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ノキ弁(軒先弁護士)とは|働き方やメリット・デメリット、キャリアイメージなどを解説

更新日: 公開日:

ノキ弁とは、漢字で書くと「軒弁」と表現され、軒先弁護士という文字通り、事務所には所属しているが、経費負担や一定のロイヤリティを納めつつ、自分で独立して案件を受けて仕事をする働き方の弁護士です。

業務執行に関わるパートナー弁護士や、事務所の業務を受託して事務所に貢献するアソシエイト弁護士の立場とは大きく異なります。

どの程度自由度があるかは事務所との合意内容や、関係性の密度によっても異なります。

弁護団事件や主義・思想面が出るような案件など特殊な案件以外は、基本的に自分でクライアントを獲得して活動を行うことができるでしょう。

法律事務所での働き方にも、経営者の立場から雇われの立場、フリーランス的な働き方まで様々です。また、それぞれにメリット・デメリットがあります。

弁護士の働き方を示す名称にも種類がありますが、その中で、ノキ弁といわれるものがあります。ノキ弁は、どのような働き方なのでしょうか。

この記事では、弁護士の働き方について、様々な種類の働き方をご紹介しつつ、ノキ弁という形態について、概要からメリット・デメリット、向いている・向いていない人の特徴、キャリア形態としてのポイント、キャリアの実例まで幅広く解説します。

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ノキ弁の他の呼び方|ボス弁・イソ弁・タク弁等の呼称の意味

ノキ弁以外にも弁護士の働き方を示す名称には種類がありますが、それぞれどのような働き方なのでしょうか。

日本全国の弁護士の数が4万人を超え、毎年1500人程度ずつ増加し、弁護士の働き方も多様化しています。

そもそも法律事務所だけでなく、企業、官公庁、国際機関内で働く場合もあるほか、自ら起業して新しいサービスを展開している弁護士もいます。

ボス弁

ボス弁は、経営者弁護士のことをいいます。会社でいえば、代表取締役・CEO・社長のポジションにあたる人で、事務所のトップです。

また、「パートナー」弁護士というものもあります。パートナー弁護士は、字のごとく、ボス弁の「パートナー」として事務所のコアメンバーに位置づけられます。

一定の経験・実績や売上に貢献してくると、後で述べるアソシエイトから昇格・昇進する形で就任するのが一般的です。

複数人の弁護士が所属する法律事務所は、弁護士という専門家の集団であり、「弁護士法人」という組織形態をとらない限り、組合の形で整理されます。

そして、パートナー弁護士は、組合に対して出資し、事務所としての業務執行に関わる立場となります。

イソ弁

イソ弁は、雇われ弁護士のことをいいます。業界の中では、「アソシエイト」と呼ばれるのが一般的です。

大手・大規模の事務所では、文字通り雇用契約に基づいて働く形もありますが、多くの事務所では「雇われ」といえど、業務委託契約の形態をとります。

事務所の規模によって異なりますが、アソシエイトにもいくつか種類があります。

1つはジュニアアソシエイトで、新人弁護士がこれにあたります。およそ入所1年目から3年目程度(ないし5年程度)の弁護士の職位です。

弁護士としての立ち上がり、下積み期間のようなものです。

もう1つは、シニアアソシエイトです。シニアアソシエイトは、およそ3年目から10年目(ないし12年程度)の弁護士です。

相談・受任から1人で案件を一通りこなせるようになっていて、自分の専門分野も形成されてきたり、後輩弁護士を育成したりする立場になります。

支店を持つ事務所では、基本的にはパートナー弁護士などエグゼクティブ層が支店長になりますが、支店の規模によってはシニアアソシエイト弁護士が支店長を担う場合もあります。

タク弁

タク弁は、自宅兼事務所の形で法律事務所を開業・経営して弁護士活動を行っている弁護士のことをいいます。自宅の「タク」で、タク弁です。

特徴としては、事務所との行き来などがなく、期日など外業務を除けば全て自宅で完結するという点です。

現代はフルリモートでアドレスホッパー、ノマド的に働くフリーランスが増加しているところですが、一般的に弁護士が法律事務所に所属する働き方として「フルリモート」の形で働くのは、遠方企業への出向という形で弁護士業務を行うような稀なケース以外、困難であると考えられます。

ただし民事裁判のIT化により、リモートワークの活用が増えているため、弁護士がリモートで自宅で執務することも増えているところではあります。そのため、自宅だけで仕事をしたいという人は、タク弁という働き方で、これを実現することができるのです。

もっとも、業務の性質上、様々な依頼者と関わる中で、依頼者との間でトラブルになったり、相手方から恨まれたりするような仕事でもあります。そのため、自宅を事務所とすることで、襲撃を受けたりするケース場合もあることから、そうしたリスクと隣り合わせではあるといえるでしょう。

ケー弁

ケー弁は、もはや固定の拠点となる事務所すら持たずに弁護士活動をする場合をいいます。喩えとして、「ケータイ」1つで仕事をするという意味で、「ケー弁」と呼ばれます。

静かなカフェ・個室やシェアオフィスなどで依頼者と打ち合わせなどを行い、書面も作成したりして業務を行うような働き方です。

ただし、注意すべきポイントもいくつかあります。

1つは、法律事務所の設置義務との関係です(弁護士法20条2項参照)。弁護士は、所属する単位弁護士会の管轄する地域内で法律事務所を設定する必要があります。そのため、文字通りケータイ1つで弁護士をやるというのは、問題点もあることから、厳密には執務場所が事務所だけでなく様々な場所で遊撃的に職務又は職務に関連することをするというイメージです。

また、守秘義務(同法23条、弁護士職務基本規程23条)との関係です。カフェなど人の出入りが激しい公共空間のほか、シェアオフィスであっても、個室で空間的な仕切りがあるなど物理的な遮断措置をとっておく必要があります。

また、情報セキュリティ面でも、セキュリティソフトの導入は必須です。

ノキ弁のメリット・デメリット

ここまで様々な種類の弁護士の働き方を解説してきましたが、ここからノキ弁に焦点を当てて詳しくみていきましょう。まずは、ノキ弁の特徴と、メリット・デメリットについてです。

ノキ弁の特徴

もちろん事務所側とノキ弁との間での個別の交渉によって異なりますが、ノキ弁には、押し並べて下記のような特徴があります。

  • 法律事務所への従属性が低い:雇用や業務委託ではない
  • 固定の給与がない:案件の獲得も、報酬の獲得も自己責任
  • 財務面(コスト管理)は独立採算:割合的な分担で、事務所の固定費などを納入

ノキ弁のメリット

ノキ弁のメリットとしては、次のようなポイントが挙げられます。

1つ目は、自由に仕事をすることができる点です。

ノキ弁の形であれば、基本的に、事務所から案件のアサインを受けることや業務を振られることはありません。自分のやりたい案件や業務をやることができるでしょう。

2つ目は、経費などのコスト負担分を除けば、自分次第で報酬が青天井であるという点です。

通常の事務所であれば、パートナー弁護士でも、報酬は事務所として受け取り、それが所内の定めなどに従い月次で分配される形で自分に支払われます。アソシエイトであれば、年次などで固定報酬があり、歩合給が適宜設定されていたりします。

ノキ弁の場合、事務所内の人的・物的リソースを使う分のコスト負担のほか、ロイヤリティとして事務所に支払う場合が考えられますが、それを差し引けば、自分の案件の取り分はすべて自分のものになります。

3つ目は、個人開業の事務所と比べて、集客面で不安がある場合でも、事務所の名前で案件をとることが出来る可能性がある点です。

1つ目のメリットから考えると、事務所とノキ弁は相互に干渉しないような関係が基本ですが、自分のキャパシティの中で捌ける限度を超えた場合、あるいは自分が経験のない分野の案件で事務所にとっては経験・ノウハウがある場合、共同受任などの形で案件を受けることも考えられます。

そして、このような形であれば、ナレッジシェアによるシナジー効果も期待できます。

ノキ弁のデメリット

ノキ弁のデメリットとしては、次のようなものが考えられます。

1つ目は、報酬面での保障がないことです。

パートナー弁護士あるいはアソシエイト弁護士であれば、事務所全体の売り上げの中で配分を受けることができるので、経営が回っている限り食いっぱぐれることは基本的には想定されません。

しかし、ノキ弁の場合、自由に仕事ができることと引き換えに、仕事の獲得が自己責任になります。そのリスクをとるかは、ノキ弁を選ぶ際にはまず考えるべきポイントといえるでしょう。

2つ目は、案件のミスがすべて自己責任になる場合がある点です。

この点は、事務所とノキ弁との間での合意内容によりきではありますが、案件処理で手違いをしたりして、万が一、依頼者などから責任を追及された場合、事務所とは独立して責任を負うことも考えられます。

こうした責任分担は、上記の経費・コスト負担の割合などの観点から、一定の制限やルールを制定することも考えられるので、事務所との間ですり合わせをしておくことが重要です。

ノキ弁に向いている人の特徴3つ

ノキ弁の働き方に向いている人の、キャリア志向の特徴を3つご紹介していきます。

法律事務所内の業務に囚われたくない

事務所内での働き方は、組織の構造やカルチャーにフィットしていなければ、事務所内で長期的なキャリアを築くことは困難です。

また、ボス弁との意見の不一致がある場合のほか、新人で就活時に説明されたような業務分野が多かったなどギャップがあることもあります。

この場合、もちろん、他の事務所へ転職したり、独立するという手段もあります。

しかし、多かれ少なかれ事務所の意向と自身の志向にギャップがある場合、かつすぐに転職する余裕や独立できるような資金力がない場合であれば、ノキ弁がフィットしやすいと考えられます。

営業力がある・外交的である

ノキ弁の場合、顧客の獲得・案件の受任は、基本的に自己責任です。そのため、自分で仕事を獲る力が必要です。

そうした弁護士業務自体ではない、それ以前の集客や営業を楽しく思えるようなタイプであれば、ノキ弁(あるいは開業弁護士)が最適と考えられます。

早い段階から独立を考えている

また、早い段階から独立を考えている人も適していると考えられます。

独立を考えるなら、ノキ弁として事務所に所属している段階である程度の数の案件を持ち、個人の力をつけてから、事務所を構えて開業すると独立成功の可能性が高くなるでしょう。

なお、新人弁護士でもノキ弁になることはできます。「即独に挑戦したいが、リスクが高いので不安」という人は、まさしく個人のスキルをつけるためにノキ弁が1つの選択肢となるでしょう。

ノキ弁に向いていない人の特徴

逆に、ノキ弁に向いていない人の特徴には、どのようなものがあるでしょうか。

1つは、案件を獲るための営業活動やプロモーションや、経営にほとんど興味はないが、どんどん事務所の案件を受けて事件を捌いて成長していきたいという人、つまり独立志向がない人にとっては、ノキ弁は適さないと考えられます。

また、専門性を深めるために執筆活動をしたり、事務所のネームバリューを活かしたキャリアを積んでいきたい人にとっては、ノキ弁は適しにくいといえます。

もう1つは、既存の事務所を継承・発展させたい人や、特定の事務所の中で活躍して昇進したいという人にとっても、個人スキルをつけて独立するケースが多いノキ弁は向かないと考えられます。

ノキ弁として働く場合のポイント3つ

ノキ弁として働く場合のポイントについて、いくつかご紹介していきます。

基本的には、弁護士倫理などの観点ですが、ここでは重要なものとして、コンフリクトマネジメント、情報セキュリティ、報酬分配の点について述べます。

コンフリクトマネジメント

弁護士業務におけるリスクマネジメントで基本的な点として重要なのが、コンフリクトマネジメントです。

ノキ弁の場合、形式的外形的には、同じ事務所の中で働いていますが、実質的には事務所との関係で別々の事業者として収益認識することになります。それに伴って、案件管理も、共同受任する場合を除いて基本的に別々に行うべきであると考えられます。

そのため、コンフリクトマネジメントは、複数人の所属弁護士からなる共同事務所よりも一層慎重に行う必要があります。

情報セキュリティ

情報セキュリティ面でも、気を付けるポイントがあります。

例えば、ノキ弁自身の完全個人受任案件の場合、厳密に考えるならば事務所側に対しても情報アクセスを遮断できるように、ファイアウォールの設定など情報セキュリティ対策をする必要があります。

報酬分配

事務所との紛争やトラブルを避ける必要ため、経費負担を含む報酬分配の取り決めを明確にしておくべきでしょう。

事務所のリソースやナレッジシェアを受けつつ、個人で自由に仕事をしていくためには、事務所との円滑な関係を確保しておく必要があります。

そのため、報酬関係のトラブルはしっかりとリスクヘッジしておくべきでしょう。

ノキ弁のキャリアの実例

ノキ弁のキャリアの実例をご紹介します。井上昌幸先生という方です。

井上先生のエッセイ記事のうち、ノキ弁としてのキャリアに関する部分を抜粋させて頂きます。

ノキ弁として弁護士登録をした平成19年9月,受任した仕事は1つだったと思います。売り上げは約10万円。一方,弁護士会費は日弁連・単位会合わせて約7万円ですので,当然赤字です。

ただ,私は,今後山梨県で弁護士を行っていくためには,「井上」という顔を知って頂くことが極めて重要であり,またお酒の場が好きなため(正直言いますと,こちらの方が一番の理由ですが(笑)),積極的に懇親会やお酒の場に顔を出していました。

もちろん,先輩方が私の分もご負担頂く事も多々ありましたが,自分で負担する分も多く,預金を切り崩して生活することが続きました。

しかし,「井上」を知って下さった先輩方から,法律相談の枠を頂いたり(山梨県では,登録1か月後から弁護士会の法律相談を行うことができます),「一緒に仕事をしよう。」 と言って仕事を回してくれたり,また管財事件を受けることもあり,徐々に仕事は増えていきました。

結果,年明けの平成20年1月ころからは,「ノキ弁」としての経営が成り立つようになりました。

出典:井上昌幸|『修習→ノキ弁→独立』

井上先生は、平成19年9月に弁護士登録をされてから、はじめは売上が10万円というところから始まり、弁護士会費で7万円を引かれるなど、赤字スタートであったと述べられています。

しかし、半年も経たない5か月程度で、ノキ弁としての経営が成り立つようになったと述べられています。

井上先生が弁護士1年目から独立し、ノキ弁としてキャリアをスタートされて成功された理由として考えられるポイントとしては2点あると考えられます。

1つは、お酒が好きで、積極的に様々な懇親会などに参加され、社交的であったことが挙げられます。その中で人との人脈を切り拓いていかれたものといえるでしょう。

また、そうしたお人柄であるからこそ、先輩方からの支援を受けることができたものと考えられます。

もう1つは、「井上」先生という名前で認知されていったことです。案件を獲得していくために、事務所としてではなく、自身のネームバリューで案件を獲得することができることが重要です。

ノキ弁として働くためには

最後に、この記事のポイントを3つにまとめます。

  • ノキ弁は、形として法律事務所に所属しながら、パートナー弁護士でもなくアソシエイト弁護士でもなく、個人で案件をとり、やりたい分野の弁護士業を自己責任で行う弁護士のこと。ほかにも様々な弁護士の働き方の呼称がある。
  • ノキ弁に向いているのは、独立志向があり、営業力があって外向的であるといった特徴が考えられる。
  • ノキ弁として働く際には、コンフリクトマネジメント、情報セキュリティ、そして報酬分配を中心に事務所に所属する条件を細かくすり合わせて合意しておく必要がある。ビジネスとして成立するようなシナジーを意識することが重要である。
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