日本に数多く存在する法律事務所の中でも、所属弁護士数で上位5位に入る法律事務所を「五大法律事務所」と呼んでおり、弁護士数だけでなく案件規模や報酬面でも日本を代表する法律事務所です。
「五大法律事務所」と一括りに呼ばれていても、事務所ごとに業務内容や活躍分野で特徴があります。
本記事では、五大法律事務所それぞれの特徴や年収、五大法律事務所で働くメリットから入所方法まで詳細に解説します。
入所を迷っている人や、現職の環境と比較したい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
五大法律事務所とは?
五大法律事務所とは、所属弁護士数が多い「西村あさひ法律事務所」「弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所」「TMI総合法律事務所(弁護士法人)」「弁護士法人森・濱田松本法律事務所」「弁護士法人長島・大野・常松法律事務所」の総称です。
五台法律事務所はいずれも所属弁護士数が500人を超えており、6位以降と大きく差をつけています。
順位 | 事務所名 | 所属弁護士数 |
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1 | 弁護士法人西村あさひ法律事務所 | 664 |
2 | 弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所 | 587 |
3 | TMI総合法律事務所(弁護士法人) | 577 |
4 | 弁護士法人森・濱田松本法律事務所 | 575 |
5 | 弁護士法人長島・大野・常松法律事務所 | 545 |
6 | ベリーベスト法律事務所(弁護士法人 ※1) | 381 |
7 | アディーレ法律事務所(弁護士法人 ※2) | 231 |
※1 ベリーベスト法律事務所:「弁護士法人VERYBEST」と「弁護士法人ベリーベスト法律事務所」を合算しています。
※2 アディーレ法律事務所:「弁護士法人AdIre法律事務所」と「弁護士法人アディーレ法律事務所」を合算しています。
五大法律事務所の業務は、コーポレートやM&A、ファイナンスなど、企業から依頼を受ける大規模案件を取り扱うため、必然的に必要とする弁護士の数が多くなり、規模を拡大してきたと考えられます。
また、日本国内の主要都市に拠点を構えるほか、海外の都市の中でも経済の中心地や日本企業と関わりの深いエリアに拠点を拡大しており、グローバルにサービス展開しています。
各事務所について、詳しく解説していきます。
西村あさひ法律事務所
事務所名 | 西村あさひ法律事務所 |
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設立 | 2007年(合併前の西村法律事務所は1966年設立、松嶋法律事務所は1976年設立、桝田江尻法律事務所は1977年設立) |
所属弁護士数 | 664人 |
国内拠点 | 東京/大阪/名古屋/福岡/札幌 |
海外拠点 | バンコク/北京/上海/ドバイ/フランクフルト/デュッセルドルフ/ハノイ/ホーチミン/ジャカルタ/クアラルンプール/ニューヨーク/シンガポール/台北/ヤンゴン |
取扱領域・分野 | <法分野> M&A/コーポレート/ファイナンス/リアルエステート/事業再生/倒産/争訟/知的財産法/情報法/危機管理/独占禁止法/競争法/税務/労働/人事/消費者法/通商法/投資法/国際関係法務/ウェルスマネジメント/公益的活動/公共政策 <産業> 自動車/自動車部品/CASE/MaaS/航空/宇宙/ドローン/ケミカル化学/コンシューマー&リテール/エネルギー/電力/金融機関/FinTech/食品/農林漁業法務/アグリ・フードテック/建設/インフラ/機械/その他製造業/海事/船舶/鉱業/金属/医薬品/ヘルスケア/ライフサイエンス/プライベート・エクイティ/不動産/官公庁/地方自治体/スポーツ/メディア/エンタテイメント/AI/テクノロジー/テレコミュニケーション/デジタルトランスフォーメーション/デジタルイノベーション/サステナビリティ |
参考:西村あさひ法律事務所
弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所
事務所名 | 弁護士法人アンダーソン・毛利・友常法律事務所 |
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設立 | 2005年(合併前のアンダーソン・毛利法律事務所は1952年設立、友常木村法律事務所は1967年設立) |
所属弁護士数 | 587人 |
国内拠点 | 東京/大阪/名古屋 |
海外拠点 | 北京/上海/香港/シンガポール/ホーチミン/バンコク/ジャカルタ/ロンドン |
取扱領域 | <業務分野> コーポレート/M&A等/規制当局対応・危機管理/キャピタル・マーケッツ/ファイナンス/不動産/人事・労務/知的財産・IT等/個人情報保護・データ保護/ライフサイエンス/テクノロジー・インフォメーション/メディア・エンターテインメント/独禁法・競争法/税務/ウェルス・マネジメント/資源・エネルギー/紛争解決/事業再生・倒産/経済安全保障および通商/海外法務 <産業> 銀行/証券/保険/信託/プライベート・エクイティ/アセット・マネジメント/その他金融/不動産・REIT/資源・エネルギー/運輸・物流/通信・メディア・エンターテインメント/情報産業・インターネット・セキュリティ/医療・製薬・ヘルスケア・ライフサイエンス/バイオ/スポーツ/自動車・造船・機械/化学/製紙/食品・飲料/ブランド・アパレル/鉄鋼・金属/電子部品・電子機器/消費財・小売・商社/建設・土木・インフラ/ホテル・レジャー・カジノ/教育・人材/政府・地方公共団体・公的機関 |
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TMI総合法律事務所
事務所名 | TMI総合法律事務所 |
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設立 | 1990年 |
所属弁護士数 | 577人 |
国内拠点 | 東京/名古屋/大阪/京都/神戸/福岡 |
海外拠点 | シリコンバレー/ブラジル/メキシコ/上海/北京/ハノイ/ホーチミン/ヤンゴン/バンコク/プノンペン/シンガポール/フィリピン/マレーシア/インドネシア/ロンドン/ケニア |
取扱領域 | <法分野> コーポレート/ファイナンス/知的財産/危機管理/事業再生・倒産処理/争訟/税務/独占禁止法・競争法/労働法/不動産/環境・エネルギー/海事法/保険/(一般・国際)民事/弁理士業務 <産業> 自動車/機械・電気・精密/情報・通信・メディア・IT/エンタテインメント・スポーツ/銀行・証券/保険・信託・その他金融/ファンド/食品・食材・飲料/エネルギー・素材・化学/建設・建築・資材/医薬・ヘルスケア/学校法人・教育/運輸・物流/海事(海運・造船)/宇宙航空/商社・卸売・小売/ブランド/不動産/自治体・公共サービス/総合サービス |
参考:TMI総合法律事務所
弁護士法人森・濱田松本法律事務所
事務所名 | 弁護士法人森・濱田松本法律事務所 |
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設立 | 2002年(合併前の森綜合法律事務所は1971設立、濱田松本法律事務所は1975年設立) |
所属弁護士数 | 575人 |
国内拠点 | 東京/大阪/名古屋/福岡/高松 |
海外拠点 | 北京/上海/シンガポール/バンコク/ヤンゴン/ベトナム(ホーチミン/ハノイ)/ジャカルタ |
取扱領域 | M&A/コーポレート・ガバナンス/規制法対応/取引/ファイナンス/インフラ/エネルギー/争訟/紛争解決/事業再生/倒産/危機管理/競争法/独占禁止法/IT/ライフサイエンス/知的財産/ヘルスケア/医療/薬事/税務/ウェルス・マネジメント/相続・事業継承/労働法務/国際業務/通商法/Fintech/サステナビリティ |
弁護士法人長島・大野・常松法律事務所
事務所名 | 弁護士法人長島・大野・常松法律事務所 |
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設立 | 2000年(合併前の所沢・長島法律事務所は1961設立、ブレークモア法律事務所日比谷分室は1987年設立) |
所属弁護士数 | 545人 |
国内拠点 | 東京 |
海外拠点 | ニューヨーク/シンガポール/バンコク/ホーチミン/ハノイ/ジャカルタ/上海 |
取扱領域 | <業務分野> コーポレート/M&A/ファイナンス/危機管理/リスクマネジメント/コンプライアンス/事業再生・倒産/紛争解決/労働法/不動産・REIT/知的財産/独占禁止法/競争法/税務/ウェルスマネジメント・事業継承/インフラ/エネルギー/環境/薬事・ヘルスケア/個人情報保護・プライバシー/消費者関連法/国際通商・経済制裁法・貿易管理 <業種> 建設業/食品/飲料/化学/鉄鋼/金属/電機/自動車/船・航空機等/衣料/アパレル/製薬業/その他製造業/情報通信・ITサービス業/マスコミ・広告/運輸/倉庫/商社/卸・小売業/銀行業/証券業/保険業/ノンバンク等/不動産業/ホテル/レストラン業/人材サービス業/コンサルタント/研究機関/衣料/介護/ヘルスケア業/教育/その他サービス業/官公庁/公益団体/農業/水産業/林業 |
五大法律事務所の年収
五大法律事務所は、高収入と言われる弁護士の中でも特に年収が高く、新卒1年目から年収1,000万円を超えるケースが一般的です。
所属年数3~5年目になると、1,500万円~2,000万円ほどが相場になり、アソシエイト弁護士からパートナー弁護士になると、年収は億を超えることもあるそうです。
実績に応じて年収が上がりやすい一方で、実力差や労働時間に応じて如実に年収の差が開く傾向にあるため、競争意識が高くなりそうです。
五大法律事務所の働き方
五大法律事務所は、中堅や小規模法律事務所より報酬が高い分、案件の数も規模も大きいため、仕事量が膨大と言われています。
一緒に仕事をするパートナー弁護士や時期によって仕事量は変わりますが、基本的には残業は当たり前の環境のようです。
また、海外のクライアントが多く、海外拠点ともやり取りが発生することで、時差の関係上業務時間外での対応が発生することもあります。
時間と体力が削られる労働環境ですが、その分クライアントと業務領域の幅が広く様々な経験を積めるため、働き甲斐のある環境です。
五大法律事務所で働くメリット
五大法律事務所は、弁護士ならだれもが目指したことのある事務所でしょう。なぜそこまで人気なのでしょうか。
五大法律事務所で働くメリットをいくつか挙げていきます。
ハイレベルで大規模な案件に携われる
五大法律事務所は、名実ともに日本を誇る法律事務所です。そのため、日本の大企業からの依頼など大規模な案件のほとんどが五大法律事務所で扱われています。なかには、法律相談にのるだけで名誉を感じられるような案件もあるでしょう。
ただし案件の難易度も相当なものになるので、並みの知識と胆力では乗り越えられません。大規模案件はその分世間の注目度が高く、重い責任がのしかかる業務に追われることとなります。
ストレスや疲労をものともせず、ハイレベルな環境でしか得られない経験と成長を望む人にはぴったりの環境かもしれません。
業務分野・拠点が幅広い
五大法律事務所の各公式サイト等をみると分かりますが、できないことがないのではないかと思うほど取り扱い分野が多岐にわたります。
基本的には分野ごとに担当が分かれ、各分野のプロフェッショナルになるケースが多いようです。ただし複雑な案件には複数分野の弁護士が集まって対応するため、多様な知識を得られる環境であることに間違いありません。
また、五大法律事務所は主所在地である東京都のほか、日本の主要都市に事務所を構えています。国内に限らず海外拠点も持ち、国際案件に明るく外国法弁護士も多数所属しています。
海外にも活躍の場を持ちたい人や、外国語などグローバルなスキルを活かしたい人にとって理想のキャリアを実現しやすい環境といえるでしょう。
教育環境など組織体制が整っている
五大法律事務所ほど大所帯で、歴史がある法律事務所であれば、教育環境や組織構造が整備されています。留学制度などスキルアップのための制度のほか、キャリア継続のため特別休暇などサポート制度が整っています。
また、ダイバーシティを推進している事務所が多く、歴史や秩序を重んじる姿勢と多様性を認め尊重する考えが共存しています。さまざまなバックグラウンドをもつ所員が難なく活動できるよう、環境や制度が整備されています。
同僚からノウハウと刺激を得られる
五大法律事務所は初任給から年収1,000万円に到達すると言われていますが、その分厳しい採用基準が設けられています。高学歴で司法試験の成績上位者であることに加えて、人格者であることも求められます。
また、入所後もハイレベルな人材同士で切磋琢磨しあいながら業務に取り組むこととなります。常に競争環境に身を置くことはストレスになりますが、そのストレスを良い刺激ととらえ成長できるひとが活躍できる環境といえるでしょう。
収入や福利厚生が高水準
五大法律事務所は給与が十分にもらえるうえ、大手事業会社のように福利厚生がしっかりしており多面的に生活が保障されている環境です。
各種保険が完備されているほか、通勤手当や食事手当など各種手当がつきます。事務所によってはカフェや食堂がついたり、メンタルヘルスケアを目的とした福利厚生も豊富です。
非常に多忙で休暇が取りづらいと有名ではありますが、有給休暇のほかにさまざまなケースを想定した休暇制度が整えられています。ひとによっては、働きやすい環境と言えるかもしれません。
五大法律事務所に入所する際の注意点
五大法律事務所に入所すると良いこともたくさんありますが、ひとによってはデメリットに感じる点もあります。
入所を検討している方は、入所する際の注意点をいくつか挙げますので参考にしてください。
とにかく多忙
五大法律事務所に限らず、弁護士は多忙でワークライフバランスを保ちづらいと言われています。実際、終電以降の深夜遅くまで働いたり、休日出勤は当たり前、という弁護士が多いようです。
なかでも五大法律事務所は複雑で難易度の高い案件を取り扱うため、どうしても案件に対して消費する時間が長くなってしまうのです。弁護士個人の能力や持っている案件数、時期によって忙しさに差はありますが、息をつく暇がない状態が通常運転のようです。
趣味や家族との時間などプライベートを大切にしたい人や、心身の健康に不安のある人にはおすすめできない環境かもしれません。
圧倒的実力主義
採用過程から入所後の業務中まで、常に実績で判断される環境だからこそ、好待遇が約束されています。これまで学校や修習期間に好成績を収めてきた人でも、実際に働いてみると一筋縄ではいかないことが多いでしょう。
特に五大法律事務所には弁護士のなかでも優秀な人材が集まるため、思うように成績が伸びなかったり、同年代の活躍をみてストレスを感じることがあるかもしれません。
他人を気にして自分を追い込み過ぎてしまったり、プレッシャーに弱いタイプの人は、重責に耐えられない可能性があります。
一般民事はほぼ関与しない
五大法律事務所など大手法律事務所は、基本的に企業や組織の法律相談を請け負っています。一般民事を取り扱っている事務所はほぼないに等しいでしょう。
一般民事の経験を積みたい方は、中小規模の法律事務所や地方密着型の法律事務所に所属すべきです。
五大法律事務所に入所するためには
五大法律事務所への転職を検討している方は、採用基準が気になることでしょう。入所するためにはなにが必要かおまとめしているので、参考にしてください。
必要な経験・スキル
弁護士資格は必須として、そのほかに必要とされる経験やスキルは以下のとおりです。
- 法律事務所での実務経験(目安:3年以上)※事業会社のみの経験は不可の場合が多い
- 応募求人の配属分野における実務経験(一通りひとりで対応できるレベル)
- 注力分野の実務経験
- 企業法務系事務所での実務経験
- 弁護士経験がない場合、裁判官・検察官など官庁での実務経験
- コミュニケーションスキル
- ビジネスレベルの英語力(書類作成や会議で使用できるレベル)
あくまでも、必要とされる経験・スキルの一例です。事務所や応募求人によって条件が異なるため、事前確認が必須です。
応募求人、または事務所が力を入れている分野によって、必要とされる実務経験の範囲が異なる可能性があります。応募書類や面接等で、担当した案件の内容について必ず聞かれるため、応募先と関連性の高い経験をアピールするようにしましょう。
実績重視の採用基準といえども、人柄ももちろん見られます。求められる人物像については後述しますが、コミュニケーションスキルなど円滑に業務を進めるうえで必要な素質は面接でチェックされます。
また五大法律事務所の場合、クライアントとも所員とも英語でコミュニケーションをとる機会があります。必須要件というよりは歓迎要件として提示されているケースがほとんどですが、入所後に英語力を伸ばせる程度の基礎がなければ不採用となる可能性があります。
求められる人物像
五大法律事務所で働く弁護士は、どんな人物なのでしょうか。下記に一例を挙げてみたので、参考にしてください。
- 配属分野に興味関心がある方
- 業務の幅を広げたい方
- 専門性を高めたい方
- 転勤や海外出張が可能な方
- 多様性を受け入れ協調できる方
各事務所がどんな人物を求めているのかは、ミッションや理念を読み解くと見えてきます。採用サイト等に記載がない場合は、事務所の公式サイトをチェックしてみるとよいでしょう。
また、弁護士の転職支援実績がある転職エージェントであれば、各事務所の内情に詳しいため、具体的な求める人物像を教えてくれるかもしれません。
五大法律事務所に転職するなら専門家に相談を
五大法律事務所は、所属弁護士も案件もハイレベルな環境です。それゆえ、採用条件は非常に厳しく、軽い気持ちで入所できない事務所です。
ネット上など公表されている採用条件はあまり詳しく書かれていないため、五大法律事務所に転職する際は転職エージェントを利用して応募することをおすすめします。
転職エージェントは法律事務所と直接つながっているため、事務所が求める人物像をよく理解しています。特に、弁護士特化の転職エージェントであれば、他法律事務所との比較もしやすくなります。
例えば、弁護士特化の転職エージェントNO-LIMITは、法律事務所の非公開求人を多数保有し、法曹業界専門のアドバイザーが厳選した求人を提案してくれます。
もともと法律事務所の集客支援サービスを展開していたため、法律事務所の内情に詳しく、応募書類の添削や面接対策を事務所ごとに最適な形でサポートしてくれます。
弁護士が転職するなら、とりあえず登録しておきたい転職エージェントのひとつと言えるでしょう。
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