パラリーガルの転職市場は、いまどうなっているのでしょうか。
本記事では、パラリーガルに関する基礎知識から転職市場、キャリアプラン、転職成功のポイントなどをおまとめしています。
パラリーガルとしてキャリアアップしたい人、未経験でパラリーガルになりたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
パラリーガルとは
パラリーガルとは、「para(補助的な)」と「legal(法律)」を組み合わせてできた言葉で、法律に関する専門知識を持ち弁護士を支えるスタッフのことを指します。
数多くの職種の中でも多忙と言われる弁護士を助け、案件を滞りなく進めるために必要不可欠な役割を果たします。
パラリーガルの仕事内容
パラリーガルの仕事内容には、弁護士秘書や一般事務が行うような電話対応や郵便物の処理、経理など一般企業の事務職でも行うような仕事も含まれます。
一般事務と異なるのは、基礎的な法律知識がなければ対応や判断が難しい、資料収集や文書の作成、案件の基礎対応も業務に含まれることです。
パラリーガルの専門業務として、具体的には下記のような業務が挙げられます。
- 資料・文献の収集
- 法令・判例の調査
- 法律文書の作成
- 案件の初期ヒアリング
- 相談・打ち合わせ・裁判の同行と記録
- スケジュールの調整
- 手続きや交渉の補佐
パラリーガルの仕事のやりがい
パラリーガルは、業務内容の特性から、パラリーガル特有のやりがいがあると言われています。
いくつか代表的なものを紹介します。
専門性が高い仕事ができる
パラリーガルは、事務作業だけでなく、弁護士の補佐的な役割を果たします。
はじめから専門知識がなくても就ける職業ですが、法律知識を身につけながら、書類作成や案件対応など業務範囲を伸ばしていくことができます。
働きながらスキルや経験を伸ばしていく感覚が強いため、キャリアに対する意欲が高い人にとってはやりがいを感じることができるでしょう。
法律問題解決の一端を担うことができる
弁護士や顧客の近くで仕事を行うため、当事者意識をもって業務に向かうことができます。
一般事務の対応のみではなかなか目にすることのない現場や顧客と直接やり取りができる立場のため、問題解決および事務所の売上に貢献していることを実感できます。
パラリーガルの年収
パラリーガルの年収は、新卒・未経験の場合200万~300万円程度で、経験者採用の場合は300万~400万円程度となっています。
専門性が求められるものの、一般事務と年収に大きな差はありません。
パラリーガルが年収を上げるためには、専門性を高めて他事務所に転職したり、大手企業の法務部に転職したり、資格を取得して専門職として事務所・一般企業に入り直すなど、様々なキャリアプランがあります。
パラリーガルと弁護士秘書・事務職員の違い
パラリーガルや弁護士秘書など、法律事務所で弁護士のサポート業務を行うスタッフを「法律事務職員」や「事務所スタッフ」と呼びます。
一般作業事務のほか、弁護士のスケジュール管理や移動・出張の手配など、弁護士の秘書業務に特化しているのが「弁護士秘書」です。
事務員のなかでも、法律の知識や経験を求められる業務を行うのが「パラリーガル」であり、弁護士秘書とパラリーガルの大きな違いは、法律の専門性を必要とされるかどうかです。
弁護士秘書になるには、法律知識は必要ありませんが、高いコミュニケーション能力など秘書としてのスキルが求められます。
ただし、事務所の規模や体制によっては、パラリーガルが秘書を兼任する場合もあるため、入所する前に業務内容について確認することが大切です。
パラリーガルの転職市場とキャリアプラン
パラリーガルは、もともとアメリカで浸透していた職業で、日本で職業として認知され始めたのはここ10年ほどのことです。
その一方で、パラリーガルの業務範囲の広さから、法律事務所で重宝される存在となっており、求人数は右肩上がりとなっています。
法律事務所への転職
現職で法律事務所のパラリーガルとして勤めている人にとって、転職は難しくないでしょう。
ただし、他の職種と同様に、パラリーガルの転職でも経験やスキルが求められます。
現在勤めている事務所で幅広い業務経験を積む、または応募先の事務所が特化している分野での経験を積みましょう。
また、司法書士など関連資格を取得すると、評価される可能性があります。
未経験でもパラリーガルに転職できる?
パラリーガルの中途採用は基本的に経験者を求めているため、業界未経験からパラリーガルに転職することは、容易ではありません。
法律事務所で働いた経験がなくても、一般企業の法務部や、他士業系事務所での業務経験があれば有利でしょう。
特に、大学で法律について学んでいたり、法科大学院を卒業している人はパラリーガルとして重宝されます。
法律に関連するアピールポイントがない場合は、まずは一般事務として法律事務所に入り、働きながら法律知識を身に着けることでパラリーガルを目指すことも検討しましょう。
パラリーガルから企業法務への転職
パラリーガルは、一般企業の法務部でもその専門知識を評価され、重宝されている存在です。
特に、企業法務分野に特化した法律事務所での経験があれば、転職で有利に働くでしょう。
一般的に、法律事務所よりも企業の法務部のほうが働き方が安定していると言われているため、ワークライフバランスを保つために転職を検討する人も多くいます。
パラリーガルの転職に必要なスキル・経験
パラリーガルとして評価されるスキル・経験がいくつかあるため、詳しくご紹介します。
法律知識
パラリーガルの特徴は、基本的な法律知識を備えていることです。
大学や法科大学院で法律を学んだ経験ももちろん重宝されますが、法律事務所で一般事務をこなしながら学んだ知識でも十分評価されます。
事務所で担当していた業務内容や、案件で扱った法律分野について詳細に伝えることで、評価が上がる可能性があります。
法律事務手続き
法律知識を活かして、基本的な事務手続きを行えることが、パラリーガルが重宝される1番の理由です。
法律相談の初期対応や手続きを進めた経験があれば、転職活動の中で積極的にアピールしましょう。
一般作業事務スキル
パラリーガルであっても、一般作業事務も業務内容のひとつです。
経理業務や郵便物の処理、電話対応など、一般企業でも必要とされる一通りの事務作業ができなければ、事務員として雇ってもらうことはできません。
パソコンスキル
パラリーガルは、弁護士の代わりに書類を作成します。
WordやExcelを活用して、一通りの形式の書類作成や計算処理は対応できるようにしておきましょう。
語学力
事務所によっては、パラリーガルにも語学力が求められる場合があります。
特に大手事務所に入所したい場合は、クライアントが海外の企業だったり、海外の拠点とやり取りしたりする機会が多いため、語学が堪能なパラリーガルは重宝されます。
コミュニケーションスキル
パラリーガルは一般作業事務に限らず、案件の対応や裁判・打ち合わせに同行することがあります。
そのため、話す力と聞く力が重要になり、さらに相談や打ち合わせの内容を整理してまとめられる思考力も必要になります。
企業法務の対応経験
一般企業の法務部に転職する場合は、企業法務系の経験があると、有利になります。
特に、応募先の企業と同じ規模や業界の企業法務の経験がある場合は、積極的にアピールするとよいでしょう。
パラリーガルの転職が有利になる資格
パラリーガルには、必須の資格はありません。
しかし、転職に有利な資格はいくつかあるため、転職によってキャリアアップを狙う人は参考にしてみてください。
パラリーガル認定資格
パラリーガル認定資格は、日本リーガルアシスタント協会が実施している、国内で唯一のパラリーガル資格です。
実務経験がなくても受験可能なため、未経験でパラリーガルになりたい人にもおすすめの資格です。
ただし、パラリーガル認定資格講座の修了が受験資格となるため、まずは受講の申し込みを行いましょう。
ランクが初級・中級・上級と3つに分かれており、自分のレベルに合わせて受験できることも魅力です。
法律事務職員能力認定試験
法律事務職員能力認定試験は、日本弁護士連合会が実施している、現役法律事務員のための資格です。
法律事務所への転職でキャリアアップを狙っているパラリーガルにおすすめの資格です。
司法書士
司法書士は、法律に関する書類の作成や手続きを行う法律事務の専門家であるため、パラリーガルにぴったりの国家資格です。
合格率が低く、最難関国家資格とも言われていますが、その分転職で有利に働くポイントとなるでしょう。
パラリーガルの転職活動のポイント
パラリーガルの需要が高まっており、採用活動も活発になっていますが、パラリーガルに求められるレベルも上がっています。
転職活動を成功させるためにも、以下のポイントを押さえて効率的に転職活動を行いましょう。
情報収集を綿密に行う
パラリーガルの場合、一般事務よりも弁護士や案件に深く関わる機会が多いため、事前の情報収集が重要です。
情報収集により入所後のミスマッチを防ぐほか、取り扱い分野に近い案件の対応をした経験や活かせるスキルを伝えることで、適切なアピールをすることができます。
事務所によっては、HP上で求めている人物像など要件を細かく記載している場合もあるため、見落としがないようにしっかり調べましょう。
端的で分かりやすくアピールポイントをまとめる
パラリーガルは、業務上で書類作成や案件相談の初期対応を担うため、応募書類や面接で基本的な素養を見られます。
端的に結論から述べ、説明を付け加える場合も事例や数字を交えて具体的に話すことで、積極的にアピールしていきましょう。
「誤り」をなくす
法律書類の作成において、「誤りなく」まとめることが何よりも大切です。
特に、言い直しができない応募書類については、提出する前に何度も確認し、事務所に所属する知り合いやエージェントを活用して第三者のチェックもお願いするようにしましょう。
未経験の場合は基礎スキルを磨く
未経験の場合、パラリーガルの転職難易度は格段に上がるため、一般事務やパソコン、語学力など法律以外の面でアピールできるポイントを作りましょう。
また、転職期間に余裕がある場合は、パラリーガル資格認定講座を受けるなどして、法律の基礎知識を身に着けておくと、より転職成功の確率が上がるでしょう。
転職エージェントを活用する
個人での情報収集や選考対策では、できることに限界があります。
転職エージェントは、選考応募で終わる求人サイトと違い、求人紹介から応募書類の添削、面接対策、さらに内定後の条件交渉までサポートしてもらえます。
特に、法務人材特化型など、業界特化の転職エージェントに登録すると、一般には出回っていない非公開求人の紹介を受けられます。
まとめ
パラリーガルの市場価値は高まっていますが、その分高いスキルや経験が求められます。
転職活動をスムーズに進めるためにも、情報収集やパラリーガル資格認定講座の受験、エージェントの活用など、事前準備は抜かりなく行いましょう。