弁護士を辞めて別の職業に転職したい場合、どういった職種を選べば良いのでしょうか?
今回は弁護士からの転職で法律的な知識やスキルを活かせる職種や転職を成功させるポイント、転職時の注意点などをご紹介してきます。
弁護士から転職する場合、以下の職種なら弁護士時代のスキルやノウハウ、法的な知識を活かせて活躍できる可能性が高いといえ、お勧めです。
目次
弁護士としての経験やスキルを活かしやすい職種3つ
これまでの弁護士としての経験をそのまま活かしやすい職種です。
企業の法務部門|インハウスローヤー
最近の企業では法務部門に力を入れるケースが目立っています。コンプライアンスの重視や相次ぐ労働関係法令の改正などに適切に対応するため、法律の専門家を必要としているのです。
弁護士経験のある方を雇い入れたい需要は高まっているので、就職先を探すのにさほどの苦労も要しないでしょう。弁護士と違って労働基準法がしっかり適用されるので、労働時間が減ってワークライフバランスを実現できるメリットもあります。
コンサルティング会社
経営コンサルティング会社なども弁護士の法的知識を必要としています。
これまで企業法務に携わり、さまざまな会社に経営アドバイスを行ってきた方であれば即戦力として充分期待されます。
コンサルティング会社の従業員であれば、弁護士と違ってトラブルが起こったときに最前線に立つ必要はなく、責任もストレスも従来の職務内容と比べて大きく軽減されるでしょう。
任期付公務員
業種にもよりますが、弁護士から公務員に転職するルートもあります。弁護士を続けながらでも「任期付公務員」となってしばらく弁護士の職を離れることも可能ですし、完全に弁護士を辞めてしまって公務員として再就職する選択肢もあります。
若い方なら任官任検のチャンスもときどきあるので、「弁護士がどうしても合わない」ならぜひとも検討してみてください。
法律特許事務所
弁護士資格を持っていれば『弁理士』登録も可能ですので、法律特事務所、特許事務所への転職も可能です。
特許事務所での仕事内容は、特許庁へ提出する書類の作成やアシスタント業務、クライアントへの報告資料作成などが事務員のメインの業務ですが、基本的には弁理士と弁護士の両方が在籍している事務所が多いです。
転職理由としては『知財分野まで業務の幅を広げたい』という方がマッチし、
- 他弁護士とキャリアの差別化ができる
- 特許等、知識が少ない知財案件でも、常に弁理士と共同で対応できる
- 知財以外の民事案件の依頼がくる可能性も高くなる など
海外における知的財産の管理を担当することもあるので、語学力を活かして国際的な活躍を目指すことも可能になるでしょう。
弁護士資格を活かした転職支援サービスに登録弁護士が未経験でも採用されやすい職種5つ
法律知識やスキルをそのまま活かすことはできなくても「未経験でも採用されやすい職種」「マネジメントや営業能力を活かしやすい職場」があります。
営業職
弁護士事務所を経営していた方は、自ら顧客開拓のために営業を行っていたはずです。顧問会社開拓の際、社長と懇意になるためにさまざまな営業術を身に付けてきたことでしょう。そうした能力を活かし、企業内の営業マンとして活躍することが可能です。
弁護士時代にどういった営業をしていたか、いかに営業が得意かなどをアピールして採用につなげましょう。
マーケティング職
広告運用やSEOなど、webマーケティグ職であれば敷居は低く、未経験でも挑戦しやすい職種です。もし事務所で広告出向やポータルサイトの利用をされていたのであれば、馴染みやすいかもしれません。
また、マーケティングを学ぶことで集客方法のノウハウが得られますので、今後弁護士業務を再開した際に、事務所開設もできる可能性が高まりますので、狙って損はないかと思います。
司法試験/案件特化講座などのセミナー講師
例えば『資格スクエア』という難関資格向けのオンライン資格スクールの講師や、『AG法律アカデミー』というパラリーガル専門資格講座では、弁護士で実務経験のある方を講師として迎え入れています。資格スクエアの代表『鬼頭政人』弁護士は、自ら講師をやることもあるようです。
マネジメント職
大規模な事務所でマネジメントに関わっていた弁護士の方であれば、マネジメント経験を買われて企業に就職できる可能性があります。
管理職としての採用であれば、ある程度年を重ねている方でも中途入社しやすくなっています。事務所内でどういったポストにありどのようなマネジメント業務を行っていたのかなどを積極的に説明し、採用につなげると良いでしょう。
介護職
今、介護の現場では人手が足りていない状況です。少子高齢化社会の中、今後も介護職の人材需要はどんどん拡大していくでしょう。介護関係職は給与が少ないことで知られてはいますが、今後改善されていく可能性が高いと言えます。
弁護士時代、生活保護の支援や国選弁護、成年後見業務などを積極的に行っていた方は、その知識経験を介護職に活かすことも可能です。弁護士よりも現場でお手伝いすることに慶びややりがいを感じられる方もおられるでしょう。
未経験の人でも転職しやすい業種なので、関心があればぜひともチャレンジしてみて下さい。
弁護士から異業種への転職を成功させるポイント4つ
本気で弁護士を辞めて異業種へ転職したいなら、成功させるためにいくつかのポイントがあります。
自己分析をする
まずは自分の強みと弱み、傾向などを充分に分析しましょう。企画力、営業力、プレゼンテーション能力、コミュニケーション技術などの所持しているスキル内容、経験、自分に不足していることや希望する条件などを紙に書き出します。このことで「希望する職種と実際に適合する職種のミスマッチ」を防止できます。
「やりたい」などの主観的な希望だけではなく、より客観的に「どういった職種が向いているのか」検討しましょう。
業界・企業の情報収集をしっかり行う
関心のある業種や企業が見つかったら、情報収集をしっかりと行いましょう。イメージではなく
- 「具体的に何をやっている会社なのか」
- 「社内の組織体制はどのようになっているのか」
- 「従業員の満足度」
- 「社会における評判」
などを調べて「本当に入社して安心か」を確認します。また自分の持つスキルや知識と適合するかも重要です。取得しておいた方が良い資格などがあれば、事前に取得しておきましょう。
志望動機を明確化する
弁護士と全く無関係の職種の場合、面接時に「なぜ当社を希望するのか?」と尋ねられると予想されます。そのとき「何となく」「自分に合っていると思いました」「以前から憧れていました」などというだけではいかにも頼りなげで不採用につながるリスクもあります。
「以前〇〇をしていたのでそのスキルをそのまま行かせると思いました」「御社の〇〇という点に非常に魅力を感じ、私の〇〇の経験を活かせばきっとお役に立てると考えました」など、より積極的な志望動機を考えておきましょう。
転職エージェントを利用する
自分一人で客観的な自己分析を行ったり就業先の情報収集を行って志望動機を明確に定めたりするのは、非常に大変な作業です。特に人は、自分のことを客観的に分析するのが苦手です。自己判断で動くと「合わない方向」へと突っ走ってしまう危険もあるので注意してください。
転職を成功させるには必ず第三者の視点とサポートが必要です。頼りになるのは「転職エージェント」。これまで多くのケースを取り扱ってきたプロの転職エージェントなら、個別の状況に応じた適切な対応やアドバイスが可能です。
まずはご本人の自己分析から開始して志望する企業の選定、履歴書の書き方のアドバイス、面接時の対処方法などを事細かに指示してくれるので、一人で転職活動を進めるのとは比較にならないほど効率的に異業種への転職を実現できます。
転職エージェントの利用は無料なので、お試しでも一度相談してみるようお勧めします。
弁護士から異業種に転職する際の注意点
弁護士から会社員などの異業種に転職する際、いくつか注意点があるので理解しておきましょう。
年収が下がる可能性がある
弁護士を辞めると、どのような職についても年収が大幅に下がる可能性があります。「最近の弁護士は以前ほど儲からない」とはいえ、一般の会社員などと比べると高額な収入を得ているケースが多いからです。
たとえば企業法務系の事務所で2,000万円程度の収入のあった方でも、企業内に転職すると1,000万円あるなしになってしまう例が多数です。
一般民事系、刑事系の法律事務所で1,500万円、2,000万円と稼いでいた方でも、一般の営業職になれば600万円、800万円という年収に落ち着いてしまうでしょう。
ただし年収の額面が下がっても、労働時間が大きく減ることには注目すべきです。弁護士の場合、平日はもちろんのこと土日も働いているケースが多数ありますし、毎日の労働時間も12時間、14時間という例が少なくありません。有給もないのが通常です。
転職時にはワークライフバランも考えるべき
一般の労働者になれば法定労働時間が適用されて残業代もつくので、時給にするとかえって高額になる例が目立ちます。特に出産を予定している方や結婚・子育てをきっかけに生活を見直したい方には企業内への転職がお勧めです。
転職時には「額面の年収額」だけではなく「ワークライフバランス」や「時給」にも注目して判断すると良いでしょう。
会社員の働き方が合わない人もいる
弁護士は「自由業」です。たとえアソシエイトとして給与をもらっている立場であっても、仕事上は独立した立場を保障されています。ボスの指示を受けつつも自分の裁量で事件を進めていた方が多いでしょうし、勤務しつつも個人事件をバリバリこなしていた方、また事務所経営者として完全に自分のやり方で仕事を進めていた方も多いでしょう。
そういった方が会社員に転職すると、束縛に耐えがたいと感じるケースがあるので注意が必要です。
- いちいち上司の決済を取らねばならない
- チームで動くときには周囲との細かい調整が必要
- 常に人間関係を意識して振る舞わねばならない
- 昇進や昇給を狙うなら「評価」を上げるためのさまざまな対応が必要
- 成績が良くても必ずしも評価されるとは限らない
弁護士時代とは異なり、上記のような状況になじめず「やっぱり弁護士に戻りたい」と考える方も少なくありません。会社員になるなら、自分が本当に会社員に向いているかどうかをしっかり検討すべきです。会社員が向いていないなら、無理に異業種に転向せず「別の法律事務所」を転職先として検討した方が良い可能性があります。
ネガティブな理由だけで転職活動を始めると失敗しやすい
転職をするときには「ポジティブな理由」を意識しましょう。
たとえば以下のようなものです。
- 「〇〇に関心をもっている」
- 「〇〇に強い魅力を感じる」
- 「〇〇をぜひともやってみたい」
- 「自分のスキルを活かしてさらに飛躍、活躍したい」
こうしたポジティブな理由や志望動機を抱えている場合、採用先の企業からも高い評価を得られて採用につながりやすくなりますし、就職後もスムーズに業務に溶け込んでいけるものです。
これに対し「ネガティブな理由」によって転職すると失敗のリスクがたかまります。
- 「今の職場から逃れたい」
- 「弁護士の仕事はストレスが強すぎるから辞めたい」
- 「クライアントと関わりたくない」
- 「旧態依然とした弁護士の業界が気に入らない」
こうした動機で転職活動をすると、志望先の企業の選び方が消極的になります。「今よりはマシだからここで良いか」と考えてしまうからです。そのような動機で大切な転職先を選ぶと、入社後に「ここも何か違う…」と違和感を受けてしまうリスクが高まります。
再度の転職となると、条件的にも厳しくなり労力やストレスも大きくなります。また企業側の人事担当者もプロです。ネガティブな理由の志望者は、心の内を見抜かれてしまうでしょう。「この人は採用しない方が良い」と避けられるリスクが高まります。
転職エージェントとも相談しながら「本当に転職したい、入社したい企業」を慎重に選定しましょう。
業務に物足りなさを感じる人も多い
弁護士を辞めていったん企業内に転向すると、最初は良くてもだんだんと物足りなくなる方が多いので注意が必要です。企業内での仕事はどうしても「裏方」にとどまるためです。責任は軽くても、やりがいが小さくなると感じるケースが少なくありません。
せっかく企業に転職したのにまた弁護士事務所への再転職を希望される方が相当数存在しています。安易な気持ちや逃げの気持ちで企業に行くのではなく、明確な目的意識をもって臨みましょう。
【元弁護士に聞く】弁護士以外の仕事を選択したキッカケと今の仕事内容は?
最後に、一般企業における会社員の立場を選んだ元弁護士の方にお話を聞いてみましょう。
弁護士を辞めたきっかけ
弁護士としての仕事は嫌いではありませんでしたが、弁護士業務を続けるにつれて、自分には「事業」や「ビジネス」が向いていると感じるようになりました。法律業務にとらわれず、もっと全面的に事業や経営に近い立場で働きたいと希望しました。
また結婚と妻の出産があり、弁護士事務所での労働環境では対応が難しくなると感じたのも1つです。妻も弁護士で私自身が育児を手伝う必要がありましたし、妻にも充分な収入があったので年収ダウンはさほどの痛手ではありませんでした。
今の仕事はベンチャー法務
転職先は海外展開にも積極的なベンチャー企業です。法律的な対応だけではなく、新規事業の立案や検討、実行に至るまでビジネスのあらゆる段階に携わることができ、非常にやりがいがあります。
また海外出張も多く、もともと海外旅行が好きで語学が得意だった私には非常に適していると感じています。忙しいのは忙しいのですが弁護士時代ほどではありません。きちんと有給やその他の休暇ももらえますし、残業代なども支給されるのでワークライフバランスも実現できています。
まとめ
弁護士から転職するなら、自己判断で対応するのではなく専門の転職エージェントの力を借りて進めるべきです。まずは「現状の何が不満なのか」「そもそも転職によって希望を実現できるのか」から考えてみると良いでしょう。
仕事を辞めずにお試しで転職活動することもできるので、一度相談頂けますと幸いです。
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