転職活動をしている弁護士にとって、一番避けたいのがブラック法律事務所への入所です。
一般企業であれば過重労働、残業代の未払い、パワハラ、セクハラなどに加え、ひどい場合は雇用保険未加入、過労死、脱税などでニュースになったりもします。
法律事務所の場合、弁護士が業務委託契約になるため労働時間の縛りといったものはなくなりますが、それでも本来『法を守り、活用する』はずの法律事務所においてもブラック環境なケースがあります。
ではどうすればブラック事務所を回避できるのか。
採用に関する情報を発信している法律事務所は思いのほか少なく、事前にブラックかどうかを見抜くのは簡単ではありません。
顔が広い人だと人づてにブラック法律事務所の情報を仕入れられますが、そうしたツテがない場合はなかなかに大変です。
本記事では、転職活動中のあなたが、ブラック法律事務所に入所する可能性を少しでも抑えられるよう、ブラック法律事務所の特徴や見極めるポイントを解説します。
目次
転職先に選ぶべきではないブラック法律事務所の特徴6つ
一般的にみると弁護士の仕事は過酷な部類に入ります。
ビラブル300時間〜400時間などは大手事務所では比較的多く、労働時間だけで見ればブラック法律事務所に入所しても、これくらい当たり前なのかなと誤解してしまいがちです。
そのまま無理に適応しようとすれば、カラダを壊すことになりかねないので、しっかりとブラック法律事務所の特徴を確認しておきましょう。
ハラスメントが横行している
法律を専門に扱う弁護士業界だからといって、セクハラやパワハラとは無縁ではありません。むしろ、小規模の事務所が多く、上の立場の者に権力が集中しやすいという構造上、セクハラやパワハラが起きやすい環境にあるといえるでしょう。
法律事務所は基本的はトップダウン(ボス弁の発言力が強い環境)ですので、ワンマン経営を利用して、所員に対して日常的にセクハラ、パワハラ的発言・行為を行っていれば、確実に「ブラック」といえます。
また、ケースとして意外と多いのがパラリーガルや事務員の方が発言権を持っていることも。弁護士のサポートをするはずの職員が、弁護士をおざなりにして横柄な振る舞いをしている逆ハラスメントが常態化してる事務所も健全な状態とは言い難いかもしれません。
面接時に聞いた業務内容が入所後と違う
法律事務所選びをする際、扱う業務の分野・範囲を重要視する方は多いかと思います。
弁護士が扱う取扱分野は多岐に渡るため、悪意ある依頼人の代理となり、消費者からの訴えを取り下げようとするケースや、弱い立場の依頼人から多額の報酬を巻き上げるといった事務所もあります。※そもそも反社会的な組織が母体の事務所もあります。
また、面接時には『今後は債務整理だけではなく離婚問題や企業法務の分野への広がりを見据えている』といったことを話し、実際には全くその動きをしない場合もあります。業務分野の拡大に関しては経営判断もセットになりますので、一概に『話しと違う』とはなりえませんが、面接の場でそういった言動を繰り返している方も少なからずいます。
面接などで、あたかも入所後は希望の業務ができると説明しておいて、実際はまったく関わる機会がないというケースも少なくありません。
それならば、個人事件で経験を積もうと思っても、受任が禁じられていたり、激務のために余裕がなかったりと八方塞がりの状況になってしまいます。
給与が極端に低い
従業員の給与が極端に低いのも、ブラック法律事務所の特徴の一つといえます。いくら近年は人手不足の影響で売り手市場とはいえ、全員が好待遇の法律事務所に勤務できるわけではありません。
人によっては、就職・転職活動に苦戦する場合もあるでしょう。そうした人はなりふり構っていられない状況であるため、買い叩きがしやすくブラック法律事務所にとっては好都合。足元を見られたような給料で契約を結ばされてしまいます。
弁護士の修習期に極端な偏りがある
弁護士経験10年以上と1~2年の新人弁護士がいるが5年〜6年程度の「中間層」がいない法律事務所にも注意が必要です。中間層がいないからといって必ずしも「ブラック」であるとは言い切れませんが、中間層がいないということは、『成長の余地』『年収と業務とのギャップ』を抱えている可能性があります。
法律事務所には一般企業ほどの教育体制や評価制度の確立はされていませんので、マネジメントという観点から見れば未熟な組織体であることは前提ですが、一定基準に満たない教育体制だと、ベテランから新人職員に対して過剰な業務量を任せ、知識が追いつかないまま依頼者の対応をすることになるケースも起こりえます。
弁護士としてキャリアアップを目指そうとするミドル層にとっては、転職を避けるべき、もしくは早々に転職するべき法律事務所だといえるでしょう。
非弁のうわさがある
ブラック法律事務所の中には、非弁提携や反社の依頼を受任など、弁護士法に違反する業務を行っているケースもあるので気をつける必要があります。
「火のない所に煙は立たぬ」ではありませんが、非弁のうわさがある時点で関わりを持つのは危険です。もし、うわさが本当だった場合、自身も非弁提携の片棒を担ぐことになり、そのことが発覚すれば懲戒処分は免れません。
案件を過剰に受任している
多数の案件を同時進行で扱うのは、弁護士にとっては当たり前のことです。しかし、ブラック法律事務所の場合は、弁護士一人当たりが受け持つ案件数がけた違いで、結果として過重労働を強いられやすいです。
少し古いデータですが日弁連が行ったアンケートでは、7割近くの弁護士が現在扱う案件数について40件未満と答えています。
事務所の規模や扱う分野、所属地域などによっても変わりますが、常時案件を100件抱えているような事務所は、労働環境がブラックかもと疑ってかかったほうがよいでしょう。
ブラック法律事務所を見極める為の4つのポイント
入所前にブラック法律事務所かどうかを判断するのは難しいですが、見極めることが不可能というわけではありません。
応募した事務所がブラック法律事務所かどうかを見極めるためのポイントを紹介します。
短離職した人がいないか・中間層の有無を確認する
ブラック法律事務所かどうかを簡単に調べる方法の一つは、短期間での退職者がいないか確認することです。
短期間での離職は転職活動で悪い印象を与えてしまうため、普通は行いません。にもかかわらず、短期で離職しているということは、耐えられないほどブラックな労働環境であった可能性が高いといえます。
日弁連の「ひまわりサーチ」を活用し、修習期の中間層がどの程度いるのか、逆に全くいないのかを確認してみるので良いでしょう。
その事務所に所属だったことを公表している弁護士はいないか調べる
それなりに弁護士を採用している事務所であるにもかかわらず、OBやOGが少ないようなら警戒したほうがよいかもしれません。
ブラック法律事務所の場合、円満退職というのは稀で、大体は強い不満を持って辞めています。
退職後には一切の関わり・つながりを絶つために、勤務していたことを隠すケースが多いといえます。面接時に以前はどんな人が働いていたのか確認してみるとよいでしょう。
可能であれば口コミ・評判を調べる
労働環境が劣悪な事務所の場合、業務のパフォーマンスも低下しやすいので、何かしらの悪い評判や口コミがあるものです。
利用者の評判・口コミの確認はもちろんのこと、同業者や連携のある士業、裁判所などに事務所の仕事ぶりを確認してみるとよいでしょう。
法律事務所口コミを掲載している情報サイトは限られていますし、中〜小規模事務所の口コミは集まりづらいため、実態を正確に把握するには業界特化型のエージェントに相談されるのがおすすめです。
雇用条件を確認する
面接・契約締結時に雇用条件をはっきりと明示しない場合は、ブラック法律事務所の可能性はかなり高めといえます。
詳しく説明してしまっては、ブラックな働かせ方をしていることがバレてしまうため、あやふやな回答でごまかすのです。
また、面接の際は良い条件を伝えといて、契約時に劣悪な条件を一方的に押しつけてくる場合もあります。
そのため、雇用条件の説明以外にも怪しい雰囲気を感じたら、内定を断るほうが無難です。
弁護士に聞いた、ブラック法律事務所のイメージ
ブラック法律事務所と聞いて思い浮かべることは主に3つあります。
まず『①職場の雰囲気が悪い』というのが挙げられますね。
特に少人数の事務所の場合は良くも悪くも職場内の人間関係が密になるので、職場の雰囲気が自分に合うか否かは重要だと良いと思います。
次が『②勤務時間の長さ』です。
事務所にもよると思いますが、深夜や土日も業務をしないと仕事が終わらない事務所もあるかと思います。ただし、勤務時間の長さだけでブラックか否かは判断できません。
これも事務所によると思いますが、(文献調査に要する時間等も含め)一般に弁護士業は業務時間が長い印象です。
「多くの事件を扱い、丁寧な事件処理を重ねて実力がつく」というのも事実だと思うので、入所前に自分の理想の働き方をしっかり考え、入所予定の事務所と理想の働き方にミスマッチがないかはよく検討すべきです。
最後に「③イソ弁が短期間に代わる」というものです。
数か月単位でイソ弁が入れ替わってしまう事務所もあると聞いたことがあります。
おそらく①や②のミスマッチが大きかったのだろうと思います。
法律事務所の職場環境等の情報は多くはないかもしれませんが、なるべく情報収集してから入所を検討すべきでしょう。
働きやすいホワイトな法律事務所の特徴
転職や就職でブラック法律事務所を避けたいのは当然として、できるだけホワイトな環境で働きたいですよね。
この項目では、ホワイトな法律事務所に典型的な5つの特徴を解説します。
雇用条件を明示している
弁護士業界では、採用時に雇用条件を明示しない法律事務所も少なくありません。
そうした中、きちんと求人票や面接で応募者に条件を提示する法律事務所は、ホワイトである可能性は高いといえます。
情報発信に積極的
情報発信に積極的だというのも、ホワイトな法律事務所に見られる特徴の一つ。
近年、弁護士の採用事情は売り手市場であり、ただ求人をひまわり求人求職ナビなどに掲載して待っているだけでは、なかなか人が集まりません。
そのため、自社HPやSNSを活用して、積極的に事務所の魅力や説明会の情報を発信する法律事務所が増えています。
そのような情報発信は自分たちの事務所の労働環境について、ある程度の自信を持っていないとできないため、ホワイトである可能性は高いといえます。
コンプライアンス意識が高い
ホワイト法律事務所の場合、コンプライアンスに対する意識もしっかりとしています。
コンプライアンスに違反すれば、懲戒請求がなされるリスクがある以上は対策をするのは当然のこと。
入所後に非弁提携を行う事務所だと気づいて、後悔する心配がありません。
以前働いていた人がほめている
以前に働いたことのある従業員がほめているのも、ホワイト法律事務所ならではの特徴です。
前の所属先について、愚痴や不満を言うことはストレスの発散につながりますが、ほめる場合のメリットは本人にはほとんどありません。
にも関わらず、ほめるというのはそれだけ環境に満足していたことの表れといえ、ホワイト法律事務所である可能性は高いでしょう。
転職エージェントを利用している
ブラック法律事務所の場合、採用に対して必要以上にはお金をかけません。
となれば、採用媒体の中では割高である転職エージェントを利用している可能性は低いと言えます。
転職エージェントを活用して採用活動を行う事務所は、比較的に経済状態も良いはずなので、安定した環境で働きたい方におすすめです。
ブラック法律事務所の上手な辞め方
ブラック法律事務所に現在も在籍している方にとって悩ましいのは、どう辞めるかですよね。
できれば円満に辞めたいところですが、強い引き留めにあったり、脅されたりしたらと考えると言い出しにくいのも仕方ありません。
もし穏便に辞めたいのであれば、退職日をある程度長めに設けて、現在抱えている業務を片付けるもしくは引継ぎを完了させておきたいところです。
弁護士の方であれば「6ヶ月~1年程度」、事務職員の方は「3ヶ月~6ヶ月程度」が目安といえるでしょう。
事務職員の方は状況次第では、他の事務所の弁護士に相談してみるとよいかもしれません。
まとめ
ブラック法律事務所への入所を避けたい場合、情報収集を念入りに行うことが大切です。
情報収集で下記のような特徴が事務所にみられた場合には、注意したほうがよいでしょう。
- 業務内容が事前の話と違う
- 給与が極端に低い
- 非弁のうわさがある
- セクハラ・パワハラが横行している
- 案件を過剰に受任している
また情報収集の際には以下のポイントを意識すると、ブラック法律事務所に関する情報が効率よく集められます。
- 短期間で退職した人がいないか確認する
- その事務所に所属だったことを公表している弁護士はいないか調べる
- 口コミ・評判を調べる
- 雇用条件を確認する
ブラック法律事務所の情報を集める一方で、働きやすいホワイトな職場探しも並行して行うことが大切です。
【ホワイト法律事務所の特徴5つ】
- 雇用条件を明示している
- 情報発信に積極的
- コンプライアンス意識が高い
- 以前働いていた人がほめている
- 転職エージェントを利用している
法律事務所に関する情報の集め方がわからないという方は、ぜひ転職エージェントを活用してみてください。
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