元裁判官の三村量一氏と、大手事務所で研鑽を積んだ小松隼也氏が率いる三村小松法律事務所。
知財訴訟のスペシャリストが集う同事務所の強みは、元裁判官らによる精緻な合議体制と、若手が第一線で法創造に挑める環境にある。
最先端の知財戦略から次世代の育成まで、訴訟に強い知財ブティックが描く未来の展望に迫る。
知財・訴訟の領域で圧倒的な存在感を発揮する法律事務所の誕生

2019年7月に設立され、知的財産権(知財)と訴訟に関する案件を数多く手掛けてきた三村小松法律事務所。代表を務めるのは、30年余り裁判官として数々の重要案件を担ってきた三村量一弁護士と、大手法律事務所で訴訟の実戦経験を積んだ小松隼也弁護士だ。
二人の出会いは、国内最大手の一つである長島・大野・常松法律事務所に遡る。裁判官を退官した後に弁護士に転身した三村弁護士と、新卒で入所した小松弁護士は、偶然にも同じ2009年に弁護士登録をし、ほとんど同じタイミングで事務所に入所したという。当初、小松弁護士にとって三村弁護士は、法曹界における雲の上の存在であったが、同じ訴訟チームで事件を担当する中で、次第に信頼関係を深めていったという。
大学の時に、ゼミの発表で三村さんが担当した案件の判決を取り上げたこともありますし、この業界では“スーパースター”のような人で、その三村さんが弁護士になるというのは当時の一大ニュースでした。私にとっては、同じ事務所に三村さんがいるのも不思議な感覚でしたが、会って2日後ぐらいには“面白いおっちゃんだな…”と思うようになっていましたね(笑)(小松弁護士)
三村弁護士は裁判官時代、東京地裁の裁判長として中村修二博士が日亜化学に対して「青色発光ダイオード(LED)」の職務発明の対価を請求した歴史的な裁判を担当したことでも知られる人物だ。一方、小松氏は長島・大野・常松法律事務所における10年間、訴訟一筋に歩む中で大規模事務所では利益相反(コンフリクト)により、引き受けたくても受けられない案件が生じるというジレンマを感じるようになっていた。
より自由に、徹底的に訴訟に強い事務所をつくりたい。その思いに三村弁護士も志をともにしたことが、同事務所の設立へとつながったわけである。そして設立から7年間が経ち、2019年に4名でスタートした体制は2026年4月の時点で30名を超える規模となり、急成長を続けているのが現在の同事務所の姿だ。
長島・大野・常松では、私が担当する知財案件のアソシエイトとして小松さんを指名し、多くの案件にともに取り組みました。大規模事務所は組織力が強みですが、知財訴訟の世界では、より専門性に特化したブティック系事務所が独自の存在感を示しています。私たちは、大事務所には真似できない機動力と、高度な専門性を兼ね備えた組織を目指しました。(三村弁護士)
訴訟チームで三村さんと仕事をする中で、訴訟に特化した強い事務所を作りたいという思いが強くなりました。また、留学先の米国で、産業ごとに特化した弁護士の在り方を学んだことも大きい。日本にも、特定の産業や訴訟に深くコミットする事務所が必要だと考えたのです。(小松弁護士)
元裁判官の「合議」が導く的確な見通し

三村小松法律事務所の看板は、何と言っても「訴訟」「知財」「グローバル」の三本柱だ 。特に知財訴訟においては、他事務所の追随を許さない圧倒的な強みがある。その源泉は、日本でも稀有な「元裁判官による合議」が事務所内で可能になっている点にある。三村氏を含め、知財案件の経験を持つ元裁判官が4名在籍しており、これは他の法律事務所にはない際立った特徴だ 。
知財の領域は、最高裁の判決が少なく、立法のサイクルも非常に早いのが特徴です。そのため、新しい事案に対して法創造的な判例を自らつくり出していく面白さがあります。通常の民事事件にはない、リーディングケースを担うやりがいは、知財弁護士ならではの醍醐味と言えるでしょう。(三村弁護士)
三村弁護士によれば、知財領域の案件には特有の判例理論が存在し、自身が最高裁調査官の時代にはその理論を最高裁判決として示したこともあったという。この特徴ある知財という領域において知見を発揮できることに加え、訴訟全体の見通しを立てられることも同事務所の強みだと、二人の弁護士は自信を見せる。
事務所内では、元裁判官たちが顔を突き合わせ、実際の裁判所さながらの合議を行っています。この事案を裁判所に持ち込んだ場合、どのような判断が下されるか。その見通しの精度は極めて高いと自負しています。勝ち負けの見通しが的確につくからこそ、無駄な争いを避け、依頼者にとって真に利益となる戦略を提案できるのです。(小松弁護士)
また同事務所では、若手弁護士が自分の好きな分野を自由に開拓することを推奨しているのも大きな特徴だ。他事務所の追随を許さない知財という領域において、伝統的な特許訴訟から、ファッション、アート、エンターテインメントといった現代的な分野まで多岐にわたる案件から、自らの方向性にマッチするものを選びながら知見・知識を獲得できるのである。
私は特許侵害訴訟を裁判官時代に2000件近く担当してきました。その経験から、結論に影響しない枝葉の議論を排し、勝負の『勘所』を突く重要性を熟知しています。弁護士として一生の間に経験できる訴訟件数は限られていますが、当事務所には、裁判官として膨大な案件を裁いてきた『目』があります。この知見を若手弁護士たちに還元できる環境があることは、他にはない強みだと考えています。(三村弁護士)
若手の挑戦を支える環境と出向・留学体制

若手弁護士にとって、同事務所で働く最大のメリットは、最高レベルのリーガルマインドに日常的に触れられる点だろう。職場では元裁判官の先生方が個室にこもることはなく、他の弁護士たちと同じ執務室で机を並べているため、いつでも気軽に相談ができる環境となっているのである。また、指導体制も徹底しており、若手が作成した成果物はすべて先輩弁護士によるレビュー(赤入れ)が行われ、リサーチの方針についても密に協議を重ねるということだ。
若手であっても、一人の専門家として意見を出すことが求められます。合議の場でも若手の視点を取り入れますし、やりたい分野があれば事務所としてサポートする体制となっています。直近では、『能』の業界を法的に支援したいと入ってきた新卒のメンバーもいますが、そうした独自の専門性を育てるための土壌を整えているのも、当事務所の特徴だと思います。(小松弁護士)
また、同事務所は「霞が関」とのつながりも深い。内閣府の知的財産戦略本部や特許庁などへの出向経験者が多く、法律が作られる「立法のプロセス」に直接関わっているメンバーが多数在籍しているのである。
AIなどの新規領域においては、現行法の解釈だけでなく、将来の立法を見据えたアドバイスが必要です。出向を通じて最新の政策動向を掴み、立法経緯まで熟知していることは、クライアントにとっても大きな安心材料になります。また、留学支援制度も整えており、海外の著名な法律事務所とのネットワークも豊富です。グローバルな知財案件に携わりたい人にとっても、最適な環境と言えるのではないでしょうか。(小松弁護士)
最先端のスタートアップ支援から、伝統的な特許紛争、さらには国を挙げたルール作りまで。若手弁護士は、自身の興味関心に基づき、縦横無尽にキャリアを広げていくことが可能だと言えるだろう。
知財の未来を担う次世代への承継

三村小松法律事務所が見据える未来は、知財訴訟をリードする次世代の育成と、法整備が未成熟な新領域への貢献だ。三村弁護士は、自身の今後の取り組みについて次のように語っている。
私は既に熟年を超えましたが、まだまだ現場で戦い続けます。しかし同時に、私たちが培ってきた特許訴訟のノウハウを継承し、知財領域の案件を完璧にマネジメントできるような中堅弁護士や若手弁護士をさらに世に送り出すことも、私の役割だと考えています。特許の世界は、理系に限らず、技術への好奇心があれば誰でも面白味を見出せる世界なので、ぜひ挑戦してみてほしいと思っています。(三村弁護士)
元裁判官として数多くの実績を残してきた三村弁護士だが、自分に続く知財領域のスペシャリストを育成することは、同事務所にとって、そして今後の社会にとって必要不可欠なミッションだととらえているのである。小松弁護士も、事務所の成長に伴い、新たに迎え入れる弁護士人材への期待を寄せている。
ファッションやアニメ、漫画といったエンタメ分野は若手弁護士の活躍に期待が持てますが、今後は特許や訴訟領域でも第一線で活躍したいという志を持つ方に、ぜひ来ていただきたいと思っています。未成熟な業界では、今なお古いしきたりが残っていることも多いですが、そこを高度な法的知識をもとにしたロジックで整理し、新しいビジネスの形を支援していくことには、大きな価値があります。(小松弁護士)
事務所は今後も、元裁判官の深い知見と、若手のフレッシュな発想を融合させ、日本を代表する知財・訴訟のブティックとして進化を続けていく。最後に、今後の事務所を担う可能性がある弁護士たち、そして法曹界での成長を目指す弁護士たちに向け、メッセージを送ってもらった。
新しい立法が頻繁に行われる知財の領域は、自分の担当する事件がそのまま『リーディングケース(先例)』になるチャンスに満ちています。裁判官としての経験則を若手に伝え、彼らが自らの手で新しい法理を打ち立てていく。そのプロセスこそが、この事務所の最大の活力となると思っていますので、ぜひこの環境でチャレンジしてみてほしいですね。(三村弁護士)
元裁判官の英知が集結するこの場所で、確かな知識と経験を得ながら、AIやコンテンツといった次世代の課題に挑む。法律家としてこれほど贅沢で、刺激的な環境はないと自負しています。知財の奥深さと、訴訟の面白さを、志を同じくする仲間にぜひ知ってほしいと思います。(小松弁護士)
三村 量一代表弁護士
1954年生まれ。1977年東京大学法学部卒業後、1979年に裁判官任官。最高裁判所調査官、東京地方裁判所判事、知的財産高等裁判所判事、東京高等裁判所判事などを歴任し、2009年に第一東京弁護士会登録。長島・大野・常松法律事務所で勤務後、2019年に三村小松法律事務所を設立。
小松 隼也代表弁護士/リーガルディレクター
1986年生まれ。2008年同志社大学法学部法律学科卒業後、2009年長島・大野・常松法律事務所に入所後、訴訟グループに配属。2016年には米国Fordham University school of Law (New York) を卒業し、2019年に三村小松法律事務所を設立。
