司法試験制度の変更に伴い、77期からは司法試験の実施時期や司法修習の開始時期も変更されました。
司法試験に合格した後は司法修習生として約1年間の修習期間を過ごす必要がありますが、78期司法修習生はどのようなスケジュールで修習を進めていくのでしょうか。
そこで本記事では、78期向けの司法修習スケジュールを紹介します。
司法試験合格後の大まかな流れを確認し、周りの修習生よりも一歩先に進む準備をしておきましょう。
司法修習とは
司法修習とは、司法試験に合格した後に受けなければいけない教育制度です。
修習期間は約1年間あり、司法修習を受けなければ弁護士・検察官・裁判官の法曹三者にはなれません。
司法試験はあくまでも法曹に必要な知識を試されるにとどまりますが、司法修習は法曹の実務に関する技能を習得する場です。
なお、司法修習の締めくくりには二回試験と呼ばれる司法修習生考試が実施され、この卒業試験に合格すれば念願の法曹資格を取得できます。
78期の司法修習スケジュール
ここからは、78期司法修習生の司法修習スケジュールを予想して紹介します。
司法試験の合格発表後からの動きを順番に詳しく解説します。
2024年11月:司法修習申し込み
司法試験の合格発表後、すぐに司法修習の申し込みが開始されます。
例年、申し込み期間は司法試験の合格発表から20日間ほどの限られた日数しかありません。令和6年度の場合は、11月6日(水)〜11月22日(金)が受付期間です。
締め切りに間に合うように、あらかじめ必要書類を揃えておくことをおすすめします。
2025年3月頃まで:事前課題
司法修習の申し込みを完了し、採用された方の元には白表紙と呼ばれる教材と事前課題が届きます。
事前課題は導入修習の予習を目的としており、それぞれ締め切りが設けられているので遅れないように気をつけましょう。
2025年3~4月頃:導入修習
2025年3〜4月に導入修習が行われます。
導入修習は3週間ほど実施され、起案の書き方や実践を学ぶ期間です。場所は埼玉県和光市にある司法研修所で、78期司法修習生全員が集まります。
2025年4~11月頃:分野別実務修習
2025年4〜11月は、約7ヶ月間の分野別実務修習期間です。
分野別実務修習では、民事裁判・刑事裁判・弁護・検察の修習を行います。裁判所や検察庁などの修習地での実務体験が中心となり、裁判に立ち会うことも少なくありません。
2025年11~2026年2月頃:集合修習
2025年11~2026年2月の期間で、1ヶ月間半ほど実施されるのが集合修習です。
集合修習は、以下の実務修習地別にA班とB班に分かれて、民事弁護・刑事弁護・民事裁判・刑事裁判・検察の5科目を学びます。
- A班:東京、立川、横浜、さいたま、千葉、大阪、京都、神戸、奈良、大津、和歌山
- B班:A班以外の実務修習地
片方の班が集合修習期間である場合、もう一方の班は選択型実務修習期間になります。
集合修習期間は、二回試験と呼ばれる司法修習生考試に向けた重要な期間です。
2025年11月~2026年2月:選択型実務修習
2025年11月~2026年2月の期間で、選択型実務修習が行われます。
選択型実務修習は集合修習と同様にA班とB班に分かれて行い、前項でお伝えしたとおりに集合修習と交代でおこなわれます。
プログラムが複数用意されており、「全国プログラム」「個別プログラム」「自己開拓プログラム」「ホームグラウンド修習」の4つのなかから興味のあるプログラムを選択できます。
全国プログラム
全国プログラムとは、全国の司法修習生を対象としたプログラムです。
官公庁や企業、地方の法テラスでの修習など内容はさまざまで、全国各地で開催されます。
全国プログラムの特徴は、募集人数が限られている点です。
基本的にはプログラムごとに1~2名の募集となり、参加者は抽選で決定します。
個別プログラム
個別プログラムとは、裁判所・検察庁・弁護士会が企画したプログラムです。
内容は配属地によって異なりますが、模擬裁判の体験や講評など、分野別実務修習から一歩踏み込んだプログラムとなっています。
自己開拓プログラム
自己開拓プログラムとは、司法修習生が修習先を決定するプログラムです。司法修習生が自ら官公庁や企業に掛け合い、プログラム内容も自分で決められます。
自己開拓プログラム希望者は、事前に計画書を提出して許可を得なければなりません。
ほかのプログラムより手間はかかりますが、今のうちに試しておきたい修習内容がある方は自己開拓プログラムが適しているでしょう。
ホームグラウンド修習
ホームグラウンド修習とは、弁護修習を行う弁護士事務所で実施するプログラムです。
主な内容は弁護修習の続きとなり、司法修習生の多くがこのプログラムを選択します。
2026年2~3月頃:司法修習生考試(二回試験)
2026年2~3月に行われるのが、司法修習の卒業試験である司法修習生考試です。
司法修習生考試は二回試験とも呼ばれており、この試験に合格することで弁護士・検察官・裁判官の法曹三者になる資格を取得できます。
司法修習生考試は、民事弁護・刑事弁護・民事裁判・刑事裁判・検察の5科目で構成されています。
1日1科目受験で試験時間は、休憩時間も含めて7時間30分という長さの試験を合計5日間受け続けるため、体力も必要です。
試験結果は、「優・良・可・不可」で評価されて、1科目でも不可の評価がついてしまうと不合格となってしまいます。
2026年3月頃:司法修習生考試の合格発表
司法修習生考試の合格発表がおこなわれます。
司法修習生考試は難易度の高い試験ではありますが、例年ほとんどの司法修習生が合格しています。
司法修習生考試に合格できるように、司法修習期間を大切に過ごしましょう。
司法修習の申し込み方法
司法修習を受けるには、司法試験の合格発表から20日ほどの限られた期間内に申し込みを済ませる必要があります。
令和6年度の受付期間は、11月6日(水)〜11月22日(金)です。受付期間内に、最高裁判所への書類提出および専用フォームへの基本情報の入力を済ませましょう。
司法修習の申し込みに必要な書類は、以下をご確認ください。
最高裁判所への提出書類
ア 司法試験又は別紙司法修習生採用選考審査基準1(2)から(4)までに規定する試験
等の合格証書のコピー(令和元年度から令和6年度の司法試験合格者を除く。)
イ 戸籍の全部事項証明書(戸籍謄本)、戸籍の個人事項証明書(戸籍抄本)又は本籍
地及び戸籍筆頭者が記載された住民票の写し(日本国籍を有しない者については、
国籍等、外国人住民となった年月日及び在留資格等が記載された住民票の写し)
ウ 以下のうち在籍(退学を含む。)した全ての学校の成績証明書
・ 法科大学院の成績証明書
・ 大学院の成績証明書
・ 大学の成績証明書(教養学部の成績証明書を含む。)
エ 学校の卒業(退学)年月を証する書面(ウに同年月の記載がある場合は不要)
司法修習の就職活動タイミング
ここからは、78期司法修習生の就職活動が始まるタイミングを確認していきましょう。
就職活動が始まるタイミングは、志望する法律事務所の規模やタイプによって異なります。
場合によっては司法試験の1年以上前から就職活動を始めるべきケースもあるので、求人情報を見逃さないよう細心の注意を払わなければいけません。
法律事務所の求人情報を探している方は、法科大学院生・予備試験合格者・修習生向け求人サイト「PROGRESS」をチェックしてみましょう。
PROGRESSは、法曹業界の就職情報の見える化にフォーカスしたプラットフォームで、弁護士の就職活動のファーストステップである法律事務所選びをサポートします。
公式サイト:https://progress.no-limit.careers/
大手法律事務所を志望する場合
五大法律事務所を含む大手法律事務所を志望する場合は、司法試験の1年以上前から就職活動を始めるのがベストです。
大手法律事務所志望者は、法科大学院学生を対象とした夏期インターン制度であるサマークラークへの参加が推奨されています。
サマークラークは8~9月に開催される場合がほとんどなので、エントリーを忘れないよう気をつけましょう。
また、複数の法律事務所のサマークラークに参加する場合は、日程が被らないようにスケジュール管理を徹底してください。
なお、サマークラークに行きそびれてしまった場合は、個別訪問を活用するのも一つの手です。
準大手・中堅法律事務所を志望する場合
50~100名ほどの弁護士が在籍する準大手・中堅法律事務所を志望する場合は、司法試験を終えた後が就職活動を始めるタイミングです。
司法試験後は求人情報が急増するため、スケジュールに余裕のある司法修習前に就職活動を始めましょう。
なお、司法試験後は法律事務所ごとの説明会や合同説明会が活発に行われる時期でもあります。
なかには、オンライン説明会に対応している法律事務所もあるので、こまめに志望する法律事務所の公式サイトをチェックしましょう。
一般・地方法律事務所を志望する場合
一般・地方法律事務所を志望する方は、司法試験後から就職活動を始める場合がほとんどです。
司法修習の合間に説明会に参加したり、選考を受けたりすることになるので、スケジュール管理と体調管理を徹底しましょう。
司法修習を終えるまでに就職先を決めたいところではありますが、司法修習を終えた段階ですべての司法修習生の就職先が決まっているわけではありません。
司法修習に集中して取り組むためにも、できるだけ早い段階で就職活動を始めて、内定を獲得しておくに越したことはないでしょう。
インハウスローヤー(企業内弁護士)を志望する場合
法律事務所に就職するのではなく、インハウスローヤーと呼ばれる企業内で働く弁護士を志望する司法修習生も少なくありません。
インハウスローヤーを志望する場合は、司法試験を終えた後が就職活動を始めるタイミングです。
インハウスローヤーは福利厚生が充実していることや、ワークライフバランスが整っていることがメリットですが、新卒で就職するのは容易ではありません。
ほとんどの企業が経験者を求めているので、限られた求人情報を見逃さないようにしましょう。
よくある司法修習に関するQ&A
最後に、78期司法修習生に関するよくある質問を紹介します。
今さら聞けない司法修習の基本についても回答しているので、司法修習が始まる前に疑問を解消しておきましょう。
司法修習を受けないとどうなる?
司法修習を受けなければ、弁護士・検察官・裁判官の法曹三者になれません。
司法試験はあくまでも知識を試される場であり、実務に関する技能を習得するのは司法修習期間となります。
司法試験に合格し、司法修習を受け、二回試験と呼ばれる司法修習生考試に合格して、初めて法曹資格を取得できるという流れです。
とはいえ、司法試験に合格した後すぐに司法修習を受けなければいけないわけではありません。
一度合格をすれば期限はないので、自身のスケジュールや目指す先を考慮したうえで、司法修習を受けるタイミングを決めることも可能です。
司法修習生の1日の流れは?
司法修習生の修習時間は、平日9:00~17:00が基本です。
修習時間外は自由に過ごすことができるので、修習生同士で集まったり、就職活動を進めたりできます。
司法修習生は自宅から修習先へ通うか、寮に入るかの2択です。
入寮する場合はベッドやユニットバス、勉強机などが備え付けられている個室を割り振られます。なお、入寮に関しては抽選となっており、基本的には首都圏在住の司法修習生は入寮できません。
ちなみに、修習時間外は自由に過ごせると述べましたが、司法修習生は専念義務があるため兼業および副業が禁止されています。
参考:司法修習生に対する修習専念資金の貸与制の概要(第71期以降) | 裁判所
司法修習生考試(二回試験)の合格率は?
二回試験と呼ばれる司法修習生考試の合格率は、98〜99%です。
具体的には「令和4年度の76期司法修習生」と「令和3年度の75期司法修習生」に司法修習生考試不合格者はいませんでした。令和2年度の74期司法修習生の司法修習生考試不合格者は、1,456中5人です。
毎年ほとんどの司法修習生が合格しているので、98期司法修習生も先輩にならって合格を目指しましょう。
参考:司法修習生採用者数・考試(二回試験)不合格者数|法務省
司法修習期間に受け取れる「修習給付金」ってなに?
法曹人材確保の充実・強化の推進等を図ることを目的に、司法修習生に対して修習給付金の給付に関する規則が制定されました。
司法修習生に支給される修習給付金は13万5千円が基本となり、条件に該当すれば住居給付金と移転給付金も受け取ることが可能です。
修習給付金 | |
基本給付金 | 13万5千円 |
住居給付金 | 3万5千円 |
移転給付金 | 最高裁判所の定める路程に応じた定額 |
上記のとおり、基本給付金は司法修習生全員が受け取れます。
住居給付金は自ら居住するために住宅を借り受けて家賃を支払っている場合に支給され、移転給付金は司法修習に伴って住所もしくは居所を移転することが必要と認められる場合に支給される給付金です。
なお、これらの給付金を受け取るには手続きが必要です。具体的な手続については、裁判所の公式サイトの修習給付金案内をご確認ください。
まとめ
78期司法修習スケジュールは、前年と同様の流れで進んでいくと予想されます。
司法修習期間は約1年間あり、基本的には平日9:00~17:00以外の時間は自由時間です。
しかし、司法修習期間には覚えなければいけないことが山のようにあり、さらに司法修習と就職活動を同時進行する場合は多忙を極めるため、それなりの覚悟が必要でしょう。
司法修習は弁護士・検察官・裁判官の法曹三者になるために、必ず通らなければならない道です。必要な知識と技能を身につけ、法曹資格を取得しましょう。
NO-LIMITが運営する司法修習生向け求人サイト「PROGRESS」では、弁護士の就職活動のファーストステップである法律事務所選びをサポートしています。
求人情報の開示はもちろん、法律事務所の個別説明会やサマークラークに関する情報もいち早く入手することが可能です。
また、事前に履歴書を登録しておけば応募フローを効率化できるので、効率的な就職活動を進めたい方はぜひご活用ください。