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実務修習の流れとリアル|民裁修習の前半の体験レポート

更新日: 公開日:

司法試験の受験を終えられた皆さま,本当にお疲れ様でした!

4か月後には,合格発表が待っていますね。

まだ気が早いかもしれませんが,みなさんは,修習について,どんなイメージがあるでしょうか。特に,実務修習では,どんなことをするのでしょうか。

司法試験に合格者の方から,様々お話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

そこで,実務修習について,リアルなお話をしていきます。今回は,民裁修習の前半です!

【執筆者】かわしょー吉
NO-LIMITのインターンを経験。令和2年司法試験合格。
令和元年司法試験予備試験最終合格。平成30年度司法試験予備試験では、口述試験落ちを経験。
趣味は釣り。カラオケも好き。宇宙系のyoutubeを見ることがマイブーム。
Twitter:https://twitter.com/kshokichi_law

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民事裁判修習の概要

民裁修習は,配属部修習を軸として,家事事件に関する家裁修習,民事保全に関する保全部修習,民事執行に関する執行部修習があります。また,スポット的に,主に修習時間の終了後,希望者が参加できる簡易の即日起案やグループディスカッションを行う課外修習もあります。

大まかなスケジュール

配属部によって運用が異なることや,修習期によって具体的なスケジュールが異なる場合もありますが,概ね,次のようなスケジュールになります。

初日午前 オリエンテーション,注意事項の説明
初日午後 配属部での自己紹介タイム,配属部修習の流れの説明,注意事項説明,配布資料の整理,提出書類の確認および提出
※人によっては,初日から課題を出されて事件記録読みが始まる
初日から2週間目まで ・配属部修習が中心。
・初日から1週間は,2,3くらいの提出書類があるので注意する必要がある。
・修習全体での1班,2班…の区分とは別に,民裁修習の中での班分けがあり,その班ごとでの昼食会がある。
・3日目くらいに即日起案。
2週間目から4週間目 配属部修習に加え,日によって保全部修習,家事部修習が入り込む。
4週間目から最終週 配属部修習に加え,後半に執行部修習の日がある。

※修習地によって異なる場合があります。

配属部修習|修習地によって異なる

配属部修習は,民裁修習の軸です。

民裁修習では,基本的に,割り振られた配属部に通います。そのため,修習生は,各部ごとに散らばって修習します。

また,大規模修習地では,貸金返還請求事件,建物明渡請求事件,損害賠償請求事件など,いわゆる典型的な紛争類型に関する事件を取り扱う通常部と,知財事件・労働事件・倒産事件・医療訴訟・会社関係訴訟など様々専門的な事件を取り扱う専門部があります。

東京では,一部通常の事件を扱いつつ,特に専門訴訟に係る事件も集中的に取り扱う集中部という区分もあります。以下は,修習地によって異なります。

東京のほか,大阪などの大規模庁は,比較的妥当します。地方の修習地では,異なる場合があります。

各部は,基本的に5人あるいは10人の裁判官がいます。裁判長である部長裁判官と,いわゆる合議体の右陪席と呼ばれる2人から3人の裁判官,そして左陪席と呼ばれる若手の裁判官1~2人で構成されます。

修習生は各部につき,2人から4人のグループに分かれる

4人のグループの場合は,部が甲係と乙係という2つに分かれています。したがって,4人グループの配属部でも,各係で2人ずつのペアになります。

毎日,ペアで過ごしていくことになるため,ペアになった人とは,非常に仲良くなります!

なお,各部の割り振りは,自分で選択することができません。

全体の流れ

配属部修習は,全体的に,右陪席裁判官2名と裁判長である部長裁判官それぞれ,順繰りにお世話になる形の流れです。

筆者の場合を例にとって表にすると,次のようになります。

 期間 筆者 ペアの修習生
1週目から2週目 右陪席裁判官Aさん 部長裁判官
2週目から4週目 右陪席裁判官Bさん 右陪席裁判官Aさん
5週目から6週目 部長裁判官 右陪席裁判官Bさん

記録読み(主張書面および証拠の検討)

民裁修習は,これが基本です。

記録とは,裁判所が作成した調書,原被告の訴状および準備書面,甲乙号証という両当事者の提出した書証等の証拠関係書類,代理人の訴訟委任状等の書類を1冊につづったファイルのことです。

記録を読み,メモやノートを取りながら,主張整理と事実認定の自主トレをします。

主張整理では,要件事実を整理します。要件事実の整理は,特に民裁の場合,「ミニマムの原則」に従って行います。

ミニマムの原則は,導入修習の際に詳細に説明されます。ロースクールの民事実務の授業で聞いたことがあるかもしれませんが,要するに,要件事実はその最小単位で考えるという原則です。自分で記録を読み,整理した要件事実は,必要に応じて,適宜裁判官の方にフィードバックをもらうとよいでしょう。

事実認定は,主張整理をした上で,特に当事者間で争いのある争点を抽出し,その争点について証拠をもとに事実を認定していくというものです。当事者が提出している証拠が,いわゆる類型的信用文書にあたるのか,争点について事実認定をしていく上で軸になる証拠は何かなどを検討します。

上記の主張整理や事実認定の検討結果は,担当する裁判官によって口頭又は書面での報告を求められる場合もあります。

もっとも,1つ1つの事件記録を読み,全てについて主張整理や事実認定を行うことは,困難でしょう。裁判官を目指す人はそれくらい積極的に取り組む必要がある場合もありますが,そうでない場合,起案として課されたもの以外は,オフィシャルな評価にはなりません。

いわば平常点のようなものとして,考慮される程度です。

期日の傍聴

記録読みをしたもののうち,特に裁判官におすすめされたもののほか,自分で見たいと思ったものは,申し出ることで期日の傍聴をすることができます。

一般傍聴者とは異なり,口頭弁論期日に限られませんし,法廷の柵の外から見るのではありません。法廷での口頭弁論期日を柵の中で見ることができますし,一般の人は傍聴できない弁論準備手続期日や和解期日なども傍聴することができます。

おそらく民事裁判は,法廷で見る口頭弁論期日だけだと,証人あるいは当事者本人尋問などのほかは面白くないという印象を受ける人も多いかもしれません。しかし,弁論準備期日を見ることで,主張や証拠関係がどのように整理され,争点が抽出されていくのか,またどのように裁判官が心証を形成しているのかを,裁判官の立場で体験することができます

また,和解期日を傍聴することで,裁判官と弁護士がどのように協働して紛争解決を図っているのか,具体的な悩みどころや紛争解決のテクニカルな思考を学ぶことができます。

特に,期日の傍聴前後に,期日の進行や結果に対する疑問点などを裁判官にぶつけて議論することで,より深く裁判官の思考に迫ることができます。

筆者は,これまで2週間程度の民裁修習を経て,次の通り,期日傍聴にあたり準備するポイントを大まかに整理してみました。あくまで,一例です。

事件名で紛争類型を把握する 事案類型によって,ポイントになる点を推測する
当事者と時系列を整理 事案の骨格を把握
口頭弁論調書を読んで手続の進行段階を把握する ・どの程度の書面のやり取りが交わされているのか
・訴えの変更や取下げの有無
・和解の流れがあるかどうか
証拠から見る ・証拠の種類,類型的信用文書の有無など争点になりうる点を推測する
・ざっくりと主張書面を読み,主要な要件事実と照らし合わせる
争点となり得る点をブレインストーミングし,具体的に位置づける ・事実認定上の問題点
・法律上の問題点(実体法的なもの)
・法律上の問題点(手続上の問題点)
事案の帰結に関わるポイントを特定する

以上の点を整理して期日の傍聴に臨むとよいでしょう。

起案

起案は,様々な種類があります。大きく分けて,サマリー起案,リサーチペーパー,和解案の骨子といったものがあります。いずれも,実際の事件記録を素材として,記録を読み込んで取り組みます。全体を通じて4通程度作成することが課題となっています。

サマリー起案は,争点整理(主張整理)と事実認定の2種類があります。箇条書きなど骨子の形でまとめるものや,簡潔な文章で,1,2ページでまとめるものなど,担当裁判官あるいは配属部によって運用が異なります。また,配属部によっては,参考起案などを保存している場合があります。その場合は,その参考起案の体裁や記載内容を参考にして作成するとよいでしょう。

筆者も,3通,事実認定のサマリーを起案しました。

リサーチペーパー

リサーチペーパーは,特に法律上の問題点がある事件に関し,問題点に関する学説や判例を調査・考察し,その結果を書面で報告するというものです。筆者は,使用者責任の事業執行性に関する解釈論について問題となった事件に関し,リサーチペーパーを起案しました。

和解条項の骨子は,事件の中で和解が検討されているものについて,裁判所の側から提案すべき和解内容の骨子をまとめるものです。

筆者は,和解条項案の起案は,現時点ではありません。

人によっては,判決起案や訴訟進行メモといったものもあるそうです。

判決起案

サマリー起案を民事裁判の判決起案の形式,体裁に従い,かつ一応完全な文章の形にするフルスケールの起案です。

訴訟進行メモは,記録を読み,次回期日をどのように進行する,具体的な訴訟指揮や求釈明などの具体的な対応について検討した結果を書面にするというものです。

起案には,期限が設定されますが,その設定の仕方は様々です。基本的には,担当する裁判官ごとの最終日ですが,民裁修習の最終日まででも良いというケースや,期日を基準に設定される場合もあります

担当裁判官による講評の時間調整との兼ね合いもありますから,期限は徹底するようにすることが求められます。

以上が配属部修習の具体的な内容です。

その他のカリキュラムと注意点

書記官講義

裁判官の仕事と密接に関連する内容として,書記官のお仕事があります。裁判官の方は,口を揃えてとにかく書記官がいなければ仕事にならないと言います。

そんな裁判所書記官の方による講義も,カリキュラムに含まれています。

内容は,裁判所の組織の概要,部の説明,事務の分掌に関する説明,訴訟関係書類の整理業務のこと,訴訟費用や訴額の算定に関する運用など,詳細なものです。

筆者は,あまりの事務の多さに驚愕するとともに,裁判所書記官の方への尊敬の念がやみませんでした。

Wi-Fi環境は自分で用意

裁判所では,公衆WiFiがありません。というのも,セキュリティ上,修習生はアクセスできない仕組みになっているからです。そのため,修習生は,WiFi環境は,自分で整備する必要があります。

もっとも,筆者は,現時点で特に自前のWiFi環境はありませんが,特に不便はしていません。判例検索などは,修習時間中にメモを取り,帰宅後に,適宜調べています。

それでも十分に対応可能なので,慌てて買う必要もないかもしれません。

コピー機の利用に関して

コピー機は,裁判所指定のものを使用する必要があります。特に,事件記録を利用した起案などは,官物USBという専用のセキュリティUSBを使用し,かつ所定のプリンターのLANケーブルに差し込んで使う必要があります。

したがって,USBなどを差し込むところが2か所以上なければ,外部取り付けのマルチUSBがないと印刷ができないので注意が必要です。

修習生同士の交流

既に述べた通り,配属部でペアになったり,グループになったりした人とは,非常に仲良くなります。また,従来であれば,配属部の垣根を越え,班や研修所のクラスをまたぎ,飲み会などをして交流をします。

しかし,コロナ禍での修習ということもあり,そういった食事会・飲み会は制限される状況にあります。そのため,ランチタイムに,食堂で,多くて4人程度で昼食を共にするか,休日にサシ飲みをする程度です。

一刻も早く,この状況が明けることを願わんばかりです。

裁判官との交流

裁判官との交流は,部によって密度が異なります。書記官も交えて,飲み会や食事会をする場合もあるそうです。

もっとも,コロナ禍において,対面では,特にそういったことは開催されません。オンラインでの飲み会が開催される場合もあるそうです。

まとめ

民裁修習の具体的なイメージがついたかと思います。

コロナ禍での修習で,プライベート的には様々残念な点はありますが,総じて充実しており,学びがあります。裁判官の方は,人によりますが,基本的には受け身です。そのため,修習の際は,積極的に声をかけて,修習に取り組むことが重要です。

次回は,民裁修習の後半をお伝えします。家事部修習,保全部修習,執行部修習などを重点的に解説していきます。

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