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新人弁護士が辞めた後のキャリアと転職可能性。辞める前に何をすべき?

更新日: 公開日:

長時間労働やボス弁のパワハラなどが理由で、今の法律事務所を辞めたいと考えている新人弁護士がいるかもしれません。その際、「新人のうちに辞めたら弁護士としてのキャリアはどうなるのだろうか?」「経験が少なくても転職できる可能性はあるのか?」など、さまざまな疑問・不安が生まれるでしょう。弁護士は新人のうちに辞めても転職は十分に可能です。ただし経験弁護士と比べると選択肢が少ない場合があるので、辞める前に自己分析やエージェントへの相談を進めておくといいでしょう。

この記事では弁護士が新人のうちに辞めるメリット・デメリット、辞めた後の選択肢や転職の可能性などについて解説します。

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目次

新人弁護士が辞めたいと感じる理由

最初に、新人弁護士がなぜ辞めたいと感じるのか、主な理由を挙げていきます。

長時間労働で心身が限界

弁護士はハードワークです。長時間労働が原因で体力的、精神的に限界を迎えており、辞めたいと感じるケースが少なくありません。中には所属先の法律事務所が過剰に案件を引き受けており、業務過多になっている場合もあります。これでは弁護士の力量や業務効率化の工夫では対処しきれません。

思っていたように稼げない

弁護士は一般に高収入職業の部類に入りますが、かけた労力に対する収入という点では割に合わないと感じる方は少なくないようです。稼げる職業だと思って弁護士になったものの、思ったよりも稼げず割に合わない、モチベーションが上がらないといった理由で退職を考える場合があります。

ブラック事務所に入ってしまった

法律事務所の中にはブラックと呼べるような事務所も存在します。たとえばボス弁がパワハラ気質で所属弁護士や事務員に暴言を吐く、明らかにこなせない量の業務を押しつけてくるといったケースです。辞めたいと伝えると懲戒請求するなどといって脅す事務所もあるようです。

希望した経験を積めていない

希望した経験を積めていないことも新人弁護士が辞めたい理由のひとつです。たとえば幅広い経験が積めると聞いて入所したのに、実際には債権回収や交通事故など特定の案件が9割を占めており、それ以外の業務はやらせてもらえないなどのケースがあります。

クライアント対応のストレス

弁護士を利用するクライアントは深刻な法律問題に直面し、強いストレスを抱えているケースが多くあります。そのためクライアント対応は非常に気を遣う仕事のひとつです。また自分がとにかく得をしたい等の考えで弁護士に対して無理難題を要求してくるクライアントも少なからずいます。こうしたクライアントの対応に苦労するケースは少なくありません。

新人のうちに弁護士を辞めるメリット

辞めたいと感じたとき、「まだ新人なのに辞めても大丈夫なのだろうか?」と不安に感じるはずです。新人のうちに辞めることのメリット・デメリットを整理してみましょう。主なメリットは以下の2点です。

心身の健康を損ねないで済む

何よりも大きなメリットは心身の健康を保てる点です。今の職場で強いストレスを抱えている場合、我慢する期間が長いほど、心身の健康を損ねるリスクが上がります。しかし短期間で辞めれば、心身の健康を損ねる前にキャリアのやり直しができます。

心身の健康を損ねると、数ヶ月、数年という単位で弁護士やその他の仕事ができなくなるおそれがあります。また我慢して無理に続けても、弁護士は大きな悩みやストレスを抱えた依頼人を相手にする職業なので、弁護士自身の心身が健康でなければ職務を全うできないでしょう。もちろん、仕事面を抜きに考えても、心身の健康を損ねてしまうことはご自身やご家族にとって辛いことであり、避けるべき事態です。

はやめに希望する業務経験を積める

今の職場や業務内容が合わないと感じたら、はやめに転職するのも選択肢です。早期に転職すればその分、はやくから自分が希望する業務経験を積むことができます。将来のキャリアプランが決まっていて、そのために今どんな経験が必要なのかが分かっているのなら、今の職場とははやめに見切りをつけるのも考え方のひとつです。

新人のうちに弁護士を辞めるデメリット

早期に辞めるには、以下のデメリットがあることも理解しておかなければなりません。

収入が安定しない

まず懸念されるのが収入面です。ベテラン弁護士であれば、高い収入を得て貯金も多く、辞めてもしばらく生活できるだけの蓄えがあるかもしれません。しかし新人のうちは十分な貯金がないという方も多いでしょう。司法試験は難易度が高い分予備校などの費用が高額なので、司法試験で貯金を使い果たしたという方もいるはずです。

次の職場が決まるまでアルバイトなどをするとしても、職が定まらない限り安定した収入を得るのは難しいでしょう。

今後しんどいことがあったときに自分を信じられない

今後のキャリアを展開する中で、大きな壁にぶつかることがあるかもしれません。そんなとき、自分を信じて努力を続けることで乗り切れる場面は多々あるはずです。しかし新人のうちに辞めてしまうと、そのことで自己評価が下がり、自分を信じられなくなる可能性があります。

辞める癖がついてしまう

辞めることは勇気がいることですが、いったん辞めてしまうと気が楽になります。すると、人によっては辞めることに抵抗感がなくなり、辞める癖がついてしまう場合があります。

辞める癖がつくと、次の職場で何か少しでも辛いことがあったとき、即座に辞めるという方法を選んでしまいます。これでは忍耐力や問題解決能力が養われず、辛いことから逃げ続けるキャリアになってしまう可能性があります。弁護士を続けるにしても別の仕事をするにしても、何かを乗り越えた経験があるというのは大きな武器になりますが、こうした経験を得ることができません。

転職先の選択肢が狭まる

今は転職が珍しくない時代なので、採用側も退職歴・回数にはある程度理解があります。しかし早期に離職した人材に対しては「今度も短期で辞めてしまうのでは?」「忍耐力がないのでは?」という不安を抱くケースが多々あります。その応募先への志望度が高くても、早期離職がネックになって不採用になる可能性は否定できません。

弁護士の転職では、若手弁護士を求める事務所や企業がある一方で、ある程度の経験を積んだ即戦力弁護士を求めている事務所や企業が多いのも事実です。そのため転職活動をしても経験年数が短いことからなかなか採用に至らないことも考えられます。

新人弁護士が辞めた後の選択肢

弁護士が新人のうちに辞めた場合、その後のキャリアにはどんな選択肢があるのでしょうか。

ほかの法律事務所に転職して弁護士として働く

まず考えられるのは、ほかの法律事務所に転職することです。所属事務所のみを変えて弁護士の仕事を続けます。法律の知識や弁護士資格を最大限に活かせるのはやはり法律事務所なので、もっともリスクの低い転職といえるでしょう。法律事務所の弁護士という働き方自体に不満がないのなら、現実的な選択肢として最初に検討するべきキャリアです。

法律事務所とひと口にいっても、事務所の規模感や取り扱い分野、風土などはさまざまです。

特色が違う以上、合う・合わないも大きいので、事務所を変えるだけでストレスの度合いが軽減される場合は少なくありません。

また、アソシエイト弁護士ではなくノキ弁として国選などを受けながら経験を積む方法もあります。ノキ弁は場所だけ借りてる状態なのでボス弁などからの制約がありません。「雇われ弁護士だとストレスが大きそう」という方はひとつの選択肢として覚えておくといいでしょう。

企業に転職して法務部員として働く

一般企業の法務部で働くのも選択肢のひとつです。弁護士資格をダイレクトに活かせるわけではありませんが、ビジネスに絡む法律を扱う機会が多く、法律知識が役に立ちます。近年は法務部強化のために弁護士などの有資格者を求めている企業が増えているため、求人は豊富にあります。

独立して経営者弁護士として働く

自分で法律事務所を立ち上げて経営者弁護士として働く方法もあります。弁護士の独立は法律事務所に勤務して5年~10年以上の経験を積んでからするのが一般的ですが、弁護士になってからすぐ独立するいわゆる「即独」もゼロではありません。今の職場を辞めるか悩んでいる新人弁護士の場合は短いながらも事務所経験があるため、即独には当たらないかもしれませんが、これに近い状態での独立になります。

独立して事務所運営を軌道に乗せるのは本人の力量次第です。当然ながら厳しい状況も予想されます。とくに弁護士が供給過剰状態にある東京は競争が激しいため、独立場所は地方都市も含めて広く見ておいたほうがよいでしょう。

一方、誰かの下で働くよりもすべて自分の裁量で働けるのはやはり魅力であり、人によっては水を得た魚のように思う存分能力を発揮できる場合もあります。

弁護士を辞めてほかの職種として働く

弁護士以外の職種として働く道もあります。弁護士資格があれば税理士や弁理士などの登録が可能ですし、コンサルタントなどは資格関係なく、なることができます。

せっかく弁護士になったのに弁護士として働かないのは勿体ないという考え方もあります。しかし今は先行き不透明な時代ですし、ひとつの職種や経験にこだわらず働くという考え方をする人も増えています。

新人弁護士が辞める前にやっておくべきこと

辞めたいと感じたとき、実際に辞める前にやっておくべきことを解説します。

辞めたい理由が何かを整理する

辞めたい理由を整理することで、自分の状況を客観視できます。

まず、今の職場にいても解決できる悩みか、そうでないのかを整理しましょう。たとえば今受け持っている顧客に対するストレスなら、周囲の弁護士に相談することで解決できる可能性があります。また事件が解決すればその顧客とは関わりがなくなるため、辞める必要まではないかもしれません。

一方、ブラック事務所に入ってしまったなど今の職場では解決できない悩みなら辞めることになります。辞める場合、転職して弁護士を続けるのか、ほかの職業を選ぶのかを考えることもあるでしょう。ブラック事務所の場合は職場を変えれば解決できる可能性が高いため、弁護士を辞める必要はありません。

このように順序立てて考えることで、今どうすればよいのかを客観的に判断できるようになります。辞めたいという気持ちが大きくなると冷静に考えられなくなるため、紙に書くなどしてひとつ一つ判断していくといいでしょう。

弁護士という仕事を通じて達成したいことを整理する

司法試験の勉強中や司法修習時代にも考えたかもしれませんが、弁護士として何を達成したいのかを改めて整理してみましょう。そうすることで、今の職場を辞めるべきか、辞めるとしても次にどんな職場を選ぶべきかが見えてきます。

たとえば「困っている人を助けたい」「法律家としての専門性を磨きたい」なら、法律事務所で働くのがよいでしょう。「ワークライフバランスを保ちながらそこそこの収入を得たい」「弁護士という職業にとらわれずビジネスに近いところで自分の能力を発揮したい」のなら、一般企業にマッチする可能性があります。

身近な人に相談する

自分一人で考えると頭の中で悩みがぐるぐると回り、答えがでない場合が少なくありません。自分の考えを整理するためにも、身近な人に相談するのも方法です。たとえば別の法律事務所で働く同期の弁護士や司法修習時代の仲間なら弁護士としての悩みを理解したうえでアドバイスしてくれるかもしれません。人間関係の悩みなどなら、弁護士とはまったく関係のない友人、家族でもいいでしょう。

転職エージェントに相談する

キャリアの相談をするなら転職エージェントがおすすめです。弁護士のキャリアや転職市場に詳しいエージェントなら、自分に適したキャリアを一緒に考えてくれます。新人のうちに辞めることに不安を抱えている場合も、どんなキャリアがあるのかが見えてくることで安心感につながります。

依頼人に迷惑をかけないよう引き継ぎを丁寧に行う

自己分析やエージェントへの相談などを経て辞めると決めたのなら、退職の意思表示と業務の引き継ぎを行います。弁護士業界は横のつながりがあるため、不誠実な辞め方をして今後のキャリアに影響を与える可能性は否定できません。できるだけ円満退社を心掛けましょう。

もっとも大事なのは、自分が辞めることで依頼人に迷惑をかけないことです。数ヶ月で辞める場合、どこかしこりが残ってしまう可能性はあり、完全な円満退社は難しいかもしれません。しかし引き継ぎを丁寧に行うことで誠実な姿勢を見せることは非常に大切です。

新人弁護士が辞めた場合、転職できる可能性はどれくらい?

弁護士が新人のうちに辞めた場合、転職はどの程度難しいのでしょうか?転職可能性について解説します。

弁護士業界は売り手市場だが経験弁護士のニーズが高い

弁護士業界は求職者有利の売り手傾向が続いています。ただし求人を見ると経験弁護士を求めているケースが多く、経験値の少ない若手は必ずしも選択肢が豊富ではありません。

新人弁護士の場合、修習期によっては第二新卒のような形でポテンシャル枠へ応募できる可能性があります。経験弁護士向けの求人ではなく、若手・ポテンシャル採用向けの求人を選ぶことで採用される可能性を高められます。

若手弁護士は企業の法務部でニーズあり

一般企業は組織への適応力や教育のしやすさなどを理由に若い人材を好む傾向があります。そのため企業の法務部であればマッチする求人を見つけやすいでしょう。とくにベンチャーなど若い会社では、あまり経験がなくても法律知識が豊富な若手弁護士をピンポイントで求めているケースがあります。

まだ何色にも染まっていない弁護士を求める事務所なら転職しやすい

法律事務所の場合は経験者が有利ですが、中には「経験値が少ない弁護士のほうがいい」と考える所長もいます。ほかの事務所のやり方が身についていないほうが、自分たちで教育しやすい、事務所の風土になじみやすいといった考え方です。そうした事務所なら短期間で法律事務所を辞めた弁護士でも採用される可能性があります。

新人弁護士が知っておきたいブラック事務所・企業の見極め方

最後に、ブラック事務所や企業の見極め方について解説します。今の職場がブラックだという理由で辞めても、次の職場の選び方を注意しないとふたたびブラックな職場に当たってしまうリスクがあります。以下の点を押さえて転職先を選びましょう。

業務内容や契約形態は事前によく確認する

求人票で見た内容と実際の業務内容が違っていたというケースはよくあります。業務内容は弁護士としてどんな経験を積みたいのかにも関わってくる重要な項目なので必ず確認しましょう。

契約形態の確認も必須です。雇用契約なのか業務委託契約なのかによって所属先から時間的な制約を受けるのか個人事件の受任が可能なのかなど働き方が変わります。もちろん、契約の内容も詳細に確認してください。

ブラックな事務所・企業の場合、業務内容や働き方などについて面接の口頭で虚偽の説明をする可能性もあるので、書面をもらって確認しましょう。

提示収入が低すぎる事務所は避ける

提示年収が相場より大幅に低い事務所は「辞めればまた採用すればいい」という考えで所属弁護士を軽く見ている可能性があるので避けるべきです。

弁護士の年収は事務所の規模や経験年数などさまざまな要素が絡みますが、一般に法律事務所では新人でも500万円からが相場です。中には年収200~300万円くらいで弁護士を募集している求人もありますが、弁護士としての一般的な業務内容と変わらないとしたら低すぎます。応募は避けたほうが無難です。

弁護士業界の知人から情報を収集する

弁護士業界は良くも悪くも狭い世界なので、評判が悪い事務所は業界内で有名というケースがあります。そのため弁護士業界にいる知人から情報を収集するのはある程度有効です。

ただし、退職者に口止めするなどしてブラック事務所であることを隠せてしまっている事務所もあるので、すべての情報ではない点に注意しましょう。

職場の口コミサイトをチェックする

最近は転職口コミサイトなどで実際に働いた人の口コミをチェックできるようになっています。あくまでもその人の主観であって必ずしも信頼できる情報ではありませんが、参考程度にはなる情報です。たとえばあまりにも悪い口コミが多い事務所や企業であれば、それなりに信憑性があると判断して応募を控えるという選択肢もとれるでしょう。

転職エージェントの情報網を利用する

もっとも有効なのが転職エージェントから情報を提供してもらう方法です。転職エージェントには過去に転職支援をした人から得た生の情報や、独自のネットワークで収集した業界内の情報があるので、信憑性が高く非常に参考になります。職場の内情については、エージェントが実際に足を運んだり採用担当者から詳しくヒアリングしたりしてチェックしています。職場の雰囲気やボス弁の性格など入所してみないと分からない情報も入手できるため、転職活動の際には相談してみるとよいでしょう。

とくに新人弁護士の場合、一般的な就職活動をしておらず、転職も初めてというケースが多いため転職活動のノウハウがありません。転職エージェントは情報提供のほかに応募書類の添削や面接対策など転職活動全体を通じてサポートしてくれます。自分に合った転職先に出会うためにも利用をおすすめします。

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まとめ

今の職場で働くのが辛い場合、心身の健康を損ねないためにも、辞めることは悪いことではありません。ただし次の職場でも同じ悩みを抱えないように、辞めたい理由や自身のキャリアについてよく考えてから転職することをおすすめします。転職活動では情報収集が重要です。転職エージェントの情報網を利用しながら、自分に合った職場を見つけましょう。

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