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【インタビュー】公共性と専門性を両立するキャリア──都庁で働く弁護士のリアル

更新日: 公開日:

巨大都市・東京の行政を「法の力」で支える東京都庁の総務局総務部法務課。

都庁の総務局総務部法務課は、一体どのような役割を担い、そこで働く弁護士はどのようなキャリアを描いているのでしょうか。

今回は、都庁で働く弁護士のキャリアについて深堀していきます。

同課で弁護士資格を有する特定任期付職員として4年間勤務している飯田 隼矢・法務担当課長に、事務所や企業内弁護士とは一線を画す「都庁法務」の具体的な役割、日常業務のリアル、そして経験が弁護士としてのキャリアにどう繋がるのかなどの、お話しを伺いました。

■プロフィール
飯田 隼矢さん

【経歴】
司法修習第64期
東京の事務所で約3年勤務した後、新潟市役所に入庁。
新潟市役所では、特定任期付職員と一般職員の両方を経験。
現在は、都庁の総務局総務部法務課にて、特定任期付職員として勤務 。

なぜ都庁で働くのか?ミッションと特性

都庁総務局飯田さん

Q. 都庁の総務局総務部法務課は、組織の中でどのような役割を担っているのでしょうか?

飯田課長:

総務局総務部法務課は、主に都の訴訟対応に特化している部門です。

他の地方自治体では、法律相談も訴訟対応も一つの課で引き受ける形が多いかと思いますが、都庁の場合は法律相談を「文書課」が担当し、訴訟対応を「法務課」が行うという、専門化された体制をとっています。

そのため、国の訴訟を担当する法務局に負けないほどの専門家集団となっています。

Q. 一般的な民事・企業法務と比べて、「都庁での法務」ならではの特性は何でしょうか?

飯田課長:

都庁での法務は、扱う事件の性質上、行政法分野が中心となり、常に公益性と向き合うことが求められます。

民間の弁護士は、クライアントからの依頼を受けるか断るか選択する余地がありますが、都庁の場合は、行政組織で訴訟を専管とする部署である以上、来た仕事に対して「できない」とは言えません。

行政分野の実情を知らない弁護士からみて「これは厳しい」と思うような場面でも、行政組織の組織人として、担当者の思いを十分にくみ取り、どうすれば防御できるか、どういう視点で説明を補えば裁判所を説得できるかを、所管部署と二人三脚で考えていくことが必要ことがです。

裁判を通じて明らかになった法的課題を都政全体にフィードバックしたり、紛争の芽を早期に摘んだりする予防法務的な取り組みも強化しており、行政の根幹を支える仕事に携わります。

Q. 弁護士資格保有者が特定任期付職員として必要とされる背景には何がありますか?

飯田課長:

都庁には、プロパー職員として入庁後に司法試験に合格し弁護士資格を取得する者がいる一方で、私のように外部から特定任期付職員として弁護士資格保有者が加わるケースがあります。

R7年度現在の課員は35名で、そのうち弁護士資格保有者は私を含めた特定任期付職員が2名、生え抜きの職員が7名です。

都庁は扱う案件が膨大かつ多岐にわたるため、外部での実務経験が豊富な弁護士に専門的な知見を持ち込んでもらい、組織体制の強化を図っています。

特定任期付職員の法律業務のリアルと働く環境

Q. 具体的な担当業務や、法務課内でのポジションについて教えてください。

飯田課長:

現在私は、行政訴訟をメインに対応する「行政ライン」に配属されています。具体的には、都を被告とする訴訟事件における訴訟遂行が中心です。

所管部署からの情報を精査し、法律家としての視点から事実認定の的確さや法解釈の適正性をチェックします。

緊急時の対応として、執行停止や仮の義務付け・仮の差止めといった仮の救済の申立てがあれば、数日程度の短い期間で所管部署と連携しながら意見書を作成・提出することもあります。

このように、関係者と協力して結論を出すことが、非常に大きなやりがいを感じられる場面です。

Q. 他部署との連携はどのように行われますか?

飯田課長:

訴訟は常に特定の行政処分や行為に関するものなので、その案件を所管する各行政部局との連携が必須です。

時には、所管局のメンバーとオンライン会議システムなどでリアルタイムに書面の案を共有し、意見を出し合いながら訴訟を戦い抜きます。

Q. 弁護士として都庁での働き方はどう感じていますか?

飯田課長:

事務所での勤務と比較すると、ワークライフバランスや勤務形態の規則性が非常に高いと感じます。

事務所勤務の場合、刑事弁護などで勤務時間が不規則になることもありますが、都庁では比較的時間を管理しやすい環境が整っています。

もちろん、緊急対応が発生することもありますが、それが常態となってはいません。

実は、都庁では「ワーク」の前に「ライフ」があるという想いから、一般的な呼び方の「ワークライフバランス」とは順序を入れ替えた「ライフ・ワーク・バランス」という言葉を使用しています。

こうした姿勢は子育て支援にも表れており、都庁では育児は休みではなく、未来を育む大切な仕事と捉えて「育業」と呼んでいます。

実際に子育て世代の職員も多く、私自身も育児休業を取得しました。

組織として育業を取得しやすい環境が確保されているため、これから家庭を持ちたい方や、現在子育て中の方も安心して働ける環境です。

都庁で働くことで得られる「やりがい」とキャリアへの寄与

Q. 弁護士として都庁で働くことの公共的なやりがいとは?

飯田課長:

やはり、「都民生活の根幹に関わる都政全体を法的な側面から支えている」という点は、最大の魅力です。

判決の内容によっては東京都だけでなく全国の自治体の行政に影響を与えかねないような事件を担当することもあり、「公共の利益を守る最前線に立っている」という実感は、大きなモチベーションになります。

また、裁判を通じて明らかになった法的課題を都政全体にフィードバックし、今後の行政運営の改善に繋げるという都政の進化に貢献できることも、大きなやりがいの一つです。

Q. 任期終了後のセカンドキャリアに、この経験はどう活かされると考えられますか?

飯田課長:

行政法務の経験は、任期終了後のセカンドキャリアを豊かにする貴重な財産になります。

任期を終えた後のキャリアパスは様々で、独立して事務所を立ち上げる方、元の事務所に戻る方、国や他の自治体に特定任期付職員として再びキャリアを積む方など様々です。

私の知る限り、任期終了後に最も多いキャリアは、行政事件を専門的に扱う事務所に移籍するケースです。

都庁で培った行政法務に関する知見は、その後のキャリアで大いに役立ち、もちろん民間企業の企業内弁護士への転職でも評価されます。

行政という組織の中での立ち居振る舞いや、法的な問題を適切に処理する能力は、場所を選ばず活かせるため、キャリアの選択肢を大きく広げるきっかけにもなるでしょう。

任期は最大5年という制限はありますが、その期間できっちり経験を積むことで長期的なキャリア形成が十二分に可能です。

最後に-都庁の総務局総務部法務課にご興味がある方へ-

飯田課長:

都庁で特定任期付職員として働くことは、

  • 専門性: 行政訴訟という専門分野に特化し、法律家としての知見を最大限に活かせる。
  • 公共性: 都政の根幹を支え、公益を守るという大きなやりがいがある。
  • 安定性:子育て支援など組織的なサポートも充実している。
  • キャリア: 行政法務の知見は、任期終了後の多様なキャリアパスに繋がる。

といった、公共性と専門性を高いレベルで両立できる、弁護士にとって新たなキャリアの選択肢です。

行政の世界に飛び込むというと敷居が高く感じるかもしれませんが、扱う実務は従来の法律実務と共通する部分が多く、特定の行政法分野の経験がなくても問題ありません。

それよりも、一般的な法的な判断能力と、組織の一員として多様な人々と協調し、厳しい状況でも解決策を模索できるバランス感覚が求められます。

なので、幅広い業務に真摯に向き合える方であれば、基本的には困ることはありません。

研究を惜しまない方、所管部署や法務課の同僚と議論を繰り返し、チーム一丸となって訴訟を戦っていくことを苦にしない方、世間の注目を集める大型事件で都の主任代理人として活躍したい方などが、今回募集している特定任期付職員のポストは適任だと思います。

都庁という巨大な組織で、社会の根幹を支える弁護士としての新たなキャリアを一緒に切り開いていきましょう。

右:東京都総務局総務部法務課 法務担当課長 飯田 隼矢さん
左:No-Limit弁護士 法曹専門キャリアアドバイザー 牧 裕太郎

■採用情報はこちら

https://www.soumu.metro.tokyo.lg.jp/recruitment/houmutantoukachou

■問い合わせ先
①申込み及びスケジュールに関すること
・東京都総務局総務部総務課人事担当
・所在地:〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都庁第一本庁舎12階南側
・電 話:03-5388-2314

②従事職務の内容に関すること
・東京都総務局総務部法務課
・電 話:03-5388-2572
・所在地:〒163-8001 東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都庁第一本庁舎12階中央

 

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