こんにちは。弁護士の転職転職エージェント『NO-LIMIT(ノーリミット)』です。
弁護士に英語力は必要なのでしょうか。弁護士はそもそも法律という専門性を持っている人でもあるので、必ずしも英語力は必要ないようにも思えます。
しかし、弁護士の活躍のフィールドは年々広がってきており、法律事務所の採用フォームにおいても、TOEICなど英語能力試験のスコアの記載を求める法律事務所は増えてきています。
もちろん、転職する法律事務所の体制や弁護士個人が持つ英語力の有無・業務への理解度に応じて求められる英語力は大きく異なります。
国際相続、海外にクライアントがある場合はTOEIC800点以上のビジネスレベルの英語力が求められますが、英文契約書レビューなどであれば調べながらでも対応が可能なケースもありますから、その場合はTOEIC600点程度の英語力でもカバーできる可能性はあるでしょう。
つまり、転職際の英語力が必要になるかどうかは、転職先事務所の業務内容によって求められるレベルが異なり、必ずしも英語力が必要とは言えません。
他方、弁護士が英語力を身に着けるメリットは多い(年収アップや転職の幅が広がるなど)ため、本記事では、弁護士に英語力は必要か、どんな弁護士に英語力が求められるのかなどを検討してみたいと思います。
目次
弁護士にとって英語力は今後は必要とされるシーンも増える
外資系法律事務所での業務、渉外案件に関わるならもちろん必要ですが、それ以外のシーンでも今後は英語力が求められていく場面が増えると予想されています。
例えば、国内のドメスティックな業務を中心に行う会社であっても、材料の仕入先などに中国などの海外国が絡んでおり、これらの海外の企業とトラブルになるケースは多いといえるでしょう。
また、外国人労働者の増加によって、クライアントが外国人になることも考えられます。
企業と関わらない一般民事事件であっても、外国人と結婚した際の国際離婚問題や親権の扱いなど、英語力が必要となる様々な案件が必要であるといえるでしょう。
弁護士になる際に最初から英語ができなければいけないわけではありませんが、日々の業務だけを行うのではなく、英語の勉強は継続して行うとよいでしょう。
弁護士の業務において英語力が必要になるケースとは?
弁護士の業務においては、営業力が必要な業務とそうでない業務があります。まずはどのような状況で英語が必要になるのかを確認しましょう。
一般民事事件で英語を使うタイミングは少ない
交通事故や離婚、相続などの一般民事事件において英語を使うタイミングは少ないといえるでしょう。
これらの法律の適用対象になるのは、基本的に日本法です。また、関係者も日本人同士であることが多いです。依頼者とのコミュニケーションにおいて英語が必要になる場面もわずかであるといえるでしょう。
渉外案件に関わるなら必須
渉外案件とは、一般に、企業法務などにおいて外国など国際性のあるビジネスに関わる案件を指す言葉です。
海外の会社から買収されたり、逆に海外の子会社を作るために買収したり、海外の企業と契約書を英語で締結したりすることがあります。
このような場合、適用対象となる法律は現地法であり、必ずしも日本法ではないといえます。加えて、英語で書かれた契約書の内容は純粋に日本語に直訳した場合では正確に理解できないことがあります。国が違えば考え方や解釈の仕方も異なるためです。
また、紛争が発生した場合も、日本における裁判所で裁判は行いません。例えばシンガポールにある仲裁機関で紛争を解決することなどが考えられます。
このように、渉外に関わる弁護士であれば、英語能力は必須であるといえるでしょう。
実際、弁護士に英語力はどの程度求められるのか
弁護士の英語力は、弁護士によって様々であり、一概にいうことはできません。
ただ先に解説したように、一般民事事件を主に取り扱う法律事務所であれば、業務において必要な英語力は必ずしも高くないのは間違いありません。
TOIEC800点以上あれば必要条件は満たされる
決まった基準があるわけではありませんが、弁護士として業務を滞りなく遂行するにはTOEICで800点以上がボーダーラインと捉えて良いかと思います。英文契約書のレビューでも比較的細部にまで理解・修正、複雑な要求に応えられるでしょう。
法律的問題の理解・交渉を行う際は日常会話レベルでは不安が残りますので、TOIECだけではなく、実務で活かせるビジネス英語のスキルを磨くべきと言えます。
英語スキルのある弁護士は顧問契約も取りやすく、弁護士としての経験を重ねるほど英語の能力が求められる場面が増加していく可能性があります。
いずれにしても、弁護士の転職・キャリア形成に英語力は役立つといえるでしょう。
渉外案件を主とする法律事務所ではネイティブレベルが求められる
一方、大規模法律事務所と呼ばれる企業法務を主とする法律事務所や、一部の有力な中規模法律事務所においては、確かな英語力が必要です。そこで、新人弁護士が入所して4~5年目を目安に留学に行かせたり米国などのロースクールに1年通わせてニューヨーク州等の弁護士資格を取得させたりします。その後1年間海外の法律事務所で研修させることが多いです。
海外での仕事を見越して身に着ける弁護士もいる
そのため、海外のロースクールに進学し、アメリカの司法試験に合格可能で、海外で一定の仕事ができるレベルの英語力を身に着けている弁護士も少なくはありません。
ただし、このような弁護士であっても、ネイティブと同様に会話できる英語力を持っていることは難しく、相手もからネイティブと同様の英語力を持っていることが求められる場面は多くないといえるでしょう。
上記のように、新人弁護士は大手法律事務所や渉外法律事務所であれば、留学して経験を積み、英語力を高めるというステップがあります。
もちろん最初から英語力が高いに越したことはありませんが、英語力が高くないからといって大手法律事務所や渉外法律事務所に入れないということはなさそうです。むしろ中途採用であれば、英語力はほぼ必須要素と考えるべきです。
弁護士の転職・キャリア形成に英語力を身につける7つのメリット
弁護士の転職・キャリア形成に英語力役立つかは、どのような弁護士像を目指し、どのような弁護士像が求められる法律事務所で務めるかによって異なります。
英文レビュー業務の時短になる
例えば英文契約書のレビューを請け負う際、調べながらのレビュー業務であれば時間がかかりますが、英語レベルが高ければ単語の理解や前後関係の読解もスムーズですので、業務にかける時間の短縮につながります。
刑事事件の外国人対応も可能に
刑事国選事件の場合、被疑者が日本語で対応できないケースが考えられます。そうなると、通訳をいれたり訴訟事件になった際も英語で会話されている録音テープが重要な証拠となるため、わざわざ日本語に翻訳する手間もあります。
英語対応ができれば通訳を入れて日本語に翻訳する手間も時間もないため、1人で行える業務となり、事務所の案件として注力できる分野になるだけではなく、個人事件として受任することも可能になるでしょう。
単純に年収も上がる
上記の例が実現すれば、業務の幅が広がることで取扱い業務が多くなり、年収アップにもつながります。英語対応ができることで、海外の個人・企業もクライアントになり得るので、結果的に業務の幅の広がりや収入アップにつながります。
企業法務事務所への転職がしやすい
企業法務への転職を考えているのであれば、英語能力が高いことは重要といえます。企業法務を主として扱う法律事務所に英語案件がないことは珍しいと考えられます。
高い英語力があれば、即戦力として案件に参加できることが期待できます。
逆に英語力がないと、転職先として選べる企業の選択肢がかなり少なくなってしまいます。グローバル化が進行し続けている現代では日本の企業が外国の企業とやりとりをする機会は大いにあります。自身の価値を高めるという意味でも英語力はほぼ必須と考えたほうがよいでしょう。
渉外法律事務所への転職も検討に乗る
海外案件を主に扱う渉外法律事務所は、英語は業務の上で必須のツールといえるでしょう。
そもそも渉外法律事務所では外国人の弁護士が在籍していることも多く、法律に関することだけでなく、日常会話から英語を用いることもよくあります。
よって英語が嫌いな人は、渉外法律事務所において勤務することは難しいといえます。もちろん、渉外法律事務所であってもすべての案件が英語案件であるとはいえません。
もっとも、あえて英語ができず参加できる案件に限定が加えられる弁護士を中途で採用するためには、その弁護士に英語以外の高い専門性があることを期待されることになるでしょう。
いずれにせよ、国際的なやりとりが業務の中心となっている渉外法律事務所には、英語力に自信がない場合は避けたほうがよさそうです。
ただし、多くの法律事務所では、英語能力よりも法律などの実務能力を求めています。若手弁護士であれば、後に法律事務所の支援によって留学などを行い、そこで英語能力が習得できれば十分といえます。
また、中堅以上の経験弁護士であれば、英語能力の有無よりも、どれだけの顧客を獲得できるか(≒法律事務所の売上にどれほど貢献できるか)が重要視されるため、英語が必ずしも必要条件になるとは限りません。
参考:中途採用 | 専門家採用 | 採用情報 | ベーカー&マッケンジー法律事務所
M&A案件・外資系企業の相談に携わりやすい
企業法務において、M&AやIPO案件に関わりたい方であれば、高い英語力を有していたほうが良いでしょう。
M&Aにおいては、買収先の会社が海外の会社であることや、または海外の会社から買収されることもあるため、英語力が必要です。
また、国内の会社同士の合併案件などであっても英語力は必要です。
買収を行う場合には、買収先の会社にリーガルリスクがないかを確認するため、買収先の会社から取引などでの契約書類を提出してもらい、法律上問題がないかをチェックする作業(デューデリジェンス)を行います。
買収先の会社が国内であっても、原材料などの仕入れなどにおいて海外の会社と契約していることがほとんどであるため、結局英語力がなければ案件に対処できないことになります。
英語スキルのある弁護士は顧問契約も取りやすい
英語スキルがあれば、英語での契約書レビューなども行うことが可能です。多くの企業は日常的に何らかの形で英語に関わっています。
そこで、契約書レビューなど、英語に関わる案件が出てきたのに、「私は英語案件できません」と断る弁護士であっては、日常的に仕事を依頼し続けることは難しくなってしまうといえるでしょう。
顧問契約は、日常的な法律相談も行うことを前提にすることが多いため、使い勝手の悪い法律事務所であれば、顧問契約を継続してもらえず切られてしまう可能性があります。
逆に言えば、英語能力を高めて日常的に法律相談をしやすい使い勝手の良い法律事務所であればあるほど、顧問契約も取りやすいと言えるでしょう。
クロスボーダーM&A・英文契約レビューなどの求人紹介を受ける
英語対応ができる弁護士の年収は高い傾向にある[求人情報あり]
英語対応ができる弁護士の年収は、英語ができない弁護士と比較して年収が高くなる可能性があるといえるでしょう。
パートナー弁護士であれば、自分が営業して獲得できる案件の幅が広がるため、より好条件の案件を獲得できるために大きな武器になるといえるでしょう。パートナー弁護士は経営者という立場です。
英語力がないとクライアントがほぼ日本国内に限定されてしまい、法律事務所の経営が難しくなります。パートナーへの昇進を考えているアソシエイト弁護士は、経験を積むという観点以外でも積極的に海外留学に行ったほうがよいといえます。
法律事務所の給料制度にもよりますが、良い経験を積むことができるだけでなく、ボーナスなどでの待遇面も期待することができるでしょう。もちろんパートナー弁護士への昇進のための良い判断材料にもなることでしょう。
参考として、NO-LIMITで英語能力を歓迎している求人を表でご紹介します。
給与 | 業務内容 | 求人情報 |
900万円~1,500万円 | ・英文契約書のドラフト・レビュー ・M&A ・社内法律相談対応 |
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~800万円(前職給を考慮) | ・対外契約関連書類のドラフト・レビュー・管理 ・契約法務(商取引・著作権・版権許諾・受託) ※英文契約が90% |
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600万円~900万円 | ・各種和文・英文契約書のレビュー、作成、管理 ・社内、関係会社から寄せられる各種法務相談への対応 |
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480万円~720万円 | ・契約書対応、訴訟対応(非代理人) ・M&A(グループ会社)、海外案件 等 |
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500万円~900万円 | ・規約、契約書、覚書対応、各種法的論点の整理 ・官公庁、投資家との折衝・交渉、知財業務 |
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700万円~ | ・契約審査、新規事業支援、トラブル対応 ・コンプライアンス、会社法関連、M&A支援 ・知的財産権管理、ライセンス関連 等 |
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500~700万円前後 | 英語について特になし求人 |
まとめ
企業法務への転職を考えているなら重要ですし、渉外法律事務所への転職なら必須です。特に、M&A、IPO案件に携わりたいなら英語力は高い方が良いといえるでしょう。
また、これらの英語力の高さは、業務の幅広さにもつながり、結果として弁護士としての年収増にもつながるでしょう。
もっとも、これらの英語力は、法律事務所入所後に留学などの経験や海外案件をこなすことによって、弁護士をしながらその成長を見込むことが可能です。まずは、弁護士としてどのような経験を積むかを中心にキャリアを考えていくのが良いといえます。
もし、英語力を磨くのであれば、まずは英語が苦手でないことが伝わるTOEIC800点を目指すと良いと思われます。