【執筆者】かわしょー吉
NO-LIMITのインターンを経験。令和2年司法試験合格。
令和元年司法試験予備試験最終合格。平成30年度司法試験予備試験では、口述試験落ちを経験。
趣味は釣り。カラオケも好き。宇宙系のyoutubeを見ることがマイブーム。
Twitter:https://twitter.com/kshokichi_law
目次
修習前の過ごし方
修習前の過ごし方は,法律事務所あるいは企業など就職先が決定しているか否かによって大きく異なります。
法律事務所等の内定が出ている人
内定が出ており,任官あるいは任検の可能性を残しつつ既に内定承諾をしている場合は,
- 修習開始までのうちに遊びきっておくか
- 様々な勉強やチャレンジをするか
- 修習準備のための勉強するか
といった選択肢があります。
遊びでいえば,新しい趣味を見つけてトライしてみるといった過ごし方もありますし,ライセンス取得といったものもあるでしょう。
法律の勉強以外のチャレンジをするなら,英語や各種資格試験の勉強などが考えられます。また,コロナ禍では困難ですが,海外留学に挑戦することも貴重な経験になります。
修習準備の勉強は,この後述べます。
合格発表後に就活をする人
合格発表後から,あるいはその前から引き続き就活をする人は,まずは本格的に事務所説明会や事務所訪問・個別面談に参加することになります。
自身もこの部類でした。
東京三会合同の就職説明会
一番はじめに,東京三会合同の就職説明会というものがあります。東京近郊での就職を目指す人はもちろん,業界的にも最大の就活イベントですから,東京での就活を考えない人でも業界研究のために参加する価値があります。ぜひ参加しましょう!
東京を中心に,法律事務所や企業が集まり,およそ7日間にわたって連日で説明会が開催されます。40分間が一コマです。2020年度合格者向けのものは,オンライン開催となりました。
参加している法律事務所や企業は,実に様々です。
法律事務所の説明会
法律事務所は,中小企業法務系事務所,渉外系事務所,大規模の総合型事務所,個人事務所などが参加しています。
企業は,総合商社やメガバンク,証券会社を中心に様々な業界からの参加があります。数十人規模の法務部である企業も参加しているほか,法務部採用に限らず,入口は総合職採用(営業など)で2,3年後に法務部にいくところもあります。
他方で,五大法律事務所をはじめ,外資系事務所,有名な企業法務系事務所では,一部すでに採用プロセスが終了しているところもあります。そういった法律事務所が東京三会の説明会には参加する可能性は極めて低いですが,HPにアクセスしたり,アットリーガルやジュリナビといった就活サイトでの情報収集は,必須です。
逆に,そういったサイトにしかない求人もあります。
また,インハウス志望の人は,法務部で絞っている場合であっても,キャリタスへの登録をおすすめします。民間企業の求人や就活イベントの規模は,キャリタスが圧倒的です。手広な情報収集を心掛けると,視野が広がります。合格発表後から3か月間が山場です。合格発表後に就活をする人は,ぜひ合格を確認した瞬間に,事務所説明会や訪問へのエントリーを開始できるようにしましょう。
そのためには,合格発表前の2ヶ月以上前から,自己分析と業界研究をする必要があります。その上で,合格発表の1ヶ月前から履歴書や自己PRの作成・添削を受けるなどの準備をすることが重要です。
また,内定獲得を目指すかどうかはともかく,予行演習的に,合格発表前から就活をして,トライ&エラーで履歴書等の書き方,面接対策をしていくのもよいでしょう。
修習までの(法律の)勉強
修習までの勉強は,実際ほとんどしていなかったというのが,正直なところです。しかし,全くしていなかったというと,ウソになります。
私が特に取り組んでいた勉強は,大きく3つです。
要件事実の勉強
ロースクールの友人と4人で自主ゼミを組む形で取り組みました。
教材は,要件事実30講です。私が通っていたロースクールでは,要件事実の科目が充実していました。そのため,私を含めた同期は,基礎的な部分を中心に重点的に学修していました。要件事実の演習の授業で使用していたのも,30講であったことから,ロースクールでの学習内容の復習の意味でも,これを使用しました。
取り組んだ内容は,各自で問題検討の上,週に1回,オンラインで検討内容や疑問点をぶつけ合うというものでした。
教材は,第2部の範囲を使用しました。応用的な論点の深掘りは除き,要件事実の基本的な概念(時的要素・因子,せり上がり,a+b)の確認や主張分析のポイントなどの理解またはその不足を確認しあうことが目的でした。
結果,民法の改正点への理解,基本的な訴訟物や要件事実論の理解の確立といった学習効果がありました。
答案添削
2つ目は,ロースクール等での答案添削です。
答案添削は,もちろん後進の実力向上が目的です。加えて,私は,法律の知識面での自分の理解を改めて検証すること,後輩の文章から文章表現上良い点を吸収し,問題点に対する改善策を考えることで,自分自身の文章表現力・構成力を高めることを目的に取り組みました。
修習までに30通ほど添削しましたが,民法・民事訴訟法,刑法・刑事訴訟法を中心に,修習で学習するにあたっての基礎的な法律知識・法的思考の確認をする機会となりました。
課題や答案の書き方に関する議論
3つ目は,ロースクールの後輩から,ロースクールでの課題や答案の書き方に関する質問を受け,必要に応じて一緒に課題を検討し,議論したことです。
私は,仲の良い後輩から,しばしばロースクールでの課題や答案の書き方などについて質問を受けていました。初めは,ただ必要な限度で回答するだけでしたが,次第に自分の法律知識の記憶喚起にもなると思い,一緒に課題検討や議論をするようになりました。
ただ,受動的に質問に回答するのではなく,主体的に一緒に議論をすることで,民事系科目と刑事系科目を中心に法的思考を検証することができました。
このように,修習前は,折に触れて法律問題を自ら主体的に検討する機会を設けるなどして,学習していました。
事前課題奮闘記
高さ30センチ程度の段ボール箱いっぱいに詰まった書類の山が届く
合格発表後,2月中旬すぎころ,司法研修所から厚さ5センチ程度に膨らんだ茶封筒と,A4用紙が入る程度で高さ30センチ程度の段ボール箱いっぱいに,書類が届きました。
中身は,それぞれ,司法修習生採用内定通知書のほか導入修習にあたっての事務連絡に関する書類と,いわゆる白表紙等の教材でした。
そして,その中に,導入修習前に提出する事前課題が入っていました。
しかし,開封した時点では,事前課題うんぬん以前に,中身が全て入っているかをチェックし,乱丁・落丁などの有無を確認する作業,事務連絡を読み提出物などの情報処理作業で手一杯でした。
ようやく,事前課題に着手することができたのは,3月の2週目でした。
提出書類は4科目分
提出が求められたのは,刑事弁護を除く,民事裁判,刑事裁判,民事弁護,検察の4科目でした。内容をよく見ると,冊子で記録を読んだり,白表紙教材の事案を読み込んで解答しなければならないものがあり,見た瞬間は気が遠くなるような感覚でした。
これを2週間程度の期間で終わらせるなど到底無理であると思い,私は,合格した同期の友人5人と協力して取り組みました。
科目ごとで分担し,白表紙の該当箇所を読みながら,設問の検討をして,お互いに発表し合うというものでした。私は,自分の担当科目のほかは,友人の発表内容を踏まえ,参考にしながら課題に取り組みました。
特に,検察は,最も提出期限が早く,司法修習開始の10日ほど前でした。そのため,実質1週間から10日程度で作成して提出する必要がありました。加えて,8000文字程度のレポートで,どの科目よりも文字数が多く,困難なものでした。
最終的には,いずれの科目も,提出期限までに検討をして提出することができました。
まとめ
私は,とにかく限られた時間の中で,物理的に一人で完遂することが困難だと判断して,友人と協力しながら設問を検討しました。図らずも,結果としては一番学習効果の高いやり方だったと思っています。
なぜなら,最も中核的な能力である事実認定能力は,複眼的な観点・思考,事案分析能力が不可欠であるからです。複数人で議論を交わしながら課題を検討することで,自分が気づかなかった視点や分析のポイントを知ることができ,複眼的な思考が養われるのを感じました。
事前課題は,具体的な思考方法も教わらない中で,ロースクールなどでの勉強を手掛かりに手探りで取り組んでいくことになります。
何をどのように書けばよいか,思考方法が分からないということがあれば,ぜひ,友人と一緒に課題検討をすることをおすすめします。