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理系から弁護士になる方法と理系弁護士のキャリア・転職/就職市場の動向を徹底解説

更新日: 公開日:

弁護士のバックグラウンドも昨今は多様化しています。法科大学院制度や司法試験予備試験が一般化し、法曹になる間口が広がったことから、法曹を目指す人材の層も厚くなりました

  • 医師や看護師から弁護士になる人
  • エンジニアから弁護士になる人
  • 会社で経理など数字ばかり扱う仕事から弁護士になる人 など

現在では様々な経験を得た上で弁護士になる方も多くいらっしゃいます。

そして、上記に挙げたような理数系の人材は、ITの進展やデジタル産業革命の中で、需要が高まっています。

この記事では、理系の人材のキャリア、理系弁護士について、弁護士になるまでのフロー、理系弁護士の需要、得意とする分野、理系弁護士の年収など、実例も交えて解説していきます。

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理系の人が弁護士になるには?

理系人材は、文系の最難関とも呼ばれる司法試験のこと、弁護士になるためにはどのようなフローになるのか、詳しくは知らないという人もいることでしょう。

ここでは、弁護士になるまでの流れについて、概要を解説していきます。フローチャート的に示すと、次の通りです。

法科大学院ルートと予備試験合格ルートの2つ

大きく分けて、司法試験の受験資格を得るまでのルートが、法科大学院ルートと予備試験合格ルートの2つあり、そこから司法試験に合格するという流れになります。

上記いずれかのルートを経て、司法試験を受験することができます。そして、司法試験に晴れて合格した場合、1年間の司法修習を経て、弁護士になることができます。

なお、2023年からは、上記法科大学院のルートの中で、法科大学院在学中の司法試験受験が可能になりました。

3.司法試験法及び裁判所法の一部改正
① 司法試験の受験資格を有する者として、法科大学院の課程に在学する者であって、所定の単位を修得しており、かつ、1年以内に当該法科大学院の課程を修了する見込みがあると当該法科大学院を設置する大学の学長が認定したものを追加し、受験可能期間の起算点の特則を規定。【司法試験法第4条第2項】
② 上記の受験資格に基づいて司法試験を受けた者については、司法試験の合格に加え、法科大学院課程の修了を、司法修習生の採用に必要な要件として規定。【裁判所法第66条第1項】
③ 司法試験の選択科目相当科目の履修義務付け(※)を含む法科大学院教育の見直しを踏まえ、予備試験の論文式試験について、選択科目を導入し、一般教養科目を廃止。 【司法試験法第5条第3項】
※ 1.(1)①(イ)を踏まえ、文部科学省令において規定。

引用元:法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律等の一部を改正する法律(概要)

現在は、未修コースか既修コースいずれかを修了しなければ司法試験の受験はできません。その結果、司法試験受験から、合格して司法修習を受けるまで、1回目受験の合格を勝ち取っても、いわゆる受験ニート期間を避けられない状況でした。

しかし、2023年以降、つまり来年令和5年度の司法試験からは、一定の要件を満たすことにより、法科大学院在学中での受験資格が得られます。この場合、司法試験に合格することができれば、法科大学院修了と同時に司法修習を受けることができることになり、受験ニート期間を避けることができる可能性が生まれます。

理系弁護士の需要の高まり

理系のバックグラウンドを持つ弁護士の需要は、なぜ高まっているのでしょうか。ここでは、理系弁護士の需要の高まりについて解説していきます。

弁護士の多様化

1つは、弁護士が多様化したことで、弁護士の活躍する領域も幅が広がったことが挙げられます。

20年以上前の時代は、いわゆる旧司法試験の只中で、弁護士になるためのハードルも非常に高く、弁護士の数も現在の3分の1程度だったこともあり弁護士は訴訟や紛争解決を中心とした弁護士業務だけでも十分な収入を得ることができるような状況でした。

しかし、平成18年以降、司法制度改革を経て司法試験合格者が数千人を超える時代になり、弁護士人口が増え、その分合格者のバックグラウンドも多様化しました。

その結果、弁護士も、それぞれの持つ個性や強みを活かし、あるいは従来弁護士が踏み入れたことがなかった業界などにおいて業務をするようになりました

企業や公的機関の組織内弁護士、国際機関で働く弁護士など、起業する弁護士など、弁護士としての働き方・生き方、資格の活かし方が多様化したといってもよいでしょう。

企業内弁護士の需要が増加

企業内での需要は、様々な領域における技術革新により高まりました。

例えば、最近では、AIやIoT、エネルギー分野での先端技術の分野では、特許や著作権に関する専門知識が要求されることもあります。その際に、こうした分野の専門知識がなければそもそも事業部とのコミュニケーションを取ることが困難である場合もあります。

高度な理系の専門知識を持つ法務人材は、希少価値が高いと考えられます。

第4次産業革命(DX)

すでに述べたような、AI、IoTの分野のほか、ブロックチェーン技術を活用したデジタル空間における事業の拡大に伴い、デジタル技術に精通する人材が求められています。

こうしたデジタル技術は、情報工学やデジタル工学に関する理系の専門知識が必要となります。

そのため、今後デジタル産業革命が進展すれば、法律家の中でもその仕組みに適応できる人材は、競争優位性が高いと考えられます。

理系弁護士の得意とする分野3つ

理系弁護士が得意とする分野、ほかの弁護士と差別化を図ることができる可能性が高い分野を3つご紹介します。

知財・特許

特に工学系の分野は、プロダクトの開発に関する契約のほか、特許関係に関する案件で高度な理系の知識が要求されることがあります

特許出願に当たって、出願前における技術調査や製品の規格について調査を行うことや、出願にあたっての戦略立案、出願書類の作成といった場面で、理系の知識が要求されます。知識だけでなく、業界分野のことについてのバックグラウンド、競合他社の情報などの知見も活用することができます。

また、研究開発の担当者、技術者などの専門家とコミュニケーションを取る上でも、理系の知識は欠かせません。

IT法務

IT法務をこの項目ではIT業界における法務という意味合いのものとして解説しますが、上記で述べた知財・特許に関する法務のほかには、

  1. 契約法務
  2. 新規事業の適法性チェック
  3. サイバーセキュリティ・管理
  4. 個人情報保護
  5. デジタル・インターネット上の取引に関わる法令順守

といった法務があります。

契約法務は、各種の開発系の契約、ライセンス契約、利用規約、業務委託で関わるエンジニアとの業務委託契約など多岐に渡る種類の契約についてのチェック、作成、交渉などがあります。

IT法務における契約法務は、知財管理・保護といった視点はもちろんのこと、利用規約などはサービス・プロダクトの提供に関わる過程のデザインでもあり根幹としての役割を果たす約款として重要性が高いです。

ITを基盤にする企業では、サイバーセキュリティについてのシステム構築が重要です。個人情報保護も含めて、法務が開発や情シスと連携して業務を行うことがあります。その際に、理系の知識が役に立つと考えられます。

ファイナンス

ファイナンスは、資金調達やアセットマネジメントなどの分野があります。資金調達に際しては、投資契約書の起案などのほかにも、経理・財務と会社の経営指標・数値を見つつ調達額やスキームを検討することもあります。

そうした場面で、様々な数値分析や計算を行いチェックを行う際に理数系の思考が活かされると考えられる。

理系弁護士の年収はどの程度か?

理系弁護士は、どの程度の年収が期待できるでしょうか。

平均年収

2020年に日弁連が行った「弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査2020」によれば、弁護士全体の平均年収は2588万円(中央値は1437万円)と言われています。

弁護士全体の平均値であることから、新人・若手の弁護士からすると水準値に満たないこともあると考えられますが、弁護士としてのキャリアを重ねていく中で上記の水準に至ることは不可能ではありません。

理系弁護士についての年収は、特に文系弁護士との比較をしたデータなどはありませんが(そもそも文系・理系の定義づけが困難であると考えられますが)、理系弁護士であれば、特に企業法務を中心に数字を得意とすることは差別化の要素になると考えられ、扱う案件も高度なものになることから高い年収を期待できる可能性は高まると考えられます。

弁理士との比較

理系弁護士、とりわけ知財・特許関係を専門とするような場合、弁理士の職域と重なる部分も少なくありません。弁理士の年収と比較するとどうでしょうか。

まず、弁理士の場合も、就業形態は弁護士と類似する部分があります。基本的には特許事務所に勤務あるいは経営する場合が半数以上を占めます。また、企業勤務というパターンもあります。

年収は、特許事務所で勤務する弁理士はであれば初年度年収はおよそ500万円程度と言われています。平均的には700万円程度で、経験を積んでいくことで1000万円を超える場合もあります。

このように、弁護士と弁理士の場合を比較すると、年収は、数字だけでみれば弁護士の方が高収入を期待できることがわかります。

要因の1つとして、弁護士は広範な業務を行うことができる反面、弁理士は特許、実用新案、意匠や商標などの領域に限られる点が挙げられるでしょう。

理系弁護士キャリアの実例

ここで、理系弁護士のキャリアについて実際の例をいくつかご紹介します。

小林正和弁護士

小林弁護士は、高校卒業後東京大学工学部の航空宇宙工学科に在学し、卒業後は大学院で先端領域のエネルギー分野を専攻されました。大学院修了後は、特許庁で審査官として7年半のキャリアを積まれました

このように、小林弁護士は、航空宇宙やエネルギー分野を中心とした理系のバックグラウンドがあります。そして、特許庁でも審査官を務められ、知財・特許関係における法分野で相当程度の素地を培われました。

その後、筑波大学のロースクールを経て司法試験に合格後、弁護士になられました。弁護士としては、知財事件(特許紛争)を中心に案件を手掛けられているほか、講義やセミナーの講師をされるなど、専門分野を強みにされています。

(参照:https://masakazu-kobayashi.hatenablog.com/entry2/2050/01/01/000000

吉田格弁護士

吉田弁護士は、後掲のエッセイでも述べられているように、数学と物理が好きな理系出身の弁護士です。

大学卒業後にコンピュータソフトウェア開発に関する仕事に従事されていました。そこから、著作権法分野の勉強会をきっかけに弁護士の仕事を志すようになられました

そんな吉田弁護士が掲げられている弁護士としてのテーマは、「ソフトウェアの考え方を法律の考え方に応用すること」だそうです。

(参照:https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2008_09/p41.pdf

確かに、体系的な構造を持ち有機的に全体が一体となって1つの仕組み・制度を形作っている点は、ソフトウェアと法律に共通する特徴があるといえると考えられます。その意味で、理系の思考は弁護士としての仕事にもフィットするといえるでしょう。

鈴木一徳弁護士・弁理士

鈴木弁護士は、都内の高校を卒業後、明治大学の法学部を卒業されており文系のベースもありながら、東京理科大学工学部第二部、電気工学科を卒業されている点で理系のバックグラウンドを持っておられる方です。

また、司法試験に合格されて弁護士になった後、弁理士試験にも合格し弁理士登録をして活動されているダブルライセンサーという点もユニークなキャリアであると考えられます。

(参照;https://www.kawasaki-law.biz/category/1726552.html

このように、理系のバックグラウンドを持つ弁護士の方は、いずれもその思考や専門性を活かして活躍されています。

理系の知識・バックボーンを活かすなら弁護士か弁理士か

理系のバックグラウンドがあるなら、弁護士か弁理士どちらがよいかという視点があります。この点について、最後に解説していきます。

弁護士と弁理士の違い

弁護士と弁理士は、どのような点で違いがあるのでしょうか。それは、扱うことができる案件・業務の範囲が異なることです。

弁護士 弁理士
弁護士法第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる
第四条 弁理士は、他人の求めに応じ、特許、実用新案、意匠若しくは商標又は国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願に関する特許庁における手続及び特許、実用新案、意匠又は商標に関する行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)の規定による審査請求又は裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理並びにこれらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。

2 略
3 略

第五条 弁理士は、特許、実用新案、意匠若しくは商標、国際出願、意匠に係る国際登録出願若しくは商標に係る国際登録出願、回路配置又は特定不正競争に関する事項について、裁判所において、補佐人として、当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができる。

2 略

第六条 弁理士は、特許法第百七十八条第一項、実用新案法第四十七条第一項、意匠法第五十九条第一項又は商標法第六十三条第一項に規定する訴訟に関して訴訟代理人となることができる。第六条の二 弁理士は、第十五条の二第一項に規定する特定侵害訴訟代理業務試験に合格し、かつ、第二十七条の三第一項の規定によりその旨の付記を受けたときは、特定侵害訴訟に関して、弁護士が同一の依頼者から受任している事件に限り、その訴訟代理人となることができる。

2 略
3 略

・法律事務一般を行うことができる
・弁護士は、弁理士業務も行うことができる
・第4条が裁判外における弁理士業務
・第5条は、裁判上における業務のうち訴訟代理の一部の業務
・第6条は一定の場合に認められる裁判上の業務

ジェネラリストなら弁護士

つまり、ジェネラリストとして多種多様な法律事務を行うことを考える場合には、弁護士が妥当です。弁護士であれば、法律事務の種類を問わず案件として扱うことが可能です。

また、大は小を兼ねることから、弁護士は弁理士業務を行うことができます(弁護士法3条2項)。理系の分野にとって有利な弁理士の仕事も受けることが可能です。

スペシャリストなら弁理士

他方で、弁理士の職域、特許や実用新案、意匠、商標などの知財を専門的に扱い、その領域のみを突き詰めるのであれば弁理士資格を取得することが妥当といえるでしょう。弁護士資格はあっても、知財や特許の領域を専門とするには、小手先の法律知識のみでは困難な側面があります。

技術や先端科学、理系分野の専門知識が相当程度要求され、司法試験を合格して弁護士になれば当然にできるようなものとは限りません。

その意味で、スペシャリストを目指すのであれば、信頼の根拠とする意味でも弁理士資格を取得することが有益です。

理系弁護士の就職・転職支援サービスを利用する場合は強みを理解する

弁護士の求人を扱うサービス自体はそれなりにありますが、弁護士・弁理士の求人紹介に特化しているサービス自体はそう多くありません。

我々NO-LIMITの強み

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【関連記事】弁理士特化の転職エージェントおすすめ8社徹底比較|弁理士が転職を成功させるポイント

まとめ

理系の人材でも、予備試験か法科大学院を経て司法試験に合格することで弁護士になることができます。

そして、理系のバックグラウンドを活かして、知財・特許などの案件のほか、IT企業やインフラ系、テクノロジー企業における法務で強みを出せる可能性が高いです。理系の弁護士は、ほかの弁護士と差別化を図ることが出来る要素が様々あるといえます。

理系弁護士の転職には、業界に精通した弁護士専門の転職エージェントを利用することがおすすめです。

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