法務として更なるキャリアアップ、心機一転新しい職場でのスタートを見据え、転職を考えている人は多いのではないでしょうか。
しかし、いざ転職活動を始めたのはいいものの、なかなか自分の条件に合う求人が見つからないことも少なくないですよね。法務はそもそも全体の求人数自体が少なく、そのなかで良い求人を探すとなると、必然的に難易度は上がります。
もし自分に合った法務の求人を上手く見つけるコツやタイミング、便利な求人サイト・転職エージェントがあれば知りたい人は多いはずです。また、なかには未経験から法務を目指しており、転職を成功させるためには何が必要なのか、知りたい人もいるかもしれません。
この記事では、近年の法務転職市場の状況や、転職を成功させるためのポイントや注意点などについて解説します
さらには、法務求人を豊富に扱う求人サイト・転職エージェントも紹介するので、これから転職活動を始める方は参考にしてみてください。
目次
近年の法務人材に関する転職市場動向
近年、売り手市場が続いていた転職市場も新型コロナの流行を境に一変。企業の採用活動にも縮小の動きが見られつつあります。
法務の採用活動にも影響が出ていてもおかしくないと考える人は多いでしょう。
では、実際に現在の法務の転職市場にどのような影響が出ているのか、この項目では解説します。
コロナ禍においても法務人材のニーズは堅調
新型コロナの流行は転職市場にも大きな影響を及ぼしているなか、法務人材に対するニーズについては、多少の減少は見られるものの堅調を維持しているといえます。
以前から高まりを見せていたコンプライアンスやガバナンスに対する意識は、新型コロナの流行以降も依然と高いままです。
むしろ、コロナ禍を機にDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に本腰を入れるため、社内の管理体制を変更・強化に向けて、法務人材を求める企業は少なくないでしょう。
また、景気が下降傾向にあってもM&AやIPOがゼロになることはありません。
なので、そうした専門性の高い業務に対応できる法務人材は、引き続き企業ニーズは根強いといえます。
採用活動が活発なのはIT業界やメディカル業界
法務人材の採用ニーズが堅調とはいっても、当然業界ごとに状況は異なります。
コロナ禍においても、法務人材の採用活動が盛んな業界は以下の通りです。
- IT業界
- メディカル業界
- コンサル業界 など
IT業界やメディカル業界は、新型コロナの流行が奇しくも追い風となり、業績の拡大を後押し。
またコンサル業界もコロナ禍に対応するため、DX推進に力を入れる企業が増えたことが業績拡大に繋がっています。
こうした業界のなかでも、特にさらなる拡大・経営の安定化を目指す中堅クラスの企業が、法務部を新設・強化するために、法務人材確保に動いているといえます。
女性が活躍しやすい部署として注目されている
法務部は近年、女性が活躍しやすい部署としても注目を浴びています。
注目を集める理由としては、まず復帰のしやすさが挙げられます。
法務部の仕事は多岐にわたり、高い専門性も求められますが、何年かで方法が大きく変わるわけではありません。
そのため、産休・育休明けの社員でも業務の復帰がしやすくなっています。
また専門性の高さも注目を集める理由の一つ。
業務のIT化やAIの活用により、専門性の低い業務はなくなるといわれているなかで、明確なスキルが身につく法務への関心は高まっているといえるでしょう。
年収400万円~700万円での募集が多い
さまざまな転職サイトの法務求人をみるに、転職市場における大まかな年収相場は400万円~700万円くらいだといえそうです。
しかし、なかには年収1,000万円を超える求人もあれば、おそらく未経験または若年層を想定した年収300万円台のものも見受けられました。
【主要転職サイトにおける法務求人の想定年収額】
サイト名 |
最低想定年収額 |
最高想定年収額 |
doda |
280万円 |
1,500万円 |
マイナビ転職 |
250万円 |
1,500万円 |
エン転職 |
270万円 |
1,000万円 |
もちろん相場の金額は絶対ではありません。年収は求職者の持つ経験やスキル、年齢、企業規模等のさまざまな要因によって大きく異なります。
仮に求人に記載された年収額が低くても、採用時に経験やスキル等を踏まえて、掲載金額以上で契約を結んでくれることもあるため、参考程度にとどめておくのが無難でしょう。
法務の主な仕事内容5つ
法務部が社内で求められる役割は、
- 法律を武器にして戦うアクセル
- 法的トラブルを未然に防ぐためにブレーキ
の役割の2つがあります。
前者は契約をする際に自社にとって有利に契約を進めるためには法律の知識を使って、担当部署をサポートすること。後者は不利な内容で契約を締結しないよう契約内容のチェックや、法的なトラブルを未然に防ぐ、あるいは適切に処理することです。
この項目では、企業内で法務部の求められる具体的な役割と主な業務について解説します。
契約・取引法務
企業間で取引を行う場合、必ず契約書の作成を行います。企業が取引先と結ぶ契約は、売買契約や秘密保持契約など様さまざま。
法務は民法や商法、国際法などに基づきこれらの契約書を作成や、契約の内容をチェックします。
また、企業買収などM&Aを行う場合は、契約の内容を決めたり、買収までにスケジューリングを行ったりと、経営を左右する局面で重要な役割を担うことも少なくありません。
機関法務
機関法務とは、株主総会や取締役会などの社内機関を法律に基づいて合法的に運営することです。株主総会や取締役会が会社法などの規定に違反せずに正しく行われているかをチェックします。
また、定款の変更や、株式発行や分割の手続きなどの業務も行います。
法務相談
社員からの法律に関する相談を受けることも法務部の業務です。法務部は社内の法律のプロとして、社員を支える役割を担っています。
コンプライアンス・社内規定
コンプライアンスを社内に周知徹底させる目的で、社内研修の実施や相談窓口設置をします。
また社内でのトラブルを未然に防止するために、社内ルールを作成したり、周知したりすることも法務部の重要な業務です。企業に対する社会的信頼を守る業務を行なっています。
紛争対応法務
企業活動を行う中で、取引企業や顧客との間でトラブルが発生した際の対応も法務の業務です。
法務部はこれらの業務以外にも、企業が今後展開していく業界や海外の法律や法制度を調査したり、社内に周知させたりする業務など法律に関するあらゆる業務を行なっています。
未経験からの法務転職は難しい?
法務人材の採用ニーズは高いものの、未経験者の場合はやはり難易度は高めです。というのも、法務はよほど規模が大きな企業でもない限り、少ない人数で構成されます。
会社によっては法務部を設置してない、または、他部署と兼任ということも少なくありません。
人数的に未経験人材の面倒をみて育てる余裕がないのです。
しかも、業務の専門性が高いことが、より転職の難易度を上げているといえます。とはいえ、未経験での法務転職がまったくのノーチャンスなわけでもありません。
全企業の採用ニーズを満たせるほど、市場に即戦力人材はいませんし、現時点での能力よりカルチャーフィットを優先させることもあります。
未経験で法務転職を成功させたいのであれば、あまり選り好みはせずに、不利は承知の上で多くの求人に応募したほうがよいでしょう。
法務職の転職が難しいのは、法律知識などを覚える必要があるため専門性が高く、企業の将来を左右するほど重要な仕事を担うためです。法務職の具体的な業務内容、転職を成功させる方法、転職に有利な資格を紹介します。
法務人材に求められるスキルと能力
法務部で働くにあたって、法律知識が豊富にあれば十分かというと、当然違います。
企業の法務は弁護士や弁理士、司法書士などように、法律に関する専門家としてふるまうことを求められているわけではありません。なので、法律に詳しいだけでは不十分です。
この項目では法務人材に求められるスキルと能力について確認していきましょう。
コミュニケーション能力
法務を含むバックオフィス部門は、会社を縁の下で支える存在であるせいか、コミュニケーション能力が必要ないとよく誤解されがちです。
しかし、実際は社員との関わりはもちろんのこと、顧問弁護士や株主など社外の人間ともやりとりを交わす機会は多いといえます。
業務も単に法的な指摘をするだけではありません。
社内外の利害を調整し、ビジネスを円滑に進めるための役割も担うため、コミュニケーション能力は必要不可欠だといえます。
リサーチ能力
法律や法令は意外とこまめに改正が行なわれており、一度覚えからといって安心はできません。
常日頃から最新の情報を収集しておく必要があります。
また新規ビジネスのなかには、国内では参考になる事例が存在しないことも。
そうした場合には、海外の事例を参考にしたり、既存の法律から使えそうなものを見繕うことも必要となります。
そのため、リサーチ能力や学び続ける意欲は、法務部で仕事する上で必要な能力だと言えるでしょう。
語学力
近年はグローバル化に伴い、国外の企業と契約を結ぶことも珍しくなくなってきました。
国外の企業と契約を結ぶとなれば、契約書も外国語であることがほとんどです。
外国語の契約書を読み解ける人材は多くはないので、語学に強い人は重宝される可能性は高いでしょう。
法務転職を成功させる4つのポイント
自分が望む企業への法務転職を成功させるためには、しっかりとした準備・対策が必要不可欠。
特に未経験での転職を目指す方は、数も大事ですが対策も同様に大事です。
この項目では法務転職を成功させる上で大事なポイント4つを紹介します。
キャリア設計をしっかり行う
法務は専門性の高さが売りと言えど、リーガルテックやAIの発展により、今後単純な業務についてはなくなる可能性があります。
そのため、何も考えずただ漫然と業務をこなしているだけだと、最終的に仕事がなくなってしまうかもしれません。
法務のキャリアパスは、大まかにスペシャリストとマネジメントに分けられます。一般的にはマネジメントとしてのキャリアを築いていく人が多いでしょう。
資格持ちの人はスペシャリストのキャリアを築くのもよいかもしれません。
最終的にどちらのキャリアパスを選ぶにせよ、最初はマネジメントの経験を積むことを目標にしたほうが無難といえます。
というのも、マネジメント経験はポータブルスキルの一つなので、汎用性が高く、仮に将来、職種替えをしたいとなったときに、転職活動で評価を得やすいでしょう。
情報収集を行う
転職活動を成功させる上では情報収集も欠かせません。
近年は求職者有利の売り手市場であったために、企業側もただ応募を待つだけでなく、自ら積極的に情報発信をすることも増えました。
求職者にとっては情報が集めやすくなった反面、少し調べたらわかることをなぜ知らないのと疑問を持たれる可能性が増えたともいえます。
特にベンチャーやスタートアップ企業は、能力面もさることながらカルチャーフィットの部分も重要視するので、情報収集を事前にしっかりと行ったどうかで結果が大きく変わります。
企業が求める人材だと自分を上手くアピールするためにも、情報収集はしっかりと行った上で転職活動に臨みましょう。
資格を取得する
未経験でかつこれまでに法律を勉強した経験がない方は、資格を取得するのも有効です。資格は転職の際に有利になるだけでなく、実務を行う際に対応できる業務範囲を広げることに繋がります。
法務の転職に役立つ資格は主に以下2つ。
ビジネス実務法務検定
ビジネスシーンで求められる実践的に法律知識があることを証明できるのが、ビジネス実務法務検定です。
3級では法律の実務の基礎知識を有していること、2級では法律に基づいて実践的に考えことができることを証明できるため、転職目的の場合は最適でも2級まで取得しておきたいです。
法学検定
法学検定は、法学や法律の知識がどのくらいあるかを客観的に評価するための試験です。
そのため、基本的に受験者は法学部の学生や法曹界を目指す人が中心ですが、最近では禁輸系や保険会社などで受験を推奨する企業が増えています。
取得しておくことで、法学や法的素養があることを証明できるでしょう。
この2つ以外にもコンプライアンスのスキルがあることを証明できるビジネスコンプライアンス検定や、将来的に知的財産に関する業務をしたいと思っているなら知的財産管理技能検定もオススメです。
転職エージェントを利用する
法務の転職にあたっては、転職エージェントの利用も選択肢の一つ。
転職エージェントを利用すれば、キャリア設計や企業・業界の情報収集を転職のプロにサポートしてもらえるので、転職活動の準備を効率よく行えます。
また企業が新規事業の立ち上げやIPO、M&Aなどに伴い、法務部の新設・拡充を考えている場合、競合に知られないよう求人の一般公開は避けます。
となると、そうした求人は転職エージェント経由か、幹部クラスによるリファラル採用でしか知ることができません。
なので、転職エージェントを利用しておいて損はないといえます。
法務転職におすすめの転職エージェント5選
転職エージェントを利用する場合は、法務転職に精通したサービスを選んだほうが、より適切なサポートを受けることができます。
この項目では、法務転職におすすめ転職エージェントを5つ紹介します。
※各転職エージェントが保有する求人情報、転職ノウハウには当然違いがあります。なので、転職活動をする際は複数社のサービスを併用すると、偏りなく情報が集められるのでおすすめです
NO-LIMIT|弁護士・法務人材特化の転職エージェント
NO-LIMIT(ノーリミット)は、弁護士・法務人材に特化した転職エージェントです。
東証プライム上場企業からベンチャー・スタートアップ企業まで、幅広い求人を持っています。
NO-LIMITの強み
- 長年法律事務所の集客支援を行っていたため、法曹業界の事情に詳しい
- 履歴書の添削・面接対策から年収交渉まで親身な転職サポートが受けられる
- 企業の内情を担当者がしっかりと把握しているため、ミスマッチの少ない求人紹介が可能
公式サイト:https://no-limit.careers/
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まとめ
企業における法務部の重要性が増しているため、コロナ禍においても法務人材の採用は比較的に堅調です。
多くは即戦力人材の採用を目的とした求人ですが、未経験者でもコミュニケーション能力や語学力など法務部の業務に必要な能力が高い人であれば、採用される可能性はゼロではありません。
むしろ、需要がある今がチャンスです。もし、法務部の仕事に興味があるならば、積極的に応募してみることをおすすめします。