検事(検察官)として懸命に働いてきたものの、潰しが利かなくなる前に転職したいと考えている方は、意外と多いのではないでしょうか。
検事が天職か、または割り切って仕事に取り組める人でないと、定年までやり続けるのが厳しいと感じるのも致し方ないでしょう。
しかし、検事はいわば公務員であること、転職時の年齢が高く、法律事務所への転職を希望しても、弁護士としての経験がないため転職活動がままならないこともあり、不安を抱えている方も多いかと思います。
結論から言うと、これまでの経験を活用すれば、検事から弁護士への転職は十分に可能です。ヤメ検という言葉があるぐらい、検事から弁護士への転職はよくある選択肢のひとつになっています。
この記事の前半では、検事から弁護士への転職事情や転職理由などについて解説します。
後半では転職を成功させるうえで大事なポイントや注意点、おすすめ転職サービスについて解説するので参考にしてみてください。
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目次
検事から弁護士への転職は難しい?
弁護士業界では近年、求職者有利の売り手市場が続いており、転職先を選ばないのであれば転職は比較的に容易でしょう。
実際に検事から弁護士になった人数は、2019年~2022年の間で175人となっています。
年度 | 検察官から弁護士に登録した人数 |
---|---|
2019年 | 37人 |
2020年 | 49人 |
2021年 | 49人 |
2022年 | 40人 |
弁護士会に入会すれば、弁護士資格を取得することができるので、手続きは難しくはありません。
検事から弁護士への転職活動がスムーズな方の特徴
検事から弁護士への転職活動がスムーズにいく方の共通する特徴は以下の通り。
- 高い専門性を有する
- 明確なキャリアプランがある
- 転職のタイミングが良い
近年の弁護士業界では、営業的な側面から専門性の高さを前面に押し出す傾向が強く、それに合わせて所属弁護士も分野ごとに特化するケースが多いといえます。
なので、特捜部での勤務経験や検事長就任歴など優れた経歴の持ち主であったり、これなら誰にも負けないという強みを持っていたりする方のほうが、転職活動がスムーズに進みやすいです。
明確なキャリアプランを持っている方も、目的がはっきりしている分、転職活動がテンポよく進む傾向にあるといえます。
スムーズな転職活動には実力や計画性が大事な一方で、タイミングという運の要素も大きく絡みます。求人は水物なので、いつでも動ける準備をしておくことが重要であるいえるでしょう。
法律事務所への転職をする場合
検事を辞めて弁護士になり、法律事務所へ転職する場合、もっとも求められる分野はやはり刑事弁護です。
裁く側の立場から擁護する立場になりますが、裁判官や検事がどのような攻め方をしてくるのかを熟知している弁護士は、市場価値の高い人材と言えます。
他方、基本的に一般民事事務所への検事の転職は難易度が高めです。
弁護士経験がない方をあえて採用する意味を求職者自身も考えておかなければ、書類選考も通らない事態はザラにおきます。
企業内弁護士として転職する場合
弁護士の転職を検討している方のかには、インハウスロイヤーへの転職を考えている人もいるかもしれません。
法律事務所への転職と同様に楽ではありませんが、近年の企業の法務部門強化の流れを見ると、法律知識が豊富な検事を採用したい企業もゼロではないでしょう。
ただし、40代・50代でも年収は大幅に下がる可能性は高く、年収500〜600万円台になってしまってでも、その企業で成し遂げたいことがあるか、熟考する必要があります。
検事の主な転職理由
現在、検事を辞めたいと考えているものの、なかにはこんな理由で辞めてもよいものかと不安を感じている方もいるかもしれません。
この項目では、検事がどのような理由で転職を決断したのか確認していきましょう。
転勤が多いことへの不満
転勤の多さは検事の転職理由で良く挙げられます。
そもそも、検事に転勤が多いことは任官した時点でわかっていたことであり、それを後から理由にするなんてと考えてしまうかもしれません。
ですが、任官時と現時点では、自身の置かれているライフスタイルにも変化があるはず。
仮に7年間検事をしている場合、2,3回の転勤があることになります。
その間に結婚し、家庭を築いているなら、転勤は家族に大きな負担を強いることになります。
なので、転勤を理由に転職をしてもおかしくはないでしょう。
出世競争に疲れた
検察官として採用されただけでも、すでにエリートであるといっても過言ではありませんが、そこからさらに出世して検事総長や検事正などのポストに就けるのは一握りのみ。
公務員でありながら完全な年功序列ではなく、能力主義が取り入れられている検察組織で出世していくのは並大抵の努力では足りません。
仕事に打ち込み続けるなかで、いまの状況が本当に正しいのか疑問に思うことがあっても不思議ではないでしょう。
組織体制の古さに嫌気がさした
組織体制の古さも転職の要因として挙げられやすいです。
体育会系の気質が強く、上下関係がはっきりしているため、良く悪くも公務員らしい職場といえます。
IT技術の導入に対しても腰が重く、非効率なやり方に嫌気がさしてしまう人も少なくないでしょう。
ワークライフバランスが取れない
世の治安情勢に直結する仕事である以上は、やはり業務でかかる負担は楽ではありません。
仕事のためにワークライフバランスを犠牲にしている人は少なくないでしょう。
検事の仕事と比較しての弁護士業務の魅力
検事の仕事と比較した際の弁護士業務の魅力はいくつかあります。
一つは仕事が選べるという点でしょう。
検事の場合は仕事を選り好みして引き受けないことはできませんが、弁護士は自分で引き受ける仕事を決めることができます。
二つ目の魅力は、業務時間にある程度の融通が利くことです。
三つ目は働き方次第で稼ぎを増やしやすいこと。
検事は公務員である以上、頑張りが給与に反映されるのにも限界があります。
ですが、弁護士は自分で仕事を取ってくることができるので、自分次第でいくらでも稼ぎようがあるといえます。
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検事が弁護士に転職する強みとメリット
弁護士へのキャリアチェンジを考えているものの、検事で培った経験が活かせるか、不安に思う方も少なくないでしょう。
この項目では、検事が弁護士に転職する強みとメリットを解説します。
信用が得やすい
近年では、公的機関で働いていた経歴は世間一般からの印象が一見良くなさそうに思えますが、依頼する立場となると話は別です。
社会的信用の高さならではの安心感がありますし、裁判所や警察、検察の考え方に詳しいはずとの想定が働くため、信用が得やすいといえます
検察や裁判所の考え方がわかる
検察や裁判所の考え方を熟知しているのは、弁護士一筋の人材にはない強みです。
もちろん、弁護士も経験則から対応を予想できますが、実体験に基づく想定とでは精度が異なります。
事前の準備がものをいう弁護士業務において、相手の動きを想定して対応できるのは、依頼者は当然のこと、事務所の職員からみても心強いでしょう。
ストレス耐性が高い
激務である検事の仕事を何年にもわたってこなせたことは、ストレス耐性の高さを証明しているといえます。
どのような仕事であれ、大なり小なり苦労はあり、いざそうした場面に直面した際、ストレス耐性の低い人は辞めてしまうかもしれません。
採用側からすると、せっかく雇った人に短期間で辞められるのは、費用的にも時間的にも大きな痛手です。
なので、ストレス耐性の高さだけでも、十分な評価ポイントとなるといえます。
検事から弁護士への転職を成功させる5つのポイント
検事を辞めるからといって、法律の仕事から離れて職を探そうと考えている方はあまりいないでしょう。
多くの方は、弁護士へのキャリアチェンジを考えているはずです。
この項目では、検事の主な転職先である弁護士への転職を成功させるためのポイントを紹介します。
退職理由をはっきりさせる
転職活動を始めるにあたって、まずはっきりさせるべきは、自身が検事を辞めたいと考えている理由です。
退職理由は見方を変えると、次の職場に求めるものでもあります。もし次の職場でも同様の問題に悩まされるとわかっていれば転職しませんよね。
なので、同じ過ちを犯さないためにも、自身の退職理由をはっきりさせることが大切です。
経歴の棚卸しをする
自身の持つスキルや経験を棚卸しして把握することも、転職を成功させるためには重要です。
中途採用の場合、若手でもない限りはポテンシャルを理由とした採用は行われないですし、若い人でも何ができるかは見られます。
要は事務所や企業に貢献できる何かを持っていることを転職活動では証明しなくてはなりません。
そのため、検事の仕事を通じて得たスキルや経験の棚卸しを行い、言語化しておきましょう。
転職先の情報収集を行う
転職を成功させるためには情報収集も大事です。
事務所や企業が中途採用を行っているのは、必要あってのこと。決して誰でも良いから採用しているわけではありません。
なので、狙っている応募先があるのであれば、そこが求めている人材像を知ることが大切です。
そして、求める人材像と合致していることを自身のスキルや経歴をもとに証明していきましょう。
年収維持にこだわりすぎない
弁護士は中途採用が法律事務所の主流ですので、弁護士経験がない(即戦力になれない)方を中途採用で行うことは稀です。
そのため、入所時点では高い報酬が出せないものの、「人柄重視」「事務所の将来性(支店展開や案件領域の拡大)」を目指している小規模から中規模法律事務所への転職が、最も可能性としては高くなります。
キャリアチェンジになる以上、ある程度の年収減は致し方ないため、現年収にこだわりすぎないことも、転職成功のポイントになります。
検事に特化した転職エージェントを利用する
前述した3つの転職成功のポイントは、自分一人だけだとうまくやり切れないことも少なくありません。
そうした場合には転職エージェントの利用がおすすめです。
転職エージェントを利用すれば、転職のプロに経歴の棚卸しを手伝ってもらえますし、保有する求人先の内部事情も教えてもらえます。
さらに履歴書や職務経歴書の添削、面接対策、スケジュール調整など、さまざまな転職サポートを無料で受けられるため、転職活動中の人は利用して損はないでしょう。
ただしなかにはサポートの質が良くない転職エージェントもいるので注意が必要です。
検事が弁護士に転職する際の注意点
検事が弁護士の転職する際に気をつけて欲しいことが2点あります。
一つは弁護士業務もまた激務である場合が多いことです。
弁護士業務は労働集約型のビジネスであるため、売上を上げようとすると、案件を多くこなす必要があり、必然的に業務量が増えます。
検事とは激務の方向性が違うかもしれませんが、弁護士のほうが楽だろうと考えて転職すると痛い目をみるでしょう。
もう一つは、生活が不安定になる可能性があることです。
公務員として雇用されていた検事とは異なり、法律事務所に勤務するたいていの弁護士は個人事業主。
収入は一定ではないですし、厚生年金も退職金もなく、福利厚生も公務員ほどは充実していないので注意しましょう。
検事の転職におすすめの転職エージェント3選
もし法律事務所への転職を考えているのであれば、リクナビエージェントやdodaなどの一般向けサービスではなく、弁護士向け転職エージェントを使うのがおすすめです。
さまざまある弁護士向け転職エージェントのなかでも。おすすめの3社を紹介します。
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士業の方が転職活動を行う際には登録しておいて損はないサービスといえるでしょう。
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弁護士の独立・集客支援等で構築した広大な情報網は、大手ですら真似できない弁護士ドットコムならではの強みといえます。
ただ知名度の割にはサービスに関する評判・口コミが少ない点が、多少不安な要素かもしれません。
まとめ
検事からの転職は、公務員からのキャリアチェンジとなるため、決して楽ではありませんが、弁護士業界の採用難や法務人材強化の流れをみると、成功の可能性は十分にあります。
ただし法律事務所や企業に転職をすれば、これまでの検事の職場とは、良い意味でも悪い意味でも大きく異なります。
なので、転職後に後悔することがないよう、経歴の棚卸しや情報収集を行うなど、準備をしっかりとしておきましょう。