結論、学歴に自信がなくても弁護士として活躍できます。
というのも、弁護士という職業、高いリーガルサービスを提供できるか否かが重要であり、学歴が高いかどうかはクライアントにとって大切ではないからです。
法律事務所側もその事情が分かっているので、「単純に学歴が高い人物」ではなく、「高度なリーガルサービスを提供できる人材」を採用する傾向にあります。
本記事では、学歴に不安がある人が弁護士としてキャリアアップを目指すためのポイント、法曹界専用の転職エージェントを活用するメリットなどについて分かりやすく解説します。
弁護士に求められる学歴とは?
弁護士として活躍するために求められる学歴について解説します。
弁護士になるために学歴は関係ない
弁護士として活躍するための条件は「司法試験に合格して司法修習を済ませ、弁護士登録をすること」です。弁護士として働くにあたって学歴要件は課されていません。
ただし、司法試験を受験するには、法科大学院を修了するか、司法試験予備試験に合格する必要があります。司法試験予備試験は無条件で誰でも受験できるだめ学歴不問ですが、法科大学院を修了するには大学卒業の学歴が求められます。
ですから、学歴を問われずに弁護士を目指す場合には、「司法試験予備試験に合格をして司法試験の受験資格を獲得し、司法試験に合格する」というルートを選択することになります。
五大法律事務所への入所も学歴が全てではない
弁護士としてのキャリアの最高峰としてよく挙げられるのが、5大法律事務所です。
- 西村あさひ法律事務所
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所
- 長島・大野・常松法律事務所
- 森・濱田松本法律事務所
- TMI総合法律事務所
これらの法律事務所は、国内外問わず大手企業を相手に高度なリーガルサービスを提供しています。そのため、所属する弁護士には高いスキル・ノウハウが求められる一方で、高い年収やステータス、幅広いハイクラス転職の選択肢が与えられるのが実情です。
そのため、法曹業界では、5大法律事務所への入所がハイキャリアへの登竜門と考えられています。
5大法律事務所などのビッグファームに入所する弁護士は、東京大学、京都大学、慶応義塾大学、早稲田大学などの高学歴保有者が多いです。しかし、5大法律事務所の採用ステップでは、学歴だけが重視されるわけではありません。
たとえば、優秀な学歴を有していなかったとしても、司法試験予備試験経由で司法試験で相当優秀な成績を残した人材や、高い語学力や公認会計士資格などの別のスキルをあわせもっている人材については、5大法律事務所に入所することは可能です。
以上を踏まえると、学歴は採用段階における重要な評価項目に位置付けられるのは事実であるものの、学歴以外の武器を活用すれば弁護士業界でキャリアアップを目指すことはできると考えられます。
弁護士の転職で学歴以外に求められる4つの事項
学歴に自信がない人が弁護士としてキャリアアップを目指すには、学歴以外の武器を習得する必要があります。
ここでは、学歴以外で弁護士に求められるポイントを4つ紹介します。
司法試験の順位
司法試験に合格した後は、司法修習の期間中に就職活動をする必要があります。
そして、弁護士の採用過程では、どこのロースクールを卒業したのかという点に加えて、司法試験の順位はどうだったかも重視されるのが一般的です。司法試験の結果で好成績を修めていれば、大手弁護士事務所の採用面接でも高い評価を得られるでしょう。
たとえば、弁護士としてのキャリアを積むなら、刑事系・公法系の成績よりも、民法・会社法・民事訴訟法の成績が特に重視されます。
また、選択科目で経済法・知財法を受験して好成績を得ていると、企業法務に力を入れている弁護士事務所から歓迎される可能性が高まります。労働紛争に力を入れている法律事務所への入所を希望しているなら、労働法の成績がポイントです。
このように、司法試験の順位・成績が良ければ実務への適応力が高いと評価されるので、学歴がなくても弁護士としてのキャリアを積みやすくなるでしょう。
予備試験合格
弁護士になるためには司法試験に合格する必要がありますが、司法試験の受験資格を獲得する手段は以下2つのルートに大別されます。
- 法科大学院(ロースクール)を修了する
- 司法試験予備試験に合格する
もちろん、法科大学院を修了することも簡単なことではありません。未修者コース・既修者コース問わず、法科大学院に入学するには厳しい入学試験をパスしなければいけませんし、入学後も単位取得のために相当ハードな勉強を要求されるからです。
ただし、司法試験に合格した後の弁護士としてのキャリアの確実性を高めるには、「ロースクール出身」よりも、「司法試験予備試験合格組」という経歴の方が強みになります。なぜなら、司法試験予備試験は、その後の本番である司法試験よりも合格するのが難しいからです。
実際、令和5年度の司法試験では、司法試験予備試験組の司法試験合格率は92.63%であるのに対して、ロースクール組の司法試験合格率は40.67%となっています。
つまり、法曹界における優秀さをアピールするには、司法試験予備試験合格というキャリアは学歴よりも武器になるということです。採用段階でアピールできる学歴がない場合には、司法試験予備試験にチャレンジして弁護士を目指すのも選択肢のひとつでしょう。
面接での印象の良さ
企業法務であれ一般民事事件であれ、弁護士の仕事は常にクライアントとのコミュニケーションを欠かすことができません。また、規模が大きな法律事務所で働く時にはチーム制が基本になるので、同僚などとの関係性も丁寧に構築するスキルが必要です。
そのため、弁護士としてのキャリアを築くには、法律家としての能力だけではなく、人間性や熱意なども重視されると考えられます。採用面接での印象が悪いと、どれだけ高学歴でも採用には至りません。逆に、学歴面でアピールできなくても、採用面接での印象が良く、入所後の成長可能性を感じさせることができれば、弁護士としてのキャリアアップを目指せるでしょう。
転職の場合は経験業務
司法試験に合格した直後ではなく、一定のキャリアを積んだ後に転職を目指す場合には、学歴よりも弁護士としてどのような経験を積んだかが重視されます。
司法試験合格後の新人弁護士の採用段階で学歴が重視されるのは、学歴しか求職者のポテンシャルを図る要素がないからです。これに対して、一定の弁護士歴がある人材については、「弁護士になってどのような業務を経験したのか、どのような実務能力を習得したのか」を図ることができます。
たとえば、弁護士になってから知的財産関係の業務に従事していた場合、そこで培ったスキルをアピールできれば、大手メーカーなどをクライアントにする法律事務所へのキャリアチェンジが視野に入ってくるでしょう。また、弁護士資格取得後に英語力を活かして海外クライアントの法律問題に対応した経験があれば、大手法律事務所の海外拠点への赴任も可能です。
弁護士として成功するには、司法試験に合格すること以上に、「弁護士として日々どのような業務経験を積んでいるか」が重要になります。難易度の高い案件に触れる機会があるほどキャリアアップの可能性が高まるので、常に熱意をもって研鑽を積んでください。
学歴をカバーする弁護士の転職対策
学歴に自信のない人が弁護士として好条件の求人案件で採用されるためには、学歴以外の面で武器を作る必要があります。
ここでは、就職対策・転職対策に役立つ学歴以外のポイントについて解説します。
司法試験は合格ではなく上位を目指す
弁護士の就職・転職市場におけるライバルは、全員が司法試験合格者です。つまり、一般の就職・転職市場では武器になる「司法試験合格」という肩書が、弁護士の就職・転職市場では一切武器にならないということを意味します。
司法試験を受験すると、全科目の点数・順位、各科目の点数・順位の結果が送付されます。また、司法試験合格者を対象とする採用段階では、司法試験結果の提出が求められるのが一般的です。
そのため、学歴に自信のない人が弁護士業界の好条件案件に採用されるには、「司法試験に上位で合格すること」が重要だと考えられます。
司法試験に上位で合格するには、膨大な試験範囲全体をカバーするために丁寧なカリキュラムに沿った勉強が必要ですし、短答試験・論述試験に向けたテクニックも習得しなければいけません。勉強の進捗状況に応じて適宜予備校などを利用することも検討するべきでしょう。
履歴書には学んだことを詳細に記載する
法律事務所への就職活動では、普通の一般的な就職活動と同じように、履歴書の提出が求められます。
そのため、学歴に自信のない人は、ロースクール時代や独学をしていた時期に、どのようなことを学んだのかをできるだけ具体的に記載しましょう。
たとえば、法学部や法科大学院で受講していたゼミの内容、法律事務所でのアルバイト経験、法律関係以外のインターンシップ経験や社会人経験など、法律事務所での勤務に役立つと考えられるものは詳細に記入してください。
職務経歴書には経験業務を詳細に記載する
一定の弁護士経験を積んだ人材がキャリアチェンジを希望する場合には、即戦力をアピールできる職務経歴書を作成できるかが転職活動が成功するか否かを左右するポイントになります。
過去に所属していた法律事務所ではどのような案件を中心に業務にあたっていたのか、裁判・調停・示談交渉などの経験はどれだけあるのか、法律事務所内ではどのようなポジションに就いていたのかなど、弁護士としての即戦力性をできるだけ具体的にアピールしましょう。
ポイントを押さえて面接対策をおこなう
学歴に自信がない人物が弁護士事務所の採用ステップをクリアするには、面接対策も不可欠です。
一般事業会社の採用面接対策と同じように、弁護士事務所の採用面接でも、いわゆる「企業分析」は欠かせません。弁護士事務所がどのような案件に力を入れているのか、どのような理念でクライアントに向き合っているのかを把握したうえで、自分がどのような形で貢献できるのかをアピールしてください。
また、弁護士はクライアントのために専門家としてさまざまな責任を果たすことが求められる職業である以上、いつまでも上司や先輩の指示に従うだけではいけません。ですから、弁護士事務所に入所した後、案件処理を通じてどのようなキャリアを積み、どのジャンルの専門性を高めていきたいのかについても説得的であることが望ましいでしょう。
弁護士向け転職エージェントを利用する
学歴に自信がなく、法律事務所への就職活動・転職活動を自分だけで進めるのが不安な時には、弁護士業界に強い転職エージェントを利用するのがおすすめです。
転職エージェントとは、自社が取り扱う求人案件を求職者に紹介をして、採用ミスマッチのない就職・転職の実現を目指す人材紹介会社のことです。エージェントによってサービス内容は異なりますが、求職者それぞれに専任アドバイザーが就いて、就職活動・転職活動の各ステージのサポートをしてくれます。
弁護士向け転職エージェントを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 求職者と丁寧にコミュニケーションを図って、希望条件や希望キャリアを整理してくれる
- 学歴以外のアピールポイントをピックアップしてくれる
- 求職者が希望キャリアを歩めるような法律事務所などの求人案件を紹介してくれる
- 各転職エージェントが抱えている非公開案件にアクセスできる
- 職務経歴書の添削をしてくれる
- 模擬面接で練習をしてくれる
- 法律事務所側との雇用条件の交渉を代理してくれる
なお、弁護士が転職エージェントを利用する時には、弁護士業界に特化したエージェントを選んでください。一般の就職・転職市場向けのエージェントよりも充実したサービスを受けることができるでしょう。
弁護士の転職におすすめの転職エージェント5選
さいごに、学歴に不安がある方におすすめの弁護士向け転職エージェントを5社紹介します。
NO-LIMITE
NO-LIMITは、弁護士・インハウスローヤーの転職支援・求人紹介に特化した転職エージェントです。
NO-LIMITを活用するメリットは以下のとおりです。
- 弁護士業界の転職市場に精通したアドバイザーが転職支援をしてくれる
- 企業法務・インハウス案件など幅広い求人案件を抱えている
- 書類添削・スキルの棚卸しをサポートしてくれる
NO-LIMITでは、法律事務所関係の求人だけではなく、各業界のインハウス案件も豊富に扱っています。また、NO-LIMITのキャリアアドバイザーは、弁護士特化型の集客支援・人材採用・事務所経営サポートなどを専門におこなった経歴を有する人材がそろっています。
そのため、マーケットの特徴やエンドユーザーの動向、法律事務所・一般事業会社の内情・強み・展望などのさまざまな情報を踏まえながら、求職者のキャリア形成に役立つ求人を厳選してくれるでしょう。
公式サイト:https://no-limit.careers/
MS Agent
MS-Agentは、株式会社MS-Japanが運営する管理部門・士業向けの転職エージェントサービスです。
MS-Agentを活用するメリットは、以下のとおりです。
- 弁護士の転職サポート実績30年以上のノウハウを活かした充実したサポート
- 幅広いキャリア選択肢を提示してくれる
- 弁護士を対象にした転職セミナー・個別相談会で転職活動に役立つ情報を提供してくれ
MS-Agentは弁護士業界の転職サポート歴30年以上を誇る企業なので、弁護士業界の転職ノウハウについて精通しています。また、企業法務を中心に扱う法律事務所だけではなく、一般民事事件を扱う個人事務所やブティック型法律事務所の求人案件も豊富に扱っているのが特徴です。
また、士業や管理部門特化型の転職エージェントサービスなので、弁護士資格以外の資格を武器にしたい方や、一般事業会社やベンチャー企業の役員としてキャリアを積みたい方にもおすすめです。
公式サイト:https://www.jmsc.co.jp/
弁護士転職.jp
弁護士転職.jpは、株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社が運営する弁護士特化型の転職エージェントサービスです。
弁護士転職.jpを活用するメリットは、以下のとおりです。
- 法律事務所名・企業名から求人情報を検索できる
- 法曹業界の転職サポート歴16年で約17,000人の弁護士の転職サポートを誇る
- 法律事務所や企業などの働く現場のリアルな声について情報を提供している
弁護士転職.jpの最大の魅力は、エージェントに登録後、弁護士転職.jpで取り扱う求人案件情報が完全公開される点です。他の転職エージェントサービスは自社のブランド力を高めるために多くの非公開案件を抱えていますが、弁護士転職.jpはこれらの情報を公開することで、求職者が自分の好みで転職先を選びやすくしています。
エントリー後は、専任エージェントとの1対1のヒアリング機会を設けてくれるので、希望経験や過去の経験を丁寧に整理して、次のキャリア形成のサポートをしてくれるでしょう。
公式サイト:https://www.bengoshitenshoku.jp/
リーガルジョブボード
LEGAL JOB BOARD(リーガルジョブボード)は、株式会社WILLCOが運営する士業求人サイトです。
LEGAL JOB BOARDを利用するメリットは、以下のとおりです。
- ダイレクトリクルーティングと専門エージェントを融合したサービスを受けることができる
- 弁護士だけではなく、司法書士・弁理士・土地家屋調査士・法務部員など、法律系業務全般の転職サポートを期待できる
- 登録後、2営業日以内に自分の要望に適した求人案件を紹介してもらえる
LEGAL JOB BOARDの最大の魅力は、ヘッドハンティング形式とエージェント形式の両サービスを利用できる点です。
現在の仕事が忙しく転職活動に十分な時間・労力を割くことができない人でも、登録手続きを済ませておくだけで転職活動の入口を作っておくことができます。時間に余裕がある時に自分で求人情報を探したり、法律事務所側から連絡があったタイミングで対応をすれば、効率的に転職活動を進めることが可能となります。
公式サイト:https://legal-job-board.com/
BEET-AGENT
BEET-AGENT(ビートエージェント)は、管理部門特化型、リーダー・ミドルクラスの転職サポートをするエージェント会社です。年収600万円~2,000万円以上の好条件求職案件を多数取り扱っています。
BEET-AGENTを利用するメリットは、以下のとおりです。
- 弁護士業界だけではなく、管理部門・バックオフィス系職種の求人案件を幅広く揃えている
- 管理部門の転職市場に詳しい「キャリアアドバイザー」と、上場企業・IPO準備中企業・ベンチャースタートアップ各企業に特化した「リクルーティングアドバイザー」の両面から転職活動をサポートしてくれる
- 給与条件の交渉など、求職者本人が言い出しにくい事項の交渉を代理してくれる
弁護士資格を保有しているからといって、必ず法律事務所に入所しなければいけないわけではありません。
弁護士資格保有者なら、一般事業会社の管理職・役員や、IPO準備段階のベンチャー企業のバックオフィス部門構築担当などとしてのニーズも高いので、BEET-AGENTに相談することで自分では想像もしなかったキャリア選択肢が見つかる可能性が高いです。
また、専任のエージェントが書類選考時の添削、面接の練習、給与条件・転職時期の相談などを徹底的にサポートしてくれるので、転職の成功率も高まるでしょう。
公式サイト:https://beet-agent.com/
まとめ
高学歴だからといって弁護士として活躍できることが確約されるわけではありません。学歴に自信がない人でも、学歴以外の武器を習得して、効率的に転職活動を進めれば、自分の希望するキャリアを形成できます。
ただし、弁護士として普段仕事をしながら転職活動に力を入れるのは簡単ではないでしょう。法律事務所の求人情報に自分で探し出して職務経歴書の作成・面接準備をしたとしても、転職活動の成功率は低いままです。
ですから、学歴に自信のない人物が弁護士としてのキャリアアップを目指すなら、転職エージェントサービスなどのサポートを借りながら効率的に転職活動を進めることを強くおすすめします。専任のエージェントが学歴以外の武器を発掘してくれたり、学歴がない状態としても求職者のスキル・希望に適した求人案件を紹介してくれるでしょう。