弁護士を題材としたドラマなどでよく「パートナー」や「アソシエイト」、「パラリーガル」といった言葉を聞くことはありませんか。
特に「パートナー」は偉い人や年配の役柄の人が演じることが多いと言えるでしょう。この「パートナー」や「アソシエイト」といった役職は、実際の法律事務所において用いられています。
では、パートナーとはどのような弁護士のことをいうのでしょうか。
本記事では、このパートナーとは何か、どのような業務をしているのか、アソシエイトとはどう違うのかなどを紹介します。
目次
パートナー弁護士とは
パートナー弁護士とは簡単に言うと、法律事務所を共同経営する弁護士です。
法律事務所の所長以外の経営者のことをさします。基本的には弁護士の在籍数が数十名以上の規模が大きい法律事務所にいることが多いです。大規模な法律事務所ですから、地方よりも東京や大阪などの大きな都市にパートナー弁護士はいるとイメージするとわかりやすいです。
法律事務所によっても異なりますが、新人弁護士として法律事務所に入所して、弁護士5年目~12年目の弁護士が就任します。
法律事務所におけるパートナー弁護士の役割とは?
パートナー弁護士には法律関係の相談などの、弁護士としての仕事以外にも多くのやるべきことがあります。法律事務所を経営する立場にあるため、事務所経費の支出やスタッフの採用・育成なども行います。
パートナー弁護士はまずもって法律事務所の経営面を金銭的に支えなければなりません。そのため、新規の案件を受任する営業力や、弁護士としての専門性などが相応に求められる存在ともいえるでしょう。
また、金銭面のみならず、事務所の人事などのマネジメント面に関わることも求められます。新人弁護士となる司法修習生や司法試験受験生に向けた採用活動もパートナー弁護士の仕事の一つです。
多くの新人弁護士は、アソシエイト弁護士をとして十分な経験値を積み、パートナー弁護士などの一人前の弁護士なることをひとまずの目標としているため、新人弁護士の目標となる存在でもあります。
法律事務所で違うパートナー弁護士の立ち位置
パートナー弁護士の立ち位置は、法律事務所によって異なります。
ある法律事務所では、新人弁護士として採用された弁護士の中で10年間ほど競争をさせます。そして優秀な弁護士のみパートナーとして採用し、他の弁護士は別の役職として採用したり、転職を促したりすることもあります。
このような事務所では、優秀、または、事務所内での政治(世渡り)の上手な弁護士がパートナーになります。別の法律事務所では、6年から10年経った弁護士は自動的にパートナーへと昇格させ、事務所への経費納入を求めることもあります。
このような早期にパートナーに昇格させ、特に企業法務に携わる法律事務所の場合は、パートナーといってもまだ営業力が不十分である弁護士も多く、パートナーであっても、年配のパートナー弁護士から仕事を振り分けられることもあります。
これらの時期は法律事務所によって異なるため、一概にいうことはできません。
法律事務所に参画した新人弁護士がどの程度の経験を経てパートナー等に昇格しているかを確認するには、その法律事務所の所属弁護士の経歴などをWebサイトで確認すると分かることがあります。
(参考:パートナーおよびカウンセル就任のお知らせ | 森・濱田松本法律事務所)
おおよそ、新人弁護士として入所してから十数年の勤務を経てパートナー弁護士に昇格しているといえるでしょう。
アソシエイト弁護士との違い
端的に言えば、アソシエイト弁護士は部下、パートナー弁護士は上司の関係にあたります。アソシエイト弁護士は、事務所に新人弁護士として入所した弁護士の最初の役職です。アソシエイト弁護士は、パートナー弁護士が受任してくる案件を先輩弁護士であるパートナーから振られて、共同で案件にあたりながら経験を重ねていきます。
これに対して、パートナー弁護士は、所属する法律事務所のアソシエイト弁護士を上手く活用し、また育成しながら膨大の数の案件を処理しながら事務所の経営を支えます。
パートナー弁護士の平均年収
パートナー弁護士の平均年収は法律事務所によって様々であり、一概にいくらだと言うことはできません。
なぜならば、パートナー弁護士の年収の多くは、自分が営業し獲得・処理した案件の依頼料の一定割合を収入とするためです。
また、パートナーとして転職する場合には、給料額を交渉するというよりも、どの程度経費負担をするかという形の交渉が行われることも多いといわれています。
弁護士によっては、数億円を稼ぐことも可能になるでしょう、
(参照:商事法務ポータル|弁護士の就職と転職Q&A Q88「年間売上2億円を目指すか? 5000万円規模で足るを知るか?」 西田 章(2019/08/05))
法律事務所の給料体系によっては、アソシエイト弁護士からパートナーに昇格したところで経費負担を求められて、結果として給料がアソシエイト時代よりダウンしてしまうこともあります。
逆に、パートナー間での給料の平等を志向する事務所であれば、パートナーに昇格することで一気に給料が上昇する法律事務所もあります。
参考までに、求人情報を確認してみましょう。
求人内容 | 年収 |
外資系法律事務所での パートナー弁護士(候補含む) |
1000~2000万円 |
ジュニアパートナー弁護士 |
1000~1500万円 |
企業法務系法律事務所 パートナー候補 |
1000万円~ |
経験弁護士 シニアアソシエイト パートナークラス |
1000~1500万円 |
支店パートナー弁護士 | 480万円~ |
パートナー弁護士 | 委細面談 |
パートナー弁護士の平均年収は、少なくとも1000万円を超えると考えられます。
ただし、上記の通り、多くの法律事務所におけるパートナー弁護士は、その獲得した依頼料の一定割合を年収とすることが多く、給料の平均を出すことは難しいでしょう。
パートナー弁護士とアソシエイトを比べた際の業務の差はある?
パートナー弁護士はアソシエイト弁護士に仕事を振り、経験を積ませるのも仕事というのは先述した通りです。
パートナー弁護士もアソシエイト弁護士と同じようにもちろん法律の案件の仕事に携わりますが、その他にどのようなことを行っているのでしょうか。
責任者として案件に対処する
パートナーは基本的にアソシエイトの上司として、また案件の最高責任者として業務に取り組むことが求められます。
そのため、法律事務所にいるアソシエイトの稼働状況をみながら、適切なアソシエイトに案件を割り振るのはパートナーの役割です。そして彼らの仕事をチェックして修正し、依頼者の下へプロダクトを届けなければなりません。
新規案件受任のための営業
パートナー弁護士はクライアントの相談先であり、直接の依頼先です。
現在では、企業側も漫然とお付き合いのある法律事務所に仕事を依頼するのみならず、案件の緊急度や規模などによって依頼する法律事務所を使い分けています。
このような中で依頼を勝ち取るために、個々の案件のクオリティーや弁護士としての専門性を高めることは必要です。それだけでなく、依頼者と積極的なコミュニケーションをとって仕事を勝ち取っていくことが求められます。
また、事務所がある地域ではどのような相談案件が多いのかを見極め、どの業務を中心に行うべきかを判断するのも営業面でのパートナー弁護士の仕事です。
採用活動などの経営への参画
パートナー弁護士は経営の責任者の一人として、事務所のマネジメント業務に携わります。
採用活動や、部下であるアソシエイト弁護士の勤務状況の管理など、様々な仕事をすることが求められます。アソシエイト弁護士が成長しやすい環境を整えるのもパートナー弁護士の重要な仕事です。
パートナー弁護士になるには?
パートナー弁護士になるための条件は、法律事務所によって様々です。ここでは、一例としてパートナー弁護士に必要な条件を紹介します。
一定の売上要件
パートナーとなるために、一定の売上を立てていることが必要になる場合があります。
パートナー弁護士は、事務所に収入をもたらしてその経営を支えることが求められるため、一定の売上があることを条件としている法律事務所もあります。
アソシエイト弁護士が実績を積み重ねてパートナー弁護士に抜擢されるケースは多くあります。こうした数々の実績が法律事務所の売り上げにつながっているともいえます。つまり、数多くの案件をこなして経験値を増やしていくことがパートナー弁護士になる道といえるでしょう。
留学・出向などの経験や専門性の高さ
弁護士としての能力や経験値も、パートナーとなるための条件になることがあります。
近年は若手の弁護士が海外のロースクールへ留学したり、官公庁や企業へ出向したりする機会も少なくありません。こうして様々な経験を通して弁護士としての成長につなげます。
事務所の責任者としてパートナーに昇格させても、依頼者に対して責任を持ったリーガルサービスを提供することができなければ、事務所の評判を落とすことにもつながります。
一定の能力の担保をするため、これらの条件がパートナーとなる条件になることがあります。
元裁判官など、その他の法曹から弁護士になる場合もあります。その経歴にもよりますが、最初からパートナー弁護士として勤めることもあります。
営業力
弁護士として、クライアントから新規案件を受任するための営業力があることが求められる場合があります。司法制度改革により弁護士の数が増えている現在では、なおさらこの営業力が求められます。
日本弁護士協会による「業務広告に関する指針」により、弁護士は面識のない人に対する飛び込みや電話でのなどの直接営業が禁止されています。よって、多くの法律事務所は新規顧客の獲得のために様々な工夫をしています。
弁護士の営業活動の一例
- セミナーの開催
- HPの充実化
- TwitterやFacebookなどのSNSの利用
- 無料相談の実施 など
法律事務所としては、どんどん売上を伸ばし規模を拡大していくためには、事務所に新しい仕事を持ってくる必要があります。
そのための営業力も経営に携わるパートナー弁護士には必要な能力です。
パートナー弁護士を募集している事務所へ転職する
最後は、パートナー待遇で迎え入れてくれる法律事務所へ転職することです。いまの事務所ではアソシエイトであったり、いち弁護士としての待遇だったとしても、その経験は事務所を替えることでもっと評価されるケースは往々にしてございます。
ただパートナー弁護士の募集はひまわり求人や一般的な転職サイトには上がってこないことがほとんどなので、弁護士専門の求人紹介サービス経由で応募するなどして、一度話しを聞きに行くのが良いかと思います。
パートナー弁護士の求人紹介例
パートナー・オブカウンセルの弁護士募集
役職 | パートナー・オブカウンセル・アソシエイト |
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業務内容 | 国内外の個人及び法人を顧客とする、あらゆる分野の法律業務を取り扱う総合法律事務所。 一般民事・家事・労働・医療・知財・税務・行政・刑事・渉外・M&A... |
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アソシエイト・パートナー弁護士求人
役職 | アソシエイト・パートナー |
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業務内容 | 400社を超える顧問先(不動産業、マンション管理会社、IT関連会社、士業事務所ほか... |
必須要件 | 実務能力については特になし |
歓迎要件 | 企業法務全般に対する実務経験 |
勤務地 | 東京 |
給料 | 700万円~ |
企業法務メインのパートナー弁護士・シニアアソシエイト弁護士の求人
役職 | パートナー弁護士・シニアアソシエイト弁護士 |
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業務内容 |
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必須要件 |
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歓迎要件 | 英語の実務経験があると尚良 |
勤務地 | 東京都 |
給料 | 1000万円~ |
パートナー弁護士のキャリアパス
弁護士がパートナーになった後のキャリアパスには、以下のようなものがあります。
独立・開業
今所属している法律事務所から独立して新たな法律事務所を開業することが考えられます。
一人で独立することもあれば、他の同期などを数人引き連れて独立することもあります。あるいは、他の法律事務所の独立をしようとしている弁護士と協力して、新たな法律事務所を共同で立ち上げることもあります。
インハウスへの転職
弁護士は個人事業主であり、その生活は景気などによって不安定になることもあります。
また、従業員ではないため、育休や産休などの制度が法的に保障されてはいません。
そこで、ライフバランスなどを重視するため、あるいは企業の中でプレイヤーとして活躍するため、インハウスへの転職を行うことが考えられます。つまり、一般企業に勤めている弁護士になるという道があります。
大手事務所への転職
事業再生分野や労働分野など、高い企業法務の専門性を身に着けた上で、大手事務所へ移籍するパートナー弁護士も一定数います。
まとめ
パートナー弁護士とは、法律事務所の経営に関わる弁護士です。アソシエイトの上司にあたり、専門性だけでなく、営業力、マネジメント能力などが求められます。新人弁護士が目指す目標の一つであり、パートナー弁護士であれば、その法律事務所が一定の能力の担保をしている弁護士ということができるでしょう。
年収は法律事務所の規模にもよりますが、大手事務所であれば、年収3,000万円以上も見込めます。
パートナー弁護士はその後のキャリアプランも充実しており、身に着けている能力から、様々な道があります。