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公務員経験のある弁護士の転職|キャリアのバリエーションと転職成功ポイントを解説

更新日: 公開日:

現在、法曹を目指すルートとして、法科大学院あるいは司法試験予備試験が確立し、社会人経験を有する人材が、相当数、法曹になっています。その中には、公務員経験を有する人も少なくありません。

あるいは、弁護士になってから、省庁での勤務経験を経て、様々な領域・分野に転職するケースもありますよね。

公務員から弁護士への転職には、様々なパターンがあります。また、それぞれの場合により、転職において活かすことができる強みなども異なります。

今回は、公務員から弁護士への転職について、キャリアのバリエーション・パターン、それぞれの場合における強み、転職の理由、転職先などを徹底解説します。

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公務員から弁護士への転職パターン

まず、公務員から弁護士への転職には、どのようなパターンがあるのでしょうか。

公務員→司法試験合格→弁護士

まず初めに、公務員になった後に司法試験を受けて合格し、弁護士になるパターンです。司法試験受験生の中で、社会人経験を有する受験生として一定数を占めるのが、このパターンです。

公務員としてのキャリアを積んだ後、法曹になろうと決意して司法試験に挑戦し、見事合格を勝ち取り、弁護士としてのキャリアをスタートさせる場合が、これにあたります。

司法試験合格→公務員あるいは任期付公務員→弁護士

次に、司法試験に合格したが、すぐに法律事務所には就職することなく、公務員あるいは任期付公務員として業務経験をした後、弁護士になるパターンです。

例としては、さらに2つのパターンがあります。1つは、司法試験を受験しつつ、地方公務員あるいは国家公務員試験を併願して受験した場合に、見事両方に合格し、公務員になった後に弁護士になるパターンです。

もう1つは、特に公務員試験を受験しなかったものの、司法試験合格後に、任期付公務員になるなどした後、弁護士になるパターンです。

後者の例は少数ですが、前者の例は、司法試験を受験しつつ、司法試験に不合格となった場合のリスクヘッジを図ることに成功しつつ、司法試験にも結果的に合格したケースとして見受けられます。

弁護士など→公務員または任期付公務員→弁護士

3つ目は、特に公務員試験との併願などをすることなく、司法試験一本集中で受験して見事合格し、弁護士など法曹になった後、公務員または任期付公務員になった後、再度弁護士に転職する場合です。

特に、弁護士になってから、事務所に在籍しつつ出向という形で任期付公務員となるケースは、大手から中規模の企業法務系事務所の弁護士に見受けられます。

以上の3つのケースのうち、公務員を辞めて司法試験の受験を決意し、司法試験受験を経て弁護士に転職するケースは、広い意味では転職ですが、一度司法試験を受験して合格するという過程(合格した後は司法修習)を経て初めて弁護士になります。

そのため、通常の転職とは異なり、新たな就職活動という側面もあります。そこで、以下では、司法試験合格後に、いずれかのタイミングで公務員となった後、弁護士に転職したケースを中心に解説していきます。

司法試験合格後に公務員となり弁護士になるケースの転職

司法試験合格後に公務員となり、弁護士になるとき、転職する際のポイントはどのような点にあるのでしょうか。

3つのケースごとに、みていきましょう。

公務員でありながら司法試験に合格した場合

公務員として行政などに関わり業務をしつつ、司法試験を目指し、合格したことで転職するケースです。

このケースのポイントは、3つあります。1つは、公務員としての業務に対してどのような問題意識があったのかという点です。2つ目は、弁護士資格を得て何をしようと考えたのかという点です。

そして3つ目は、あえて公務員を辞めて弁護士業務をしようと思ったきっかけがどこにあるのか、また公務員としての業務経験を経て、どのような弁護士業務をすることに興味を持ったのかという点です。

司法試験受験時に公務員試験を併願していた場合

司法試験と公務員試験を併願し、その両方に合格して、公務員になった後に弁護士に転職する場合は、2つのポイントがあります。

1つは、法曹と公務員のいずれかになるという選択肢があった上で、はじめに公務員となったことです。もう1つは、2つの試験を併願した理由と共に、公務員としての経験を経た後で弁護士になった経緯です。

  • 1つ目の点は、弁護士になるのではなく、まず公務員という職を選んだ根拠が特にポイントになります。
  • 2つ目の点は、公務員になってから、法曹を目指した理由が重要なポイントです。

省庁出向を契機に転職する場合

このケースでのポイントは、

  1. どのような省庁に出向したのか
  2. 出向先での業務内容
  3. 特に任期付公務員の任期終了後、弁護士業務にどのように還元することを意図していたのか
  4. 出向の際に事務所に在籍していたのか、残籍せずに出向した後、どのようなキャリアをイメージしたか

という4点です。

出向後に転職する場合は、以前の所属事務所との関係をどのように考えていくかが、特に重要になります。

特定任期付公務員とは

出向の際に利用される特定任期付公務員は、一般に浸透しているものではないので、ここで説明を加えておきます。

いわゆる特定任期付職員は、「民間人材の任期付採用」制度で、「公務に有用な専門的な知識経験等を有する者を任期を定めて採用」する制度です(人事院 国家公務員試験採用情報NAVI)。

また、「高度の専門的な知識経験を有する者についてはその専門性等にふさわしい給与を支給することができるよう」にするものです。

趣旨

特定任期付職員の制度は、平成12年11月に「一般職の任期付職員の採用及び給与の特例に関する法律」(任期付職員法)の制定により始まりました。

行政の高度化、多様化、国際化に伴い、行政を遂行していくには、新卒者の育成とともに、外部人材を流動的に確保する必要があります。そこで、公務における民間人材の円滑化を図るため、任期付職員の制度がつくられました。

制度の内容

採用の要件は、大きく2つあります。

1つは、「高度の専門的な知識経験又は優れた識見を有する者をその者が有する当該高度の専門的な知識経験又は優れた識見を一定の期間活用して遂行することが特に必要とされる業務に従事させる場合」です。ここにいう「高度の専門的な知識経験」および「優れた識見」は、以下のような意味です。

「高度の専門的な知識経験」とは、例えば、弁護士又は公認会計士がその実務を通じて得た高度の専門的な知識経験、大学の教員又は研究所の研究員で特定の分野において高く評価される実績を挙げた者が有する当該分野の高度の専門的な知識経験を、「優れた識見」とは、例えば、民間における幅広い分野で活躍し、広く社会的にも高く評価される実績を挙げ、創造性、先見性等を有すると認められる者が有する幅広い知識経験をいう。

(出典:人事院 国家公務員試験採用情報NAVI

もう1つの要件は、1つ目の場合のほか、「専門的な知識経験を有する者を当該専門的な知識経験が 必要とされる業務に従事させる場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときであって、当該者を当該業務に期間を限って従事させることが公務の能率的運営を確保するために必要であるとき」です。

ここにいう「専門的な知識経験」としては、次のような例があります。

「専門的な知識経験」とは、例えば、①国際機関勤務経験者等が有する国際活動に関する専門的な知識経験、②システムエンジニアが有するコンピュータシステムに関する専門的な知識経験に関する専門的な知識経験をいいます。

(出典:人事院 国家公務員試験採用情報NAVI

また、「次に掲げる場合」とは、次のアからウがあります。

  • ア 当該専門的な知識経験を有する職員の育成に相当の期間を要するため、 当該業務に従事させることが適任と認められる職員を部内で確保することが一定の期間困難である場合
  • イ 当該専門的な知識経験が急速に進歩する技術に係るものであることその 他当該専門的な知識経験の性質上、当該業務に当該者が有する専門的な知 識経験を有効に活用することができる期間が一定の期間に限られる場合
  • ウ ア及びイに準ずる場合

任期付職員の採用は、各府省が人事院による承認を経て、採用選考を行います。そして、任期は、最長で5とされています。そのため、任期が5年に満たなければ、採用した日から5年を超えない範囲であれば更新される場合もあります。

出向の一形態として知られている

弁護士業界では、出向の一形態として知られています。その理由は、弁護士であっても、その資格を持ちながら、職員としての業務に従事することができることにあります。

そのため、法律事務所等に在籍しながらの業務遂行も可能であるため、出向の一形態となるわけです。

募集している省庁などの例

2021年11月末現在募集している省庁などは、次のようなものが挙げられます。国と地方公共団体いずれの募集もあります。

公務員から弁護士への主な3つの転職理由

公務員から弁護士に転職する理由には、どのようなものがあるでしょうか。ここでは、3つご紹介していきます。

誰のために働いているかわからなくなった

1つは、仕事のやりがいの側面から、自分の業務が社会の中でどのように生きているか、とりわけ個人に対してどのように価値を提供できているのかが見えにくい点が挙げられます。

公務員の業種や内容にもよるところはありますが、公務員の業種などによっては、誰を相手に仕事をしているのかがわからなくなり、やりがいが薄れることが考えられます。

業務自体にも楽しさを感じなくなることもあるでしょう。

街弁は、個人から直で相談を受け、話を聞いて、解決策を考えて実行していくことを業務とします。そのため、目の前の一人を助けることがしたい、との考えを持った場合は、弁護士への転職が考えられます。

人事制度への違和感→自由度の高い働き方志向

公務員は、転勤や部署異動が頻繁にあります。また、業務についても、指揮系統の遵守・組織性が重視されます。

このような組織的な業務や定型的な業務の中で、人事制度や業務の配点に関して退屈感を持つこともあるでしょう。特に、クリエイティブで先進的な環境を志向する場合であれば、自由度の高い働き方、環境を追求すると思います。

そこで、人事や組織的なしがらみにとらわれない働き方を選ぶことができる、弁護士業界への転職に思い至るのです。

給与への不満

公務員の給与は、人事院の規則に従い、法律によって定められています。国からお金が払われる点で、取りはぐれがなく、「安定」であるといえるでしょう。

他方で、報酬が業務に見合わないと感じる場合や、報酬の上限があることから、不満を抱く場合もあります。そこで、報酬面で上限がないような働き方として、弁護士業を選ぶことが考えられます。

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公務員から弁護士への転職先のバリエーション

公務員から弁護士に転職する場合、どのようなバリエーションがあるのでしょうか。

法律事務所などへの転職

公務員をやめて司法試験を受験して合格してから、あるいは司法試験合格後にまず公務員に就職してから、弁護士になるケースでは、法律事務所への「転職」が考えられます。

自由度の高い働き方を志向して弁護士への転職を考えたような場合は、法律事務所の働き方が、自由度の高いもので、転職先として適合的です。

弁護士は、所属弁護士の場合でも、多くの場合は業務委託契約であり、個人事業主であることから、出勤時間が拘束されない働き方が可能です。休暇も、自分の手持ちの案件との関係で調整することで、土日以外にも設けることもできます。

他方で、弁護士の業務量は、法律事務所によって異なります。場合によっては、公務員時代の業務量を上回るようなこともあります。そのため、業務量を理由に転職を考える場合は、注意が必要です。

また、土日は必ず休みたいという人にとっても、弁護士業は、必ずしも適合的でないと考えられます。なぜなら、休暇を自由に調整できるということは、逆にいえば、調整の仕方やクライアントの案件の都合によっては、土日にも業務が舞い込むこともあるからです。

公務員から弁護士として法律事務所に転職する場合は、法律事務所の特徴、働いている弁護士の業務量や、ワークライフバランスのとり方について、話をよく聞いてみることが重要です。

企業への転職(インハウス)

企業への転職も考えられます。弁護士資格を持ちながら企業に就職することになるため、インハウスロイヤーとしての形態になります。

公務員としての経験から、社会課題を発見し、かつそれを公共政策ではなく民間の立場から、ビジネスの場で活かしたいなどの理由から転職する場合が考えられます。ビジネスへの感度が強い人には、適するものと考えられます。

また、民間企業であれば、法律事務所での弁護士業務では激務と感じる人にとっては、ワークワイフバランスを確保することができるため、ぴったりの転職といえます。

他方で、弁護士としての稼ぎという点では、やはり劣る面があります。転職先にもよりますが、好待遇となる大企業、ベンチャー企業でも管理職ポジションより上でなければ、収入の面では不足を感じる可能があります。

上記の点は、自分の転職理由を深堀りして、検討しておくことが重要です。

独立開業

独立開業をすることも、転職としての選択肢の1つでしょう。自由度の高い働き方と、収入の面では青天井になることから、こうした条件を志向する場合には適合します。

もっとも、案件処理のスキルや経営のスキルがない限り、いきなりの独立開業はリスクが高いと考えられます。

公務員から弁護士に転職した具体例

では、公務員から弁護士に転職した具体例は、どのようなものがあるでしょうか。3つご紹介します。

省庁職員→司法試験→弁護士(法律事務所)

この方は、役所での仕事自体には面白みを感じていたが、退職の時期に関する取り決めから人事制度への違和感を感じて、リタイアを自分で決められる弁護士業界への転職を思い至ったといいます。

転職活動、法律事務所への就職活動では、公務員への就職における採用システムとの似ていることに気づきを得て、事務所訪問を行うなどして就職先を勝ち取ったといいます。

出典:今村武史『元公務員から見た弁護士業界』59期リレーエッセイ 東京弁護士会

公務員時代の経験が、弁護士への転職に活きた例としてお手本であるといえます。

市役所職員→司法試験合格→法律事務所→独立開業

この方は、市役所で、下水道の経理係として業務に従事していました。公務員を辞めようと思ったきっかけは、決裁制度に対する疑問を抱いたことからであるといいます。

役所仕事の特質でもありますが、組織としての仕事、またその合理性に疑問を持ち始めて、転職に思い至るケースがあることは事実です。

もっとも、市役所における問い合わせ対応が、法律事務所における相談業務に活きたという声もあることから、業務のスキルといった点では通ずる点もあるのでしょう。

法律事務所→特定任期付職員→企業内弁護士

この方は、もともと法律事務所勤務でしたが、訴訟をはじめとした臨床法務について、社会的な実益に疑問を感じ、予防法務への興味関心がわいたそうです。

そこから、役所での相談業務を通じ、様々なトラブルに対し、予防的に法律を活用することに取り組んだそうです。その後に、弁護士としてのサービスの中で、予防法務の知見を発揮できる場として企業法務にたどり着いたそうです。

公務員から弁護士に転職するための選択肢

公務員から弁護士に転職する場合、どのような相談先や求人案件の紹介先があるのでしょうか。

転職サイト

一般の転職サイトでも、公務員から弁護士への転職をサポートしてくれる場合があります。

通常の転職サイトであれば、民間企業の保有求人数が相当数あることから、企業への就職を目指す場合には無難な選択肢であるといえます。

他方で、法律事務所への転職を検討する場合には、弁護士業界に特化した転職サイト、弁護士業界に精通したサイトがおすすめです。

転職エージェント

転職エージェントの利用も考えられます。転職エージェントであれば、単なる求人紹介だけでなく、自己分析、履歴書等の作成についても手厚くサポートする体制が充実しています。

そのため、サポートの充実を考える場合であれば、転職エージェントの利用がおすすめです。

弁護士専門の転職エージェントがおすすめ

特に、弁護士業界に精通しており、かつサポートの充実も得たい場合には、弁護士専門の転職エージェントがおすすめです。

公務員から弁護士への転職の場合でも、弁護士業界に精通したエージェントの方が有利です。なぜなら、法律事務所への転職はもちろん、インハウスとして企業内弁護士への転職を考える場合でも、法務という専門性を活かすこと、それを希望の転職先に説得的に伝えるには、やはり弁護士業界に特化したエージェントのサポートが最適であるからです。

公務員から弁護士への転職の場合も、弁護士業界に特化したエージェントを選ぶようにしましょう。

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まとめ

公務員から弁護士への転職には様々なバリエーションがあり、それぞれでどのように公務員としての経験を活かすか、また転職活動においてどのように表現するかという点にポイントがあることがお分かりいただけたかと思います。

公務員から弁護士への転職をどのように考えるべきか、その点をチェックする一助として、この記事が役に立てば幸いです。

監修者
川村 将輝

旭合同法律事務所/愛知県弁護士会所属

司法試験受験後、人材系ベンチャー企業でインターンを経験。2020年司法試験合格。現在は、家事・育児代行等のマッチングサービスを手掛ける企業において、規制対応・ルールメイキング、コーポレート、内部統制改善、危機管理対応などの法務に従事。

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