弁護士が法律事務所へ転職するにあたり、キャリアプランに合わせて転職先の「事務所規模」を選択することが大切です。
大手で大規模案件に携わり経験値を高めたいのか、中堅・小規模事務所でやりたい案件にチャレンジしたいのかなど、法律事務所の規模感で働き方が変化します。
そのため、各事務所の特徴を把握しておかなければ、イメージどおりのキャリアを実現しにくくなります。
この記事では法律事務所を規模別にタイプ分けしたうえで、それぞれの特徴やおもな業務内容、適性人材を解説します。
法律事務所の規模による違いが知りたい方や、自身に適した事務所のタイプを把握したい方は、参考にしてください。
目次
法律事務所の現状・タイプ
日本には大小さまざまな法律事務所があり、担う業務も事務所や所属弁護士ごとに異なります。
2023年3月31日時点の全国の法律事務所の数は、1万8,276件です。2021年3月31日時点では1万7,772件だった点を踏まえると、法律事務所数は今後も増え続けると予想できます。
事務所規模 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|
1人事務所 | 10,841 | 11,169 | 11,299 |
2人事務所 | 3,149 | 3,178 | 3,159 |
3~5人事務所 | 2,655 | 2,630 | 2,632 |
6~10人事務所 | 764 | 777 | 798 |
11~20人事務所 | 246 | 248 | 261 |
21~30人事務所 | 57 | 62 | 60 |
31~50人事務所 | 39 | 38 | 40 |
51~100人事務所 | 10 | 15 | 16 |
101人以上事務所 | 11 | 11 | 11 |
合計 | 17,772 | 18,128 | 18,276 |
また、ひとこと「法律事務所」といっても種類があり、所員人数や取り扱う業務によって以下のタイプにわけられます。
- 大手法律事務所
- 準大手・中堅法律事務所
- 小規模法律事務所
- 外資系法律事務所
どこの法律事務所に在籍するかで弁護士の働き方や携わる業務、弁護士業界での地位が異なるといっても過言ではありません。そのため弁護士が就職・転職する際は、各特徴を把握したうえでキャリア形成を図る必要があります。
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法律事務所の規模別に特徴・業務の違いを解説
法律事務所はおもに4つのタイプに分けられますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
ここからは、各法律事務所の特徴や業務の違いを解説します。
大手法律事務所(五大法律事務所)
数ある法律事務所のなかでも大手に分類されるのが、所属弁護士数が圧倒的に多い以下5つの事務所です。
- 西村あさひ法律事務所・・・657名
- アンダーソン・毛利・友常法律事務所・・・580名
- 森・濱田松本法律事務所・・・567名
- TMI総合法律事務所・・・563名
- 長島・大島・常松法律事務所・・・535名
※2023年6月時点での弁護士数
上記の法律事務所は、総称して「五大法律事務所」と呼ばれます。
国内の法律事務所では、数名~数十名程度の弁護士を抱えているところがほとんどです。そう考えると、五大法律事務所の規模がいかに大きいかがわかります。
五大法律事務所の所属弁護士数は年々増加しており、新卒・中途のどちらも常に門戸が開かれている状況です。
特徴・おもな業務
五大法律事務所は、おもにM&AやIPO、ファイナンス、知的財産分野など企業法務案件を多く扱っています。
国内では東京・大阪・名古屋などのメイン都市に事業所があり、海外にも複数拠点を構えているのが特徴です。そのため、海外ビジネスを展開する国内外の依頼者にも対応が可能で、海外法務も提供しています。
事務所規模が大きい分、各分野に特化した弁護士が在籍しているため、社会的影響力のある大型案件の依頼も多いようです。
五大法律事務所への転職・就職を目指すなら、一定水準以上の経験とビジネスレベルの英語力など特筆したスキルが必要となるでしょう。
向いている人材
五大法律事務所に向いている方は、以下のとおりです。
- 企業法務を経験して大手企業のインハウスローヤーに転職したい方
- 海外法務を経験してグローバルに活躍したい方
- 大型案件にチャレンジしたい方
- 刺激的な環境で働きたい方
- 語学力を活かしたい方
- 仕事に打ち込みたい方
- 専門性を高めたい方
- 実績を作って独立開業したい方
自身のキャリアをどんどん高めていきたい方に、おすすめといえるでしょう。
準大手・中堅法律事務所
準大手・中堅法律事務所は、前述した五大法律事務所ほどではないものの、一定以上の弁護士が在籍する法律事務所を指します。具体的には、以下のとおりです。
分類 | 準大手法律事務所 | 中堅法律事務所 |
---|---|---|
弁護士数 | 50名以上 ※五大法律事務所を除く | 20~50名程度 |
事務所例 | 渥美坂井法律事務所弁護士法人 弁護士法人シティユーワ法律事務所 弁護士法人ベーカー&マッケンジー法律事務所 弁護士法人ALG&Associates 弁護士法人TLEO虎ノ門法律経済事務所 など |
弁護士法人ひかり総合法律事務所 弁護士法人大西総合法律事務所 T&K法律事務所 弁護士法人朝日中央綜合法律事務所 東京法律事務所 など |
準大手法律事務所には、過払い金請求が注目された時代に拠点を拡大した「ベリーベスト法律事務所」「アディーレ法律事務」も含まれます。
また、関西に本拠点のある法律事務所のうち、所属弁護士数が多い以下の事務所をまとめて「関西四大法律事務所」といいます。
- 弁護士法人大江橋法律事務所…167名
- 弁護士法人北浜法律事務所…99名
- 弁護士法人御堂筋法律事務所…92名
- 弁護士法人淀屋橋・山上合同…73名
※2023年6月時点での弁護士数
これらの法律事務所は全て大阪に所在するため「大阪4大法律事務所」と呼ばれることもあるようです。
特徴・おもな業務
準大手・中堅法律事務所には、企業・個人事業主で日常の法的問題や紛争を相談したい方からの依頼が多い傾向にあります。前述の五大法律事務所とは異なり、一般民事を取り扱う事務所も多いです。
法律事務所ごとに特色があり、取り扱い分野に大きな差があるため、準大手・中堅法律事務所への転職を検討する際は、事務所カラーの見極めが重要です。
向いている人材
準大手・中堅法律事務所に向いている方は、以下のとおりです。
- 企業法務も一般民事も経験したい方
- 多ジャンルの案件を経験したい方
- 個人の裁量権をもって、仕事にやりがいを感じたい方
- 企業つながりではなく、個人で人脈を広げたい方
大手法律事務所よりも、事務所や個人の得意分野を頼って依頼を受けるケースが増えるため、活動幅を広げたい方におすすめといえるでしょう。
小規模法律事務所
小規模法律事務所とは、個人事務所~20名未満の弁護士が在籍する法律事務所を指します。
通称「町弁(まちべん)」と呼ばれる、地域密着型のリーガルサービスを展開している法律事務所も、ほとんどが小規模で運営しています。
なお日本弁護士連合会が公表したデータによると、2023年3月31日時点の国内法律事務所1万8,276件のうち、小規模法律事務所の割合は8割強です。国内にある大半の法律事務所が、小規模に分類されると考えてよいでしょう。
参考:事務所の規模別に見た事務所数の推移_資料1-3-3|弁護士白書_2023年度版
特徴・おもな業務
小規模法律事務所は、おもに個人や地域の中小企業を顧客にしています。債務整理や交通事故、離婚、相続など、基本的にはどのような依頼でも取り扱う事務所が多いです。
一方で、ブティック系法律事務所など、少人数で特定分野に特化したリーガルサービスを提供する法律事務所も存在します。
基本的にひとりの弁護士が法律相談から裁判まで受任するケースが多く、比較的自由に業務を進められます。
向いている人材
小規模法律事務所に向いている方は、以下のとおりです。
- ワークライフバランスを意識したい方
- 自身の裁量で業務を進めたい方
- 一通りの業務を自分やりたい方
- 書類作成など事務作業にも対応できる方
- 専門スキルを磨きたい方
- クライアントと直接コミュニケーションをとりたい方
- 個人の繋がりを増やして独立開業したい方
個人でできることを増やしたい方、依頼主へ寄り添う姿勢を大切にしたい方に、おすすめといえるでしょう。
外資系法律事務所
外資系法律事務所とは、日本でリーガルサービスを提供している海外の法律事務所を指します。
2003年の外弁法(外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律)の改正を受け、外国弁護士と日本弁護士の共同事業の制限がなくなりました。
また外国弁護士が日本の弁護士を雇用することも可能になり、国内の外資系法律事務所の数が急増しました。
参考:外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律|e-Gov法令検索
特徴・おもな業務
外資系法律事務所は基本的に国内外どちらの案件も扱い、グローバルに活動しています。
業務内容は企業法務が中心となり、大手や海外企業のファイナンス案件、M&A、紛争解決に関する案件が多くなっています。
また案件に応じた外国法を用いるため、在籍弁護士には外国法の知識とビジネスレベルの英語力が求められるでしょう。
海外企業とやりとりする際は現地時間に合わせるため、勤務時間が不規則になることもあるようです。
向いている人材
外資系法律事務所に向いている方は、以下のとおりです。
- 実力主義のフィールドでスキルを高めたい方
- 難易度の高い案件にチャレンジしたい方
- 語学力を活かして働きたい方
- グローバルに活躍したい方
- 将来的に海外で働きたい方
外資系法律事務所は実力主義の色が強いため、新卒入社のハードルが非常に高くなっています。
ある程度の弁護士経験と英語や中国語などのビジネス利用経験を積んでから、セカンドキャリアとして選択する人が多くなっています。
希望の法律事務所へ転職する方法
弁護士が他法律事務所へ転職するには、以下のような方法があります。
- 知人に紹介してもらう
- ヘッドハンティング
- 転職エージェントを利用する
紹介やヘッドハンティングは、紹介先・スカウト元の事務所への内定率は高くなりますが、求職者の希望条件に適した転職は実現しづらいかもしれません。
効率的に、よりイメージに近い転職を実現させるには、転職エージェントの利用がおすすめです。
とくに弁護士は転職市場が特殊なため、数ある転職支援サービスのなかでも『弁護士業界特化型』の転職エージェントを利用するのがおすすめです。
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理想の転職を叶えるために
弁護士は閑散期がなく常に多忙であることが多いため、転職のための時間が取れず、転職機会を逃す弁護士も多くいます。
そのため、転職エージェントなど転職支援サービスを活用して、効率的に転職活動を進める必要があります。
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