電子契約サービス、AI契約書レビューなど、近年様々なリーガルテックの台頭により、法務業務がデジタルベースに移行しつつあります。

株式会社LegalForce(現株式会社LegalOnTechnologies)が2021年10月20日に行ったインターネット調査(出典:DXの進捗に関する実態調査|株式会社LegalForce 2021年10月実施)によれば、業務のDX化の状況について、法務部門に所属する回答者12名のうち、「DX化が進んでいる」という回答が0%、「あまり進んでいない」「全く進んでいない」「よく分からない・知らない」という回答が合わせて67%でした。

もっとも、「まあ進んでいる」「いま着手し始めた」との回答は、合わせて34%で、法務のDX化への兆しがあります。

この記事では、法務DXとは何か、基本的な考え方と従前の法務の課題、法務DXが必要な法務業務、リーガルテックとの関係、今後の法務DXのあり方などを解説していきます。

この記事を監修した弁護士
川村 将輝
川村 将輝旭合同法律事務所
司法試験受験後、人材系ベンチャー企業でインターンを経験。2020年司法試験合格。現在は、家事・育児代行等のマッチングサービスを手掛ける企業において、規制対応・ルールメイキング、コーポレート、ファイナンス、M&Aなどの法務に従事。(愛知県護士会)

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    法務DXとは

    法務におけるDXは、様々なアナログ業務からの脱却により、定型業務の効率化を図るものです。具体的にはどのようなものでしょうか。

    アナログベースの業務からデジタルの活用

    たとえば、これまでの契約業務は、契約書の作成あるいはチェック・レビュー、押印手続、そして保管に至るまですべて紙ベースで行っていました。

    しかし、デジタルリソースを活用することにより、IT化していくことが法務のDXです。

    また、法務業務は、様々な専門知識を活用するため、判例や文献をあたって調査することも随時あります。その際に、社内で保有する書籍を参照することもありますが、多岐に渡る上に法令のアップデートを伴う上、保管場所のリソースにも限界があります。

    そこで、判例や文献の調査をデジタル化することで、情報のアップデートや保管場所の物理的な限界に制限がなくなります。

    他にも、書類作成業務や手続業務のフローにおいて、デジタルでのコミュニケーションを図ることがあります。

    業務効率化と法務に求められる付加価値の転換

    法務業務の分野でDXが進んでいるのは、後で述べるように、主に定型的な業務に関するものや業務の補助になるツールを中心としたものです。

    法務のDX化は、現状のテクノロジーにおいては定型業務に関するものが中心です。事務的な業務に近いものは、デジタル化して短時間で機械的に処理することにより、複雑で高度な業務に対して割く時間を増やすことにつながります。

    法務のDX化は、人の手で行う業務をより付加価値の高い業務に集約させることに意義があります。

    法務DXが果たす役割

    法務は、企業経営において、専門性が高い分野でありながら、事務的で反復継続性が高い業務と、事業の推進と拡大に寄与する重要性の高い戦略的な業務まで幅広くあります。

    法務DXが進むことで前者の業務に対する人的なリソースの幅が減ることで、後者の業務に注力することができ、法務の役割がより経営戦略に特化していきます。

    なお、弁護士有資格者の業務の観点からみても、業務の正確性やスピードを補助するツールとして活用することが期待できます。

    従前の法務の課題5つ

    法務業務において、従前法務DXがなかったときは、様々な課題がありました。ここでは、5つ紹介していきます。

    契約書の締結と管理

    契約書の締結に関しては、契約締結のフローにおいて決裁・稟議を完了させるまでの時間・工数と、押印業務のための出社などの非合理的な業務を強いる問題点があります。

    企業の規模などによりますが、基本的には1つ1つの契約に際して、決裁や稟議の手続があります。紙ベースでのアナログ業務では、押印を完結させるまでに決裁者のスケジュールを考慮せざるを得ず、日数がかかってしまいます。

    また、先方との間で契約書を巻き取るために、押印のための日程調整あるいは郵便の往復などのやり取りを行う必要がある問題があります。

    契約書の管理に関しては、日常的に発生する様々な取引の契約書を管理するための単なる事務作業で工数を使うことになり、効率性の確保に課題があります。

    契約書のドラフト・レビュー

    契約書のドラフトやレビューの業務では、形式的な部分でのミスの防止、契約書の条項で指摘すべき条項の抜け漏れ防止において課題がありました。

    また、1つ1つの条項を目で追って確認し、脳内で情報処理して条項案の作成を行い、あるいは修正案を提示するまでのプロセスは、ある程度経験があっても、数分で完結させることは困難です。

    そのため、正確性を高めることと速い業務処理を実現することの両立は困難です。

    このように、契約書のドラフト・レビュー業務では、正確性とスピードの両方を実現することに課題があります。

    知財管理

    事業の根幹となるプロダクトは、様々な技術やコンテンツによって成り立っています。そうした技術やコンテンツを保護するために、企業における知財管理は、極めて重要です。

    知財管理の側面でも、業務において、権利侵害がないかどうか、他社のコンテンツを侵害していないかどうかというチェックを行う際に、どのように情報を取得し、あるいは発信して権利侵害に対する予防を図るかという点で課題があります。

    文献調査・リサーチ

    先に述べた通り、判例や文献調査において紙媒体のリソースでは、情報取得のスピードと、保存における物理的な限界があります。

    加えて、検索の効率性という観点でも、紙媒体では、特定のキーワードで瞬時に選別を行うことが困難である側面があります。

    業務処理の属人化

    また、業務の種類を問わず、個々の業務処理が人によりきになること、ノウハウが蓄積しにくい課題があります。

    DXの要素として、点在しているリソースを整理したり、一元的に集約するというものがあります。しかし、DXが進まない状況では、業務の処理とプロセスが業務担当者の中で保存され、会社の業務フローとして保存されないままの状態です。

    契約業務であれば、紙媒体で保管される契約書と、それまでの契約書のドラフトやレビューの経過がデジタルとして保存され分離してしまうことで、業務のナレッジとして活用する際に分かりにくくなってしまうことが考えられます。

    DX化のためのリーガルテック等の活用

    法務DXのために、リーガルテックの様々なプロダクトを活用することが考えられます。業務領域ごとに、どういったものが考えられるか見ていきます。

    また、プロダクトが提供するソリューションには様々ありますが、定型業務の時短・効率化、処理の正確性の向上、情報管理の一元化の3つの観点があります。

    契約の締結など

    契約など文書の締結に関しては、電子契約・電子署名サービスが考えられます。クラウドサイン、GMOサインなどのサービスがあります。

    クラウドサインを例にとると、次のような仕組みです。

    送信者側が作成する書類の電子ファイルを準備し、署名を行う相手方のほか、確認を求める相手方などの送付先を入力した上で、氏名・住所等の入力箇所または押印箇所を設定の上、送信します。受信した相手方は、書類の内容を確認した上、設定された入力項目や押印をして、確認して返送します。

    署名が完了すると、それぞれに有効な電子署名がなされた書類がクラウド上に自動で保存されます。また、電子証明書により、タイムスタンプなどの記録がなされ改ざんされていないことがわかる形で記録されます。

    (参照:ご利用ガイド|クラウドサイン合意締結証明書を発行する|クラウドサインヘルプページ

    また、登記を行う場合のように公的な手続に際して添付する書類でも、一定のサービスに関しては、電子契約・電子署名を利用して作成した書類を使うことができます。

    契約書の締結を、クラウド上で、時短かつアナログで行う場合に書面を交わす工数をカットすることができます。

    契約書等のドラフト・レビュー

    AIが契約書における条項の抜け漏れや、文言の修正案を瞬時に分析して提示するプロダクトです。

    主なサービスは、次のようなものが挙げられます。

    もっとも、プロダクトの分類は、立場を選択してデータベース的に複数のひな形から参照してレビュー・ドラフトを行うものと、自社ひな形との比較検討を内容とするものとで分かれます。また、機能として、法的なリスクなどを提示したり、改善案などを具体的に提示するようなところまで含むものと、ひな形に通常あるようなものなど一般的な観点にとどまる形で留意事項を示すにとどまるような制限型といった分類があるとされています。

    (参照:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表|法務省

    上記のように機能の性質や程度に違いはありますが、契約書のチェックやドラフトに際して、契約類型などに応じて最低限必要な条項案や、検討すべき留意事項を漏らさずに行うことができる点で、契約書のレビュー・ドラフトにおいて、業務の正確性向上と効率性・処理のスピードを実現することにつながります。

    なお、AIによる契約書レビュー等のサービスは、グレーゾーン解消制度が利用され、令和4年6月における経産省回答、同年10月における法務省回答の中で、いずれも適法であることが明言されなかったことから、業界的に不安がただよう情勢でした。

    しかし、政府は、内閣府が開催する規制改革推進会議において方針や検討事項を示しました。法務省を中心として、「AI契約審査サービスが適法と評価される具体事例」を盛り込むなど、ガイドラインを策定する方向であるとされています。

    その中には、法務部員によるチェックや弁護士の活用など、法務人材や社内弁護士の活用という条件が盛り込まれることも検討されています。

    (参照:AI契約審査 法務省「既存サービスは適法」 来春にも指針策定|日本経済新聞

    このように、適法である例が明示され、その枠内でプロダクトの適法性が裏付けられることで、ユーザーや企業法務の現場、法務DXの方向性を後押しする形で1つの決着がつくことになりそうです。

    案件管理システム

    様々な法務相談や案件に対する対応の経過や結果を記録しておくシステムです。過去の個別の案件に対する処理のノウハウを蓄積しておくことは、業務を遂行するプロセスの中の意思決定に対する工数を削減していくことにつながり、効率化につながります。

    これには、株式会社日立システムズが提供する「法務契約情報管理支援システム」があります。

    契約書のレビュー起案に関する情報のほか、締結済みの契約書の管理を一元的に行うことができるシステムです。また、法律事務所における法律相談票のように、企業内での法務相談の管理に置き換える形で、対処方法や対応経過が一元的に管理でき、法務内での共有が可能になります。

    リサーチ業務

    リサーチ業務に関しては、既存のものとして判例や法律文献の検索サービスがあります。

    法律事務所でも利用されるような、LLIやLEX/DB、WestLaw-Japanなど様々なサービスがあります。

    法律文献に特化したものとして、LEGAL LIBRARY弁護士ドットコムLIBRARYがあります。法律事務所に在籍する弁護士が利用するような法律専門書のデータベースですが、企業法務担当者にとっても案件に応じて利用することが考えられます。

    各種手続業務(登記、知財関係など)

    登記に関しても、オンライン化・IT化が進んでいます。

    役員の変更や増資の際の登記など、事業活動において確実に行う必要がある登記をミスなくスピーディー行うためのプロダクトです。

    例としては、GVA法人登記があります。

    また、知財管理に関して、弁理士が開発した特許管理システム「root ip」があります。国内だけでなく国外の特許関係にも対応することができます。ほかにも、特許庁と連携し特許情報の標準データにも対応しています。

    また、商標登録や検索を支援するサービス「Cotobox」というものもあります。

    こうしたサービスを活用することで、法務で手薄になりアウトソースしがちな領域をプロダクトで自社内の人的リソースでカバーすることが可能になります。

    法務DXのためのオペレーション改革の一例

    法務DXを推進していくための必要なオペレーションを一例でご紹介していきます。

    予算の設定

    まずは業務効率化、一定の法務業務の自動化にかけられる予算を取ります。予算の幅によって、DXを行うための選択肢も変わってくるからです。

    法務業務のリストアップと分類

    法務業務を単位ごとにリストアップします。ステップが複数に分かれている場合には、工数を含めて整理していきます。

    イメージとしては、内部統制報告書を作成する際のいわゆる3点セットにおける、業務記述書やフローチャートです。

    参考:内部統制報告書とは

    ポイントは、個々の業務の中で、判断を下す際のチェックをどのように行っているか、法務内での決裁フローについても考慮し、担当者のみで処理して完結するものとそうでないものを振り分けていくことが重要です。

    また、整理していく中で、工数上業務に時間を割くことができていないものも洗い出し、必要な工数も把握しておきます。

    自動化すべき定型業務の範囲を確定

    特に、業務フローの中で、個々の業務処理を行う担当者のみで完結するようなもののうち、事務処理性が高く、定型的で数が多いものに絞りつつ、自動化が考えられる部分を抽出していきます。

    そして、自動化が可能になった場合に削減される工数を算出していきます。削減できた工数分で必要な業務フローに配分した場合の業務フローも設定しておきます。

    プロダクトの選定

    そして、自動化する部分に最適なリーガルテックツールなどを検討していきます。

    ここで予算との比較検討をしつつ、予算の範囲内で実現すべき優先順位を考慮して導入するプロダクトを選定していきます。

    導入と検証

    導入するプロダクトが決定した場合、それを実際に導入して運用していきます。

    法務DXは、現段階ではあくまで人がコントロールすることが前提であって、人による業務処理を補助する位置づけです。そのため、実際に運用してみて、業務効率化により工数がどの程度削減されたのか、その結果空きの工数部分をどのような業務に充てることができたのかをチェックしていくことが必要です。

    法務DXに関する注目事例と失敗例

    最後に、法務DXに関する事例を、成功例と失敗例について解説していきます。

    契約締結のフローに関する成功例

    先の述べたように、紙ベースでの契約締結を行う場合、郵送の往復作業が発生する場合があります。

    そのような時間的なラグの発生により損失が生じる場合があります。

    人材紹介大手のパーソルキャリアでは、契約締結に至るまでに要する時間が数日以上かかることによって、1つの契約を完結させるまでの間に人材紹介の機会損失が発生するという課題がありました。そうしたところ、クラウドサインの導入により、1日以内の契約締結が70%となり、機会損失を大きく削減していくことに成功しました。

    (参照:バックオフィスにおけるDX動向 法務編(リーガルテック)②「リーガルテックにおける活用事例」|COGENT LABS

    導入において法務業務の課題を明確にすることが重要

    法務DXは、ツールを導入するだけで十分な効果が得られるとは限りません。

    そもそも、どのような法務業務における課題に対して、どのような改善を目指しているのかを明らかにした上で、適切にツールを選択することが重要です。

    株式会社SHIFTでは、コロナ禍になってから、会社の業務全体のオンライン化やリモートへの対応にアジャストするため、急速にリーガルテックの活用を行いました。その結果、DXツールの活用によって、業務に適合させるために新たな課題が残るなどの問題点も浮き彫りになりました。他方で、課題と目標を明確にして取り組んだ契約業務に関しては、業務の課題を解消することにつながり成果につながりました。

    (参照:法務DXの成功・失敗事例と導入障壁の乗り越え方|BUSINESS LAWYERS

    このように、法務DXでは、課題を明確にして、導入後の法務業務のフローを具体的な目標として掲げて行うことが重要です。

    法務DXによる社内弁護士の最適化

    社内弁護士を多く抱えている企業でも、業務効率化・自動化ができないことで弁護士がスキルを十分に発揮できないという問題にもつながることが考えられます。

    社内弁護士を採用していても、契約書のレビュー・ドラフトの業務などの事務処理に多くの時間を割く必要が生じると、その分複雑で高度な案件は顧問弁護士などに依頼してアウトソーシングせざるを得なくなります。

    新人弁護士であれば、定型業務や事務処理作業をこなすことで基礎体力を養う教育的効果があるものの、ある程度経験のある弁護士を活用する際には適切ではありません。

    法務DXの活用により定型業務の最適化を図ることで、より専門性が高く難度の高い法務業務に注力する幅が生まれます。

    そうした業務に注力することができれば、法務全体の付加価値向上や、弁護士の転職においてもより魅力的な選択肢を与えることにもつながり、弁護士人材の確保にもつながります。

    弁護士としても、転職の際に法務DXの推進が図られているかどうかを考えることで、キャリアアップに近づく転職にもつながると考えられます。

    まとめ

    最後に、本記事のポイントを3つにまとめます。

    • 法務DXは、法務業務にテクノロジーを活用してアナログからデジタルへの転換を図ることにより、法務業務の付加価値を事務的なものからより戦略的なものへ拡げるものである。
    • 法務DXは、契約業務を中心に、案件管理やリサーチツールなどにおいて拡大の兆しがある。特に、契約書レビュー・ドラフトのAIプロダクトは、法務担当者や社内弁護士といった法務人材の活用とセットになる可能性があり、さらに法務人材のニーズも高まる。
    • 法務DXには、法務業務の整理と課題抽出が極めて重要である。そして、課題に対して最適なツールを獲得する必要があり、そのための予算確保にあたり、一層法務の重要性を事業サイドに発信していく必要がある。
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