2021年3月末から、74期司法修習が始まります。

日々の生活はもちろん、実務修習では、観光、飲み会など修習先での楽しみがたくさんあります。

他方で、修習生は、公務員の一種ですが、一般的な公務員同等の給料がもらえるわけではありません。

現在の司法修習生は給付金として、月額13万5000を受け取ることができます。比較対象としては、20歳から30歳程度の非正規雇用の方の月収に近いと言えます。

雇用形態、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差

参考:厚生厚労省|令和元年賃金構造基本統計調査の概況

そこで、今回は、修習生の給与について、金銭事情を中心に、修習生の経済合理的な生活はどのようなものか、考えていきます。

 

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司法修習生の給与に関する沿革

2011年までの給費制とは?月額20.42万円が支給

旧司法試験制度、そして新司法試験制度に移行した後64期の司法修習生(2011年12月)までは、月額20万4200円の「給与」が支給されていました。また、居住地から実務修習地への旅費が転居の有無に関わらず支給されていました。他方、引越し費用は、不支給でした。

そして、分野別実務修習中の各所への通所費と家賃は、それぞれ通勤手当および住居手当として支給されていましたが、最後の集合修習に関しては、実務修習等からの移動に関する旅費、そして司法研修所への通所ないし家賃なども支給されていました。

参考:司法修習生に対する支給等一覧

このように、2011年までの給費制のもとでは、20万円という充実した給与とともに、様々な費用負担がありませんでした。

なお、社会保険も、国民健康保険ではなく裁判所共済組合であったのも特徴です。

なぜ廃止になったのか?

しかし、65期司法修習から70期までの修習では、上記のような給費制が廃止されました。その理由は、「給費制を維持することに」「国民の理解を得ることは困難であった」ことであるとしています。

これを基礎づけるファクターとしては、主に3点にありました。

1つは、新司法試験制度に移行してからの合格者増加、すなわち「司法修習生の増加に実効的に対応する必要があった」ためです。

そして、かかる理由づけに付随する2点目の理由として、「司法制度改革の諸施策を進める上で」有限な「財政資金を」「効率的に活用し,司法制度全体に関して国民の理解が得られる合理的な財務負担を図る必要があったこと」があります。

さらに、3点目として、「公務員ではなく公務にも従事しない者に国が給与を支給するのは現行法上異例の制度であること」が挙げられています。

上記3点等の事情が考慮されて、上記理由による給費制の廃止となったそうです。

参考:司法修習生の給費制及び修習手当|山中理司より、平成29年4月18日㈫の参議院法務委員会における質疑応答

2012年から2016年までの貸付制|基本額23万円

2012年の65期司法修習から2016年の70期司法修習までは、貸与制でした。つまり、借りている扱いとなり、返済義務があるものです。

具体的には、基本額として月23万円が貸与されます。

もっとも、修習開始時における居住地からの実務修習地先への初日の旅費は、給費制下と同様に、転居の有無にかかわらず支給されていました。

また、引越し代相当額の移転料は、67期(平成25年11月)からは支給となりました。

他方で、分野別および選択型の実務修習中の通所費および家賃は、不支給となりました。すなわち、通勤手当および住居手当の支給がなくなったということです。同様に、集合修習中の通所費、家賃・良否の支給も不支給、日額の旅費も不支給となりました。

このように、貸与制のもとでは、23万円という支給額は上がっているものの修習終了後の返済義務があり、通勤手当や住居手当もありませんでした。

長いスパンでみれば、65期から70期の法曹の方々は、実務に出てからも経済的には大変酷なものであったと思います。

給費制が復活した理由

ところが、さらに一転、71期以降(平成29年11月)からは、貸与制ではなくなり、後述のような13万5000円を基本額とする給付金制に変わりました。

なお、希望者には、修習専念資金なる貸与金の支給がされる形になりました。

その理由は、特に弁護士の収入の減少、法曹になるまでの奨学金等の借金額の現状、そしてかかる現状に起因するかのような形でみられた法曹志望者が減少したことが挙げられます。

例えば、平成28年の調査結果によれば、新67期の所得の平均値が327万円、中央値が317万円というものでした。他方、修習終了後返還開始時点における大学・法科大学院在学中の貸与型奨学金または修習中の貸与金の残債務額の合計で200万円以上の人が全体の3割を超えている状況でした。

参考:法曹の収入・所得、奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)

このように、修習のスタート時点で、多額の借金を背負うようなケースが少なくありませんでした。

さらに、68期司法修習生に対する日弁連によるアンケート調査によれば、経済的状況への不安から進路選択を迷ったことがあったと感じた人の割合は、65%にも及んでいるような状況でした。さらに、その中で、周囲で経済的な理由から法曹になることを断念した人がいると回答した人は、73%にも及んでいました。

やはり、法曹になるまでの過酷な経済的負担と、法曹志望者が減少は非常に高い相関性を有していたと考えられます。

参考:第68期司法修習生への修習実態アンケート集計結果|日弁連 10頁から11頁

こういった現状を踏まえ、給付金制度が復活したものと思われます。

司法修習生の基本収入は月額13.5万円|補助や兼業の許可については?

司法修習生の生活事情に関しては、こちらの記事でも紹介していますが、今回は、収入の点について徹底深堀していきます。修習生の収入は、一般的な社会人に比べると、かなりカツカツですが、別途補助などはあるのでしょうか?

家賃補助

修習中、特に実務修習先で引っ越しをして住む住居に関しては、家賃補助が出ます。額は、月額3万5000です。

もちろん、家賃の相場は地方により区々ですから、切り詰めればこれだけで家賃は足りるという人もいるかもしれません。

しかし、関東近郊では、必ずしもこの額だけでは家賃全額を賄えるわけではありません。基本収入となる13万5000円を一部使うことにもなりうるでしょう。

兼業は許可制

上記のように給付金の額が多いとはいえない一方、兼業をして少しでもお金を稼ぐことは自由、というわけでもありません。

 平成29年8月4日最高裁判所規則第4号(平成29年11月1日施行)による改正後の,司法修習生に関する規則(昭和23年8月18日最高裁判所規則第15号)

 第二条
司法修習生は、最高裁判所の許可を受けなければ、公務員となり、又は他の職業に就き、若しくは財産上の利益を目的とする業務を行うことができない。

 出典:司法修習生の修習給付金の給付に関する規則(平成29年8月4日最高裁判所規則第3号)等

兼業は、アルバイトを除いて許可制です。許可の申請が不要なアルバイトの例としては、予備校の答案添削などが典型例だそうです。

過去の不許可事例としては、飲食店でのアルバイトがあったそうです。確かに、飲食店のアルバイトは、シフト勤務であることも多い上に、業務内容自体は法律の勉強とか関わりが薄いため、修習専念義務に反するおそれが高いといえるでしょう。

修習中の税金・社会保険等について

修習生給付金は雑所得として課税対象→所得税、住民税

71期以降の修習給付金制度における給付金は、旧制度下における給与ではありません。そのため、給与所得にあたらず、雑所得にあたります。

したがって、確定申告が必要になります。

課税される税目としては、所得税と住民税です。税金を支払わなければならないというのは、かなりシビアなことですよね。

なお、確定申告の方法等については、こちらのHPなどが参考になります。

参考:国税庁|初めて確定申告される方へ:令和2年分 確定申告特集 – 国税庁

社会保険関係

まず、健康保険については、国民健康保険に加入することになります。月額13万5000円という額からしても、親などの扶養に入ることもないため、健康保険の被保険者には該当しないことになります。

年金については、上記健康保険と同様に、国民年金法第一号被保険者に当たるとされています。

大学等での貸与型奨学金の返還猶予の可否

日本学生支援機構(JASSO)の返還期限猶予の制度を利用できる可能性があります。手続をとり、承認されれば、修習期間中の返還に伴う支出を避けられます。修習前に、こういった点について確認をとっておくことも重要です。

なお、JASSOの奨学金の返還期限猶予に関する手続等については、こちらのHPを参照してみてください。

公式HP:返還期限猶予返還期限猶予|手続方法

司法修習中の生活費はいくらあれば足りる?給費だけで問題ない?

司法修習中、生活費はいくらあれば足りるでしょうか?実際問題、給付金だけで生活が立ち行くのかどうか、不安ですよね。

そこで、修習給付金13万5000円+家賃補助3万5000円=17万円を前提に、司法修習生のキャッシュフローをリアルに検証・シミュレーションしていきましょう。

なお、ここでは、家賃等が高い東京修習を参考にしてみます。

家賃

家賃は23区のワンルーム家賃はおよそ7万円から13万円の範囲になるでしょう。

13万5000円に加えて3万5000円の家賃補助があるとして、家賃7万円を超えてくると残りが10万円を下回ることになります。そうすると、他の項目の出費からして、余裕があるとはいえなくなってくるでしょう。

そのため、平均よりも低めの家賃の物件を探していくことになるかと思われます。

さらに、修習は、74期ではオンラインでの導入修習を除き、4月末から2月までの1年未満の期間で実務修習先等での居住先を探すことになります。このような契約期間で普通のアパートを探そうとすると、簡単にはいかないようです。

他方で、修習生御用達のような物件があるそうなので、不動産屋に細かく相談してみるとよいでしょう。

参考:司法修習生限定特典|賃貸はレオパレス21

光熱費

光熱費は、一人暮らしでの水道代・ガス代・電気代の全体的な平均相場は、およそ1万円前後であるといわれます。

費目別では、

  1. 水道代が3000円程度(大半の地域では2ヶ月1回ごとの支払い)、
  2. ガス代が3000円~5000円
  3. 電気代は3000円

程度です。電気代に関しては、夏や冬の時期は、空調を使用する分、7000円を超えることも少なくありません。

一人暮らしでの光熱費の相場感は、実家暮らししかしてこなかった方は中々想像がつきにくいかもしれません。しかし、リアルに一度シミュレーションしてみると、キャッシュフローが明確に見えてきます。

食費

2019年の調査では、34歳までの年齢で、平均およそ44000程度とされます。もちろん、個人差があるためこの数値を一般化することはできませんが、おおよそ4万円程度ということで計算しましょう。

日用雑貨

これは男女でかなり差が出てきます。消耗品、家事雑貨、理美容品の三項目で計算すると次のようになります。

男性が計2400円、女性で8200です。倍を優に超える差があります。

出典:一人暮らしの日用品の費用。1か月で大体どれくらい?節約するコツは?|CHINTAI情報局

日用品もなるべく消耗を押さえるように工夫していきたいですね。

交際費

修習生は、様々な人との交流の機会があります。指導教官となる弁護士、裁判官、検察官の方々はもちろん、修習生同士で食事会などをする機会もあることでしょう。

そうした交際費も、少なくない支出になると考えられます。

先輩弁護士等からごちそうになることも少なからずあるかもしれませんが、ここでは、月に3回程度、1回あたり3000円程度の食事会等があるとして計算してみます。

交通費

裁判所などから遠い場合は、通勤のため各種交通機関を利用することになります。通勤手当がないため、自己負担になります。

東京修習で、毎日平均往復650円程度の費用がかかるとします。平日5日間毎日かかるとして、23日程度あるとすると、650×23日で14950になります。

その他

導入修習から実務修習、実務修習から集合修習の間では、移転費用などもかかってきます。そうした突発的な費用がかかることもあります。

まとめ

以上の検討から、基本収入13万5000円+家賃補助3万5000円のみからすると、このようなキャッシュフローシミュレーションになります。

収入 修習給付金 135000円
家賃補助 35000円
支出 家賃 70000円
光熱費 7000円から15000円
食費 40000円
日用品購入費 2500円~8200円
交際費 9000円
交通費 14950円
合計   (135000+35000)-最大157150円=12850円

結果、12500円ほど残りましたが、これより高くなることも十分ありうること、場合によっては、借りている奨学金等の返済があるとすると、かなりギリギリの生活であることがわかります。

そのため、修習専念資金の貸与金を借りるか、自分で予備校の添削のバイトなどをある程度こなして余力を残せるようにしておかないと、決して安心できないものといえます。

司法修習後に発生する費用は何?

司法修習で二回試験に合格し、いざ仕事をはじめよう!という場合にもお金がかかってきます。

特に、修習生のうち大多数の弁護士になる人には、弁護士会への登録費、そして会費の負担など様々な費用があります。

日弁連・弁護士会の登録費・入会金

日弁連への登録費は、一律3万円です。

弁護士会への入会金は、各所轄の弁護士会により異なります。例えば、第一東京弁護士会では、5万円です。最低額で東京弁護士会などの3万円、最高額で香川弁護士会の57万円になります。

したがって、登録費は、日弁連の登録費3万円+所属弁護士会の入会費分が必要になります。なお、これらの費用は、後述の会費とは別なので、注意が必要です。

PDFで一覧をダウンロード

参考:法務省資料

※弁護士会への入会金は、参考資料にかかる当時のものであり、現在額と一致しているとは限りません。

日弁連・弁護士会の会費

日弁連会費

日弁連の会費は、登録費と同様に、一律に額が決まっています。そして、2つの区分があります。

1つは、一般会費で、一律月額1万2400です。これは、弁護士登録したすべての弁護士が支払うことになります(日本弁護士連合会会則95条)。

もう1つは、特別会費(同会則95条の2第1項、第2項)です。現在は、少年・刑事財政基金のための特別会費法律援助基金のための特別会費の2つがあります(令和2年6月から令和5年6月まで)。

それぞれ、1600円と900円で、合わせて2500になります。これは、日弁連会則95条の4の諸規定に基づく免除がない限り、一律に支払うことになります。

弁護士会費

弁護士会費も、基本的に弁護士の数が多いほど負担は少ないです。逆に、弁護士の数が少ない地方の地域ほど、会費は高くなる傾向があります。なぜなら、弁護士会費は、所属する弁護士の中で分担して負担しているからです。

そして、弁護士会費も、一般会費と特別会費の区分があります。

この統計資料では、例えば第一東京弁護士会であれば、一般会費は月額2万500円、特別会費は月額1万円です。

他方で、高いところでは、一般会費で島根県の月額6万円、特別会費で岡山県の月額2万6000円があります。低いところは、一般会費で静岡県の1万2000円、特別会費で茨城県などで0円といったところまで様々です。

なお、上記のような登録費ないし会費については、新人・若手弁護士に対する減免措置がある地域もあります。例えば、第一東京弁護士会では、一般会費2万500円のところ、2年目まで5000円、3年目で1万円、4年目で1万8500円という段階に分けられています。

まとめ

修習生の給与と、生活について具体的な数字で、リアルにシミュレーションまでしてきました。

修習生の生活は、1年という短い期間であり、法曹としての人生でも一度きりかと思います。修習でしっかりと法曹としての実務的スキルをつけつつ、実務修習先を中心に、最後のモラトリアムとばかりに遊びつつ、充実した時間にしていきたいところです。

他方で、現実には、限られた給付金の中で生活をしなければなりません。

修習を楽しく充実したものにするには、日々の生活の面で、頭を使い、工夫をしながら生活していくことが重要になるかと思います。

この記事を参考に、様々考えて計画を立てるなどしていただければ幸いです。

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