インハウスローヤーは、年々増加しています。その働き方の魅力は、様々考えられます。

たとえば、業務の中で、反復継続的にビジネスのプロセス全体に関わる機会があること、福利厚生の充実やワークライフバランスのとりやすさ、経営陣と密接な関わりがあり組織経営を学べることなどが挙げられます。

他方で、収入面での限界、業務内容の偏りなどのデメリットがあります。具体的にはどのようなものでしょうか。

今回は、インハウスローヤーへの就職・転職を考えている人向けに、インハウスローヤーのデメリットに関して、詳しく解説していきます。

※決してネガティブキャンペーンではなく、就職・転職にあたっての判断材料を提供することを意図するものです。

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    目次

    インハウスローヤーへ転職するデメリット5つ

    インハウスローヤーには、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。5つご紹介していきます。

    年収・所得面での限界

    インハウスローヤーは、正社員としての採用であれば、契約形態としては雇用契約になるのが通常です(非常勤だと、業務委託という形態も考えられます)。

    フルコミットする形での正社員勤務であれば、給与が月給で定められますが、当然、固定的なものになります

    そして、基本的には、労働の提供であって、弁護士業務のように成功報酬といったものではなく、時給計算になります。賞与やSOの付与などによって、プラスアルファの形で成果型報酬を上乗せすることも考えられます

    もっとも、営業部のように、歩合制のような形をとることは困難でしょう。そうすると、収入の面では、固定的で、案件の規模によって上限なく報酬がとれる可能性はないことになります。

    業務内容が定型的・事務作業的な側面もある

    法務としての業務は、いわゆる管理部・コーポレートの業務が中心です。

    コーポレート業務は、日常的なものだと契約書の管理・審査や、押印業務といった事務作業がほとんどという場合が多いです。時期的なものだと、株主総会や取締役会の運営があります。

    こうした事務作業中心の側面があるため、定型的で退屈な側面はあります。

    また、法務の正社員というだけだと、議論の中身に立ち入ることはできないため、自分で案件をハンドリングできる場面は、限られてきます。

    なお、インハウスローヤーの業務に関しては、後ほど詳しく解説していきます。

    後で法律事務所に復帰することが困難な傾向に

    特に新卒でインハウスローヤーになる場合、臨床法務を中心とした弁護士業務へのキャッチアップの機会がありません。

    臨床法務とは典型的には訴訟対応ですが、インハウスローヤーは訴訟でフロントに立つわけではなく、基本的には、顧問弁護士や個別に委任した弁護士が案件を処理します。

    そのため、インハウスローヤーは、訴状や答弁書、準備書面に目を通したりチェックすることはありますが、自ら作成するわけではないことから、弁護士業務の経験が限定的になります。

    転職先企業によって関わる案件が限定される

    企業によっては、日常的に関わる業界・業務領域が限定されるというデメリットもあります。特に専門性の高い業界では、そのような傾向にあると考えられます。

    例えば、医療業界であれば、医師法、薬機法など専門的な法律や省令などを主に扱います。専門分野に関わるものであるため、医療事業における法務の専門性は深まりますが、弁護士業務の上で汎用性の高い法令に関しては、実務経験を通じた知見は深まっていかない恐れがあります。

    マネジメント業務の発生

    法務部長などの管理職になると、キャリアアップとして年収などが向上するほか、案件に関わる深度が深くなるほか経営陣との関係も密接となり、非常に業務が濃くなります。

    その反面、部下の育成や各部署との連携に関わるマネジメント業務などのタスクが増えます。法務部の規模が大きい場合は、事務所に比べて統括する人数が多いことから、ストレスフルな側面もあります。

    新卒でインハウスローヤー(企業内弁護士)になるデメリット3つ

    新卒でインハウスローヤーになる場合のデメリットとしては、どのようなものがあるでしょうか。

    弁護士業務に関する経験を得にくい

    インハウスローヤー は一般民事事件・刑事事件の訴訟に関わることがほとんどないため、典型的な弁護士業務をする経験が得にくいです。

    より具体的には、個人受任が許されない限り、一般民事事件や刑事事件への関与がほとんどありません。そのため、法律相談を受けてから事件を受任し、案件を処理していくプロセスを体で覚える機会がなく、事件処理のフローが身につかない状態となります。

    さらに、そうした状態が継続していくと、会社内での法務に関する知見が蓄積していく反面、訴訟関係の知識が薄れていくことが懸念されます。

    もちろん、インハウスローヤーとしてずっとビジネスサイドで法務に関わることを意図している場合は、まったく問題はありません。しかし、基本的な弁護士業務から離れていくことは、キャリアを考える上での1つのリスク判断です。

    法律事務所への転職が困難に

    弁護士業務としての経験が希薄であるということは、後で弁護士業務をやりたい!と思ったとしても、法律事務所に転職する際に課題となります。

    個人的に事件を処理した経験が皆無であるとなると、法律事務所に転職する際、事務所側としては、一から新卒のアソシエイトを採用するような視点に近いと考えられます。

    特に、一般民事事件や刑事事件を中心にするような街弁は、企業法務を扱う弁護士に対して排外的に見る傾向にあるため、マイナスに見る可能性があります。

    仮に法律事務所への転職をすることができたとしても、条件・待遇面で不利になる可能性はあります。

    収入が低い

    新卒では、専門性の評価根拠となる弁護士としての実務経験が実際上0からスタートするため、法律事務所への就職の場合と比べて低いです。

    新卒で法律事務所に就職した場合、およそ500万円から600万円である一方、インハウスローヤーは、企業規模によるところはありますが、ベンチャー企業では300万円や400万円といった程度にとどまるところもあります。

    弁護士資格を取るまでに投資した金額を考えると、やはりつり合いがとれない感覚になります。

    経験弁護士がインハウスローヤーになるデメリット

    経験弁護士の場合に、インハウスローヤーになるデメリットは、どのような点にあるでしょうか。

    法律事務所での立場とのギャップ

    法律事務所では、弁護士は職人業の側面がありますが、事務員を稼働しながら自分で案件の処理方針などを検討し、場合によっては他の弁護士と協力しながら、主導的に業務を行います。

    弁護士業務において、弁護士は、独立性が高く、裁量の幅も広いです。

    しかし、そうした弁護士業務の現場とは異なり、企業内では、組織内の指揮系統があるため、裁量の幅が狭く、1つの案件に対して最終的なジャッジを下す場面はほとんどありません。

    主導的に、自分の裁量・判断のもとで人を動かして仕事がしたいという人にとっては、通常の正社員としてインハウスローヤーの業務をするのは、適さないと考えられます。

    「弁護士」という肩書への評価が様々

    また、企業内の雰囲気にもよりますが、弁護士という肩書に対して、権威的であるとの見方など、パーソナルな部分より前に上から目線のようなレッテルを貼られたり、社員とのコミュニケーションの際に委縮されることも考えられます。

    特に、弁護士としてのキャリアが長いほど、ほかの社員にとってより近づきがたいような存在に見られる可能性もあります。

    あるいは、法務部の同僚の中で、弁護士ではない人がいたときに、自分の態度によって、あるいはその同僚のキャラクターによってはコミュニケーションの際に「壁」が作られるおそれもあり、業務に支障が出ることがあります。

    業務の自由度に温度差を感じる

    上記での「法律事務所での立場とのギャップ」で述べた点とも関連しますが、業務遂行における自由度が、インハウスローヤーでは低くなります

    なぜなら、上記のように役員や上長との指揮監督、決裁プロセスの遵守などが求められ、業務上一定程度組織としての意思決定を尊重することが要求されるからです。

    インハウスローヤーになるデメリットを克服する考え方・6つの視点

    上記のようなデメリットを克服するための考え方として、次の6つの方策が考えられます。

    目的を明確にする

    まず、インハウスローヤーとしてキャリアを歩む目的を明確にすることです。

    目的は、単に収入や働き方の面で、安定かつ自分の時間を作るといった抽象的なものではなく、キャリアや人生設計的な面で具体的に考えることがポイントです。

    つまり、「安定的な収入を得ることと自分の時間(休暇など)を確保すること」という目的が第一次的にあるとしたら、その解像度を上げ、なぜ収入を安定させるのか、自分の時間をどのように活用するのか、そうした点まで掘り下げて分析をすることです。

    また、キャリアとしても、インハウスローヤーとしてのリーガルサービスにおいて、自分の弁護士資格をどのように活かすのか、発展可能性はあるのかなどを具体的に検討することです。

    専門分野・特定の業界に精通する知見をつけてから転職する

    企業内で活かせるような専門分野の知見や、特定の業界に精通し究極的には「第一人者」と呼ばれるような領域を確保し、そこの分野に事業を展開する企業に転職することが考えられます。

    このような戦略的なキャリア計画を作ることができれば、例えば収入面で、専門性や権威性を根拠に、条件・待遇面を高めることができます。

    また、ポジション的にも、責任者ポジションあるいは役員ポジションで関わることができる可能性もあります。

    成長率の高いベンチャーを狙う

    成長率の高いベンチャーを狙うことも、やりがい面を重視する場合は、有効な方策です。

    成長率の高いベンチャーは、

    1. 事業領域的には先端的なもので未開拓の領域で
    2. ステージとしてはアーリーからミドルで未上場
    3. 法務をこれから作り上げていくというような状況

    の企業であるといった判断基準が考えられます。

    先端事業領域であれば、マーケット的に将来性が高いと考えられますし、未上場でシード気を超えていれば法務にコミットした業務のニーズが高いです。

    そして、法務を立ち上げていく段階であれば(いわゆる一人目法務)、社内で信頼を得てポジションを固めていくことができるため、役員ポストへの昇進を見据えていくことも不可能ではないからです。

    個人受任可の企業を転職先に選ぶ

    また、弁護士業務から離れないようにする面では、副業的な位置づけで弁護士業務を行えるような条件設定を交渉することが考えられます。

    具体的には、個人受任可という条件を契約の中に盛り込むことです。

    上長が過去に弁護士有資格者を採用し、あるいは非常勤で業務委託など弁護士と仕事をした経験があれば、部下が社内の業務をやりつつ弁護士業務を片手間でやる際のバランスのとり方などを調整した経験がある可能性があります。

    そのような経験がある上長がいれば、個人受任可の条件を検討してもらうよう交渉することは有益でしょう。

    派生的なキャリアプランを作る

    派生的なキャリアプランを設計しておくことも重要です。

    これは、場合によっては、法務という専門性や弁護士資格を直接的に活用するようなものではないかもしれません。

    法務に囚われず、他方で法律のバックグラウンドを持ちながら他の部署への異動などを含めたキャリアプランを設計すれば、社内法務に飽きたとしても、行き詰まることは考えにくいからです。

    社外取締役への就任を視野に行動

    上記の派生的なキャリアプランの設計とも関連しますが、他社での社外取締役への就任というプランも非常に効果的です。

    令和3年3月の会社法改正により社外取締役の設置義務化がされましたが、ベンチャー企業を含めて上場を目指す企業でも社外取締役人材の確保が重要課題となりました。

    そこでは、1つの柱として、法務の専門性を有する弁護士人材が注目されています。インハウスローヤーとして社内法務をハンドリングした経験があれば、ビジネスサイドでの経営の監督として適格です。

    法務責任者ポジションを経験していれば、なおプラスの評価になるでしょう。

    企業内弁護士になるメリット|関わる可能性のある業務と役割

    これまでインハウスローヤーになるデメリットにフォーカスし、それに対する対応策を検討してきました。

    他方で、企業内弁護士になるメリットは、どのようなものがあるでしょうか。

    企業法務の関わりが多い

    やはり企業法務、特にビジネスサイドでの関わりとして、高い専門性を身に着けることができる点が挙げられます。ここで、企業内弁護士の法務業務について、代表的なものを簡単にご紹介していきます。

    コーポレート業務

    コーポレート業務は、いわゆる経営管理業務ですが、法務としては株主総会や取締役会など各種会社法上の手続が要求される場面での業務です。メーカーや開発系の企業において、特に知財管理などは、このカテゴリーに含まれます。

    契約書レビューなど

    契約書の審査、管理に関する業務は、企業内弁護士の定型的かつ基礎的な業務です。大手の企業では、1日に数十件にも及ぶ契約書チェックを求められることもあります。

    もっとも、現在は、AI契約書レビューにより定型的なものはAIが数秒で審査するクラウドソフトなどを導入している企業も増えています。

    そのため、今後は、契約書の審査・管理などにおいて大幅な業務効率化が図られ、むしろM&Aや事業創出における業務にフォーカスすることができるようになると考えられます。

    M&A

    M&Aでは、主にDDのほか、様々なチャンネルの中でどのような手段選択を図ることが自社の利益を最大化することに資するかという判断において、外部の弁護士と協働しつつ業務を行います。

    後述の資金調達の戦略とも密接に関連します。

    資金調達

    資金調達は、株式の発行や投融資に関する交渉のバックアップがあります。

    直接フロントになる場合もありますが、バックアップとして、事業活動の状況やリーガルリスクに関する資料の作成などの業務があります。

    社内教育・コンプライアンス研修

    労務管理の一環として、社内教育や研修を行うのも、法務の仕事です。パワハラ・セクハラの防止体制もありますし、いわゆる公益通報者保護法による内部通報制度の構築と運用など、多岐に渡ります。

    新規事業の構築

    新規事業の構築も、幅広い業務があります。

    事業の企画案が出たときに、営業部や企画部から投げられた案について、適法性のチェックを行うことがあります。そして、必要に応じて、事業部とコミュニケーションを取りながら、修正案などを考案していきます。

    さらに、ルール形成にアプローチする必要がある場合は、いわゆるロビィング活動などのパブリックアフェアーズ業務を行うことも、法務にしかできない業務です。

    危機管理

    危機管理は、会社のリスクマネジメントに関わる重要な業務です。不祥事が発生した際の調査、外部弁護士との連携、第三者委員会の設置やとりまとめなどを行います。

    法務関連ビジネスでの起業アイディアを得られる

    また、業務を通じて、法務に関する起業アイディアを得られることもあるでしょう。契約書レビューにおける問題意識などは、企業法務の現場における実際の課題から生まれたものですが、そうしたメリットもあります。

    企業年金・退職金の発生

    福利厚生が充実していることも、やはりメリットです。企業年金や退職金が確保されているため、社会保障的な面で充実しています。

    ワークライフバランスの実現

    正社員としての雇用の枠組みの中で言えば、休暇の面で、弁護士業務と比べると安定的であるといえます。

    特に若手であれば、ワークライフバランスを志向する場合、法律事務所での業務では休暇を取得しづらい側面もあることから、ワークライフバランスというメリットは重要になります。

    インハウスローヤーへのキャリア形成は転職エージェントに相談を

    インハウスローヤーに転職する場合は、弁護士業界に精通したエージェントに相談をすることが重要です。

    キャリアとしての展望を客観的に判断

    理由として、キャリアの展望を客観的にフィードバックして、よりよいアイデアを引き出すきっかけになるからです。

    様々なキャリアイメージの構築が重要であることは先に述べた通りですが、その際に、弁護士業界に精通したエージェントのフィードバックを受けることは、ベストマッチを実現する上でポイントになります。

    経験や将来性に見合った条件での交渉を

    また、交渉力という点でも、弁護士実務を数年経験している場合はもちろん、修習を一通り修了していれば最低限の交渉力あると思われますが、やはり弁護士業界に精通したエージェントが提案する条件は、洗練されています。

    やはり客観的なフィードバックと分析を踏まえた最適な提案になるからです。

    弁護士業界に精通したエージェントがおすすめ

    そして、一般の転職エージェントと比較したときに、やはり弁護士業界に精通したエージェントが最適です。

    なぜなら、弁護士業界における特殊性や業務形態、キャリアや高い専門性の活かし方など、通常の会社員とは異なる扱い方・分析が必要になるからです。

    ぜひ、弁護士業界に精通したエージェントに相談するようにしましょう。

    参考:弁護士専門の転職エージェント|NO-LIMITとは

    まとめ

    いかがでしたか?

    インハウスローヤーには、収入、業務内容、キャリアアップなどの点からデメリットもあります。他方で、上記のように、具体的なキャリア設計をすること、バックグラウンドと業界のマッチングを図ることによる待遇面での戦略的な交渉などによって、デメリットは相当程度克服することができます。

    そして、インハウスローヤーには、働き方として、ワークライフバランスはもちろん、ビジネスサイドでの幅広い法務の可能性があるほか、収入を高めていくことができ、魅力もたくさんあります。

    ぜひ、弁護士業界に精通したエージェントを活用し、インハウスローヤーのキャリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。

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