弁護士登録をしたら、一般的には法律事務所に就職します。しかし、自ら進んで開業する道を選んだりした弁護士も少なからずいます。そういった人を弁護士業界では「即独(そくどく)」と呼びます。

即独弁護士は生きていくために必死ですので、一つ一つの仕事に誠意を持って取り組むので成長スピードが早くなる傾向があるというメリットがあります。法律事務所に就職するメリット・デメリットがあるというわけですね。

しかし、即独弁護士が軌道に乗れず、廃業してしまうケースも少なくありません。弁護士の廃業事情や廃業した際の今後の転職先の選択肢を考えてみましょう。

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即独弁護士の廃業事情

弁護士といえば夢にみる高給取りでかっこよいやりがいのある仕事というイメージを持っている人も少なくないでしょう。ドラマや映画でもヒーローとして取り上げられていることが多いです。

しかし、弁護士を取り巻く現状はそう輝かしいものではないようです。現在、ロースクール制度が確立したため、司法試験合格者数が増えて、弁護士の人数が増加しました。

限りある仕事を多くの弁護士が取り合っているというわけです。競争に敗れた弁護士は、生活が成り立たなくなり、廃業を余儀なくされます。

他にも、高齢や出産・子育て・病気などの理由で廃業という選択を取る人もいます。本人の意思に基づいて弁護士業務を辞める人は毎年存在します。

弁護士の廃業率

この20年ほどで弁護士の人数は急増しています。

弁護士数の推移

引用元:日本弁護士連合会│弁護士数の推移/男女別年齢構成/男女別弁護士数の推移

弁護士全体に占める廃業者の割合は、2009年当時は0.7%、2015年は0.8%とほぼ横ばいとなっています。弁護士の数は多くなっていますが、廃業の割合は変化があまりありません。

しかし、全体の数が増加していて割合が横ばいということは、廃業している人自体は増えているといえます。

弁護士の登録取消し数の現状

廃業する弁護士の多くは、廃業する際に弁護士登録を取消します。しかし、一般企業や官公庁などに出向する場合や留学する場合など、一時的に弁護士としての活動をしない場合にも弁護士登録を取消すことが多いです。

また、一定の非行により退会命令・除名などの処分を受けて弁護士登録が取消されることもあります。

したがって、弁護士登録の取消しと廃業の数とは必ずしも一致しないことをお伝えします。弁護士としての仕事に復帰するときに再度弁護士登録を行うことも可能で、弁護士の登録取消しの理由はさまざまです。なお、具体的な取消し請求者数はこちらの通りです。

登録換え・弁護士登録取消し件数

引用元:日本弁護士連合会│登録換え・弁護士登録取消し件数

弁護士登録取消し件数の事由別内訳も見てみましょう。

登録換え・弁護士登録取消し件数

引用元:日本弁護士連合会│登録換え・弁護士登録取消し件数

弁護士登録取消しの請求をする際に弁護士登録取消しの理由を詳細に明らかにすることは求められていないため、正確に登録取り消しの理由が分かる統計は存在していません。

弁護士の意向はさまざまですので、必ずしもネガティブな理由だけではないかもしれません。とはいえ、弁護士として立ち行かなくなった人もいるのは事実です。クライアントの希望に沿った対応をできないと、先行きは暗いでしょう。

弁護士数と事件数の反比例

ロースクールの導入によって弁護士の数は年々増え続けています。2019年には41,118人にも達しました。

その一方で民事事件の件数自体は2009年ごろをピークに減少傾向にあります。2015年の新受件数は約15万件で、2009年よりも10万件近く減っています

弁護士の数が大幅に増える一方で民事事件の件数自体は減少傾向にあるわけですから、1つの案件を巡る弁護士の競争が過熱しているといえます。競争に負けた弁護士は、思うように仕事を獲得できず、低収入あるいは廃業を余儀なくされてしまいます。

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即独弁護士が廃業してしまう主な理由7つ

弁護士_独立_何年目

即独弁護士が廃業してしまう主な理由を解説します。やはり指導してくれる先輩弁護士がいないと至らない点も多々あるようです。

開業費をかけすぎた

意気込んで開業費をかけすぎてしまい、その後経営が苦しくなる弁護士もいます。一等地に事務所を設けると、家賃だけでもずいぶんかかってしまいます。クライアントが事務所に来ることも多いのですが、ソファや家具にお金をかけすぎてしまうと、その初期投資を回収するのが大変です。

また、最初は事務員を採用するのではなく、自分でできる範囲のことはして、他はオンラインアシスタントでまかなうという選択肢を考えてみてもよいでしょう。

家賃や人材を抱えるコストは固定費として重くのしかかります。現実の力に見合わない費用はかけないようにするのがおすすめです。

十分なマーケティング手法を習得していなかった

コネがあれば、最低限はやっていけるかもしれませんが、もしコネがないのなら、マーケティング手法を確立させないと継続的に事務所を成り立たせていくのは困難で廃業を余儀なくされてしまいます。

開業する前にコネクションづくりを成立させ、マーケティングを推し進めていく準備が必要でしょう。どのような人をターゲットにするか、自分の強みは何か、どの分野を中心に活動するか、といった戦略を立てましょう。

安定した仕事を得られないと、経営の土台ができないので、即独弁護士として成功できません。

仕事を引き受けたのはよいが、収益がほとんどなかった

経営をするのなら、収入だけではなくコストについても注目しないといけません。仕事を受注して頑張って取り組んだが、コストを差し引くとほとんど手元に残らなかったというケースもあります。

状況が悪化すると、馬車馬のように働いてようやく生活できるようなお金しか入ってこなくなり、「弁護士って高給取りだと思っていたのに…」という嘆きが寂しく響きます。

成功報酬がたいしてもらえない案件でも引き受けて採算が見合わない、さらに評判が落ちて信頼性もなくなってしまったということも起こりかねません。

誤解を恐れずにいうなら、仕事を選べる立場にならないといけないでしょう。着手金を無料にしてとにかく仕事を取るという手法は、開業したての弁護士に取っては、諸刃の刃になりかねません。

事務所の立地が悪くクライアントが来ない

事務所を一等地に構えるとコストがかかるという話をしましたが、かといって田舎の人通りの少ないところに事務所を構えてもさほどクライアントはやってこないでしょう。

ホームページやSNSなどを活用して注目を集めても、電車で行きにくかったり車で行くのは時間がかかったりすると遠方からの依頼を受けるのが困難になります。

自分がターゲットにするクライアントが多く集まる場所を選んで事務所を立地するのがおすすめです。クライアントが通えないと愛用される法律事務所にはなれません。

そもそも弁護士としての力が未熟

即独弁護士だと、弁護士としての能力が未熟なところもあるかもしれません。法律事務所で働いていたら、先輩弁護士のフォローを受けることもできるでしょう。

弁護士人口が急増した昨今、大勢の弁護士が限りあるクライアントを取り合っている状況が起きています。需要と供給のバランスが悪くなっているので、そもそもの弁護士の能力に長けていないと、継続して経営を成り立たせるのは困難です。

出産や子育てで弁護士を続けるのが難しい

女性であれば出産や、子育てを機に弁護士を続けるのが困難になる人がいます。弁護士という高難易度の資格を取得したわけですが、あまり役立てられずに廃業してしまうというわけです。

弁護士会の支援制度を活用していない

日本弁護士連合会では、即独弁護士およびこれに準じる弁護士に対して、チューター弁護士を配置し、弁護士として活動する上で一般的なアドバイスを行うチューター制度を実施しています。一般企業でいうところもメンター制度ですね。

やはり自信のある弁護士であっても、独力で全てをこなすのは労力が要ります。適切なサポートを受けた方が効率良く収益を上げられるのではないでしょうか。

▶詳しくは「弁護士会の独立開業支援

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独立に失敗し廃業した弁護士の転職先4つ

独立に失敗して廃業しても弁護士資格を活かす方法があります。今でも難関資格であることには変わりないので、有効活用する方法を考えましょう。

法律事務所への就職

事務所経営のノウハウや、案件の進め方、依頼者との相談形式、横の繋がりなどを学ぶには、一度法律事務所への就職が最もおすすめです。

独立に失敗したという事実と過去は変えられませんが、ゼロから学び直すことでもう一度独立する選択肢を得た際の成功率は格段に上がるでしょう。

見栄やプライドもあるかと思いますが、生活できないよりは100倍マシです。事務所によっては共同経営者(パートナーポジション)への昇格を積極的に行う事務所も多いので、学ばせて頂くぐらいの気持ちでまず事務所所属の弁護士として従事されることを、転職エージェントとして、数多くの弁護士を見てきた私たちとしては強くおすすめします。

最終的に独立の意思があれば、独立開業はいつでもできますので。

公務員

少し意外かもしれませんが、公務員への道もあります。年収は減ってしまいますが、雇用は安定していて、やりがいが感じられるかもしれません。

もちろん完全に弁護士を辞めてしまって公務員として再就職する選択肢もありますが、弁護士を続けながらでも任期付公務員となる方法もあります。

任期付公務員なら、しばらくの間だけ弁護士の職を離れることも可能ですので、今後どのようなキャリアを歩むか模索する時間だと思ってもよいでしょう。

営業

即独弁護士なら自ら行動し、営業活動をしていたはずです。その営業活動にやりがいや適性を感じるなら、いっそのこと営業マンになってみてもよいでしょう。

法律が深く関わる営業は少ないかもしれませんが、未経験でも採用されやすい傾向があるのでチャレンジしてみる価値はあります。

コンサルティング会社

これまで企業法務に携わり、経営に踏み込んだアドバイスを行ってきたなら、コンサルティング会社での活躍も期待されます。もちろん会社によっても異なりますが、コンサルティング会社なら年収1,000万円に達することも可能です。

企業法務系・インハウスに関わりたい場合

即独弁護士がインハウスローヤーとして転身するのは非常に難しく、また企業側も経験の浅い弁護士を求める傾向はほぼないといっても良いです( 独立時から企業法務を扱っていた場合は除く)。

インハウスローヤーは狭き門

法務部門に法律知識がある人材を採用したい企業は増加傾向にありますが、あくまで企業法務を経験されてきた弁護士を採用したいのであって、企業法務の経験のない弁護士に就職先が見つかるケースは多くありません。

もちろん多くないというだけで、ゼロではありません。新卒でインハウスローヤーになる弁護士もおりますので、人間力・論理的思考、コミュニケーション力があれば、可能性もあります。

一般企業のファイナンス部門

弁護士のキャリアを活かしながら仕事の幅を広げるなら、ベンチャー企業のファイナンス部門はいかがでしょうか。

ファイナンス職を一言で表すと「財務戦略」を扱うお金のプロフェッショナルですが、弁護士が関わる場合は『金融法務』という呼ばれ方をすることが多いです。

金融法務とは

2007年に金融商品取引法が施行されましたが、金融商品取引法が比較的新しい法律であり,条文を読み解くことも難しいため、トラブルが発生しやすい傾向にあります。

このようなトラブルを未然に防いだり、スムーズにトラブルを解決したりするために金融法務に精通した弁護士を採用したいというニーズがあります。

具体的な業務を種類で分けると多岐に渡りますが、M&A、事業承継、コンサル会社が行う『事業再生・法人破産』も、広義の意味ではファイナンスに含まれます。

フィンテック企業への需要

また、金融系ではフィンテック業界(金融(Finance)と技術(Technology))の企業、仮想通貨・決済システム・ロボアドバイザー、投資代行システムに関わる企業も金融法務の需要があります。

もしベンチャー企業であれば、裁量の大きい仕事を任せてもらいやすいですし、即独弁護士で培った開拓する力を発揮できるのではないでしょうか。ときには資金調達の仕事を任されることもあります。

ベンチャー企業のリーガル部門

まだまだ人材が少ないベンチャー企業のリーガル部門担当として活躍する方法があります。某フリマアプリのリーガル部門担当として転職成功した弁護士も実在しているので、夢物語ではありません。ベンチャー企業でどんどん大きくなっていく企業を支えるのも魅力的でしょう。

法務部の管理職

マネジメント経験があるなら、法務部の管理職の座を狙ってみてもよいですね。法務部では、契約や取引に関する法務・コンプライアンス法務・紛争への対応などの業務があり、他部署と連絡をとりながら仕事を進めていきます。

ある程度年齢を重ねている弁護士なら経験も豊富ですし、任命される可能性があります。今までどのようなマネジメント経験があるか棚卸してみるとよいですね。

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まとめ

中には、意思とは反して即独弁護士になった人もいます。弁護士が増加傾向にあるので、法律事務所に就職するのも困難だというわけです。

しかし、増加する弁護士と減少する案件をどうにかすることは難しいので、自らの力を身に付けるか、違う道を探すかという選択をしないといけません。

即独弁護士として廃業したとしても、そこで

人生が終わるわけではありません。自分の理想を追い求めていきましょう。

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