近年、「弁護士の年収は低い」という声が増えています。司法試験に合格し、長い修習を経てようやく弁護士になったのに、思っていたより稼げない…。そんな悩みを持つ方は少なくありません。
実際、弁護士の収入は所属先・経験年数・専門領域によって大きく異なり、一律に「高い」「低い」とは言えないのが現実です。
本記事では、2023年「弁護士白書」のデータをもとに年収の実態を解説し、年収アップや転職判断に役立つ情報をわかりやすくまとめました。
目次
- 1 弁護士の年収は本当に低いのか?
- 2 所属先別の年収の違い
- 3 弁護士の年収が低いと思われてしまう2つの理由
- 4 年収を上げる3つの方法
- 5 弁護士の年収に関するよくある質問
- 5.1 h3:弁護士の年収の「中央値」はどのくらいですか?
- 5.2 h3:独立すれば必ず年収は上がりますか?
- 5.3 「弁護士バブル」が終わったと言われるのはなぜですか?
- 5.4 30代で年収1,000万円に届かないのは、弁護士として「低い」ほうですか?
- 5.5 インハウス(企業内弁護士)に転職すると、年収は下がりますか?
- 5.6 地方での公設事務所や一般民事メインだと、稼ぐのは難しいでしょうか?
- 5.7 専門領域を持つなら、今後はどの分野が「稼げる」ようになりますか?
- 5.8 弁護士会費が負担です。年収が低い時期の救済措置はありますか?
- 5.9 自分の年収が「市場価値」と見合っているか判断する基準は?
- 5.10 年収についてエージェントに相談すると、どんなアドバイスがもらえますか?
- 6 まとめ
弁護士の年収は本当に低いのか?
弁護士は依然として高収入な職種のひとつですが、「弁護士だから必ず高給取り」という時代は終わりつつあります。
2023年の「弁護士白書」のデータを見ると、収入の分布は非常に幅広く、一部の高収入層が平均値を押し上げているのが実情です。
年収の「中央値」に注目すると、平均値よりも実態に近い数字が見えてきます。
弁護士の収入・所得の分布
2023年の「弁護士白書」を参考にすると、弁護士(登録者全体)の年間所得の分布は以下のとおりです。
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200万円未満 |
約10% |
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200〜500万円未満 |
約17.6% |
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500〜1000万円未満 |
約32.4% |
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1000〜2000万円未満 |
約26% |
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2000万円以上 |
約13.9% |
「所得」とは、売上から必要経費を差し引いた手取りに近い概念であり、勤務弁護士の場合は給与収入がこれに相当します。
全体の3割近くが年収500万円未満にとどまる一方、2,000万円超の高収入層も1割超存在します。中央値が800万円、極端な値を除いた平均値が1,022万円という結果でした。
この結果から分布の「ひずみ」が大きいことがわかります。大多数の弁護士にとって、年収500万円〜1,000万円のレンジが「現実的な水準」です。
経験年数から見る弁護士の収入・所得の分布
弁護士の収入は、経験年数によっても大きく変化します。
2023年の「弁護士白書」のデータでは、司法修習修了後の登録年数が増えるほど所得が上昇する様子が確認されています。
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経験年数 |
平均値 |
中央値 |
|---|---|---|
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5年未満 |
575万円 |
550万円 |
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5~10年未満 |
1,252万円 |
1,027万円 |
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10~15年未満 |
1,975万円 |
1,800万円 |
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15~20年未満 |
2,554万円 |
2,100万円 |
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20年~25年未満 |
3,763万円 |
2,950万円 |
弁護士の収入は、経験年数が長くなるほどに格差が広がる傾向にあります。同じ20年目の弁護士でも、大手事務所のパートナーと地方の個人事務所では、収入が数倍異なることも珍しくありません。
また、独立したからといって必ずしも年収が上がるわけではなく、経費負担や案件獲得力によっては勤務弁護士時代より下がるケースも多くあります。
所属先別の年収の違い
弁護士の年収に大きな影響を与える要因のひとつが、「所属先」です。
大手法律事務所、中堅事務所、地方事務所、そして企業内弁護士(インハウス)では、給与体系・年収水準・働き方が大きく異なります。
転職や就職を検討する際には、それぞれの特徴をしっかり把握しておくことが重要です。
大手法律事務所の場合の年収
「四大法律事務所」と呼ばれる大手(「村あさひ法律事務所、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所)をはじめとする大手事務所では、アソシエイトの初年度でも年収1,000万円超えが一般的です。経験を積んでシニアアソシエイトになれば1,600万円〜3,000万円程度、パートナーになれば数千万円〜数億円になるケースも見られます。
ただし、大手事務所では長時間労働が常態化しており、深夜残業や休日出勤も珍しくありません。時給換算すると必ずしも高くないとも言われ、体力的・精神的なタフさが求められます。また、パートナーへの昇格競争は厳しく、一定年数を過ぎてもアソシエイトのまま(いわゆる「アップ・オア・アウト」)となるケースもあります。
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ポジション |
おおよその年収レンジ |
備考 |
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アソシエイト(1年目) |
1,100万円~1,200万円万円程 |
事務所・期による差あり |
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アソシエイト(3〜5年目) |
1,300〜2,000万円程度 |
実績・評価で幅が広がる |
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シニアアソシエイト |
1,600万円~3,000万円万円程度 |
パートナー候補層 |
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パートナー |
数千万円~数億円 |
担当案件・レベルによる |
中堅法律事務所の場合の年収
弁護士数が10〜50名程度の中堅事務所は、大手と小規模の間に位置する選択肢です。年収は大手より低く、アソシエイトで500万円〜700万円、経験を積めば700万円〜1,200万円程度が目安。一方で、大手に比べると仕事の裁量が大きく、特定の専門分野(M&A、知財、労務など)に強い事務所も多いため、専門性を高めながら働けるメリットがあります。
ワークライフバランスは事務所によって大きく異なりますが、大手よりは残業が少ない傾向です。年収よりも「どんな仕事ができるか」を重視する弁護士に向いている選択肢でしょう。
地方の法律事務所の場合の年収
地方事務所の弁護士は、都市部と比較して年収が低い傾向にあります。特に、地方の一般民事(相続・離婚・交通事故等)を中心とする事務所では、年収300万円〜600万円台のケースも少なくありません。しかし、地方のほうが生活コストが低いため、年収だけでは図り切れない部分もあるでしょう。地域密着型のビジネスで安定的な収入を得ている弁護士も多くいます。
また、弁護士過疎地域での「公設事務所」に勤務する場合は、給与制(600万円〜700万円程度)で生活の安定を確保しやすいという側面も。「高収入より地域貢献・生活の質を重視したい」という価値観に合う選択肢となるでしょう。
企業内弁護士(インハウス)の年収と働き方
インハウスロイヤー(企業内弁護士)の年収は、勤務先企業の規模・業種・ポジションによって大きく異なります。大手メーカーや外資系企業のリーガル部門では、1,000万円〜1,500万円以上の年収も珍しくありません。一方、中小企業や上場したばかりのスタートアップでは500万円〜800万円程度のケースもあります。
働き方の面では、法律事務所に比べて残業が少なく、休日も取りやすい傾向です。年功序列的な給与体系の企業では、弁護士資格のプレミアムが必ずしも反映されないこともあるため、転職前に給与交渉をしっかり行うことが重要です。また、「事業の当事者」として経営に近い仕事ができる点は、インハウスならではの魅力です。
出典:日本組織内弁護士協会「企業内弁護士に関するアンケート集計結果(2025年3月)」
弁護士の年収が低いと思われてしまう2つの理由
「弁護士の年収は高い」という社会的イメージがある一方で、「実際はそうでもない」という声が増えています。その背景には、大きく2つの構造的な変化があります。
弁護士の数が増え続けている
2000年代の司法制度改革(ロースクール制度の導入・司法試験の合格者増加)以降、日本の弁護士数は急増しました。2000年時点では約1万7,000人だった弁護士数は、2025年時点で約4万6,000人超えにまで増加し、この20年余りで2.6倍以上に膨らんでいます。
弁護士が増えたことで、法律サービスの供給量は拡大しましたが、それに見合うだけの需要(案件数・依頼数)が増えていないため、一人あたりの受任案件数・収入が減少傾向になっています。特に都市部では弁護士同士の競争が激化しており、新興の弁護士が安定した収入を得るまでの時間が長くかかるようになりました。
全体的な案件数が低下している
弁護士数が増える一方で、法律相談・訴訟件数は必ずしも増えていません。裁判所への新件の民事訴訟件数は長期的に減少傾向にあり、法テラスの活用や弁護士費用への意識の高まりで法律相談の敷居は下がっているものの、ひとつひとつの案件規模が縮小している面もあります。
また、リーガルテック(AI契約審査・書類自動化ツール)の普及により、かつて弁護士が受任していた定型的な業務が自動化されるケースも増えているのです。「単価の低い案件」のボリュームは減少しているため、専門性の高い案件への特化がより重要となるでしょう。案件数や案件規模が縮小する一方で弁護士数が増え続ける「需要と供給のミスマッチ」が、年収が低いと感じられる主要因のひとつです。
年収を上げる3つの方法
弁護士として収入を増やすためには、やみくもに案件をこなすのではなく、戦略的なキャリア設計が重要です。
ここでは、特に効果的な3つのアプローチを紹介します。
専門知識・専門領域を持つ
「何でも相談できる弁護士」より「この分野なら任せろという弁護士」のほうが、高単価の案件を受任しやすくなります。たとえば、M&A・知的財産・IT・医療・環境・スタートアップ支援・クロスボーダー取引など、高い専門性を要する分野では、一般に弁護士報酬も高く設定されています。
まずは自分が情熱を持てる分野かつ今の事務所で積める経験を軸に、専門領域を絞り込んでいくことが収入アップへの近道です。また、セミナー登壇や論文執筆、SNS発信などで専門家としての認知を高めることも市場価値を押し上げるのに役立つでしょう。
個人で受託する案件を増やす
勤務弁護士の場合、受け取る給与は事務所の売上のごく一部に過ぎません。そこで、事務所の許可を得たうえで、副業や個人受任で案件を獲得できれば、給与以外の収入源を作ることができます。
セミナー講師・顧問契約・法律相談会など、自分のブランドを活かした副収入の確保は、将来の独立にも好影響です。なお、個人受託については、所属事務所の規定(競業避止・利益相反)との整合性に問題ないか、十分に注意しましょう。
より年収の高い勤務先に転職する
弁護士の転職市場は活性化しており、経験年数・専門性・語学力によっては、現職より年収が大幅に上がるケースも多くあります。特に「外資系法律事務所」「大手企業のインハウス」「金融系事務所」などでは、市場相場より高い年収を提示する可能性があるでしょう。
転職エージェント(特に弁護士特化型)を活用すれば、非公開求人へのアクセスや年収交渉のサポートも受けられます。現在の職場環境に満足していない場合には、転職は年収アップの直接的な手段のひとつです。
弁護士の年収に関するよくある質問
弁護士の年収についてよく寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。
h3:弁護士の年収の「中央値」はどのくらいですか?
2023年「弁護士白書」のデータをもとにした推計では、年収(所得)の中央値はおよそ800万円前後とされています。
平均値が1,000万円超であるのに対し、中央値はかなり低く、これは高収入の弁護士が少数いることで平均が押し上げられているためです。
「弁護士の半数以上は年収800万円前後以下」と理解しておくと、実態をより正確に把握できます。
h3:独立すれば必ず年収は上がりますか?
必ずしも上がるとは言えません。独立当初は事務所の賃料・弁護士会費・スタッフの人件費などの経費が発生し、安定したクライアントを獲得するまでは収入が不安定になるケースも多くあります。
既存のクライアント基盤や、ある程度の専門性が確立された段階での独立であれば成功しやすいですが、経験年数が浅い時期の独立は慎重に判断することが必要です。
「弁護士バブル」が終わったと言われるのはなぜですか?
2000年代の司法制度改革以前は、弁護士数が少なく需要に対して供給が不足していたため、弁護士として登録すれば比較的容易に高収入を得られる時代がありました。
しかし、ロースクール制度の導入・司法試験合格者の大幅増加によって弁護士数が急増した結果、供給過多となり競争が激化しました。「登録すれば稼げる」という構図が崩れたことで「バブル終焉」と表現されています。
30代で年収1,000万円に届かないのは、弁護士として「低い」ほうですか?
必ずしも低いとは言えません。弁護士全体の中央値が800万円前後であることを考えると、30代で年収700万円〜900万円台であっても弁護士の中では平均的な水準です。
年収1,000万円超は大手事務所勤務やパートナー昇格後などに現れやすい水準であり、「年収1,000万円以下=低収入」という認識は正確ではありません。ただし、キャリアアップや転職で1,000万円を目指すことは、十分に現実的な目標です。
インハウス(企業内弁護士)に転職すると、年収は下がりますか?
一概には言えません。大手法律事務所から中堅企業のインハウスに転職する場合は年収が下がるケースもありますが、大企業・外資系企業のリーガル部門では年収1,000万円超のポジションも多くあります。
ワークライフバランスや仕事内容とのトレードオフで考えることが重要で、転職前に年収条件を明確にした上で交渉することが大切です。
地方での公設事務所や一般民事メインだと、稼ぐのは難しいでしょうか?
都市部の大手事務所と比べると年収水準は低くなりますが、生活コストの低い地方では、年収500万円〜700万円でも十分に豊かな生活を送れるケースもあります。特に公設事務所は給与制で安定しており、地域のニーズに応える仕事のやりがいも大きいです。
「高収入」を優先するなら難しい面はありますが、地域貢献・生活の質・仕事の充実感を重視するなら魅力的な選択肢です。
専門領域を持つなら、今後はどの分野が「稼げる」ようになりますか?
今後の需要が高まると見込まれる分野として、AIや個人情報保護・データ規制に関する法務、ESG・サステナビリティ法務、スタートアップ支援・ベンチャーファイナンス、クロスボーダーのM&A・国際仲裁、サイバーセキュリティ・情報セキュリティ分野などが挙げられます。
また英語力を組み合わせると、より高単価の外資系案件や国際法務などの仕事に就きやすくなるでしょう。
弁護士会費が負担です。年収が低い時期の救済措置はありますか?
各弁護士会・日本弁護士連合会では、一定の要件を満たす場合に会費の猶予・分割払い・減免制度が設けられているケースがあります。
具体的な制度内容は所属する弁護士会によって異なるため、担当部署へ直接確認しましょう。また、年収が低い時期の弁護士会費は、所得税の必要経費として計上できる場合があるので、確認してみてください。
自分の年収が「市場価値」と見合っているか判断する基準は?
判断基準としては、以下の3点が有効です。
①登録年数・専門領域・語学力と同程度の弁護士の相場を転職エージェントや求人情報で調べる
②実際に複数の事務所・企業からオファーをもらって比較する
③同期や同業者とのカジュアルな情報交換
特に弁護士特化型のエージェントは非公開求人の市場相場情報を持っています。転職の意志がなくても相談できるので、自分の市場価値を確認する手段として役立つでしょう。
年収についてエージェントに相談すると、どんなアドバイスがもらえますか?
弁護士特化型のキャリアエージェントに相談することで、以下のようなサポートが受けられます。
①自分の経験・専門性の市場評価
②現職では得られない選択肢(非公開求人含む)の紹介
③年収交渉のサポート
④中長期のキャリアプラン設計のアドバイス
転職するかどうかを決めていない段階でも相談できるため、「今の年収が低いのかを客観的に知りたい」といった目的でも活用できます。
まとめ
弁護士の年収は「所属先」「経験年数」「専門領域」などによって大きく異なり、一律に高い・低いとは言えません。2023年の「弁護士白書」のデータが示すとおり、年収の中央値は約800万円前後。高収入層が平均値を押し上げているため、「平均年収1,000万円超」という数字は実態よりも高い印象を与えがちです。
年収が伸び悩む背景には、弁護士数の急増と案件数の減少という構造的な要因があります。収入を上げるためには「専門領域の確立」・「個人受任の拡大」・「より条件の良い職場への転職」の3つのアプローチが有効。まずは自分の市場価値を客観的に把握することが、キャリアを前進させる第一歩です。
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