インハウスローヤーとは、広い意味で言えば、組織内で働く弁護士のことをいいます。「組織内」というのは、企業、省庁、自治体などが挙げられます

インハウスローヤーの最たるものは、企業内弁護士です。狭い意味では、特に企業内弁護士のことをインハウスローヤーと呼ぶ場合もあります。

インハウスローヤーは、年々増加しています。日本組織内弁護士協会による調査によれば、2011年時点では587人でしたが、2021年時点では2820人になっており、2233人増加しています。10年前と比較すると、3.8倍となっており、激増していることが分かります。

弁護士の推移

詳しくは、こちらの記事でも解説しております。

インハウスローヤーのキャリアとしては、法務部の正社員スタートで昇進、キャリアゴールは執行役員やCLO・GCとなることが考えられますが、実際にはどうなのでしょうか。

今回は、インハウスローヤー、特に企業内弁護士のキャリアについて徹底解説していきます。

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    目次

    インハウスローヤーの代表的なキャリアパス4つ

    インハウスローヤーには、具体的にどのようなキャリアパスが考えられるでしょうか。

    法務部長ないし役員としてステップアップ

    まずは法務責任者・リーダークラスといった中間管理職のポジションから始まり、法務部長などの責任者ポジション・CLOにキャリアアップしていくのが一般的です。

    このほか、取締役・執行役員としてのキャリアステップもありますが、GC(法務顧問:General Counsell)といったポジションも普及しています。

    関係省庁との連携や出向の機会

    普段の業務で、業界の事業を所轄する省庁や地方自治体、その他の行政セクターに関わることがあります。

    いわゆるアジャイルガバナンスといった官民連携といったものです。単に個別の事業案件レベルだけでなく、大手の企業であれば、出向の伝手があることもあります。

    任期付公務員としての有期期間勤務を通じて、再度民間に出戻りして、キャリアに活かす道もあるのです。

    福利厚生も確保しつつ海外支店でグローバルな勤務

    グローバル企業、外資系企業であれば海外支店での勤務も考えられます。海外での勤務により、事業活動の仕組みの違いなども経験することができ、経験の幅が広がります。

    他社の社外取締役になる

    また、他社での社外取締役などの役員になることも考えられます。

    経営に近い立場で法務に関わることで、規制対応や危機管理、ジェネラルコーポレート、そしてM&Aなど、あらゆる側面での経験を積んでいくことで、複数社での社外取締役を兼任し、多種多様の事業をハンドリングするキャリアも魅力的です。

    インハウスローヤーのキャリアの魅力6つ

    インハウスローヤーのキャリアには、どのような魅力があるでしょうか。ビジネス全体への関わり、ワークライフバランス、チームワーク、経営との密な関わり、法律事務所で活かせる経験、幸福度といった観点から多角的に解説していきます。

    ビジネスのプロセス全体に関わることができる

    これは、法律事務所における働き方と決定的に異なるポイントであり、企業内弁護士の弁護士としてのリーガルサービスにおける固有の価値です。

    通常、弁護士が顧問契約で関わる場合、法律相談から具体的な事件・案件として受任する場合を含めて、個別的な事案になります。

    例えば、

    • 「B社がうちの会社の特許技術を使ったようなプロダクトを開発しているらしく、どうにか食い止めたい」
    • 「C社の売掛債権が支払われないが債権回収を考えたい」
    • 「自社の○○というサービスが業法に反しないか、レビューしてほしい」

    といった形で、案件が舞い込んできます。

    プロダクト・サービスの企画からローンチして、販促、そして契約した後のトラブルなど、スポット的に関わります。

    他方で、企業内弁護士は、コーポレート業務で株主総会や取締役会の運営から携わり、事業活動の意思決定のプロセスから、実際のサービスの開発、ローンチとUI/UXの検討まで、あらゆるプロセスに法務としての立場で関わります

    そして、顧問弁護士はあくまで「アドバイザー・コンサル」的立場であってビジネスの意思決定に関わりません。他方で、企業内弁護士は、まさに当事者として関わるのであって、ビジネスの意思決定に関わります。

    それは、取りも直さず、リーガルの視点を踏まえ、リスクテイクの判断に関わることを意味します。

    ビジネスを実際に動かす立場で法務の知見を活かす点で、インハウスローヤーは、非常にやりがいがあるといえます。

    ワークライフバランスや福利厚生の充実

    通常、正社員としての採用であれば、雇用契約となるため、働き方が安定します。残業代の発生もありますし、給与やボーナスも受け取ることもできます

    土日祝日の休みや、有給休暇、産休・育休の取得も、制度として裏付けられます。その他、社会保険等の手当てもあります。

    法律事務所での弁護士であれば、そうした枠組みがない場合もあり、自由である反面、自己責任となります。案件を処理するにあたり、自分の時間を犠牲にしなければならない時も少なくありません。

    WLBと福利厚生の充実は、インハウスローヤーの魅力の柱です。

    チーム・組織として1つの仕事を完成させる意識

    インハウスローヤーは、常にチームワークが求められます。

    社内の様々な部署と関わりをもち、コミュニケーションを取りながら仕事をするため、チームとして仕事をするのが通常です。

    そのため、個々の法務の仕事としては個人の力量が試されますが、会社組織として1つの仕事を完成させることを目指すので、チームワークが好きな人には魅力的といえます。

    組織経営を現場で学べる環境がある

    企業の経営を学べることも、非常に魅力です。

    法務は、「コーポレート」「管理部」といった名称で呼ばれることもあります。そのため、経営と密接に関わる仕事です。事業活動の上で、リスクテイクの判断をする際にも、法務によるチェックを度外視することはできないからです。

    また、コーポレート・ガバナンスを通じた経営管理が必須ですから、これを担う法務と経営陣のかかわりは、切っても切り離せない関係にあります。

    そのため、経営直下で学べることは、インハウスローヤーの魅力です。

    法律事務所へ戻る際も活かせる経験はある

    街弁事務所で勤務する弁護士でも、顧問先の中小企業で、社内での法務経験が効果的に活用できます。

    例えば、法務部を置いていない中小企業では、コーポレート業務が行き届いているか客観的に評価できないため、社内のコーポレート業務のチェックできるとなれば、よりサービスの幅が広がります。

    SaaS的に顧問サービスの体系を考えれば、報酬項目として追加することも考えられます。

    このように、インハウスローヤーの働き方が法律事務所での出戻りや転職の際に活かせる幅は広いです。

    「精神的幸福度」と「経済的幸福度」について

    インハウスローヤーとしてのキャリアは、精神的幸福度が高まりやすい傾向にあります。

    精神的幸福度は、自分の心、内面的な充実度をいいます。その尺度となる要素は、人によって異なりますが、経済的幸福度というお金の面ではない要素に基づくものとします。

    他方で、経済的幸福度は、収入、つまりお金の充実度です。

    インハウスローヤーは、経済的幸福度の面では、弁護士に比べて低くなる傾向にあります。上記のように、雇用契約という形態上、どうしても限界があるからです。また、非常勤的な働き方でも、企業内弁護士としてもらえる報酬は、工数や受託する業務内容の面から、やはり限りがあります。

    他方で、精神的幸福度は、法律事務所での勤務弁護士に比べて休暇がとりやすいことから、高くなりやすいです。

    また、通常の業務の中で関わりをもつ「仲間」が、法律事務所では通常数人程度であるのに対し、企業では数十人以上いるなど、人脈的な意味で、内面の充実度も高くなりうる要素です(もっとも、人脈の側面は、人によっては精神的幸福度を低める要素かもしれません)。外向的な人にとっては、適した環境といえるでしょう。

    インハウスローヤー(企業内弁護士)のニーズが増える理由とキャリアとしておすすめの理由

    インハウスローヤーは、具体的にどのような点にニーズがあるのでしょうか。様々考えられますが、ここでは3つご紹介します。

    事業サイドにおけるリスクマネジメントの重要性が増加

    企業が事業を行う上では、どのようにリスクをコントロールするかが非常に重要です。

    リスクの「コントロール」には、1つには、発生しうるリスクを予測し、事業活動における位置づけを分析し、リスクが顕在化した場合の対処法を設定しておくリスクマネジメントがあります。

    また、リスクマネジメントを踏まえて、事業によって得られる収益を最大化させるための合理的な仕組みを準備しつつ事業を実行するリスクテイクがあります。

    いずれの側面でも、法的な知見が重要な位置を占めます。なぜなら、法務の知見によりリスクの所在を知ることにつながり、課題把握にあたり事実認定のスキルが活用できるほか、あるいは法的なロジックを組み立てることでリスクを乗り越える戦略を立てることができるからです。

    契約法務の迅速な対応

    法律事務所からインハウスローヤーへ転職された方の約8割は、各種契約のレビュー・ドラフトといった「契約法務」に従事しています。

    業種や取引内容によって、契約種類は千差万別のため、売買契約などの基本契約から、ライセンス契約・共同開発契約、知的財産関連の契約まで多岐に渡ります

    顧問弁護士にレビュー依頼をするよりも、社内弁護士に対応をお願いした方が、スピード面はもちろん、考えられるリスクに応じるため、自社の利益を守るフロントして関わってもらいたいと考えています。

    そのため、一般民事を中心に扱ってきた弁護士よりも、企業法務系に携わってきた弁護士が優遇されるのは間違いありません。最も、不動産業界は一般民事と近い業務領域になりますので、マッチング精度とニーズは合致していると言えます。

    また、海外へ進出、取引が多い企業の場合、英文契約を扱っていた経験を求める企業は多く、TOIEC900点以上や、ビジネス英語への理解は求められるでしょう。

    顧問といった形態でのリーガルサービスの限界

    顧問では、事業サイドのビジネスジャッジに関わることができない点で、限界があります。

    弁護士の顧問業務は、いわば法務コンサルです。そして、それも日常的な事業活動のあらゆる場面で関わるのではなく、個別の案件レベルで、あるいは論点的に絞り込まれた内容の相談によって、必要に応じた知見の提供や書面等の作成というサービス形態になります。

    そのため、顧問弁護士は、訴訟対応などの臨床的な法務のほか、受動的に、アドバイザーとしての立場で法務を行うことが求められ、それ以上のビジネスジャッジには踏み込まないのが通常です。

    インハウスローヤーは、その上で、事業を実行する上でどのような判断をすべきか、という点に踏み込み業務を行います。なぜなら、インハウスローヤーは、社内のメンバー、すなわち当事者であるからです。

    特に、役員になっていれば、より直接的に、ビジネスジャッジに関わることでしょう。このように、顧問弁護士では越えがたい立場として、インハウスローヤーが提供する法務には固有の価値があります。

    弁護士のスキルと取引交渉でのスキルの互換性

    そして、個別具体的な取引において、弁護士の交渉スキルが現場での交渉に還元される点も重要なポイントです。

    法務部は、契約書の審査などで事業のフロントとなる営業部と密接に関わります。取引の内容は、日常の類型的な取引においては定型化されますが、新規事業や既存の案件にはない規模のものになると、法務部の対応が必要になることがあります。

    その際に、契約を最適化するにあたっての交渉で、法務部が後ろ盾となります。上記のようなプロセスの中で、取引条件のまとめ方など、弁護士の契約・和解交渉のスキルなどが還元されていきます。

    このように、弁護士のスキルは、ビジネススキルとの互換性が非常に高いのです。

    コストファフォーマンス向上

    企業にとって法律事務所へのフィーの支払いは高額になるケースは珍しくありません。

    エンタープライズ企業は5大事務所に依頼することが多いですが、一回のレビューに数十万円〜数百万円かかっていることもあり、いかに無駄な部分を削減するか、また、いかに同じ報酬体系でもでもより質の高いリーガルサービスを受けられるかなど、コストパフォーマンスの向上が常に課題となっています。

    インハウスローヤーの雇用はその課題解決に最も寄与する方法のひとつです。

    例えば、5大法律事務所というプラクティスは素晴らしいものだと思いますが、自社の業界に精通する弁護士が一人いれば事足りるケースもあります。であれば、リーガルサービスの質を保ちながらも、個人の弁護士に依頼するという選択肢もありえます。

    自社に合った弁護士を採用することは、コストパフォーマンスの向上に直結します。

    クローバル化への対応

    2019年から続く新型コロナウィルスの影響で鈍化した印象はありますが、国際取引への強化をしている企業は、弁護士の採用に積極的です。

    欧州・米国などの諸外国企業において法務を担当するのは原則として弁護士です。 しかし、日本ではいまだ無資格の法務部員が多数を占めているのが現状です。

    海外展開を推進する企業では、インハウスローヤーの比率を高めグローバル化へ対応していこうとする意図が強いため、無資格の法務部員が交渉に関わること自体がナンセンスであるという意識を強くもっています。

    そのため、「法務は弁護士が担う」という世界標準に対応するため、インハウスローヤーの採用ニーズは今後も増していくはずです。

    弁護士が新卒でインハウスローヤーになるべきかの判断基準

    ファーストキャリアをインハウスにすべきかどうか、判断基準をご紹介するので、参考にしていただければ幸いです。日本組織内弁護士協会(JILA)のアンケート調査によれば、38%が法律事務所での業務経験がないと回答しています。

    表:あなたは過去に法律事務所で弁護士としての執務経験がありますか。

    選択肢 人数・割合 増減
    2019年 2020年 2021年
    ある 199 173 62.70% 244 62% -1.10%
    ない 139 103 37.30% 152 38% 1.10%

    インハウス業務と法律事務所業務との違い

    まず考えるべきは、仕事内容の違いです。

    インハウスローヤーの主な仕事内容10種

    1. 契約書チェック:最も多い法務部での仕事
    2. 経営法務:企業運営に関する法務全般。起業から上場、ルーティンの会社運営まで、企業運営ではシチュエーション毎にさまざまな法律を守らなくてはいけません。
    3. 債権回収:督促状や内容証明を何度も送付しているのにも関わらず、債権回収ができずに埒が明かない場合も企業法務弁護士の出番
    4. M&A:M&A、デューデリジェンス、買収先の財務諸表の把握や契約内容の精査など
    5. 倒産手続き:民事再生・会社更生手続といった再建型倒産手続と、清算型倒産手続である破産手続
    6. 知的財産対応:特許権・実用新案権・意匠権・商標権のように特許庁に出願して他社・他人に権利侵害、訴訟手続きのサポート
    7. 労務問題:会社のトラブルに対しても紛争解決や訴訟対応などを行う
    8. コンプライアンス対応:研修やセミナーを実施など、社員一人ひとりの法的知識・モラルの向上
    9. 株主総会対応:株主総会をスムーズに運営する為の準備、提出する議案の可決を促す動き
    10. 外部の法務相談対応:主に不動産や保険会社での窓口業務、法的見解を求められる際は弁護士資格が必須

    法律事務所での仕事内容

    法律事務所の主軸事業によってまちまちですので、ここで全てを語ることはできませんが、離婚問題や債務整理、交通事故と言った一般民事事件た、刑事事件、企業法務、場合によって国家賠償訴訟など、法的問題にお困りの方に対して、リーガルサービスを提供します。

    業務領域の違いはもちろんですが、関わる相手の違うことが最も特筆すべきポイントかと思います。

    インハウスは良くも悪くも企業内の仕事のみ

    企業内弁護士は、当然のことですが所属する企業の仕事しかしません。弁護士として一人で全てを網羅する場合などは守備範囲も広くなりますし、仕事量が多ければ忙しくなります。

    特に、弁護士の仕事についての理解がない場合は膨大な丸投げされる可能性もあるので、就職前に社会体制の確認は必ずすべきでしょう。

    ワークライフバランスの実現はインハウスに軍配が上がる

    また、企業内弁護士は、その他の社員と同じ待遇となるため、法律事務所勤務に比べると残業は少ない傾向にあります。

    一般的に、法律事務所の弁護士は業務多忙であり、昼夜・週末を問わず働いているという状況になりがちです。

    これに対してインハウスローヤーは、会社員として労働基準法で保護されるため、「定時」が存在します。そのため、昼夜問わず働くということにはならず、業務と生活にメリハリをつけやすいメリットがあります。

    表:あなたが現在の勤務先を選んだのはなぜですか(複数回答可)

    選択肢 人数・割合 増減
    2019年 2020年 2021年
    ワークライフバランスを確保したかったから 193 175 63.4% 249 63.0% -0.5%
    現場に近いところで仕事がしたかったから 201 163 59.1% 217 55.0% -4.3%
    その会社で働きたかったから 100 91 33.0% 151 38.0% 5.2%
    その業界で働きたかったから 94 80 29.0% 135 34.0% 5.1%
    収入を安定させたかったから 111 79 28.6% 127 32.0% 3.4%
    提示された報酬が高額だったから 27 27 9.8% 33 8.0% -1.4%
    所属事務所から出向を命じられたから 1 2 0.7% 1 0.0% -0.5%
    ほかに就職先がなかったから 42 21 7.6% 29 7.0% -0.3%

    参考:企業内弁護士に関するアンケート集計結果(2021年3月実施)

    産休や育休・時短勤務などの待遇も受けられるので、法律事務所勤務に比べると年収は低くなることが多いですが、ワークライフバランスを重視したい場合にはおすすめです。

    インハウスローヤーの平均年収は750万円

    インハウスローヤーは、上記の文脈でいえば、どの程度の「経済的幸福度」(年収)があるのでしょうか。

    全体の平均は1000万円

    様々な要素での違いを抜きにした全体的な年収の平均は、一般社員であれば、1000万円であるといわれています。もっとも、ばらつきを考慮すると、おおむね500万円から1000万円の範囲です。

    出典:企業内弁護士に関するアンケート集計結果|日本組織内弁護士協会

    新卒または中途による違い

    基本的に、インハウスローヤーの年収を評価する要素として大きいのは、弁護士としての勤務経験の長さと専門分野の内容とその実質的な実績です。

    勤務経験の側面で言えば、やはり新卒より中途の方が年収は高くなります。また、専門分野が当該業界の企業にマッチしている場合、そして実績の内容的に事業にアジャストしていれば、やはり年収に好評価されるでしょう。

    他方で、新卒では、そうした経験や実績の幅がない分、年収は低く設定されます。

    もっとも、他の一般社員と比べると、年収は高くなるのが通常です。弁護士資格を得るところまで行っている、すなわち司法修習を修了していることに対して専門性の高さが評価されるからです。

    企業規模による違い

    企業規模によっても異なります。やはり大企業であれば、法務に投資する重要性を認識していることから、弁護士に対する評価を年収に反映させることができます。

    他方で、資金力が乏しいIPO前のベンチャー企業であれば、大企業のように一般社員というだけで600万円もペイすることはできません。新卒でおよそ300~500万円が相場というところでしょう。

    インハウスローヤーキャリア実例と分析

    インハウスローヤーにはどのようなキャリアがあるのか、ここでは具体的な実例をご紹介し、分析していきます。

    インハウスローヤーの先駆けとも名高い、榊原美紀氏です。

    榊原氏は、もともと大学時代はアメリカの大学に留学した経験から、英語好きも相まって、英会話講師をしていました。しかし、その後直感的に、思いつきで弁護士という職業に就くことを思い至ったそうです。司法試験に合格した後は、センチュリー法律事務所に就職し、企業法務を中心に経験を積まれました。その後、アメリカに留学し、ボストン大学のロースクールを修了しました。

    ロースクール生との交流の中で、積極的に手を挙げて前に出る姿勢の大切さを学ぶとともに、当時日本ではほとんど例がなかったインハウスローヤーのことを知ります。ロースクール終了後は、外資系法律事務所で勤務した後帰国し、パナソニックに入社しました。その際、電機・自動車の業界であることを志向していたことに加え、学閥や中途への差別がないことを判断基準とされていたそうです。

    当時は、インハウスローヤーが未知の世界であることもあり、ビジネスサイドに身を置くことにはどの程度の可能性があるか、分からないのが現状だったといいます。パナソニックでは、IT・著作権担当の部門での業務から始まり、企業内でのワークフローへのキャッチアップに苦労されました。

    その後、ITや著作権、独禁法に関して、業界団体との意見交換や政府機関との折衝があり、法律の専門家として関わる中で、法務としての信頼やポジションを得ていきました。業界に関わるような案件として、著作権侵害に関する訴訟では最高裁まで戦い、弁護士としての価値を活かしながら、会社の事業に貢献されたそうです。

    そうして、現在は、コンプライアンスの責任者として業務をされています

    上記の実例から、やはりインハウスローヤーのキャリアには、責任者ポジションへのステップアップがあることがわかります。そして、そこに至るまでに、社内での業務フローへの適合への苦労があるとともに、弁護士としての法務の知見が客観的に評価されていくことで、キャリアの深みも増していくことがわかります。

    インハウスローヤーへ転職するなら注目すべきポイント

    インハウスローヤーへの転職の際は、どのような点に留意すればよいでしょうか。ここでは、3つご紹介します。

    弁護士業務での経験とのマッチング

    特に中途の場合は、もちろん弁護士としての業務をした年数も重要ですが、それ以上に、就職先として自己の経験とマッチするところを選ぶことが重要です。

    弁護士としての業務経験が採用判断のポイントになるとしても、やはり企業側が欲している法務分野の種類があります。そのため、専門とする法務分野の観点から、具体的に自己分析を行い検討した上で、就職先を選定する必要があります。

    他方で、新卒の場合は、業務内容として幅広い経験が積めることが重要なポイントになるでしょう。なぜなら、定型的で事務処理のような業務では、キャリアの幅を広げることが困難だからです。

    可能なら個人受任可の企業を選ぶ

    キャリアの拡大可能性という観点では、基本的な弁護士業務から離れすぎるのもリスクであると考えられます。なるべく、個人受任が可能であるような条件のところを選ぶとよいでしょう。

    ただ個人受任を可能にしている企業は少なくいです。

    表:あなたの会社では、個人事件の受任は認められていますか。

    選択肢 人数 割合
    認められている(実際に受任したことがある) 43 11%
    認められている(実際に受任したことはない) 94 24%
    認められていない 259 65%

    表:あなたの会社では、副業/兼業は認められていますか。

    選択肢 人数 割合
    認められている(実際に副業/兼業している) 71 18%
    認められている(副業/兼業はしていない) 122 31%
    認められていない 203 51%

    参考:企業内弁護士に関するアンケート集計結果(2021年3月実施)

    企業規模で言えばエンタープライズか、外資系企業と選択肢は少なくなっています。もちろん、コンフリクトの観点からも手放しで全てOKではありませんので、転職前にできるだけ確認しておくことは大事です。

    業界とのマッチング

    業界とのマッチングも重要です。インハウスローヤーになると、通常の弁護士業務とは異なり、やはり関わる業界が絞られます。様々なビジネスに関わりたいのか、横展開の狭い専門性が高い企業の中でキャリアを深めていくのか、自己分析を丁寧にする必要があります。

    不明点は転職エージェントへの相談を

    いずれにしても、やはりインハウスローヤーへの転職の際には、転職エージェントへの相談がおすすめです。とりわけ、弁護士業界に特化したエージェントにするのがポイントです。

    弁護士の経験やスキルの活かし方、企業へのアピールの仕方なども、弁護士としての専門性の高さがゆえに、業界に精通した知見が効果的であるからです。

    NO-LIMITでは、インハウスローヤーへの転職も、弁護士業界に精通したエージェントが徹底サポートしています。

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    まとめ

    インハウスローヤーのキャリアには、ビジネスサイドで法務サービスを提供することでの可能性、ワークライフバランスの取れた安定的な働き方、法律事務所での弁護士業務への還元といった点で様々な魅力があります。

    そのニーズとして、ビジネスサイドでの法務の重要性に対する考え方、コーポレート・ガバナンスの意識向上といった点が挙げられます。キャリアの拡げ方にも、単に社内での昇進のみならず、官への出向や、他社での社外取締役就任など多岐に渡り可能性は無限です。

    ぜひ、インハウスローヤーのキャリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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