合もあるので、問題を整理して訴訟の準備をしなくてはいけません。

また、このような問題が起こらないように、労働規定などを整えたり、労働環境が良くなる指導をしたりすることも必要なのです。

戦略法務に関する業務

これには、例えば、M&Aのスキーム検討において、様々な手段の中で、自社での経営戦略を実現するために最適な仕組みづくりをすることが業務として挙げられます。また、そのために必要な手続・順序を1つひとつ遂行する業務もあります。

他にも、新規事業創出のため、ビジネススキームの適法性に関する検討を行います。適法違法という二者択一の結論だけでなく、特にやり方によっては適法と考えられるような場合に、そのようなグレーゾーンを打開できないか、できるとすればどのような理屈づけが考えられるかを合理的に説明できるようにすることも、重要な法務業務です。

そして、グレーゾーンを打開するためには、様々な手段が考えられます。契約書の条項の修正・アレンジをすることもありますし、事業に関する統制・監督を行う行政官庁との交渉を行い、あるいは意見書を作成することも考えられます。

また、海外のユニコーン企業を中心に、ロビィング活動に携わることもあります。ロビィング活動は、立法府の関係者や、有識者に対して働きかけを行い、自社の事業が社会課題の解決に寄与すること、規制の趣旨に反することなく事業活動を行うことができることを訴求していく活動です。

戦略法務は、定まった形の業務ではなく、経営戦略の内容によって様々な業務が考えられるのです。

M&A対応

M&Aを行う場合は、買収対象者の企業価値を落とさないように、秘密保持契約を結ぶなどして内密にプロジェクトを進めます。法務的なリスクを洗い出す「デューデリジェンス」では、買収先に残業代の未払いなど重大な債務がないか、雇用関係の維持に問題はないかなど細かくチェックしていきます。

海外展開準備

海外展開をするためには、進出する海外の法律を理解した上で準備を進めます。

もし、法律違反を犯すようなことがあれば、海外進出そのものが頓挫して大きな損失を被るかもしれません。大企業では海外に支店を出す、新しい取引を海外と行うということが頻繁に起こるため、海外の法律を理解できるような英語力は身につけておきたいです。

その他

その他、法務部員自身が、法令の改正等に関する知識のアップデートをしていくことも業務の1つであるといえます。例えば、各種のセミナーに参加したり、関係省庁の分科会に参加したりすることがあります。

企業法務の担当者に必要なスキル

企業の法務担当者に求められるスキルは、様々なものがあります。対内的にも対外的にも必要となるコミュニケーション力、情報収集・調査能力、教育・プレゼン能力、交渉力、文章作成能力が挙げられるでしょう。

ここでは、特に、コミュニケーション力、情報収集・調査能力、教育・プレゼン能力について解説していきます。

コミュニケーション力

コミュニケーション力には、様々な定義の仕方がありますが、法務における最も基本的な能力は、傾聴力(ヒアリング力)です。対外的に伝える能力、人を説得する能力は、後述の教育・プレゼン能力に位置づけて解説していきます。

傾聴力の要素として重要なのは、質問力と、言語理解の能力です。

質問力とは

例えば、社内における法律相談に対して対応する際に、正確に事実関係を把握することが求められます。

個々の契約書のチェックの場面では、不明確な文言がある場合にその趣旨を明らかにする必要がありますし、ひな型と異なる文言や条項が置かれている場合には、相手方との契約交渉の中で、営業部の人がどのような交渉を行ったのかを把握する必要があります。

その際、適切に知りたい情報を引き出すための質問力が必要となります。

そして、相手の言語を理解する能力も必要です。

言語理解の能力とは

言語を理解する能力は、具体的には、言葉がどのような意味を持つのかを明らかにすることと、相手に対して伝わりやすい言語・文章表現を用いる能力です。

1つひとつの言葉が持つ意味を勝手に解釈してしまうと、相手が伝えようとしている事実と必ずしも一致しない場合があり、正確な事情を把握できなくなります。そのため、社内でのコミュニケーションにおいて、言葉の意味を1つひとつ丁寧に聞き取り、内容を明らかにすることが求められます。

また、ビジネスにおける言語は、法律用語とは異なることが多々あります。法律用語でのコミュニケーションでは、通じない場合も少なくありません。そのため、伝える際の言語を、使い分けることも必要な能力です。

このような能力は、弁護士が依頼者から事情を聴取して、事実関係を明らかにし、考えられる法律上または事実上の問題点から真の争点を抽出し、絞り込んでいく過程にある質問力とも共通する点です。

法的な知見やノウハウを扱う法務部においては、法律的な視点を持ちつつ、必要な事実関係を把握する能力が必要です。

気遣いも大事

企業法務を担う人は、たくさんの人と協働することになります。社内の人には、時に厳しい要求を投げかけることもあるかもしれませんが、それでも気分を害せず動いてもらうような気遣いが大切です。

また、経営陣とも重要な経営決定時に「良い・悪い・できる・できない」などをきちんと伝える必要があります。あやふやなことを言って「信用できない」と思われることがないようにしなくてはいけません。

情報収集・調査能力

法令に関する情報は、事業の属する業界によっても異なりますが、一般的に、アップデートが予定されるものです。そのため、各種の法令の改正に対して対応していくことが求められます。その際に必要なのが、情報の収集・調査能力です。

特に、法律レベルの改正はもとより、政令、省令などの規則のアップデートにも細かく対応していく必要があります。それによって、社内の事業活動において必要なオペレーションが変わってくる場合があるからです。

情報の収集・調査能力は、法令に関するものに限られません。

日々の社会動向、競合他社の動きや、業界内のニュース、事業の性質上応用できる可能性がある情報や、関連する業界における動向に関する調査も重要です。このような情報の収集・調査能力は、営業部など他の部署とのコミュニケーションを行う際にも役立ちます。

情報収集をする努力を怠らず、妥協をしないことが大切です。 また、法律は毎年のように変わるので、情報をキャッチアップするために勉強することも必要です。分からないことがあったときには、「どこを探せば良いか」「誰に聞けば良いか」ということが分かっていることも大切といえるでしょう。

教育・プレゼン能力

教育能力は、社内におけるコンプライアンス体制の構築のために必要となるスキルです。コンプライアンス体制の構築といっても、単に法令に従って形式的に仕組みを周知するだけではなく、社員の意識づけ、内容を理解することができるように啓蒙することが必要です。

従業員のリーガルリテラシーを向上させることにより、コンプライアンス体制の運用が実装されていきます。

リーダーシップ

企業法務を担う人は、法律に関することは誰よりも理解している必要があり、時に研修やセミナーなどで主体的に指導していく必要があります。その相手がたとえ役職が上の立場や年上の人でも関係なく、リーダーシップを発揮して良い研修を作り上げることが大切です。

交渉力

企業法務を扱う場合、期限付きの仕事も多いです。その場合、他の仕事を後回しにしてもらって対応してもらうように交渉する必要もあるでしょう。そんな時に相手に嫌な思いをさせずに、こちらの要望に応えてもらえるような交渉力が必要となります。

語学力

海外取引や海外進出などの案件を抱える場合は、海外とのやり取りも多くなりますし、海外の法律を理解するためにも語学力が必要です。

特にほとんどの上場企業では海外案件に携わることになるので、大手企業で企業内弁護士になりたいならば語学力を磨いておいた方が採用で有利に進められる可能性もあります。

企業法務において必要となる主な法律知識

企業法務では、様々な法律知識が必要とされます。

法律知識

法律、とりわけ法律関係(権利義務関係)に関するものは、必須ですよね。ジェネラルコーポレートの業務に際しては、会社法と同施行規則の知識が必須です。上場企業では、金商法の知識も欠かせません。

また、労務関係の観点も加味すれば、労働法、公益通報者保護法も知っておく必要があります。基本的な法令として、民法を基軸として、事業者として必要な消費者契約法、特定商取引法などの民事系法令の知識は欠かせません。

そして、現代では、ビジネスに際して、様々な顧客情報を扱います。そのために、個人情報保護法の知識が必要となります。

さらに、属する業界における各種の規制法令(いわゆる業法)に関する知識も必要です。不動産業界でいえば、建築でいえば建築基準法、都市計画法、宅建業法などが不可欠です。フィンテック分野では、資金決済法が欠かせません。

省令などの規則理解

省令などの規則も、極めて重要です。なぜなら、法律レベルでは書かれていない、より具体的には条項などが書かれている場合があるからです。

それを知らなければ、事業活動におけるリーガルリスクが格段に高まります。行政指導を受け、法令とのつながりがある部分について場合によっては刑事罰の対象ともなりえます。そして、様々な規制に伴うレピュテーションリスクにも影響します。

各種ガイドライン(通達を含む)

ガイドラインは、規制の根拠となる法的な効力が含まれないものが基本ですが、法令の解釈適用に関する具体的な運用面での指針が定められています。そのため、事業活動を行う上で、法律や省令では書かれていない細部の規制を把握し、事業活動の際の具体的な行動指針を策定するために必要となります。

業界団体における自主規制

業界団体における自主規制は、特に先端ビジネスの分野で、規制法令が成熟していない点について、社会的な承認を担保するために存在することがあります。

そのため、先端ビジネスで事業を展開していくためには、業界団体に属しつつ、その自主規制を遵守することが求められる場合があるのです。

民訴法

民訴法は、特に上記で述べた臨床法務に関わる点で、基本的な事項を押さえておく必要があります。訴訟が起きた際の手続の流れを把握しておくことで、訴訟対応も迅速、的確に行うことができます。

企業法務で重視される経験や資格

企業法務では、どのような経験や資格が重視されるのでしょうか。

経営管理の部署での経験

経営者直下の部署での経験は、法務を担当する上で重視されます。財務、労務、ITなど様々ありますが、いわゆる管理部の経験がこれにあたります。

ビジネス法務検定

ビジネス法務検定も、法務を行うために必要な法律知識等の指標となります。会社法や民法を中心とした、基本的なものなので、法律初学者でも手軽に挑戦することができます。

中小企業診断士

よりテクニカルで、専門的なものとしては、中小企業診断士の資格への信頼、評価は高いです。国家資格である上、民法など最低限の法律知識がある人であれば、単なる法律的な知識だけでなく財務分析に関する視点が格段に増すため、掛け合わせとして希少価値が高くなります。

弁護士資格など法律関連資格

法務で最高峰なのは、やはり弁護士資格です。

無資格者でも法務の実務経験を積んでいけばさほど差はありませんが、弁護士の有資格者であることは、特に対外的な面での発言力、交渉力に権威性がつくため、非常に有利です。

弁護士でなくても、司法書士や行政書士、労務では社労士の資格も非常に有益です。他にも、知財に関しては弁理士の資格を持っていれば、知財を扱う上では重要なポジションを取っていくことができます。

企業法務人材のポジションの多様性

企業法務の人材には、様々な関わり方があります。ここでは、特に弁護士に関して、顧問弁護士等、企業内弁護士、社外取締役、取締役の4つをご紹介していきます。

顧問弁護士・業務委託

一般的なものとしては、顧問弁護士が挙げられます。基本契約として、月々の単価で社内の法務関連のアドバイスや相談ができることとされ、訴訟対応では別途報酬が発生する(着手金は無料の場合が多い)契約内容です。

また、中小企業でよくあるのが社長の個人的な法律相談への対応です。いずれにしても、基本的には会社に対してのコンサルなので、ほかの3つに比べて、外部的なアドバイザーとしての関わりなのが特徴です。

なお、より社内に近い関わり方として、業務委託(非常勤社員)も考えられます。

企業内弁護士

企業内弁護士は、弁護士として、社内の従業員となり、法務を中心に業務を行う場合をいいます。雇用契約という形態であるため、安定的な給与を得ることができることのほか、土日祝の休日など、安定的な働き方であるのが特徴です。

社内の人間として法務に関わることができるため、様々な取引において、その過程にある法務のあらゆる問題に関わることができます。

企業法務弁護士とコーポレートガバナンス

平成27年3月、東京証券取引所と金融庁が協力して開催した有識者会議によって、「コーポレート・ガバナンスコード」が策定されました。

「コーポレート・ガバナンスコード」では、下記の5つの原則から構成されています。

  1. 1:株主の権利・平等性の確保
  2. 2:株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 3:適切な情報開示と透明性の確保
  4. 4:取締役会の責務
  5. 5:株主との対話

参考:東京証券取引所|コーポレートガバナンス・コード

長期的に企業価値を向上させるため、株主を守るために、不正を防ぐ仕組み作りが大切になります。経営陣への監視の目を光らせるためにも、上場企業では社外取締役の設置が必須となりました。

社外取締役として、企業法務に明るい弁護士などを設置する企業も増えています

社外取締役に弁護士を採用している企業の例

note株式会社 カゴメ株式会社 株式会社クレディセゾン
社外取締役(監査等委員)
水野 祐 みずの たすく
シティライツ法律事務所。
社外取締役監査等委員
山神 麻子
名取法律事務所。
社外監査役
笠原 智恵
渥美坂井法律事務所・外国法共同事業

社外取締役・監査役

社外取締役・監査役は、社外性・独立性という要素を持ちながら、単に外部的な人材ではなく、社内の経営戦略に踏み込んだ形で法務に関わることができます。

社内外での法務実務経験を積んでいけば、社外取締役あるいは監査役としてのキャリアを経験することも可能です。

社外取締役として適任な人材

社外取締役に選ばれる人は、経営経験者・公認会計士・税理士・弁護士などが多いようです。

特に財務面をクリアにしていることをアピールしたいのであれば、公認会計士や税理士を選ぶと良いのではないでしょうか。経営者に対してイエスマンでは意味がないので、きちんと経営者に対しても意見が言える人が理想です。

社外取締役はエージェント経由で選ぶことが多い

社外取締役は紹介により選ぶこともありますが、親しい仲ほど本音で意見が言えないというデメリットもあり、全く利害関係がない人の中から選ばれるのが一般的です。

具体的な採用方法として、社外取締役を含めたエグゼプティブ転職専用のエージェントも多く、企業はこういったサービスを利用することで、スキルの高い弁護士などを採用するケースが一般的です。

取締役(CLO・GC)

社内の経営判断に主体的に関わることができるのが、取締役としてのポジションです。社外役員とは異なり、法務的なバックグラウンドを持ちつつ、ビジネスの判断を自ら行うことができる立場であるというのが特徴です。

近年では、日本でも、CLOやGCというポジションが浸透しつつあり、弁護士がこれらの役職に就くことも増えています。

企業法務を担う弁護士になるには

企業法務を担う弁護士になるためにはどのようなキャリアを進めば良いのでしょうか。

企業法務を扱う法律事務所に勤務する

法律事務所にはさまざまな種類がありますが、5大法律事務所や準大手法律事務所などは、国内大手企業の企業法務を扱います

そのため、企業法務を専門的に扱いたいのであれば、まずは5大法律事務所への入所を目指しましょう

また、規模が小さい法律事務所でも、中小企業などの顧問弁護士として活躍できる場合もあります。大手企業の場合は対応すべき案件が多いことから専門ごとに弁護士の担当者が分かれるケースが一般的です。

しかし、中小企業などで顧問弁護士になると一人でさまざまな案件を網羅することになるので、大手法律事務所より幅広い経験を積むことができるでしょう。

企業内弁護士(インハウスローヤー)になる

最近では、法律事務所ではなく、事業会社で企業内弁護士として活躍する人も増えています。

企業内弁護士の推移

法律事務所の弁護士は、外部の人間としてのサポートになりますが、企業内弁護士の場合は、企業の当事者として主体的に活動することが求められます。

企業法務に関わるさまざまなことを相談されるので、守備範囲は広く、フットワーク軽く対応することが大切といえるでしょう。

企業内弁護士はあくまで社員なので、他の従業員と同じような勤務体系となり、福利厚生なども利用できます。一般的に激務といわれる法律事務所勤務に比べると、勤務時間も短く、ワークライフバランスを重視できるなどのメリットもあります

社外取締役になる

コーポレートガバナンスにより、上場企業では社外取締役の設置が義務化されました。その結果、法律に詳しい弁護士を社外取締役として迎えたいと思う企業も多いのです。社外取締役には経営陣の不正を防ぎ、株主が損をしないように守ることが求められます

法的に誤った判断をしていないかを厳しい視点で監視することが大切です。 社外取締役の募集は、エグゼプティブ専用の転職サイトやヘッドハンティング、紹介などがあるようです。

求められる責務をきちんと果たすことが大切ですが、複数掛け持ちすることも可能なので、収入を増やすことにも期待ができます。

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弁護士以外でも企業法務の分野で活躍できる?

弁護士以外でも法務学部出身者など法務部に就職して企業法務に関わる働き方もできます。多くの場合は顧問弁護士や社内弁護士と協働して法的な問題解決を目指すことになるでしょう。

弁護士に端的かつ正確に企業内の問題について相談すること、弁護士の回答を問題解決するために落とし込むことなどが求められます。

まとめ

企業の価値を高めるために努める企業法務は、時に企業の成長に携わることもでき、大変やりがいのある仕事だといえるのではないでしょうか。

一方で、もし企業が法律違反をすることになれば、企業価値を大きく落とし、企業の存続にも関わるので、監視役としての責任は重いです。

企業法務を担うには、企業法務を取り扱う法律事務所へ入所する、企業内弁護士として働く、企業の社外取締役としてアドバイザー的なポジションになるなどが考えられます。

また、弁護士資格を持っていなくても、法務部で働くことで弁護士と協働して企業法務に携わることができます。

一般民事では味わえない経験もできるので、興味がある方は挑戦してみてください。

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