社外取締役(しゃがいとりしまりやく)とは、「取締役」として会社の経営陣の一翼を担いつつ、経営上の意思決定や業務執行についての監督を「社外」の立場から行う人のことです(会社法2条15号及び16号)。

「社外」とは、社内での役員経験がないもしくは10年より前であり、あるいはグループ会社の取締役等でないなど、形式的な立場上も事実上も内部的な影響力がない客観的な立場に位置づけられます。

また、社外取締役の中でも、特に経営者や利害関係者から完全に独立しており、株主との利益相反のおそれがない社外取締役を、独立社外取締役と呼ぶこともあります。もっとも、社外取締役と一口にいっても、コーポレートガバナンスに関する様々な考え方から、その具体的な役割について活発な議論があります。

昨今、企業の不祥事を防ぐために社外取締役の活躍が期待されています。実際に社外取締役にはどのようなスキルが求められ、どんな仕事をするのでしょうか。

また、社外取締役になるためにはどのような要件があり、報酬はどれくらいなのでしょうか。社外取締役になる方法についても紹介します。

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社外取締役とは

まず、社外取締役になれる要件や設置が必要な企業について紹介します。

社外取締役の就任要件

社外取締役は誰でもなれるわけではありません。社外取締役に関する要件は会社法2条15号及び16号に定められています。

  •  会社や子会社の業務執行取締役・従業員でなく、かつ就任前の10年間その会社や子会社の業務執行取締役・従業員でないこと
  •  就任前の10年間のどこかでその会社や子会社の取締役・会計参与・監査役であった場合、取締役・会計参与・監査役への就任前10年間でその会社や子会社の業務執行取締役・従業員でないこと
  •  会社の経営を支配している者でないこと
  •  親会社の取締役・従業員でないこと
  •  兄弟会社の業務執行取締役・従業員でないこと
  •  取締役・重要な従業員・会社の経営を支配している者の配偶者・二親等内の親族でないこと
  •  就任前の10年間でその会社又は子会社の取締役・会計参与・従業員でなかったこと
  •  就任前の10年間でその会社又は子会社の監査役だった場合には、監査役就任前10年間で会社又は子会社の取締役・会計参与・従業員でなかったこと
  •  会社の経営を支配している者・親会社の取締役・監査役・従業員でないこと
  •  兄弟会社の業務執行取締役・従業員でないこと
  •  会社の取締役・重要な従業員・会社を支配している者の配偶者・二親等内の親族でないこと

参考:会社法

社外取締役は、企業の不正・不祥事を監視し、投資家・従業員・取引先などのステークホルダーを守るために設置するのが大きな目的です。そのため、元々社外取締役として就任した木企業と結びつきがある人や利害関係にある人は社外取締役になれません。

一方で、学歴や性別などのスキルに対する要件はないので、企業にとって必要な人材だと思われれば誰にでも就任のチャンスがあります。ただし、大企業などの場合には、経歴や実績がある人が好まれるので、大企業の元経営者や高学歴の人などが選ばれやすい傾向にあります。

社外取締役の設置が必要な企業

2021年3月より上場企業等では2人以上の社外取締役の設置が義務化となりました。上場企業等の定義は以下の通りです。

  1. (1)監査役会を置き、株式の譲渡制限がない
  2. (2)資本金が5億円以上または負債総額200億円以上の大会社
  3. (3)有価証券報告書の提出義務がある
    上記(1)~(3)のいずれも満たす企業が対象

社外取締役の設置・専任状況

社外取締役はアベノミクス「第三の矢」としての成長戦略における重要テーマとして取り扱われてきました。2014年には、東京証券取引所の上場規定に最低1名の社外取締役を独立役員に指定する努力義務を上場規程に盛り込まれました。そこから社外取締役を設置する上場企業は急速に増え、2018年の段階ではすでに上場企業の9割以上が社外取締役を設置しています。

参考:会社法改正案を閣議決定 政府、社外取締役設置を義務化: 日本経済新聞

引用元:東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況(2020年9月7日)

また、上場していない中小企業・ベンチャー企業は社外取締役の設置義務はありません。ただし、将来的に上場を見越して上場を経験した経営者を社外取締役に迎えたり、事業拡大のための経営ノウハウを教えてもらうために設置したりするところもあります。

他社と掛け持ちできる

社外取締役は兼任が可能です。朝日新聞社の調査によると、2017年3月末の時点で東京証券取引所第1部に上場する企業の社外取締役4482人の中、2社を兼任が821人、3社を兼任が312人、4社以上を兼任が191人いることがわかりました。

兼任していない人が3158人と多数派ではありますが、社外取締役義務化に伴い、社外取締役の需要は増えるので兼任する人は今後増えるかもしれません。特に、女性で社外取締役として活躍できる存在は少ないですが、政府としても女性の役員数を増やしたいという思惑もあり、女性で社外取締役を兼任する人は今後増えるのではないでしょうか。

参考:社外取締役191人、4社以上で兼務 経営監視に懸念も:朝日新聞デジタル

社外取締役の兼任制限

引用元:経済産業省|社外取締役の現状アンケート

社外取締役の任期は1~2年

社外取締役の任期は1年または2年に設定することが多いようです。途中で辞任・退任することも可能ですし、更新して任期を延ばすことも可能です。

社外取締役に期待される4つの役割

ここでは、社外取締役に期待される役割について紹介します。

コーポレート・ガバナンスの実現

コーポレート・ガバナンス(英語:corporate governance)とは、企業経営を管理・監督する仕組みのことを指します。社外取締役には、コーポレート・ガバナンスの実現が求められます。

大手企業であっても企業ぐるみで粉飾決算をしてしまうことも多々あります。例えば、決算が赤字の場合、銀行からの資金調達や株価の上昇が見込めず、十分な資金を確保できないと経営に支障をきたすことになってしまいます。このような事態が起こった場合、経営陣自らの進退・評価にも関わるので、その事実を隠すために暴走してしまうこともあるのです。

特に、内部の人だけの判断になると上の意見に逆らえず、同意せざるを得ない状況にもなりやすいでしょう。しかし、不正が明るみになると株価は暴落し、投資家である株主は資産を大きく減らすことになります。また、資金調達ができないことにより事業のリストラが進めば従業員や取引先も職を失うことになるでしょう。

このように一つの企業が不祥事を起こすことにより、多くの人が損害を被ることになるのです。社外取締役はステークホルダーを守るためにも、企業とのしがらみがない状態で、公正な目で経営を監視することが大切です。

経営判断に間違いがあった場合には経営陣に物申す

上述の通り、社外取締役に求められる一番の役割は経営の監督です。経営陣が暴走して、ステークホルダーが不利益を被ることがあってはいけません。健全な経営ができているかを監視し、経営判断に間違いがあれば遠慮せずに意見を言う必要があります。

そのため、社内の常識にとらわれることなく、遠慮せずに経営に対して物申せる人材が求められます。そのような人材を設置した方がステークホルダーにとっても安心です。華々しい経歴や実績がある人が社外取締役として就任すれば、経営に対する期待も高まり、結果として株価を押し上げることにも繋がるでしょう。

参考:経済産業省|社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)

取締役会への参加

上場企業の場合、3か月に1度取締役会が実施されます。社外取締役はこの会議に出席することが求められます。基本的には対面での参加になりますが、海外に住んでいる場合などにはZoomなどを用いての参加も可能です。

社外取締役が企業に関わる時間は常任の取締役に比べると少ないので、取締役会でどんな発言をするのかは非常に注目されます。参加前にはきちんと資料を読み込むなどして、適切なアドバイスができるように準備しておく必要があるでしょう。

株主と経営陣を繋ぐ

社外取締役は、株主と経営陣との懸け橋的な役割も担います。企業は経営者のものではなく、「株主のもの」です。そのため、株主の想いを経営に活かしていく必要がありますが、経営陣が盲目的な運営を行っていると株主の気持ちは離れてしまいます。株主の気持ちが離れれば、当然株価は下落し、企業価値も失墜してしまいますので、株主にとって魅力的な経営をすることは非常に大切です。社外取締役は、株主の想いや考えを聞き、それを経営陣に告げ、企業運営に活かしていく必要があります。

社外取締役に求められるスキルや経験

社外取締役として選任されるために必要なスキルについて紹介します。

企業経営

企業経営の経験がある人を社外取締役として迎えるケースは非常に多いです。事業規模を大きくした経験がある人や起業から上場まで経験したような人は引く手あまたな存在になるでしょう。経営判断や経営のノウハウを伝える役割に期待されます。

グローバル経営・事業戦略

海外に戦略に強い人材も社外取締役として適任です。海外のマーケットは大きく、進出したい企業も多い一方で、商習慣や法律の違いから躊躇する企業も多いです。そのため、海外事業を一から起こした経験がある人は重宝されるでしょう。

法務・税務

法務・税務に関する知識がある人が社外取締役に就任すれば、不祥事を減らす効果がありますし、対外的にもクリーンなイメージになります。

ESG(環境・社会・ガバナンス)

ESG(環境・社会・ガバナンス)に対する意識も高まっており、ESGへの関心が低い企業は中長期的に成長できないといわれています。例えば、現在は脱プラスチックの動きがありますが、それに対する取り組みが遅れれば企業イメージはマイナスになるでしょう。社会の動きを見ながら、これらの課題に対して取り組むべきことを経営陣にアドバイスできる人材が求められます。

ブランド戦略・マーケティング

ブランド戦略やマーケティングに強い人材も社外取締役として重宝されるでしょう。時代によって商品の売り方やブランドの位置づけを変えていかないと、どんどん淘汰されていってしまいます。たとえば、最近ではエコを意識したシンプルなパッケージの方が好まれる傾向にあるようです。また、CMや広告よりもSNSの口コミの方が購買者の心に届くケースもあるでしょう。このように、人の購買行動・意欲は時代により変化しますので、その時代に合ったブランド戦略やマーケティングができる人は強いです。

どんな人が社外取締役に向いているのか

それでは、どんな経歴を持つ人が社外取締役に向いているのかを説明します。

元経営者

元経営者は社外取締役として適任です。経営者は、経営のノウハウはもちろんのこと、財務や法務など企業経営にまつわることすべてに詳しくなる必要があります。特に大企業の経営者は知識も豊富ではないと務まらないので、大企業の元経営者は社外取締役になりやすいです。

元有名会社役員

有名企業の役員も経営者に近い存在として社外取締役になりやすいです。特に、特定の分野に特化して詳しい人材の場合、ノウハウの伝授に期待され、好待遇で迎えられるでしょう。

弁護士

法務の知識がある弁護士も社外取締役として迎えられることが多いです。特に、女性の社外取締役を選任したい企業が女性の弁護士を社外取締役として迎えるケースもあります。

公認会計士

企業の会計監査を行う公認会計士を社外取締役として選任することで、会計の誤りや粉飾の不祥事を防ぐことに期待できます。弁護士と同様、女性の公認会計士が社外取締役として活躍するケースも多いです。

社外取締役の選び方

社外取締役になるために絶対に必要というスキルはありません。社外取締役を選ぶ企業としては、社内で選任した取締役全体のバランスを見ながら、その企業の経営で必要なスキルがある人を社外から選ぶことが大切です。

また、女性の役員を増やすことも期待されているので、社内で取締役として就任できるような人材が育っていないのであれば、社外取締役として女性を選任する場合もあるでしょう。

社外取締役の報酬額は600万円〜800万円未満が最多

2020年5月に行われた経済産業省のアンケート調査によると、社外取締役としての報酬額は600万円〜800万円未満とする企業が21.5%と最多という結果に。

参考:経済産業省|社外取締役の現状アンケート

同調査における報酬額に関しては、実際に就任している社外取締役の8割は概ね妥当という回答でした。

参考:経済産業省|社外取締役の現状アンケート

社外取締役になるためのプロセス

社外取締役への就任はプロセスを踏めば良いのでしょうか。具体的な方法を紹介します。

証券会社やファンドからの紹介

社外取締役は紹介で決まるケースも多いです。例えば、社外取締役を求める企業の経営者が、知り合いの経営者のツテを使い、適任となる人材を紹介してもらえるようお願いするケースもあるでしょう。どんな人脈から話があるか分からないので、もし社外取締役になりたいのであれば周囲にその旨を周囲に伝えておいた方がチャンスをつかみやすくなるでしょう。

転職エージェント等

転職エージェントの中には、役員クラスに特化したハイクラス向けのエージェントも存在します。社外取締役が義務化となったため、転職エージェントを利用して適任な人材を探す企業も増えるでしょう。

転職エージェントを利用するメリットとしては、一般的に公表されていない好条件・大企業に出会える可能性があることです。また、担当のキャリアアドバイザーがついて、条件や面接日程の交渉もしてくれます。通常の転職エージェントとは違い、経営者や役員と食事会や懇親会のような形式で採用が決めることもあるそうです。

一つの転職エージェントにしか登録しない企業もあるので、複数の転職エージェントに登録し、出会える企業の数を増やしておくと自分に合った企業を選べる可能性が上がります。

ヘッドハンティング

優秀な実績を収めて、名前が知れ渡っているような人材であれば、「我社の社外取締役に就任してほしい」とヘッドハンティングがある可能性もあります。

マッチングサービス

実績のある社外取締役の採用はVC(ベンチャーキャピタル)経由でも困難を極めており、企業側はVC経由意外に採用する場所の確保、実績のある弁護士はヘッドハントされる機会のマッチングがうまくいっていないのが現状です。

上場予備軍500社、社外取締役の争奪戦 指針強化で対応急務
人気人材は2年待ちも スタートアップ 2021年1月18日 0:00 [有料会員限定] 社外役員や監査役といったガバナンス人材の確保に悩むスタートアップが増えている。上場を目指すスタートアップが増え、金融庁などが定める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を見据えて体制を整えるためだ。成長の早いスタートアップのガバナンスを担える人材供給には限りがあり、適切な人材探しを支援するサービスも求められている。

引用元:日経新聞

その問題を解決する糸口になるのが『社外取締役マッチングサイト 』です。最近では、顧問紹介などを行うエージェントの中で、社外取締役紹介に関するサービスをローンチするものが出てきています。

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社外取締役の就任後は登記が必要

社外取締役に就任することが決まった株主総会の日の翌日から起算して2週間以内に変更登記申請書を管轄の法務局へ提出する必要があります。通常は、司法書士に依頼して手続きを代行してもらいます。

また、任期満了や辞任・解任・死亡などで退任する場合にも退任登記は必要です。

まとめ

上場企業では、社外取締役の設置が義務となるため、社外取締役として活躍できる人のニーズは今後ますます高まるでしょう。特に元経営者・元有名企業役員・弁護士・公認会計士など経営に必要なスキルを身に付けている人は社外取締役として適任です。掛け持ちも可能なので、すべての企業の業務を遂行できる自信があれば掛け持ちすることで多額の報酬を得ることもできるでしょう。

社外取締役になりたいのであれば、転職エージェントや紹介などの道があります。より良い条件で契約を結べるように、社外取締役になること意識した実績作りが必要といえるでしょう。

       
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