fbpx

弁護士専門の転職・求人情報サイトならNO-LIMIT

求人を探す 求人紹介はこちら

AIによる弁護士業務の将来性|AIを使いこなせる弁護士になる方法

更新日: 公開日:

近年生成AIが急速に発展し、業界・分野を問わず多方面に浸透しています。

それは弁護士業界においても例外ではなく、リーガルテックの市場が急速に拡大し、AIによる契約書レビューサービスが企業法務の現場や大手の法律事務所を中心に「当たり前に」業務で活用されている状況です。

本記事では、AIを弁護士がどのように活用していくべきか、

  • AIが弁護士業界に与える影響
  • AIが弁護士業務の中で代替していく領域についての分析
  • 弁護士がAIを活用するためのポイントや事例、留意点

などを詳細に解説します。

【2月新着】弁護士の求人なら

logo_minn

NO-LIMIT(ノーリミット)は、弁護士・法務人材に特化した求人紹介・転職支援を行う専門エージェントです。弁護士・法務を積極採用中の事務所・企業求人に加え、ご希望の求人のみをご紹介。

弁護士の求人紹介はこちら

弁護士業界とAI技術の変化による現状とは

弁護士業界は、2000年代後半の司法制度改革から、法曹人口の増加や業務領域の多様化とともに変化しています。

そして2020年代に入り、AIの急速な発展とリーガルテックの急成長によって弁護士がAIとどのように向き合うべきかが問われている状況です。

はじめに、弁護士業界について、AI技術の発展や変化による現状をみていきます。

弁護士業界の現状

今から74年前、1950年の戦後間もない時代、弁護士の人口は全国5,827人でした。

特に、女性はたったの6人だったという時代で、多様性も非常に少なかった時代です。

そこから、25年経った1975年の段階で1万人を突破し、2004年には2万人を超え、20年の間に4万人を超えるにいたりました。2023年時点では、44,916人とされています。

参考:日本弁護士連合会

こうした弁護士人口の増加の中で、弁護士業界におけるWebマーケティングや広告も急拡大し競争が激化しています。

また、弁護士のリーガルサービスも多様化し、インハウスローヤーといった形態の弁護士も台頭しています。

そして近年、弁護士業界では、クライアントが「短期間での成果提供」「コスト削減」「高度な専門知識」を同時に求める傾向が強いです。

その背景には、情報社会の進展によって法律の専門知識へのアクセスも素早く、かつ容易になったことが挙げられます。

こうしたニーズの変化に応えるため、効率化と付加価値の提供が求められており、特に若手弁護士や中堅弁護士が直面するプレッシャーは高まっている状況です。

リーガルテックにおけるAIの現状

リーガルテック分野では、AIがリサーチや契約書レビュー、判例分析などの業務を支援するツールとして普及しています。

例えば、日本国内では「LegalForce」や「AI-CON」といったツールが、契約書のリスク分析やテンプレート作成を自動化し、弁護士の業務負担を軽減しています。

海外でも「ROSS Intelligence」や「Lex Machina」のようなツールが、判例検索や裁判の予測分析に活用されています。
弁護士・法務経験者の採用について相談する

AIが弁護士業務に与える影響

2020年代前後から急速に技術が発展し、1つの社会インフラになるような勢いで拡大しているAIですが、弁護士業界、ひいては弁護士業務の中でどのような影響を与えるのでしょうか。

弁護士業務は、まさに活字・テキストベースの言語の世界であり、テキスト生成AIとの親和性が高く、様々な業務で効率化や生産性向上につながることが期待されます。

テンプレ化されたリーガルドキュメント作成の効率化

AIを活用することで、スタートアップ向けの株主間契約書や秘密保持契約書(NDA)を、簡単に自動生成することが可能です。

たとえば、NDAを作成する際、AIはクライアントの業種や取引の性質に応じて最適な条項を提案し、修正を迅速に行える仕組みを提供します。

これにより、弁護士はルーチン作業に費やす時間を大幅に削減するこに繋がります。

リサーチ業務の効率化

AIリサーチツールは、法令や判例を短時間で検索し、関連性の高い情報を抽出します。

たとえば、M&A関連の法的リサーチでは、AIが過去の類似判例を瞬時に表示し、必要な要素だけを要約してくれるため、クライアントへの報告書作成が効率化が可能です。

また、法改正に関する通知を自動で受け取れる機能もあり、最新の法令情報を常に把握できます。

判例分析や資料分析の省力化

AIは、リサーチにより大量の資料や判例を収集するだけでなく、それらを分析し、関連性のある情報を整理することも得意です。

判例分析では、登場人物、前提となる事実関係の整理、争いのない事実の抽出と当事者の主張の対立点の整理、そして論点ごとの裁判所の判断と理由をいった構造を取ることが主になります。

しかし、判例データベースで情報を集めたとしても、1つ1つの判例の中に含まれる文章量は、読み慣れていてもすべてを数分で処理できるようなものではないでしょう。

また、複数の判例の相互関係や論点の相違点、判断の差異が生じたポイントを分析することが求められますが、非常に労力がかかる作業です。

そこでテキスト生成AIを使用すれば、項目ごとにインプットするなどして要約をすることができます。

資料分析でも、AIの活用による省力化が期待できます。

法律文献は何百ページにもわたるものがあったり、複数の文献で指摘されている共通項や相違点を整理した上で、最終的には取り扱う個々の案件に沿う形で裁判書類や契約書、リーガルオピニオンなどの形式でアウトプットする必要があります。

資料要約をAIでおこなうことによって、論点整理やポイントの集約、相違点の比較などを簡単に行うことが可能です。

また、対立する考え方の違いや論理構造の分析もブレストすることができます。

タイムチャージベースの報酬設計のあり方

弁護士のフィーは、古くからタイムチャージベースで設計されています。

弁護士業務は、法律の専門的な知見をもとに、事案を分析して必要な資料や文献を解析しつつロジックを立て、リーガルドキュメントを作成し、あるいは裁判所での口頭弁論を行います。

こうした弁護士の業務フローは、知的な生産作業でありながらも、非常に労働集約型の側面が否めません。

しかし、今後AIが発展して弁護士業務において普及することで、タイムチャージベースの報酬設計のあり方を問い直す必要が出てくると考えられます。

すでに述べたように、特に文書の体裁の整理や修正チェックなど、形式的な単純作業に関わる部分は、生産性が低いものでありながら弁護士業務の質を支える要素です。

※場合によっては、こうした単純作業を事務員に分担させることもありますが、事務員の人件費にかかるリソースを投下する意味では、非生産的な部分にコストが投下されていることになります。

AIにより、単純作業に割かれる時間をそぎ落として短縮されることで、時間によって算出されている価値がそぎ落とされると考えられます。

また、弁護士にとっても、案件処理のリードタイムが長くなるほど、着手金ベースの工数消化とのアンバランスを避けることができるでしょう。

その代わりに、案件の内容や難易をAIによって処理できる部分と自らの知的生産に割けるリソースの量が増え、リーガルサービスの値付けを行うことができます。

法的な専門知識自体の付加価値は減る

AIに限った話ではありませんが、法律の専門的な知識も、弁護士が広くインターネット上で情報発信をすることが当たり前になった今、一般人の人が何か法的なトラブルに直面していることを認識した際に、自ら基本的なナレッジや情報にアクセスすることができます。

そのため、基本的な法律知識や案件の類型ごとにリーディングケースとなる判例などは、およそ一般に流通してインプットできるようなものとなっています。

さらに、AIによる情報分析や要約が簡単にできることから、一般人でも知識を素早く簡単にインプットすることが可能です。

こうした情報社会の発展とAIの急速な進化も相まって、専門知識それ自体を弁護士が提供するということに関しては、価値として認識されにくくなっていくといえるでしょう。

そこで、今後求められる弁護士の付加価値は「提案力」や「交渉力」といった人間ならではのスキルにシフトしています。

それを支えるのは、法的な知識そのものではなく、それに基づいて人間がどのような行動を取るのかを想像する力や、異なる領域の知識やその中に含まれる考え方を転用してアイデアを捻出する能力、さらには言語に表れない非言語の「意図」の洞察力などです。

こうしたスキルを身に着け、あるいは使っていく作業にいかにリソースを割けるかによって、弁護士の付加価値が決まっていくと考えられます。

AIに代替される可能性がある主な弁護士業務

AIによって弁護士業務が奪われるか」「AIによって弁護士がいなくなる?」といった問題提起や議論がなされることがあります。

結論として、確かに弁護士業務に含まれるものがAIによってリプレイス(代替)されていくことは否めないでしょう。

しかし、人間である弁護士に期待されるリーガルサービスは無くなることはなく、むしろこれまで弁護士がリソースを割くことができなかった領域に弁護士業務の主要な価値が伸長されていくのではないでしょうか。

その意味において、AIが弁護士業務を代替していくことは、ポジティブな意味合いに捉えることができます。

具体的には、次のような弁護士業務は、AIが取って代わっていくと考えられます。

法律相談(議事録作成)

法律相談の際、弁護士は依頼者の話に耳を傾けながら、相談者の悩みどころや弁護士に聞きたい内容、言葉に表れない意図や実現したいことを汲み取るように傾聴しています。

その際に、聞き取った内容をメモして頭の中を整理しながらインプットする作業が必要です。

しかし、聞き逃さないようにメモを取ろうとすると、話の内容が頭に入らず、あるいは後で整理されていなかったり重要な事実を聞き漏らしてしまうこともあります。

そこで、音声録音、音声認識技術とテキスト生成を活用した議事録生成AIを用いて議事録を自動作成することが可能です。

例えば、オンライン相談では、AIがクライアントの質問や弁護士の回答をリアルタイムで記録し、要点を整理した報告書の生成ができます。

契約書レビュー

契約書のレビュー業務で、実は一番神経を使う作業が、契約書としての体裁や誤字脱字、表記ゆれの修正やワーディングの統一など形式面だったりします。

また、条項の見落としがないかどうか、ひな形との比較を文字ベースで比較することも、多くの時間を割く作業です。

こうした契約書レビューの中で、人間の目だけでは抜け漏れがあったり、どうしても正確性が担保しきれない側面があります。

AIによる契約書レビューによって、機械的な正確性と、高速の言語処理によって形式面の修正や抜け漏れを極限まで無くすことができ、人間の手による処理にリプレイスしていくことが見込まれます。

判例の要約や整理

判例のリサーチなどは弁護士の基本的な業務です。

特に新人弁護士にとっては、こうした判例の要約や整理について、量を徹底的にこなしながらリサーチのスピードを上げ、基礎体力を身に着けていくような側面があります。

しかしながら、判例の調査や要約、整理も、膨大な量を処理するにはやはり人の手で行うにも限界があるのが実情です。

また、作業自体が目的化してしまい、調査した判例をもとに当該事案をどのように解決するかの吟味検討にリソースを割くことが難しくなります。

むしろデータ分析や膨大な情報を処理することができるコンピューターやAIの方が、圧倒的に生産性が高いのです。

そのため、判例の要約や整理も、AIが代替していくことが考えられ、弁護士業務の生産性向上のためにむしろ望ましいといえます。

資料作成

弁護士がクライアントに対して、様々な場面で説明をすることが求められます。その際には、必要に応じてビジュアライズされた資料を作成することが効果的です。

一方で、普段テキストベースで様々なやり取りをする弁護士は、図式化やイメージ化、イラスト化するなどビジュアライズに表現することが必ずしも得意ではないという場合もあります。

そうした業務において、AIがサポートすることで効率化されます。

例えば、クライアント向けのリスク報告書や事例分析レポートの基礎部分をAIが作成し、弁護士はその上に専門的な視点を加える流れです。

翻訳

特に国際案件において、日本語以外のテキストで書かれたドキュメントを翻訳する作業があります。

外資系の法律事務所では、特に新人弁護士が海外クライアントとのメールや、ドキュメント、資料をひたすら翻訳するという作業をすることも少なくありません。

こうした翻訳も、実際上は法的な専門知識を活用するというよりは、作業でしかないのが実情です。

むしろAI翻訳ツールにより、高速で正確に翻訳することができれば、中身を検討するリソースを捻出することができます。

そのため、特にクロスボーダーの国際案件を中心に、弁護士業務において翻訳に関することはAIによる代替が進んでいくものと考えられます。

弁護士・法務経験者の採用について相談する

弁護士業務でのAI活用例5選

具体的に、弁護士業務でのAI活用例について、5つ解説していきます。

契約書レビューでの活用例

 

契約書レビューでは、AIが迅速かつ正確にリスク箇所を特定します。

たとえば、不動産契約のレビューでは、貸主・借主間の不均衡を検出し、適切な修正を提案します。また、国際契約においては、現地法に適合しない条項を自動で指摘します。

法律相談での活用例

法律相談の前段階でAIを活用することで、クライアントの基本的な質問に回答し、弁護士の負担を軽減します。

たとえば、クライアントが事前に入力した質問をAIが整理し、弁護士が具体的な提案に集中できる環境を作ることが可能です。

案件管理やナレッジ蓄積と活用

AIを活用した案件管理システムは、クライアントごとの対応履歴や判例を一元管理します。

たとえば、過去の訴訟履歴を分析して類似案件に応用できる提案をAIとの壁打ちをしながらブレインストーミングしていくことが考えられます。

過去の対応案件の活用は、弁護士業務のデータ利活用によって、より精緻なリーガルサービスを提供することに役立つでしょう。いくつか例を挙げてみます。

案件進捗の可視化と効率化

大規模な訴訟案件では、関連する書類やタスクが膨大になりますが、AIがタスクごとの締め切りや優先順位を整理し、チーム全員が一目で確認できるダッシュボードを提供します。

これにより、進捗遅延のリスクを早期に発見し、必要な対策を迅速に講じることが可能です。

ナレッジの蓄積と再利用

AIを利用することで、過去の案件データや判例を一元管理し、新たな案件に再利用できる形で蓄積することが考えられます。

特定の分野(例えば建設法や知的財産)の過去の訴訟履歴や契約書をデータベース化することで、新たな案件が発生した際、類似した事例を瞬時に検索できます。さらに、AIは案件ごとに記録された詳細情報をもとに、「過去のこのようなケースでは、Aというアプローチが成功した」という形で提案を行います。

複雑な案件でのデータ分析

膨大な証拠データや関連資料をAIが整理・分析し、関連性の高い情報を提示します。

たとえば、電子メールやチャットの履歴が数千件に及ぶ場合、AIがキーワードや内容の類似性を分析し、重要な証拠となり得る文書を瞬時に特定することができます。このようなデータ分析によって、膨大な情報の中から効率的に重要な情報を抽出し、訴訟準備が大幅に効率化されます。

判例の要約とマッピング

AIは判例を分析し、関連性の高い情報を視覚化します。例えば、特定の法的テーマに関連する判例をネットワーク図として表示し、個別の案件に応じた判例の活用が可能です。

証拠構造の分析

訴訟において、AIは証拠データを整理し、関連性や矛盾点を特定します。

たとえば、メールやチャットの記録から重要な証拠を抽出し、主張の組み立てに役立てます。画像を認識して事実認識や評価を加えることができるAIの活用も、さらに効果的であるといえるでしょう。

弁護士がAIを活用する際の留意点

弁護士によるAI活用は、弁護士業務の様々なフローの中で非常に効率性や生産性を高めるものであるといえます。

一方で、AIプロダクトに情報をインプットすることは、それがAIプロダクトの学習に利用される可能性があることなどを中心に、リスクを伴うことでもあります。

そこで、弁護士が業務でAIを活用する際の留意点について、3点解説していきます。

AIに入力して問題ない情報の選別をおこなう

AIツールに機密情報を入力する際には、情報漏洩のリスクの考慮が必要です。

例えば、クラウド型AIツールを利用する場合は、クライアント情報を匿名化した上で入力するなどの配慮が求められます。

また、固有名詞や現実に存する名称で特定性が高いものについては、生成AIプロダクトの学習データアセットに組み込まれてしまう可能性を認識して、抽象化したり慎重なインプットをする心構え、視点が必要です。

特に機密性の高い情報については、ローカル環境で動作するオフラインAIツールを使用することで、セキュリティを強化することができます。

AIのアウトプットを常に批判的に検討する

AIが生成したアウトプットは正確性に限界があるため、弁護士自身が必ず精査する必要があります。

特に弁護士が扱うような法律の専門領域では、ChatGPTやGeminiのような汎用型のテキスト生成AIの場合、ハルシネーションが生じることも少なくありません。

Geminiでは、Google条の検索アルゴリズムやデータアセットにより、一般的な検索で出てくるような法律の専門的な情報などは、AIが要約して抽出するようなUIにまで進化しています。

例えば、契約書のレビュー結果をそのままクライアントに提供するのではなく、AIが提案した修正箇所が本当に妥当かどうかを確認することが重要です。

具体的には、クライアントの取引の個別的な背景や交渉のプロセス、契約当事者のパワーバランスなど、言語化されていない背景や、人間の肌感覚で思い描くシナリオをもとに契約書の文言に反映していくことは、AIのアウトプットで実現されるとは限りません。

また、判例分析でも、AIの解析結果が偏ったものでないかを慎重に見極める必要があります。

AI活用のためのルール策定をする

事務所全体でAI利用のガイドラインを整備することで、誤用やトラブルを防ぐことができます。

たとえば、利用可能なAIツールや入力可能な情報の範囲を明確に定めることで、安全かつ効果的な活用が可能になります。

具体的には、次のようなポイントに留意することが考えられます。

守秘義務の観点

①入力情報の匿名化

AIにクライアント情報を入力する際、名前や特定可能な情報を削除または匿名化することをルール化します。例えば、クライアントの会社名を「X社」、担当者名を「Y氏」と置き換えるように徹底します。

②クラウド利用の制限

AIツールがクラウドベースで動作する場合、データが外部サーバーに保存されるリスクがあります。そのため、機密性の高い情報はオフラインAIツール(ローカル環境で動作するもの)を利用することを推奨します。

③NDAの確認

使用するAIツールの提供元との間で、弁護士が負う守秘義務に違反しない契約が締結されているか確認します。具体的には、AIツール提供元がデータを第三者に開示しないことを保証する条項が含まれているかを確認します。

個人情報保護の観点(※)

①データ利用の同意取得

クライアントの個人情報をAIツールに入力する場合、事前にクライアントから明確な同意を取得します。特に、AIが生成したアウトプットがクライアントに直接関係する場合には、同意プロセスを文書化して記録します。

②データの保存期間を限定

AIツールに入力された個人情報がどのように保存されるかを確認し、保存期間を必要最小限に制限します。例えば、特定の案件終了後にはデータを完全に削除することを義務付けます。

③利用するツールのデータ管理ポリシーの確認

使用するAIツールがGDPR(欧州一般データ保護規則)や日本の個人情報保護法に準拠しているかを確認します。特に、データがどの国に保存されるか(データの移転)を事前に把握し、規制に違反しないようにします。

※基本的に、現時点の各種生成AIプロダクトの仕様のもとでは、個人情報の直接的な入力は避けるのがよいと考えられます。特にエンタープライズ向けに実装された機密性の高い仕様で、AIの学習利用が制限されるような形や、AIベンダーによるアクセスが極めて限定された設計のものであれば問題ないと考える余地もありますが、弁護士業務として扱う情報のインプットには細心の注意を払う必要があります。

弁護士・法務経験者の採用について相談する

弁護士業務でAIを効果的に活用するための方法

最後に、本記事のまとめに代えて、弁護士業務の中でAIを効果的に活用し、リーガルサービスを伸長するしていくにあたって実践すべきことをご紹介していきます。

自身で最新のAIの技術レベルをキャッチアップする

弁護士がAIを効果的に活用するためには、基本的なAI技術やリーガルテックツールの操作に関する知識を身につける必要があります。

たとえば、オンライン講座やセミナーを受講してAIツールの基礎を学ぶ方法があります。

近年では、弁護士向けに特化した「AI活用セミナー」が頻繁に開催されており、契約書レビューや判例検索ツールのデモンストレーションを通じて、実践的なスキルを習得することが可能です。

また、弁護士同士の勉強会を開催し、実際の業務でどのようにAIを活用しているのかを共有することで、スキルアップができます。

情報セキュリティについてベースとなる知識を身につける

AIを活用する際には、情報セキュリティの知識が不可欠です。

例えば、クライアントから提供された機密情報をAIツールに入力する場合、その情報がどのように処理され、保存されるのかを正確に理解しておく必要があります。

クラウドベースのAIツールを利用する場合は、情報漏洩のリスクを考慮し、契約書に適切なセキュリティ条項を設けることが求められます。

今年2024年6月1日には、弁護士業務における情報セキュリティの標準仕様として、弁護士情報セキュリティ規程がスタートしました。

参考:日弁連|弁護士情報セキュリティ規程

弁護士業務において、クライアントの情報を保管し、適切に案件管理をする上でクラウドサービスの利用は欠かせません。

一方で、情報セキュリティの知識がなければITのシステム上情報がどのように存在し、情報をどのように利用すべきかの適切な判断は難しいです。

また、弁護士自身が情報セキュリティ管理の資格を取得することで、安心してAIを業務に活用できる体制を整えることが鍵になります。

近時は、日弁連や単位弁護士会ごとでも、情報セキュリティに関する研修コンテンツが増えている状況です。

プロンプトのテンプレを活用する

上記のようなITやAIの基本的な知識を前提として、AIを効果的に活用していくための実践例としては、プロンプトのテンプレを徹底的に活用していくことが考えられます。

たとえば、「この契約書のリスク箇所を5つ挙げてください」といった具体的で明確な指示を与えることで、AIのアウトプットの精度が高まります。

アウトプットの前提となる立場やシチュエーションの設定、目的・意図の言語化、アウトプット要素などを予め与えることにより、最適なアウトプットを引き出すことが可能です。

また、頻繁に利用するプロンプトはテンプレート化しておくと、業務効率がさらに向上します。

弁護士事務所内でプロンプトのベストプラクティスを共有する仕組みを作り、全員が最適な指示を作成できる環境を整えることも効果的です。

AIの法規制やルールを理解する

AIに関連する法規制やルールを理解することも重要です。

たとえば、EUではAI法(Artificial Intelligence Act)がありますが、AIシステムの透明性や説明責任について厳しい規制が設けられています。

このような規制に違反しない形でAIを活用するために、最新の法令やガイドラインの把握が必要です。

日本国内でも、個人情報保護法や労働法に関連するAIの運用ルールが注目されています。

弁護士としてこれらの法規制を熟知し、クライアントに適切なアドバイスを提供することは、今後の競争力につながるでしょう。

まとめ

生成AIを事業やサービスの運営の中でどのように導入していくのかについて、各業界での様々な悩みどころや課題があり、AIの導入に関するコンサルティングやプロンプトエンジニアが表れるなど生成AIの活用には各業界で目玉となっています。

弁護士業界でも同様に、AIを導入する際の課題としては、高度な守秘義務との兼ね合いを中心として、アウトプットされた内容の正確性をどのように担保するのか、情報セキュリティの確保など様々です。

そのため、弁護士業務にAIを上手く活用するために、AIに関する最新情報をキャッチアップすることを心がけましょう。

弁護士・法務経験者の採用について相談する

監修者
川村 将輝

旭合同法律事務所/愛知県弁護士会所属

司法試験受験後、人材系ベンチャー企業でインターンを経験。2020年司法試験合格。現在は、家事・育児代行等のマッチングサービスを手掛ける企業において、規制対応・ルールメイキング、コーポレート、内部統制改善、危機管理対応などの法務に従事。

事務所Webサイト
CONSULTATION WINDOW

転職のお悩み相談窓口

NO-LIMITにLINEで登録