弁護士の就職先は法律事務所が一般的でしたが、最近では司法修習生が即企業内弁護士になることも増えているようです。
いずれにしても採用試験では面接があるので、就職するためにはその面接を突破する必要があります。
弁護士が採用試験の面接で気をつけるべきことや面接官が特にチェックすることは何でしょうか。面接で聞かれやすいことや事前に準備しておいた方が良いことなどを紹介します。
目次
転職希望の弁護士が面接前に知っておくべき勤務先別の特徴
弁護士の勤務先にはどんなところがあるのでしょうか。
一般法律事務所
多くの弁護士は法律事務所で勤務します。この法律事務所にはさまざまな種類があり、自分がどんな働き方をしたいか、誰の役に立ちたいかなどで決めます。たとえば、大手法律事務所で勤務する場合は企業法務が中心となります。
また、中小・個人の法律事務所では、個人顧客向けに一般民事や刑事の法律相談や訴訟の弁護などを行うのが一般的です。
大手法律事務所で働く場合は、担当先も大企業となるので、弁護士何人かでチームとなり専門的な分野を担当して一人一人が法務的なサポートを行います。年収水準も高く、新人でも1,000万円プレーヤーを目指せますが、求められるレベルも高いので激務になりがちです。
一方、中小・個人事務所の場合は一般顧客を呼び込むことにより弁護士費用が発生するので、給与はまちまちです。しかし、困っている人の役に立てる機会も多くやりがいを感じることができるでしょう。
企業内弁護士として働く
最近では、企業内弁護士として一般企業の法務部などで働く人も増えています。企業内弁護士の人数は年々増加しており、企業としても会社内の実情を理解した内部の人間に法律相談をしたいという思いから需要が膨らんでいます。
また、法律事務所で働く場合、深夜までの残業は当たり前という文化ですが、企業内弁護士は働き方改革が進む一般企業の従業員と同じ勤務時間となるため残業は少なめです。
特に出産後も育児と仕事のバランスを上手くとりながら働きたいという女性にとっては働きやすい環境なので、法律事務所を経験せずそのまま企業内弁護士になるというケースも増えています。
弁護士が面接の前に準備すべき3つのこと
法律事務所の面接を受ける前に調べるべきことについて紹介します。
面接を受ける法律事務所の得意分野
面接を受ける法律事務所の得意分野や特徴については必ず調べておきましょう。人気の法律事務所の場合、たくさんの就職希望者がエントリーするため、どれだけ法律事務所について調べているかという点も審査に影響します。
やはり、きちんと分析していない人は他の就職希望者と比べると本気度を感じられず、「うちの法律事務所でなくても良いのでは?」と思われてしまう可能性もあるでしょう。
面接を受ける前にはきちんと調べておき、自分の特性がどのように活かせるかをアピールするようにしましょう。
面接を受ける法律事務所の規模
法律事務所の規模により、任される仕事も異なります。大きな法律事務所であれば企業法務が中心となり、一人でさまざまな業務を網羅するより専門性を高めるような働き方です。
小さな法律事務所では、民事や刑事など個人の顧客を担当して、一人でさまざまな業務をこなすことになります。
どちらで働くとしてもやりがいがある仕事ではありますが、自分にはどちらが向いているのかをよく考えて面接を受ける先を選ぶべきです。
面接を受ける法律事務所の雰囲気を把握
面接を受ける法律事務所の雰囲気を事前に把握しておくことも大切です。事務所の雰囲気に合っている人材だと面接官に感じてもらえれば、面接に受かりやすくなる可能性も高まります。伝手があるのであれば、実際に働いている先輩弁護士にOB・OG訪問させてもらうと良いでしょう。
面接の形態とは
法律事務所での面接の形態はさまざまですが、一般的にはグループ面接を行ったのちに、最終面談で個人面接を行うケースが多いようです。
グループ面接は就職希望者3~4人程度に対して面接官が1〜2名で行われます。個人面接は就職希望者1人に対して面接官1人~2人となるようです。また、食事会形式でフランクな雰囲気の面接を行う法律事務所もあるそうです。
法律事務所での面接で聞かれやすいことは?
法律事務所での面接で聞かれやすいことについて紹介します。
弁護士になった理由
弁護士になった理由についてはよく聞かれるようです。きっかけがある場合はエピソードなどを交えながら話すと具体的で聞きやすくなります。個人的な理由と社会貢献的な理由をミックスした方が良いとされています。
自己PR
自己PRでは、自分の特性やスキルなどをアピールしますが、それがどのように弁護士の仕事に生かすことができるのかという点も伝えましょう。
どんな弁護士を目指したいか
自分がどのような弁護士を目指すのかについては、その法律事務所でのキャリアプランに重ねながら話しましょう。たとえば、大手法律事務所ならば「国際的に活躍できる弁護士を目指したい」民事メインの中小事務所ならば「困っている人に寄り添って法律相談ができる弁護士になりたい」などです。
なぜ転職することにしたか
転職の場合は、なぜ転職をすることにしたのかも聞かれやすいです。このときにネガティブな理由は言わずに、ポジティブな理由で応えるようにしましょう。たとえば、「残業時間が多い」「パワハラがあった」などの理由であったとしても、このようなことを答えると耐久性がなく採用してもすぐ辞めてしまうかもしれないと思われてしまう危険性があります。それよりも、「他の専門性を身につけたかった」「幅広い業務に挑戦したかった」などのポジティブな理由で答えた方が好感度も増すでしょう。
希望年収(転職者)
転職者の場合、スキルや経験・年齢などにより年収が決定します。面接中に話しながら大体の金額が決まるということもあるでしょう。しかし、少しでも年収をあげたいからと言って高すぎる額を言うと「そんなにも出せないから採用できない」「偉そうだ」など不信感につながる可能性もあるかもしれません。事前にどれくらいの額が妥当かを転職エージェントに聞いたり先輩弁護士に聞いたりして調べておき、それからかけ離れた額を伝えることは止めておいた方が無難です。
企業内弁護士の面接で聞かれやすいことは?
では、企業内弁護士の面接で聞かれやすいことはどんなことでしょうか。
なぜ法律事務所を選ばないのか
ほとんどの修習生が法律事務所への就職を目指す中で、なぜ企業内弁護士を目指すのかというのは企業にとっても気になるところです。そのため、なぜ弁護士事務所を選ばないのか、なぜ企業内弁護士になりたいのかという理由をきちんと説明しましょう。
たとえば、
「法律事務所より企業内弁護士になった方が企業における法務リスクを当事者として解決できる。」
「出産後見据えた長いキャリアで考えたいので、ワークライフバランスを考えて企業内弁護士を選んだ。」
などの理由が考えられます。
企業・業種を選んだ理由
企業内弁護士を採用する企業は年々増えており、業種もさまざまです。そのため、なぜその企業・業種を選んだのかということも聞かれる可能性が高いでしょう。その企業や業種の企業内弁護士がどのように活躍しているのかをリサーチしておき、自分がどのように貢献できるのかを伝えましょう。
面接官がチェックすること
面接官は就職希望者のどのような点をチェックするのでしょうか。
応募者の本気度
特に大手の法律事務所の場合、たくさんの応募者がいます。同じような経歴やスキルの人が何人かいたら、「絶対にここで働きたい」という本気度が伝わる人を採用するのは当然といえるでしょう。
やる気がある人であればたとえ困難に打ち当たったとしても、努力で乗り越えられる可能性も高いと採用側は判断します。
本気度を見せるためには、応募する法律事務所の分析をしてきちんと調べているアピールや自分のスキルのどこを活かせるかなどをアピールすると良いでしょう。また、言葉や態度でも「ここが第一志望で絶対に入りたい」という気持ちを伝えていくことが大切です。
応募者と法律事務所のカラーが合うか
法律事務所のカラーはその法律事務所ごとに異なります。たとえば体育会系の法律事務所であれば、冷静に物事を説明する態度より少し感情的にアピールした方が「うちの雰囲気に合いそう」だと思ってもらえる可能性があります。
面接を受ける法律事務所のカラーは事前に調査しておき、それに近い雰囲気を出して面接に挑みましょう。
応募者のスキル
法律事務所に弁護士として勤務する場合、司法試験合格は当然の条件となります。
一般的に見れば難関資格でそれだけでも凄いことですが、ライバルも皆同じ条件です。ここに英語や他の資格などのスキルがあるとライバルとの差をつけることができるので、なるべく司法試験以外の資格などを受けておきましょう。
弁護士の面接で気をつけることは?
弁護士の面接で気をつけるべきことについて説明します。
第一印象が大切
面接において第一印象は非常に大切です。スーツやシャツはクリーニングしたもので、革靴は磨く、髪の毛は清潔感があるセットをするなどして、最低限の身だしなみには気を付けましょう。
具体的な例を挙げてわかりやすく
面接ではさまざまなことを聞かれますが、回答するときは面接官が想像しやすいように具体的な例を挙げてわかりやすく説明することが大切です。たとえば、大学時代の部活やアルバイトなどのエピソードを交えながら自己紹介することで、人となりや個性をより理解できるようになるでしょう。
前向きな発言を心がける
面接中は前向きな発言をすることにより、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえる可能性が高いです。とくに転職の面接で過去の会社や上司の批判・批評・否定などネガティブなことをいうのは心象が悪くなります。面接官も人間なのですネガティブで負のオーラが出ている人を採用したいと思う人は少ないでしょう。
メンタルが弱いと思われないようにする
弁護士は膨大な仕事をこなす必要がありますし、裁判では勝訴しなくてはいけないというプレッシャーもあり、メンタルが弱い人には務まりません。
メンタルが弱そうな人は休職や退職のリスクがあるので採用したくないと思うでしょう。そのため、面接ではではポジティブでメンタルが強いと思ってもらえると内定が出やすい傾向にあります。
最後の質問を用意しておく
面接の最後には「質問はありますか」と聞かれる可能性が高いですが、「興味がある」というアピールにもなるので質問はした方が良いといえます。質問は事前にいくつか用意しておき、面接の流れや雰囲気に合わせて最適なものをするようにしてください。
他の面接状況を聞かれた場合
就職・転職活動で複数の法律事務所や企業へエントリーしていることは採用側も承知しています。他の面接状況を聞かれたら正直に答えても大丈夫です。
しかし、もし第一希望でなくても「ここが第一志望で絶対に入りたい」という気持ちをアピールするようにしてください。たくさんの応募がある中で、本気度が見えないと採用されるのは難しいからです。
弁護士の採用スケジュール
次に、弁護士の採用スケジュールについて説明します。
法律事務所で弁護士として働く
司法試験は例年5月中旬に行われますが、五大法律事務所などの採用は6月1日から開始して、7月上旬には内定が出ます。司法試験の合格発表は9月なので、合格発表前に司法試験の合格を条件として内定が出るのです。
もし内定をもらっていたのにも関わらず司法試験に落ちてしまった場合、残念ながら内定は取り消しになってしまいます。司法試験の合格発表が出た後に司法修習開始し、終了することができたら翌春から働くことができます。
ただし、一部の法律事務所では、司法試験が不合格となっても内定を繰越しして翌年の司法試験の結果を待ってくれるところもあるようです。
企業内弁護士として働く
企業内弁護士を目指す場合は、採用試験を受ける企業の採用面接日程によります。経団連加入企業は採用活動が6月1日、内定の通知日が10月1日より解禁という流れです。
企業内弁護士を募集する企業は大企業で経団連に加入しているところも多いので、6月1日以降に採用が始まることが多いでしょう。
転職はタイミング次第
転職の場合は、法律事務所や企業内弁護士を募集する企業に欠員が出たときに募集するタイミングによります。法律事務所のホームページや転職サイトなどを確認して、転職希望先に求人募集があればエントリーできます。
まとめ
弁護士の面接では、志望する法律事務所や企業の情報を調べて、「なぜここで働きたいのか」「自分の能力をどのように活かせるか」ということを志望動機や自己PRでアピールしましょう。
ライバルがたくさんいる場合は、就職希望者の本気度も審査基準となるため「絶対に受かってここで働きたい」という強い気持ちを伝えることも大切です。
さらに、面接では第一印象が大切なので、誰にでも好印象を与える清潔感のある身なりで挑むようにしましょう。
また、転職の場合は転職理由や希望年収を聞かれる可能性があります。転職理由についてはネガティブな内容を避けて、前向きな転職理由を答えた方印象が良くなるでしょう。
希望年収は多めに言いたくなるかもしれませんが、あまりにも相場を外れると採用を見送られる可能性もあるので注意が必要です。