「弁護士になりたい理由を教えてください」——ロースクールの入試面接でも、法律事務所の採用面接でも、この質問は必ずといっていいほど登場します。しかし、この問いに正面から向き合い、自分の言葉で答えられる受験生・就活生は、意外なほど少ないのが現実です。
しかし、本来「弁護士になりたい理由」というものは、単なる志望動機の話ではなく、その後のキャリア全体の設計図になりうるということです。
本記事では、弁護士を目指す方に向けて、志望動機の類型から面接・ESでの伝え方、さらには2025年以降のAI時代における弁護士のキャリアの可能性まで、実務家の視点から徹底解説します。
弁護士として4年のキャリアを持ちながら、現在は街弁(法律事務所在籍)と、メインをインハウスロイヤー(企業内弁護士)として、2つの立場を掛け持ちするという異色のキャリアを持つ弁護士へのプチインタビューも交えながらリアルな視点も交えます。
目次
なぜ今「弁護士になりたい理由」が問われるのか
弁護士になりたい理由などは、キャリアの入口に過ぎない問題であって、弁護士を目指す人が司法試験受験前後に就活のために考えるもので、ある種の方便であったりするものと思われがちです。
しかし、これからの時代は、本質的に自分が考える弁護士の資格・仕事の価値をデザインすることが求められています。
弁護士数は増え続けており競争が激しくなっている
かつての弁護士は、合格者数が年間500人程度に絞られた「超希少資格」でした。しかし、2004年の司法制度改革以降、合格者数は段階的に拡大され、現在は年間1,500人前後の水準で推移しています。その結果、2024年時点における全国の弁護士登録者数は約4万7,000人を超え(日本弁護士連合会「弁護士白書2023年版」)、30年前と比較して2倍以上の規模となっています。
この数字が意味するのは、かつての「資格さえ取れば食える」という時代が終わったということです。特に都市部では法律事務所の数が急増し、弁護士同士の競争は熾烈になっています。就職できない「即独」(司法修習後すぐに独立せざるを得ない状況)や、年収が著しく低い弁護士が一定数存在することも、今や周知の事実となっています。
このような社会環境では、様々な職業や働き方がある中で「なぜ弁護士なのか」という問いへの答えが、採用する側にとって重要な選別基準となります。法律事務所や企業の法務部門は、単に法律を知っているだけでなく、確固たる動機と方向性を持った人材を求めているのです。
コモディティ化する中で「選ばれる弁護士」になる必要がある
弁護士が増えたことで、法的サービス自体のコモディティ化(均質化・価格競争化)が進んでいます。定型的な契約書のレビュー、標準的な債務整理、離婚協議書の作成といった業務は、価格競争に巻き込まれやすくなっています。
こうした状況において、「選ばれる弁護士」になるためには、自分が何を強みとし、どのような依頼者・クライアントに対してどのような価値を提供できるのかという、独自のポジショニングが必要です。そのポジショニングの根拠となるのが、他でもなく「弁護士になりたい理由」です。動機が明確であればあるほど、専門分野の選択や依頼者との関係構築が首尾一貫し、長期的なキャリアの軸になります。
テクノロジーによる司法のパラダイムシフトが訪れている
2023年以降、ChatGPTに代表される生成AIの法律実務への応用が急速に進んでいます。契約書のドラフト作成、判例検索、リーガルリサーチ、さらには法的リスクの初期スクリーニングといった業務において、AIは既に実用水準に達しています。
法律事務所やリーガルテック企業では、AI活用を前提とした業務フローの再設計が進んでおり、弁護士に求められるスキルセットそのものが変容しつつあります。
この変化は、弁護士を目指す方にとって脅威である一方、大きなチャンスでもあります。AIを使いこなし、テクノロジーと法的専門性を掛け合わせることで、従来の弁護士像を超えた新たなキャリアを設計できる時代が到来しているからです。
だからこそ、「なぜ弁護士になりたいのか」という問いは、過去の動機を掘り起こすだけでなく、未来のキャリアビジョンと直結する問いとして、より一層重要性を増しています。
弁護士になりたいきっかけや動機のよくあるパターン5選
ここで、弁護士になりたいきっかけや同期について、よくあるパターンをいくつか紹介していきます。漠然としている人も、カテゴリーベースに近いものから考えていくと、思考の起点になるかもしれません。
【原体験型】 自身の法的トラブルを救われた経験がある
家族が突然の交通事故に巻き込まれ、弁護士の介入によって正当な賠償を受けられた。あるいは、親族の相続で揉め事が起き、弁護士の調整で解決に至ったというような「法律の力で困難な状況が動いた」という具体的な体験が、弁護士を目指す原点となるケースは非常に多いです。
この類型の強みは、動機の真実性と具体性にあります。面接で語る際も、体験のディテールが自然と語りに深みを与えます。一方で、体験に依存しすぎると「それ以外の理由がない」と見られるリスクもあります。体験から何を学び、どんな弁護士になりたいのかという「接続」の言語化が不可欠です。
【社会的使命型】 社会正義を実現することを目指している
外国人労働者の権利侵害、DV被害者の支援、ホームレス支援活動など社会的弱者の置かれた現実に触れ、「法律を使って社会を変えたい」という使命感から弁護士を志す方も多くいます。日本弁護士連合会(日弁連)の人権擁護活動や、法テラスを通じた司法アクセスの拡充といった取り組みは、まさにこうした動機を持つ弁護士たちが支えています。
この類型は崇高である反面、面接では「具体性の欠如」として評価を下げることがあります。「社会正義を実現したい」という言葉は美しいですが、採用担当者は「それがなぜ弁護士でなければならないのか」「具体的にどのような案件に取り組みたいのか」を確認しようとします。ボランティア経験や実際に関わった社会課題と結びつけて語ることが重要です。
【知的プロフェッショナル型】 飽くなき知的好奇心を追求し続けたい
法律という体系の論理的な美しさ、複雑な事実関係を法的に整理・分析するプロセス、判例の積み重ねによって生成される法解釈の進化といった知的営みそのものに魅力を感じて弁護士を目指す方がいます。
まさに弁護士の仕事は、知の格闘技であり、知的な戦略の創造とそれを実行してゴールを目指すゲームのような側面もあります。法学部で民法や憲法に触れ、知的興奮を覚えた経験が出発点となることも多いです。
この動機は、学術的・研究的素養と相性がよく、特に渉外系の大手事務所や、専門性の高い特定分野(知的財産、金融規制、国際仲裁など)を志向する場合に強みになります。
一方で、「知的好奇心だけが動機」に見えると、クライアントへの共感力や実務への適性を疑われることがあります。「知的好奇心を、誰のために、どう活かすか」という視点を加えることが大切です。
【自律・キャリア型】 組織に縛られず「個」で生きる強さを手に入れたい
弁護士資格は、言うまでもなく日本最難関水準の国家資格の一つです。この資格を持つことで、組織に依存せず個人として市場価値を持ち続けられるという、強力な「キャリアの独立性」が担保されます。特に昨今、終身雇用の崩壊や企業の不透明な将来が意識される中で、「手に職を付けたい」「どこでも生きていける力が欲しい」という観点から弁護士を目指す方が増えています。
この動機は率直で現実的であり、実は採用側にとっても誠実に映ることがあります。ただし、面接で前面に出すと「うちの事務所に定着する気があるのか」と疑念を持たれることがあります。独立志向・個人ブランド構築という観点は、長期的ビジョンとして語る工夫が必要です。
【ビジネス参謀型】 企業の経営判断を法的リスク管理から支えたい
M&Aのデューデリジェンス、スタートアップの資金調達における法的スキーム設計、海外展開に伴う規制対応など企業が重大な意思決定を行う局面で、法的知見から経営を支える「ビジネスパートナーとしての弁護士」を目指すケースがあります。特に経営学やビジネスに関心を持ちながら法律の専門性を身につけたいという方に多い動機です。
このキャリアは、企業法務系の大手・中堅事務所や、インハウスロイヤーとして企業に直接帰属する形で発揮されます。法律の知識だけでなく、ビジネスの文脈を理解する姿勢が問われるため、前職や学生時代のビジネス経験と結びつけて語ることが説得力を高めます。
弁護士になりたい理由に「深さ」は求められるか?
弁護士として働くための就職活動に際して、自分が弁護士になりたい理由が浅薄に映らないか、不安に思うこともあると思います。高度な専門資格であるからこそ何かの深さが求められることはあるのでしょうか。
厳密には求められない
率直に言えば、弁護士になりたい理由に「崇高な使命」や「唯一無二のストーリー」は必ずしも必要ありません。私自身を振り返っても、当初の動機は「法律が面白かった」「人の問題を解決する仕事がしたかった」という、ごく平凡なものでした。
採用面接において求められるのは、動機の崇高さよりも、動機の一貫性と、その動機がその事務所・企業の仕事内容と論理的に接続しているかどうかです。
また、「深さ」というかは別にして、どれだけ具体的に社会や身の回りで起きている事象に対して自分なりの課題や疑問を持ち、それに対して弁護士資格を活かしてどう解決していくのか、何を実現していくのかを言語化することが根本的に重要です。
事務所にいる「人」との相性やカルチャーフィットが重要
法律事務所や企業法務部門の採用において、最終的に重視されることの一つは「一緒に働ける人かどうか」という人的な相性です。
法律事務所は、一部の大規模法律事務所を除いて、基本的には数人から数十人の中で、スモールビジネスで展開していくのが典型のスタイルであることから、どれだけ立派な志望動機があっても、チームの雰囲気や仕事のスタイルが合わなければ、長期的に活躍することは難しいでしょう。逆に言えば、志望動機が「完璧」でなくても、その事務所や法務部が大切にしている価値観や仕事の進め方への共感を語れると、評価は高まります。
事務所訪問やOB・OG面談を積極的に活用し、「この人たちと一緒に働きたい」と思える事務所を選ぶプロセス自体が、志望動機をリアルなものにしてくれます。
実際に実務を体験して何をしたいのかを見つけ深めることが大事
弁護士志望者が陥りがちな罠の一つは、「弁護士のイメージ」だけを前提に志望動機を組み立ててしまうことです。
法廷弁護、企業法務、刑事弁護、家事事件など、弁護士の業務は多岐にわたり、その実態はドラマや書籍で描かれるものとは異なります。そして、実際に生の事件を扱って案件を進めていくプロセスや事実やその背景を探求していく中でしか得られない視点があります。
そうした体験を通じて得られた学びや疑問から、「弁護士としてこれをやる」という何かを見つけることが重要です。
その際には、法律事務所でのアルバイト(事務員・パラリーガルとして)、法律クリニック・無料相談会へのボランティア参加、インターンシップなどを通じて、実際の業務に触れることが志望動機の深化に直結します。
【働き方別】評価されやすい志望動機とは
ここで、実際に弁護士の働き方や主なカテゴリー別に、評価されやすい志望動機の言語化のポイントについてみていきましょう。
企業法務
企業法務系の事務所では、ビジネスへの理解と法的専門性の掛け合わせが求められます。
「企業が成長する過程で直面する法的リスクを予防的に管理したい」「M&Aや資金調達の現場で経営判断に貢献したい」といった、ビジネスとの接点が明確な志望動機が高く評価されます。また、特定の業界(IT・ヘルスケア・スタートアップなど)への知見や関心を示すことで、差別化につながります。英語力や国際的な視野を訴求することも、渉外案件を扱う事務所では有効です。
一般民事(街弁)
街弁においては、依頼者との人間的なつながりや、多様な法的問題に向き合う姿勢が重視されます。
「地域の人々の生活に密着した問題を解決したい」「離婚・相続・借金問題など、人生に関わる局面で寄り添える弁護士になりたい」という動機は、街弁の採用担当者に響きやすいです。また、地域への貢献意識や、事務所が得意とする分野(交通事故・労働問題・刑事事件など)への関心を具体的に示すことが大切です。
インハウス
企業内弁護士(インハウス)の採用においては、法的知識と同等以上に、ビジネス感覚・コミュニケーション能力・組織への適応力が問われます。「法務部門が経営の意思決定に貢献できる組織を作りたい」「法的リスクをゼロにするのではなく、ビジネスと適切にバランスをとりながら経営を支援したい」という視点は、インハウスの現場に即した志望動機として響きます。
また、その企業のビジネスモデルや業界環境への理解を示すことが、採用担当者に「うちで活躍できる人材だ」と感じさせる鍵になります。
面接・ESで差がつく「志望動機」の伝え方
さらに、書面だけでなく、面接やESなどの口頭コミュニケーションにおいて差がつく「志望動機」の伝え方について、考え方をご紹介していきます。
志望動機の3要素を満たす
面接やESで評価される志望動機には、共通して3つの要素が含まれています。
第一は「原体験・きっかけ」です。なぜ弁護士を目指したのか、その出発点となる具体的な経験や出来事を語ります。
第二は「論理的接続」です。その経験からなぜ弁護士という職業を選んだのか、他の選択肢(司法書士、行政書士、一般企業の法務部員など)ではなくなぜ弁護士でなければならないのかを説明します。
第三は「将来ビジョン」です。弁護士として何を実現したいのか、その事務所・企業でどのように貢献したいのかを語ります。この3要素が揃うことで、「再現性のある動機」として採用担当者に伝わります。
PREP法を徹底する
志望動機を伝える際には、PREP法(Point・Reason・Example・Point)を徹底することが効果的です。
まず結論(Point)として「私が弁護士を志した理由は〇〇です」と明示します。
次に理由(Reason)として「なぜなら〇〇だからです」と論理的な背景を説明します。続いて具体例(Example)として「実際に〇〇という経験を通じて、この思いが確信に変わりました」と体験を交えます。
最後に再度結論(Point)として「だからこそ、御事務所で〇〇に取り組みたいと考えています」と将来ビジョンに結びつけます。この構造を意識するだけで、志望動機の論理的な説得力は大幅に増します。
弁護士の志望動機の例文
実際に、志望動機として考えられるいくつかの実践的なイメージをご紹介していきます。あくまでフレームワークを意識するための参考としてご覧ください。
企業法務系事務所の場合
「私が弁護士を志したのは、大学在学中に参加したスタートアップのビジネスコンテストでの経験がきっかけです。そこで出会った起業家たちが、法的リスクへの無理解から資金調達に失敗したり、契約上のトラブルで事業継続が危うくなる場面を目の当たりにしました。ビジネスの成長を阻む法的リスクを予防的にマネジメントできる弁護士こそが、経営に真の意味で貢献できると確信し、企業法務の道を志しました。御事務所が注力されているスタートアップ支援やベンチャーファイナンスの領域で、ビジネスと法律をつなぐ実務家として成長したいと考えています。」
街弁の場合
「弁護士を目指したきっかけは、学生時代にボランティアとして参加した法律相談会での経験です。多重債務に苦しむ方や、DV被害から逃れようとしている方など、深刻な法的問題を一人で抱えている方々と接する中で、法律知識へのアクセスの格差が人の人生に直結することを痛感しました。法律相談会に来ることすらできない方が多くいる現実に、地域に根ざした弁護士として向き合い続けたいと思い、一般民事を中心に扱う御事務所を志望しました。将来は、地域の身近な法的問題を幅広く扱いながら、法的支援が届きにくい方々への架け橋となる弁護士を目指したいと考えています。」
インハウスの場合
「新卒で入社したIT企業の営業部門で3年間勤務した後、法律事務所で弁護士として2年間の実務経験を積みました。その中で強く感じたのは、企業の現場に埋め込まれたインハウスロイヤーだからこそできる「予防法務」の重要性です。外部の弁護士に依頼できるのはトラブルが顕在化してからのことが多く、事業部門が日常的に法的リスクを意識しながら意思決定できる環境を作ることに、より大きな価値があると考えるようになりました。貴社のビジネスモデルや成長戦略を深く理解した上で、法務部門が経営の意思決定に参画できる体制を作り上げることに貢献したいと考えています。」
【現役弁護士に聞く】経験から紐解く「なりたい理由」との整合性
ここで、現役弁護士へのプチインタビューとして、現在弁護士4年目、もうすぐ5年目を迎える川村将輝弁護士に、就活当時の赤裸々なお話を聞いていきます。
弁護士の主な業務領域は何ですか?
弁護士の業務は、大きく①訴訟・紛争解決業務、②予防法務・契約法務、③法的アドバイザリー業務の3つに分類できます。
訴訟・紛争解決業務は、裁判や交渉を通じてクライアントの権利を守る業務で、一般的に「弁護士らしい仕事」として認識されています。予防法務・契約法務は、問題が起きる前に法的リスクを洗い出し、契約書のドラフトやレビュー、社内規程の整備などを通じてリスクを最小化する業務です。法的アドバイザリー業務は、特定の法的問題について専門的な意見を述べる業務であり、企業法務やコンプライアンス対応においては特に重要な役割を担います。
私自身は、法律事務所に在籍しながら、保育×IT企業のベンチャー企業の法務責任者も務めています。その経験から派生して、AI、IT、情報セキュリティ、航空宇宙、エンタメ、広告、人材開発、ヘルステック、EdTechなど多種多様な両機の法人クライアントのLPO・法務顧問、法務オペレーションの仕組み化支援などをしております。さらには、友人・知人の紹介ベースで個人破産、不貞慰謝料請求、交通事故、不動産関連紛争など一般民事の案件も一部取り扱っています。
この二足の草鞋は、それぞれの現場で得た知見が相互に活きる点で非常に刺激的であり、多様なキャリアの可能性を実感させてくれます。
弁護士になりたい理由は達成できましたか?
私が弁護士になりたい理由は、「法律を使って人や社会の様々な課題を解決したい」「法律の知識や思考をもっと民主化したい」「もっとクリエイティブに法律を使えるリーガルサービスの新しいUIを作りたい」という3点がありました。
正直に言えば、「達成できた部分」と「まだ道半ばの部分」の両方があります。数値的には、達成が2~3%くらいかもしれません。
「人や社会の問題を法律を使って解決する仕事がしたい」という当初の動機については、日々の業務を通じて手応えを感じています。ある意味弁護士だから当然ですよね(笑)
より本質的な2つの目的として、「法律の知識や思考をもっと民主化したい」「もっとクリエイティブに法律を使えるリーガルサービスの新しいUIを作りたい」点は、まさに今その具体的なイシューの所在について解像度が高まってきていると思っていて、今までのキャリアの中で具体的に取り組みたいテーマも見定まってきました。
さらに、AI技術の進展により、リーガルサービスが個人の弁護士が職人芸的に一対一で提供する枠組みから、一対多へ、より一定のフォーマットで提供できるSaaSやリーガルアーキテクチャを設計したプロダクトを開発して社会に提供できる土壌が整ってきたと感じています。これから、実際に自身が考えているリーガルサービスの新しい世界観を実装していくフェーズであるというワクワク感があります。
もちろん、一人一人の依頼者が抱える法的問題に向き合い、解決の糸口を一緒に探していくプロセスは、弁護士という職業の核心的なやりがいです。一方で、「組織に縛られず個人として生きたい」「もっと弁護士の仕事を楽に、クリエイティブに、より社会的インパクトがあるものにしたい」というビジョンに向かって、これから一つ一つ達成していきたいと思います。
弁護士になったからといって自動的に実現するものではなく、独自のスキルセットや人脈の構築、そしてAIを活用した業務効率化など、継続的な自己投資が必要だと実感しています。
なりたい理由と実務のギャップを埋めるにはどうすれば良いですか?
最も有効なのは、「視点の転換」だと思います。
弁護士の仕事をしていると、法律の勉強をしている中では「こうなるべき筋書き」みたいなものに当てはまらないケースや、法律という枠組みで明快な解が出る案件はほとんどないのではないかと感じています。
実際の事実や社会は、法律の理想と限界の狭間にある人や社会の苦悩の中にあるのがほとんどで、きれいに割り切れる解決は無いと感じています。それは、弁護士業務の中で企業法務というカテゴリーであれ街弁というカテゴリーであれ、それぞれの中の細かなプラクティスの中であれ共通していると思います。
だからこそ、弁護士になりたい理由として持ち合わせたものと、実務には大きなギャップがあります。しかし、そのギャップの中にある様々な課題にこそ、弁護士として提供するリーガルサービスの価値があると考えています。
もっとこういう仕組みがあったらよいのではないか、こういうアプローチであれば目の前の事象は生じず根本的に解決できるのではないか、そうした視点を得たうえで実際に解決策を実装していくことができるのも弁護士の仕事の魅力であると思います。
そして、弁護士になる前に描いていた「理想の弁護士像」と実務の現実にギャップが生じた場合、それを「裏切られた」と感じるのか、「新たな発見として吸収できる」と感じるのかは、最初の志望動機の柔軟性に大きく依存します。
特定のあるべき姿にこだわりすぎると、現実とのズレに苦しむことになります。逆に、「なぜ弁護士か」という動機の核心(たとえば「人の問題を法律で解決したい」)を大切にしながら、そのアプローチは柔軟に変化させられる人は、環境の変化に強いキャリアを歩めるのではないでしょうか。
弁護士になりたい理由を確固たるものにする方法
最後に、弁護士になりたい理由を、自分にとって確立したものにするためにどのような内省や検討が必要なのかを解説していきます。
あえて他の選択肢も本気で検討する
弁護士を目指す理由を強固にする逆説的な方法として、「他の選択肢を本気で検討すること」をお勧めします。司法書士、行政書士、公認会計士、企業の法務部員、コンプライアンス担当者など弁護士資格でなくても法的知識や正義感を活かせるキャリアパスは多数存在します。
あるいは、法律の勉強をしてその素地があるとしても、それを法律に関わる職域で活かさなければならないわけではありません。営業、マーケティング、エンジニア、経理など様々な領域がありますが、あくまで法律や法的思考のフレームワークはツールにすぎないので、法律以外の分野でも活かすことは十分可能です。
これらの選択肢と弁護士を真剣に比較し、「それでも弁護士でなければならない理由」を言語化したとき、初めて志望動機は本物になります。「消去法ではなく積極的選択として弁護士を選んだ」という姿勢は、面接でも説得力を持ちます。
「Be」ではなく「Do」視点で考える
「弁護士になりたい」というのは「Be(〜でありたい)」の視点です。これは目標として重要ですが、動機として語る際には「Do(〜がしたい)」の視点に転換することが必要です。「弁護士として何をしたいのか」「誰の、どんな問題を解決したいのか」「どのような社会的変化を起こしたいのか」——この問いへの答えが具体化されるほど、志望動機はリアリティを帯びます。
特に現在は、AIの活用によって弁護士の「Do」の可能性が大きく広がっています。たとえば、「リーガルテックを活用して法的サービスの価格を下げ、中小企業が弁護士に相談しやすい環境を作りたい」「AIによるリーガルリサーチを活用して、一人でも多くの依頼者に高品質な法的サービスを届けたい」といったビジョンは、これからの弁護士像として非常に説得力があります。
定期的な自己点検と言語化をする
弁護士を目指す道のりは長く、モチベーションの浮き沈みは避けられません。だからこそ、「なぜ弁護士になりたいのか」という問いを定期的に自問自答し、その答えを言語化し直すことが重要です。半年に一度、あるいはターニングポイント(ロースクール入学、司法試験合格、就職内定など)のタイミングで、自分の動機を書き出す習慣をつけることをお勧めします。
この習慣は、面接対策としての実用的な効果だけでなく、司法試験という過酷な受験プロセスにおけるメンタルマネジメントにも有効です。自分の言葉で「なぜ弁護士か」を語れる状態を常に保つことが、長いキャリアを通じての羅針盤になります。
まとめ
「弁護士になりたい理由」は、単なる面接用の回答ではありません。それは、弁護士としてのキャリア全体を貫く軸であり、困難な受験勉強を乗り越えるエネルギーの源泉であり、実務に入ってからの成長の方向性を示す指針でもあります。
弁護士数の増加・コモディティ化・AIによるパラダイムシフトが進む今、弁護士を目指すことの意味は、かつてよりも深く問われています。しかし同時に、AIを使いこなしながら新たなキャリアを設計できる弁護士にとって、これほど可能性に満ちた時代はないとも言えます。
ぜひ本記事を参考に、自分だけの「なりたい理由」を丁寧に育て、言語化し、確固たるキャリアの礎としてください。
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