設立から約24年、現在は弁護士・公認会計士・弁理士・司法書士が在籍する佐藤総合法律事務所。
M&A・金融・IPO・不祥事等の企業法務から訴訟・離婚・相続・交通事故等の民刑事まで、大企業からベンチャー、個人の案件を分け隔てなく手がけるオールラウンドスタイルを貫きながら、「広く深く」を体現するチームをつくり続けている。
「全方位に対応し、かつ専門性が高い。これがなかなか伝わらないんですよ」と笑う代表の佐藤弁護士。
事務所の設立背景から、採用で見ているたった2つのこと、そして「成長に向かって自走できる」仕組みまで、佐藤代表と鮎川弁護士・松本弁護士、そして弁護士と歩みを揃えて事務所のバックオフィスを担う澤村氏に語ってもらった。
監査法人の未来を見て、自身の将来を決めた
佐藤総合法律事務所が産声を上げたのは、今から約24年前のことだ。
代表の佐藤弁護士が事務所を立ち上げた背景には、当時の法律業界に対する強烈な違和感があった。
大手法律事務所は規模拡大が進み、そこに所属する弁護士はM&Aであればデューデリジェンスの一部分だけ、金融であれば特定の取引の書類作成だけ、と分業が加速していた。監査法人はすでにグローバルネットワークに組み込まれており、個性ある魅力的な公認会計士はほとんど見当たらなくなっていたという。
みんな面白くない仕事をやるようになっていました。グローバルの傘下に入って外からの締め付けも厳しくなっていく。そんな方向には絶対行かないと、事務所を作る時から決めていました。(佐藤代表)
代わりに掲げたのは、徹底したオールラウンド主義だ。
M&Aをやっている横で離婚を普通にやるし、交通事故も受ける。困った時に何でも話を聞いてくれる弁護士でないとダメだと思っています。大手事務所で「M&Aの専門家です」という弁護士に、「実は親のことで困っていて」と言ってもわからない。弁護士ってそういう商売じゃないと思っていました。(佐藤代表)
設立から24年。この姿勢はまったく変わっていない。

「広いから浅い」というのはただの先入観
「何でもやります」と言うと、専門性が低いと思われる。法律業界に限らず、多くの職種で共有されている先入観だ。
しかし佐藤弁護士の見立ては異なる。
広くやっているから専門性が低いということはない。レベルの高い仕事をしていれば、幅広くやりながら深くもなれます。他の分野を理解しているからこそ総合力が発揮できるのです。(佐藤代表)
専門性をめぐる誤解の根拠として、佐藤代表が持ち出すのが医師との比較だ。心臓外科と脳外科を両方やっています、はありえない。なぜなら同一の診療科であっても症例が極めて多様で、かつ、特に心臓外科や脳外科などの人の命に直結する医師の専門性は、5千や1万の物理的な症例数の積み上げによってはじめて認められる。
一方で弁護士の仕事は、ベースに法令や判例という明確な指針があることもあり、同種の領域における案件ごとの特殊性の幅は医師ほど広くない。松本弁護士はこう補足する。
文系の仕事は、数回ちゃんとコアでコミットして当事者意識を持ってやれば、ベースの整理は大体できるようになります。医師とは本質的に違う。大事なのは、いろいろな案件をフルコミットで経験させてもらえる環境があるかどうかです。(松本弁護士)
1年目に求めることは2つ、「相談すること」と「言われた通りにやること」
では、佐藤総合はどんな人材を求めているのか。佐藤代表の答えは、拍子抜けするほど研ぎ澄まされていた。
最近かなり贅肉が削ぎ落とされて、1年目に求めることは2つしかありません。「相談をすること」、「言われたことを言われた通りにやること」。これさえできれば自ずと成長していきます。(佐藤代表)
なぜ「相談する」ことがそれほど重要なのか。
1年目は特にそうですが、一人で考えていても仕事のクオリティは上がらない。たとえ法律の条文や判例を知っていたとしても、法律が社会や経済を背景にしている以上、人生経験もなく社会も知らない若い弁護士に、ベストなアドバイスができるわけがないのです。
何も分からない時期だからこそ、周囲に相談してどんどん知識を吸収し、勘所を養っていってほしいし、仕事の仕方も学んでいってほしい。相談しないと気づけないことがほとんどです。そうやって相談し続けることで、自身の成長は飛躍的にスピードアップします。(佐藤代表)
「言われた通りにやる」ことも、自身の成長に大きな意味を持つ。
弁護士と聞くと、1年目から自分で考えて一人で仕事をこなすというイメージがあるかもしれない。でも本当に優秀な弁護士になるためには、最初は「言われた通りにやる」ことが大事なんです。(佐藤代表)
特に若い弁護士は、一人の力でベストな仕事をすることなどできないはずが、一人で、上司のアドバイスも受けずに仕事をしようとする傾向が強いという。社会も、「弁護士は、資格を取ればそれだけで一人前」と考えている人が多く、そう思われたい弁護士も多いそうだ。ただし、それでは成長もできないし、トラブルになる恐れもある。
最初はとにかく自分勝手なことをせず、言われたことをそのままやることで、上からの信頼が上がります。それによって、仕事上の裁量が増えていく。鮎川や松本はいつもそれを若い子に伝えてくれています。(佐藤代表)
「若い時から適切なチャンスを与える」仕組みが人を育てる
澤村氏は、事務所における成長についてこう語る。
無理して教育のために機会を与えているというより、この事務所で働く中で、自然とチャンスを得られる水準まで成長ができる仕組みになっています。若い年次の弁護士でも、クライアントの前で問題なく発言できるレベルになれば会議を任せることもあります。(澤村氏)
入所1年目から上場企業の会議に出席し、窓口業務も担う。毎月1回、弁護士などのプロフェッショナル全員が集まる早朝会議「プロフェッショナルズ・ミーティング」では、1人あたり2分半のプレゼンをこなす。
話し方、話す内容、話す順序などの指摘を繰り返し受けることで、プレゼン力が自然と磨かれていく。
街に出ることも徹底しています。所内のプロフェッショナルには、夜、街に出て色々な人と会い、色々な分野の話を学ぶことの重要性を常々言っており、弁護士事務所の中で若手のうちからこんなに街に出ている事務所はなかなかないと自負しています。(澤村氏)
楽しんで外に出る人と、嫌々出る人とでは、1〜2年後に圧倒的な差が出る。松本弁護士自身もその経験を語る。
最初の1〜2年は、名刺交換の翌日にメールを送ってもほぼ返ってきません。食事に行きましょうとも言ってもらえない。それでも愚直にやり続けて、3〜4年目ぐらいから逆に声がかかるようになりました。(松本弁護士)
食事やゴルフなどを通じて社会人として成長し、ネットワークができ、そのうち案件がぽつぽつ来るようになる。入所時には口数が少なかった若手が、1年後には自分から雑談を振れるようになっている。その変化を澤村氏は何度も目の当たりにしてきた。
成長って目の前の仕事ができるようになることだけじゃない。人間力も、ネットワークも、話す力も全部成長。うちには色々な成長の形があります。(澤村氏)

「真にお客さんのために」入所前と後で変わったマインドセット
鮎川弁護士は、この事務所での働き方の核心をこう表現する。
真の意味で「お客さんのために仕事をする」、というマインドにどこまでなれるかが一番大切だと日頃思っています。
「弁護士はサービス業である」という言葉はよく聞きますが、その本当の意味を考え続けることが大切であり、お客さんが何を望んでいるのかについて、常に意識しながら仕事をすることが大切であると考えています。(鮎川弁護士)
このマインドは、入所前から持っていたものではない。
弁護士になりたての頃は、目の前の業務に必死で、そんなことを考えたことがありませんでした。代表から繰り返しお客さんのためにという指導をいただき、シャワーのように浴び続けて、だんだんとマインドが変わっていきました。(鮎川弁護士)
若手が1年目の終わり頃からクライアントのために何ができるかを考えて仕事するということ。松本弁護士が様々な弁護士と接した時に最も強く感じたことは、「目線の違い」だという。
長時間働いたからいいや、難しい案件をこなしたからいいや、じゃなくて、お客さんが求めるものを提供できたかを考えています。そういう意識で日々業務をやっている若手って、実はそんなに多くありません。(松本弁護士)
松本弁護士が事業会社から佐藤総合に戻ってきた理由も、突き詰めればここに行き着く。
人の成長を一番真剣に考えている事務所だということ、クライアントへの姿勢が根本的に違うこと。前職事業会社もこの意識が非常に強い会社でしたが、法律事務所ということで言えば、ここしかありませんでした。メンバーが同じ目線で仕事をしているということも大きかったです。(松本弁護士)
「逃げないこと」生き抜くために必要な、たった一つのこと
インタビューの終盤、「しんどかったこと」をあえて聞いた。
松本弁護士は、書面を赤で埋め尽くされた日々を振り返る。
出した書面がほぼ一文字も残っていない、ということが序盤はよくありました。それを否定されたと受け止めるとしんどくなっていくのかもしれませんが、ちゃんと学んで積み上げれば先輩のレベルになれると思えたから続けられました。(松本弁護士)
鮎川弁護士には、忘れられない経験がある。入所2〜3年目、上場企業の重要なM&Aに関する会議に一人で送り込まれた。
今でも根に持っています(笑)。思い返すと、それが許されたのは、代表と先方社長の深い信頼関係があったからに他なりません。代表のふんどしで相撲をさせてもらった貴重な経験であったと本当に感謝しています。
うちの事務所は顧客と異常に(笑)距離が近いのですが、そのような顧客との距離感も、所属若手の成長が早い理由の一つだと思います。(鮎川弁護士)
ではこの事務所で生き抜くために、最低限必要なものとは何か。鮎川弁護士の答えは一言だった。
どんなにしんどくても、できなくても、目の前のお客さんから逃げないことだと思います。(鮎川弁護士)
松本弁護士は「好奇心と活動力」を挙げる。
そもそも外に出ることに興味がない人には難しい。社交性は後天的に身につけられますが、好奇心がないとやらされ仕事になってしまいます。(松本弁護士)
「根が真面目かどうかはすぐわかる」採用で絶対に外せない資質
最後に澤村氏が語ったのは、採用で絶対に外せない資質についてだった。
コミュニケーション能力も重要かもしれません。でも、口が上手い人ってごまかすので、うちには、もっと重視している資質があります。
弁護士として、誠実に、真面目に、ごまかしなく対応するというのが一番大事な資質。そこが欠けていると、簡単にクライアントからの信頼を失います。コミュニケーション能力は外に出ている間についてくるけれど、根本の誠実さは後からつけられません。(澤村氏)
以前、様々な事情で事務所を辞めた弁護士等も、一部の人は引き続き事務所と良好な関係を続けており、折々事務所を訪れ、ときには佐藤代表とも食事をともにするそう。そういう人には、事務所から仕事を依頼することもあるという。
これらの人は、口をそろえて「佐藤総合で、仕事、経済や社会、『街に出ること』、全てを勉強させてもらったことで、今の自分がある」という。
佐藤総合法律事務所が24年かけて積み上げてきたものは、「広く深く、真にお客さんのために、逃げない」という、シンプルだが本質的な一つの哲学だ。

左:佐藤総合法律事務所 鮎川弁護士、中央:同事務所 松本弁護士、右:No-Limit弁護士アドバイザー 香野
代表弁護士
東京大学卒業。2003年に佐藤総合法律事務所を開設。大手金融機関や多数の上場会社を顧客に有し、金融案件や一般企業法務、一般民事案件等のうち、専門性の高い様々な業務に対応している。金融では銀行のガバナンスなど難易度の高い案件に対応し、M&Aでは複数の大手投資銀行を顧客に有し、大型の再編案件や公開買付けを伴うような先端的な案件等に多数関与している。
松本 雄真 (まつもと・ゆうま)
弁護士(70期)
2018年に新卒で佐藤総合法律事務所へ入所。その後、株式会社リクルートへの転職(3年半)を経て、2024年10月に同事務所へ復帰。スタートアップ支援やデジタルプラスの社外取締役(監査等委員)、品川スタートアップエコシステムのメンターなども務める。
鮎川 拓弥 (あゆかわ・たくや)
弁護士(70期)
新卒で西村あさひ法律事務所に所属しコーポレート業務を中心に従事。その後、佐藤総合法律事務所へ入所。現在はM&A、企業顧問、ファイナンスのほか、訴訟や一般民事案件まで幅広く手掛ける。GMOインターネット株式会社の社外取締役(監査等委員)も務める。
澤村 喜代江 (さわむら・きよえ)
管理部長
〒107-0061 東京都港区北青山3-6-7 青山パラシオタワー6F
