尊敬できる先輩のもとで多様な案件に携わり、成長を実感できる環境。しかしその裏側で、深夜や休日も返上して膨大な業務をこなし、報酬は市場の相場を下回る──。
若手弁護士にとって、幅広い経験を積むことはキャリアの礎を築く上で非常に重要ですが、ワークライフバランスや正当な評価との間で葛藤を抱えている方は少なくありません。
「このままでは心身が持たない…でも、弁護士としてのキャリアを捨ててインハウスに進むのは正しい選択なのか?そもそも自分の市場価値は?」
この記事では、そんなジレンマを抱えた3年目の若手弁護士が、初めて法曹専門のエージェントとの面談に臨む様子をリアルにレポートします。多忙な彼が自身のキャリアを客観的に見つめ直し、新たな一歩を踏み出すまでの過程をご覧ください。
目次
「年収500万、有給なし…」激務の3年目弁護士が、”正当な評価”と”理想の働き方”を手に入れるまで
今回キャリア面談を受けるのは、下記の方です。
今回の相談者
項目 | 内容 |
---|---|
名前 | Sさん(仮名) |
経歴 | 弁護士3年目。法律事務所にて、企業法務をメインに民事まで幅広く担当。 |
現職の業務 | ジェネラルコーポレート、広告関連法務、M&AのDD(デューデリジェンス)から交通事故案件まで多岐にわたる。 |
転職理由 | 週に10件以上の新規案件を処理するなど業務が非常に多忙で、ワークライフバランスの改善が急務。また、年収500万円という待遇にも課題を感じている。 |
初めてのキャリア相談 - 「今の働き方は、本当に正しいのだろうか」
Sさん談
「3年間、がむしゃらに働いてきました。尊敬できる先生もいて、成長できた実感はあります。でも、ふと立ち止まった時、このままでいいのかと。報酬や働き方、そして将来のキャリアについて、客観的な意見が聞きたいと思っていました。」
面談は、法曹専門のキャリアアドバイザー・福留さんのヒアリングから始まりました。
【担当キャリアアドバイザー:福留 翔平さん】
![]() 福留 翔平さん |
候補者一人ひとりのキャリアプランと価値観に深く寄り添い、入社後のミスマッチをなくすことを信条とする。 各企業や事務所のカルチャー・事業フェーズを熟知しており、求人票だけでは分からないリアルな情報を提供することが得意。 |
福留さん(CA):「3年間、本当に頑張ってこられたのですね。ちなみに、現在の報酬は年間でどれくらいなのでしょうか?」
Sさん:「年で言うと、500万円くらいです。3年目ですが、ずっと据え置きで…。」
福留さん(CA):「なるほど…。Sさんのご経験を考えると、正直なところ市場の相場観と比較しても低い水準です。企業法務をメインにされている同期の方であれば、年収700万円くらいが相場感になってきますね。」
Sさん:「やはり、そうですよね。だいぶ低いなとは思っていました…。」
Sさんの過酷な労働環境。金曜日の担当日は、前の日の夕方から24時間で10件、多い時で15件もの新規案件が舞い込み、夜間や土日に持ち帰って対応するのが常態化。この3年間で平日に休んだのは、たったの2回だけだと言います。
事務所か、インハウスか。キャリアの岐路と「東京」への想い
Sさん談
「弁護士として何でもできる状態を失うのが怖くて、インハウスへの転職をためらっていました。でも、自分のプライベートや将来を考えた時、働き方を変える必要性を強く感じていました。」
話は、Sさんの今後のキャリアの方向性へ。「弁護士として幅広く業務に携わりたい」という想いと、「ワークライフバランスを改善したい」という願いの間で揺れ動きます。
福留さん(CA):「インハウスという選択肢について、良いなと思われるのはどんな点ですか?」
Sさん:「ライフワークバランスには憧れますね。有給があるのが羨ましいです。この3年間、有給がなかったので…。東京に行きたいという個人的な理由もあります。」
福留さん(CA):「とすると、東京にご友人が?」
Sさん:「東京にパートナーがいるんです。今は離れて暮らしているので、一緒に暮らしたいなと。」
キャリアプランだけでなく、プライベートな事情も丁寧にヒアリングする福留さん。「東京勤務」という明確な軸が見えたことで、転職活動の方向性がより具体的になっていきます。
専門家と描く、未来へのロードマップ
Sさん談
「いつ辞めるか、どう活動を始めるか、具体的なスケジュールが見えたことで、漠然とした不安が解消されました。一人で悩まず、もっと早く相談すればよかったです。」
Sさんの希望と市場の状況をすり合わせた上で、福留さんは具体的なアクションプランを提示します。
福留さん(CA):「Sさんの場合、事務所とインハウス、両方の選択肢を並行して受けてみるのが良いでしょう。その上で、ご内定が出た際に改めてどちらの道に進むか考えるのが、最も納得感のある選択につながります。」
Sさん:「なるほど、そういう進め方があるんですね。」
福留さん(CA):「転職のタイミングですが、年明けの1月か2月入社を目指すのが良いでしょう。そのためには、9月から書類作成などの準備を始め、10月末での退職を目標に行動していくのが理想的なスケジュールです。」
Sさん:「分かりました。そのスケジュールで進めていきたいです。」
面談の最後には、具体的な求人紹介のために次回の面談日程をセッティング。Sさんの転職活動は、明確なロードマップと共に、力強く始まりました。
面談を終えて - 頑張っている人ほど、プロの”客観的視点”が必要
今回の面談は、責任感が強く、真面目なプロフェッショナルほど、自身の市場価値や置かれている環境を客観的に判断することが難しいという事実を示唆しています。
多忙な日々の中では、自分の働き方が当たり前だと感じてしまいがちです。しかし、専門のキャリアアドバイザーは、市場全体のデータに基づいた客観的な視点を提供し、「もっと良い環境で、正当な評価を受ける権利がある」と気づかせてくれる存在です。
もしあなたが今の働き方に少しでも疑問を感じているなら、一度立ち止まって、プロに相談する時間を作ってみてはいかがでしょうか。