司法試験合格から二年越しに司法修習へ
編集部:本日はお時間をいただきありがとうございます。司法試験合格後に弁護士の道を選択されている方が多い中で、異色のキャリア選択をされていますよね。
Yさん:そうですね、自分で言うのもヘンですが、あまり一般的ではないキャリア選択だと思います。
略歴
2017年09月:司法試験合格
2017年11月:東証一部上場メーカー(法務部) 入社
2019年10月:東証一部上場メーカー(法務部) 退職
2019年11月:73期 司法修習生
2021年01月:ITベンチャー企業(法務部) 入社
Yさん:もちろん、闇雲に取った行動ではなく、きちんと自分の中の目的と照らし合わせて取った行動でした。ですので、弁護士としてのキャリアが多様化している今、特に今後自分は弁護士になってから、どのようなキャリアを選択するべきか悩んでいる方に少しでも参考となることをお伝えできれば幸いです。
編集部:ありがとうございます。よろしくお願いいたします。それでは、早速ですが、司法試験合格後、修習に行かないという選択を取れましたが、そのことへの周囲の反応はどうでしたか?
Yさん:正直反対されましたね。特に家族からは、強い反対を受けました。
もともと分かり易い安定した職業についてほしいみたいな雰囲気は感じていて、確かに大学院まで通い司法試験に合格したにも関わらず、弁護士を目指さずに就職するという選択は両親にとって受け入れがたいものだったのもわかります。
編集部:なるほど。先輩の弁護士たちからはどのように言われたんですか?
Yさん:そうですね、時期を遅らすことなく、自然なタイミング司法修習に行くことは法曹の道に立つ者にとってとてもメリットが大きいということはよく言われ、やはり行きなさいという意見は多かったです。
中には「行かない意味が分からない」「ファーストキャリアは事務所に行け」なんてことも言われました。ただ自分としてはキャリアが狭まるとはあまり思っていませんでしたね。
もちろん何の思慮もなしにこの選択を取っているわけではなかったですし、自分なりに、この選択を取ることのメリットを冷静に、客観的にきちんと考え判断しました。これは今でも後悔していないです。
ただの法律家ではなく、自分が目指すビジネスマン像を追う
編集部:当時その決断をしたときにはどんな考えがあったんですか?
Yさん:僕は、いわゆる「法律家」というものではなく、もっと広い意味で、社会に働きかけられる人材でありたいと思っていました。自分が法律に対して一定の素養を持ったことは、あくまで社会人として活躍するための「武器」として考えたので、弁護士という特殊な業界で専門性を磨くこともとても重要だとは感じていたものの、それをアウトプットする場所をきちんと自分自信の経験として一度は触れた方がいいのではと思ったことが一番のきっかけですね。
このあたりは、正解不正解という話ではなく、先輩方のご指摘も、もっともらしいことだとも思っています。
編集部:確かに。流れのままに受け身的な選択を取る前に、自分は何をしたいのか、どうなりたいのかをきちんと考えることはとても大事ですよね。
Yさん:まさしくその通りです。修習に臨むことがきちんと自分の中で一度検討した選択なのかということはとても考えました。僕の場合、目指すビジネスマン像があって、人と何かを成し遂げる経験だったり、広い視野を持つことや、サービスを提供する先のことを真剣に考えられる力などいろんなことを養いたいと考えていました。
編集部:へー面白い!事業部サイドの人間と考え方が近いですね。
Yさん:だと思います。なので、あくまでこれは「僕」という人間がそうなのだというだけであって皆がこうするべきだというわけでは決してないです。ただ、もし近い考え方を持っていて、同じような境遇で悩んでいる方がいるならば、参考にしてもらえたらとてもうれしいと思っています。
法務部で働いてから司法修習に行くという選択について
編集部:企業での経験は実際どうでしたか?
Yさん:いわゆる法務部員という括りで任される仕事の幅に留まらず、いろんなことを勉強させてもらいました。多分法律事務所で一弁護士として仕事をする上では身につかないビジネスマンとしてのスキルは本当に凝縮されて経験させてもらったと思っています。
編集部:ここから再び司法修習に臨むのはどういう経緯だったんでしょうか?
Yさん:先にもお話ししたように、弁護士としての仕事をする上で、企業の一員として仕事をする経験は積むべきだというのと同じように、法律家としての専門的な訓練も等しく必要なことだと思っていました。なので、自分の「武器」である法律を磨くためにはきちんと弁護士としての立場を確立する必要はあると思い、一定の経験を積ませてもらったタイミングで司法修習に臨みました。
編集部:司法修習はどうでしたか?
Yさん:個人的には、良いところもあり良くないとこもありという感じですね。
強く感じたのは、司法修習中に企業法務の実務訓練を受ける機会が非常に限られてしまっているという点です。契約書レビューなどって企業法務領域で活躍をする弁護士には日常茶飯事のように直面する実務だと思うのですが、修習中に経験するのは1回きりでした。また、会計財務などの一般的に法律家として知っていなくては行けない数字回りの法律実務についても触れられないのは、今後変わっていくといいなと思っています。
今後、弁護士としてのキャリア形成
編集部:時代に遷移と併せて法律も変わっていく今、司法修習も柔軟に変わっていくことは確かに求められているのかもしませんね。修習が終わり、これからは弁護士として社会に出ていくことになりますが、今後目指すキャリア像について、率直にどんな人物でありたいですか?
Yさん:法律家という立場からビジネス上の選択肢を最大化できる人物を目指しております。
その上では、法律に対するスペシャリティをもっと高めていく必要もありますし、ビジネスという観点においては経営等にも、もっと深く関わっていきたいと考えております。ビジネスをする上で、法律が関わらないことは決してありません。「その時」が来た時にきちんと自分の持つ力を発揮し、関わる人の助けになれるだけの力を持っていたいですね。
私は弁護士というキャリアを選択し、弁護士として従事しています。ただ、ビジネスにおける法務的アドバイスに資格を持っていなくてはならないということはありません(もちろん代理人業務等、弁護士でないと出来ないことはあると思います)。現に、修習前に在籍させていただいた会社には、資格をお持ちでない方ですがとても優秀な方々もいらっしゃいました。
弁護士という武器を最大限に活かしつつも、弁護士ではない自分も価値のあるものとして、周囲に働きかけられる人物でありたいです。
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