労働案件を中心に、外資系企業の紛争解決に特化した少数精鋭の法律事務所がある。Vanguard Tokyo法律事務所は、日本でビジネスを展開する外資系企業に、「それはできません」では終わらない踏み込んだアドバイスを提供して高い評価を得てきた。
「外資系企業の顧客の価値観や企業文化を踏まえて、ビジネスを前に進めるためのアドバイスを提供することを大切にしています」と語るのは、パートナーの長鎌先生。日本の弁護士と外資系クライアントの間にあるマインドセットの違いを埋めながら、独自のポジションを確立している事務所の実像と、若手育成や組織文化について、パートナーの長鎌先生、アソシエイトの朴先生、杉本先生の3名に話を聞いた。
目次
「できません」では終わらない。ビジネスを前に進めるアドバイス
Vanguard Tokyo法律事務所の特徴を聞くと、長鎌先生はためらいなく「踏み込んだアドバイスをすること」と答えた。
例えば、クライアントから意見書を求められたときに、法律論だけではなく、クライアントの具体的な状況を踏まえて、「では、会社として、どうするべきか」という部分まで書く。クライアントが本当に知りたいのはそこだと思うので。(杉本先生)
この姿勢は、事務所全体に根付くカルチャーだ。朴先生も、こう説明する。
外資系のクライアントは、日本企業とは異なる価値観を持っています。「一定のリスクを取ってもいいから案件を前に進めたい」という意識が強い。だから、裁判例を分析して「法律的に難しいですね」ではなく、「こういうリスクはあるが、リスクを避ける、あるいは下げるために、こういうことができる」と前に進む道を示すのが私たちのスタンスです。クライアントから、「Vanguardはすごく踏み込んだアドバイスをしてくれた」と言われることはとても多いです。(朴先生)
また、外資系クライアント特有の事情もある。長鎌先生はこう説明する。
私たちのクライアントは、シンガポールや香港など海外から複数の国の人事や法務を管理していて、「日本もそのうちの一つ」という場合が珍しくありません。そうした場合、日本の法制度や裁判例を詳しく説明するのではなく、クライアントの意思決定に必要なことを端的に説明することが大切です。同じ質問をされても、目の前にいるクライアントが何を求めているか、想像力を働かせて答えをチューニングする必要があります(長鎌先生)

「外資系のクライアントに特化」という二重のブティック
同事務所を一言で表せば「労働と紛争解決のブティック」だが、長鎌先生はもう一層の特殊性を強調する。
労働と紛争解決のブティックであるとともに、『外資系のクライアントに特化』という意味でのブティックでもあります。労働の知識や紛争に関わる経験は国内の労働、紛争関係のブティックの弁護士も持っているけれど、グローバルにビジネスを展開するクライアントに、日本の制度や裁判例を踏まえて、どうするのが一番いいのかをアドバイスするというノウハウは、そうした経験を繰り返すことによって培われるものだと思います。(長鎌先生)
そのノウハウが蓄積されていることが、同事務所の際立った強みになっている。杉本先生はこう語る。
Vanguardは労働案件の事務所だと思われていますが、実際には、労働以外の企業間紛争や相談案件もあります。そうした場合にも、「外国のクライアントに役立つアドバイスをする」というノウハウは役立っています。(杉本先生)
小規模事務所でありながら大手事務所に引けを取らない案件の幅を持つ、というのは業界でも珍しい。弁護士が増え続ける中、「何でもやります」より「これが得意です」と言える弁護士が強みを持つ時代になってきた、と朴先生は分析する。
Vanguardのようなブティック事務所は、長期的なキャリアを考えても、とても良い選択肢だと思います。(朴先生)
1年目からクライアントフェイスへ。週1回の勉強会で知識を積み上げる
若手の成長をどう支えるか。長鎌先生が意識している一つ目は、「早期にクライアントと向き合わせること」だ。
今年4月に入った1年目の弁護士にも、基本的にクライアントと直接コミュニケーションしてもらっています。もちろん内容は確認しますが、かなり早い段階から直接やってもらいます。(長鎌先生)
二つ目が、週1回の所内勉強会だ。全所員が集まって、難しい案件を議論したり、注目される裁判例を報告したりする。ノウハウの共有や外部の専門家を招くこともある。
アソシエイトが持ち回りで裁判例を調べて発表したり、訴訟の方針を検討したりしています。外部の専門家に来てもらって話をしてもらうこともあります。(朴先生)
原則として、パートナーとアソシエイトが1対1で案件を担当する体制も、成長を加速させる。効率的に案件を処理することで、同種の論点を短期間で何度も経験できる。
1年間やっていれば、典型的な論点は2回か3回は経験します。そうすると、若手でも自信を持って答えられるようになって、だんだんパートナーのチェックなしで出せる場面も出てきます。(朴先生)
若手でもたくさんの案件に直接携わることができます。同じ類型でも「今回はここが少し違うかも」と調べ直す機会が豊富にあるから、知識がどんどん深まっていく。個人的には、この事務所に入って本当にラッキーだったと思っています。(杉本先生)
新たにメンター制度も導入した。大手のような体系的な研修やマニュアルの代わりに、「期が近くて目標になる先輩」がついて、日常的に相談しやすい関係を作る試みだ。
全部を一度に体系的に教えるのは無理なので、期の近い弁護士に聞きやすい雰囲気を作る方がいいんじゃないかと。(長鎌先生)
長鎌先生自身も、期の若いアソシエイトが気軽に声をかけてくれる環境を意識してつくっている。
期がだいぶ上の人に聞くのって結構勇気がいると思うので、声をかけられたときはちゃんと聞いて、手を止めて、一緒に考えるように心がけています。迷ったことは聞いてもらえる方が、案件を一緒に進めるうえでも絶対にいいので。(長鎌先生)
フラットで、「無駄のない」組織文化
3人から共通して出てきた言葉が「無駄がない」だった。
「早く帰りたいのに先輩が残っているから帰りづらい」なんてことも全くない。皆が、仕事が終わったらさっさと帰ったほうがいいと思っています。(朴先生)
変に肩肘張ってないし、無駄な上下関係がない。思ったことは言えるし、違うと思ったら意見も言える環境です。(杉本先生)
意思決定のスピードも速い。それがクライアントの「実際どうすればいいか」という問いに応えるスピード感にも直結している。
英語は「楽しめる気持ち」があれば十分
「外資系に特化」と聞くと英語力のハードルが高そうだが、入所時点では「英語が楽しいと思える気持ちさえあればいい」というのが3人の一致した見解だ。
3人は、入所当時を笑いながら振り返る。
事務所に入所する前は、海外旅行にすら行ったことがなかったし、最初は受験英語だけで乗り切った感じです。(朴先生)
入所初日からいきなり英語の会議に入れられます(笑)。ずっと聞いているとさすがに伸びますよ。言語だから頭の良さはあまり関係ない、そんなに心配しなくていいと思います。(杉本先生)
最初アソシエイトとして入所したときは、電話会議は内容の半分も分からなくて……。パートナーから「長鎌さん、話しかけられてるよ」と言われて、「あ、私に話しかけられてたんだ、恥ずかしい」みたいなことも何度もありましたけど、だんだん心が強くなるので大丈夫です(笑)。(長鎌先生)

毎日英語に触れる環境に加え、同僚のアメリカ人弁護士にメールや意見書をチェックしてもらえる。週1回のオンラインでの英語レッスン、数年勤務した後の留学の機会なども用意されている。
英語が分からないからといって、「なんで分からないの」という人は一人もいません。パートナーも、「やっていくうちになんとかなるでしょ」と思っています。途中は大変ですが、そこを乗り越えると、英語でコミュニケーションをすることが楽しくなってきます。分からなくても「ごめんなさい、もう一回言ってくれますか?」と聞けるようになります。(長鎌先生)
こんな人に来てほしい
最後に、転職を検討している弁護士へのメッセージをそれぞれに聞いた。
「労働や紛争案件のプロフェッショナルになりたい」「英語を使って仕事するって楽しい」と思える人にとって、Vanguard Tokyo法律事務所での業務は本当に面白いし、充実感もあると思います。(朴先生)
難しい法律文書を書きたい人よりも、クライアントの課題を解決することに価値を見いだせる人の方が、なじみやすいと思います。(長鎌先生)
あまり凝り固まって考えない、柔軟に思考できる人の方が働きやすいと思います。「こうじゃなきゃいけない」ではなく、お客さんの問題をどう解決するか。そっちに面白みを感じられる人に来てほしいです。(杉本先生)
長鎌 未紗パートナー
東京大学文学部卒業、東京大学法科大学院修了、一橋大学大学院国際企業戦略専攻MBAプログラム卒業。2013年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。外資系大手法律事務所(東京事務所)でキャリアをスタート後、2019年2月にVanguard Tokyo法律事務所へ移籍。2026年1月にパートナーに就任。雇用契約・就業規則の整備、賃金・時間管理制度の導入、退職勧奨・解雇対応、組織再編時の労働条件統一、社内調査など、外資系企業の労働・人事領域を幅広く手がける。
朴 将在アソシエイト
東京大学法学部卒業、東京大学法科大学院修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。ロースクール卒業後、新卒でVanguard Tokyo法律事務所に入所。主な取扱分野は労働法・一般企業法務。整理解雇や能力不足等を理由とする解雇事件、残業代、労災、懲戒処分、パワハラ、セクハラなどに関する労働紛争を多く取り扱うほか、雇用に関連する様々なアドバイスを提供。
杉本 茉永アソシエイト
中央大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。別の外資系法律事務所を経て、2024年3月にVanguard Tokyo法律事務所へ入所。労働分野を中心に、訴訟・危機管理対応を担当。
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